氏 名 : 蓑田 愛 論 文 名 :Synthesis and Characterization of Porous

(様式2)
氏
名
:
蓑田
愛
論 文 名
: Synthesis and Characterization of Porous Carbon Materials
and Their Application to Hydroge n Storage Materials
(多孔性炭素材料の合成、物性評価と水素吸蔵材料への応用 )
区
:
分
甲
論
文
内
容
の
要
旨
水素はエネルギー資源の多様化及び省エネルギーを実現可能なエネルギー媒
体 と し て 注 目 を 集 め て い る 。し か し な が ら 、水 素 を エ ネ ル ギ ー キ ャ リ ア と し て 実
用 化 す る 場 合 、体 積 エ ネ ル ギ ー 密 度 が 大 き な 課 題 で あ る 。そ の た め 、水 素 を コ ン
パ ク ト に 貯 蔵 、輸 送 す る 技 術 の 開 発 が 急 務 で あ る と 認 識 さ れ 、水 素 貯 蔵 材 料 の 研
究 開 発 が 近 年 盛 ん に 行 わ れ て い る 。本 論 文 で は 物 理 吸 着 が 原 理 で あ る こ と か ら 温
和 な 温 度 条 件 に お い て 水 素 を 吸 蔵 す る こ と が 可 能 で 、シ ン プ ル か つ 水 素 放 出 に 加
熱を必要としない水素貯蔵システムを構築できる多孔性水素貯蔵材料を取り上
げる。
具体的には水素製造所から水素ステーションへの水素輸送などへの応用に適
し た 、炭 素 を ベ ー ス と し た 多 孔 性 水 素 貯 蔵 材 料 を 創 成 す る こ と を 目 的 と し た 。そ
の目的達成のため実用化に適した温度及び水素圧力での水素の吸脱着が可能で
あ る 候 補 材 料 と し て 、 KOH( 水 酸 化 カ リ ウ ム ) に よ っ て 活 性 化 ( 賦 活 ) さ れ 、
細 孔 形 成 し た 炭 素 材 料 を 取 り 上 げ た 。 KOH に よ っ て 賦 活 さ れ た 炭 素 材 料 の 構 造
の 内 部 に は 2 nm 以 下 の 細 孔 径 を 持 つ ミ ク ロ 孔 が 生 成 さ れ 、主 に そ の ミ ク ロ 孔 に
よって水素ガス吸脱着が行われる。
さ ら に 、 炭 素 材 料 に Li を 導 入 す る こ と で 、 水 素 の 吸 着 密 度 が 向 上 す る こ と が
一 般 に 知 ら れ て い る 。 し か し な が ら 、 賦 活 し た 多 孔 性 炭 素 材 料 に 関 し て Li 導 入
の 効 果 に つ い て 実 験 的 に 検 証 さ れ た 報 告 例 は ほ と ん ど な い た め 、本 論 文 で は 賦 活
後 の Li 導 入 に よ る 水 素 吸 蔵 能 向 上 に つ い て 詳 細 に 検 討 し た 。
第一章では本研究の概要について述べる。
第 二 章 で は PAN( Poly-acrylonitrile) か ら 製 造 し た KOH 賦 活 炭 の 水 素 貯 蔵
に つ い て 述 べ る 。 さ ま ざ ま な KOH 賦 活 条 件 の も と PAN か ら 合 成 し た 活 性 炭 の
水 素 貯 蔵 能 を 調 べ た 。 PAN 由 来 の KOH 賦 活 炭 は 2625~3145 m 2 /g の BET 比 表
面 積 を も つ 。 ま た 、 こ の ミ ク ロ 孔 の 細 孔 径 は 0.9-1.5 nm で あ る 。 PAN 由 来 の
KOH 賦 活 炭 は 303 K、30 MPa に お い て 1.1 mass%の 最 大 水 素 吸 蔵 量 を 示 し た 。
今 回 合 成 し た 材 料 は BET 比 表 面 積 及 び ミ ク ロ 孔 容 積 に 対 し て ほ ぼ 比 例 し た 水 素
吸蔵能を示した。しかし同時に、水素吸蔵能はミクロ孔の細孔径にも影響され、
水 素 吸 蔵 に は 比 較 的 小 さ な 細 孔 径 が 好 ま し い こ と が 明 ら か に な っ た 。具 体 的 に は
室温付近の温和な温度条件における水素吸蔵において、ミクロ孔の細孔径は
0.9-1.3 nm が 適 し て い る と の 知 見 が 得 ら れ た 。
第 三 章 で は KOH 賦 活 も み 殻 炭 の 水 素 吸 蔵 に つ い て 述 べ る 。 さ ま ざ ま な KOH
賦 活 条 件 の も と 、も み 殻 か ら 合 成 し た KOH 賦 活 炭 素 材 料 の 水 素 貯 蔵 能 を 調 べ た 。
KOH 賦 活 も み 殻 炭 は 2052~2537 m 2 /g の BET 比 表 面 積 を 持 つ 。ミ ク ロ 孔 の 細 孔
径 が 0.9 nm で あ り 、KOH 賦 活 PAN 由 来 炭 に 比 べ ミ ク ロ 孔 容 積 当 た り の 水 素 吸
蔵 密 度 が 大 き い こ と が 明 ら か に な っ た 。 KOH 賦 活 も み 殻 炭 は 303 K、 27 MPa
に お い て 1.0 mass%の 最 大 水 素 吸 蔵 量 を 示 し た 。
第 四 章 で は Li ド ー プ し た KOH 賦 活 炭 の 構 造 と 化 学 的 物 性 に つ い て 述 べ る 。
第 二 章 、第 三 章 に て 示 し た KOH 賦 活 PAN 由 来 炭 、KOH 賦 活 も み 殻 炭 及 び KOH
賦 活 コ ー ク ス 由 来 炭 に Li を ド ー プ し た 。KOH 賦 活 炭 は そ の 表 面 に 含 酸 素 官 能 基
を 持 つ 。 最 初 に 、 官 能 基 と Li の 導 入 試 薬 と し て 使 用 し た LiOH( 水 酸 化 リ チ ウ
ム ) と の 反 応 を 調 べ る た め 元 素 分 析 を 行 っ た と こ ろ 、 Li は 多 孔 性 炭 素 材 表 面 上
に 存 在 す る 官 能 基 に 導 入 さ れ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 さ ら に 、 Li の 効 果
は 多 孔 性 炭 素 材 の 原 料 に よ っ て 異 な る こ と も 明 ら か に し た 。 こ れ は Li が 単 に 含
酸 素 官 能 基 と 反 応 す る の み な ら ず 、材 料 が 持 つ 細 孔 の 構 造 を 変 化 さ せ て い る た め
で あ る 。 具 体 的 に は Li が ミ ク ロ 孔 を 閉 塞 さ せ る 、 官 能 基 構 造 を 変 化 さ せ メ ソ 孔
( 細 孔 径 2〜 50 nm の 細 孔 )を 生 成 さ せ る 、な ど の 様 々 な 効 果 を 複 合 的 に 引 き 起
こしていると考えられる。
第 五 章 で は さ ま ざ ま な 種 類 の Li ド ー プ KOH 賦 活 炭 の 水 素 吸 蔵 能 に つ い て 述
べ る 。KOH 賦 活 コ ー ク ス 由 来 炭 の 場 合 、Li ド ー プ に よ っ て 303 K に お け る ミ ク
ロ 孔 容 積 あ た り の 水 素 吸 着 密 度 が 5.02 kg/m 3 か ら 5.86 kg/m 3 へ と 17%向 上 し た 。
こ れ は KOH 賦 活 コ ー ク ス 由 来 炭 の 場 合 、他 の 材 料 に 比 べ 細 孔 径 が 小 さ な 0.8 nm
以 下 で あ る た め 、 Li ド ー プ に よ る 水 素 吸 着 密 度 の 向 上 効 果 が 大 き い と い え る 。
Li ド ー プ に よ っ て 、水 素 吸 着 密 度 が KOH 賦 活 PAN 由 来 炭 で は 4.60 kg/m 3 か ら
4.83 kg/m 3 に 向 上 し 、 KOH 賦 活 も み 殻 炭 で は 5.12 kg/m 3 か ら 5.33 kg/m 3 へ と
向 上 し た 。こ の よ う に 、本 論 文 で 初 め て KOH 賦 活 炭 に お い て 、Li ド ー プ に よ り
ミクロ孔容積あたりの水素吸蔵量が向上することを実験的に確認した。
第 六 章 で は 本 論 文 の 結 論 を 述 べ る 。 本 論 文 に お い て 創 成 し た Li ド ー プ し た
KOH 賦 活 多 孔 性 炭 素 材 料 は 、 室 温 か つ 温 和 な 条 件 で 大 量 の 水 素 を 吸 蔵 す る 材 料
として、有望であることを明らかにした。
Hydrogen is being considered as a promising energy carrier for the future
and attracting much attention because it will contribute to energy source
diversification and energy savings. However, the svolumetric energy density
of hydrogen can be a big problem in the actual usage. These considerations
urge to develop technologies to store and transport hydrogen in a compact
manner. So far, there has been devoted much research effort to the
development of hydrogen storage materials. I focus on porous materials, such
as activated carbon materials. They are physisorption materials, having
heats of hydrogen adsorption of small values. It should be noted that, in the
case of activated carbons, the heat necessary in hydrogen desorption process
can be sufficiently provided from room temperature, and the heat generated
in adsorption process should be easily diffused, as well. Thus, the
physisorption
materials
enable
hydrogen
desorption
at
ambient
temperatures, and the storage systems should be simple.
The aim of this study was to develop carbon-based hydrogen storage
materials that are suitably applicable to hydrogen storage and
transportation systems. I especially focused on KOH(potassium hydroxide)
activated carbon materials that show physisorption properties in hydrogen
storage at around room temperatures and at hydrogen tank pressures. In the
KOH activated carbon structures, generally, micropores of under 2 nm
diameters are existing and suitable to adsorb and desorb hydrogen. Thus,
these KOH activated carbon materials adsorb and desorb hydrogen at
ambient conditions.
It was known that the heat of adsorption could be increased by doping
lithium atoms to some of physisorption materials. There have been some
suggestions by theoretical calculations that the hydrogen uptake capacity
will increase by lithium doping. But it has not yet been reported any
experimental results on the lithium doped activated carbons. Therefore, I
focused on the lithium doped KOH activated carbons because they are
expected to be ideal materials for industrial application .
Chapter 1 describes general description of this study.
Chapter 2 describes hydrogen storage of KOH activated carbons made from
PAN(Poly-acrylonitrile). The hydrogen storage capacity of activated carbon
species synthesized under various conditions of KOH activation trea tment
has been investigated. KOH activated carbons from PAN have 2625~3145
m 2 /g BET specific surface areas with the micropore diameter being 0.9-1.5
nm. The highest hydrogen adsorption capacity for a KOH activated carbon
from PAN fiber precursor is 1.1 mass% at 303 K/30 MPa. The synthesized
materials show hydrogen storage capacities that are proportional to their
BET specific surface areas and micropore volumes. At the same time,
hydrogen storage capacity is also affected by micropore size; smaller
micropores are preferable for hydrogen storage. The micropore sizes around
0.9-1.3 nm are more suitable for hydrogen storage at ambient temperatur es
such as room temperature.
Chapter 3 describes hydrogen storage of KOH activated carbons made from
rice husk. KOH activated carbons from rice husks have 2052~2537 m 2 /g BET
specific surface areas. KOH activated carbons from rice husk have 0.9 nm
micropore diameter, relatively high hydrogen storage density than KOH
activated carbon made from PAN in a micropore basis. The highest hydrogen
adsorption capacity for a KOH activated carbon from rice husk is 1.0 mass%
at 303 K/27 MPa.
Chapter 4 describes structural and chemical properties of KOH activated
carbons doped with lithium. Porous carbon materials show n in chapters 2
and 3 and KOH activated carbon made from coke are doped with lithium.
KOH activated carbon materials have oxygen -containing functional groups
on their surfaces. From elemental analysis, lithium atoms are doped to these
functional groups by the reaction with LiOH(lithium hydroxide). The effects
of lithium vary depending on the raw material s, because the lithium reagent
can react with the material s and alter the pore structures. It indicates that
lithium doping has the effect of plugging or filling the mic ropores and
changing the structures of functional groups, resulting in the formation of
mesopores(2-50 nm diameters).
Chapter 5 describes the hydrogen adsorption performance of several types
of lithium doped KOH activated carbons. In the case of activated carbon from
cokes, lithium doping improves their hydrogen adsorption affinity in a
micropore basis from 5.02 kg/m 3 to 5.86 kg/m 3 at 303 K. Hydrogen adsorption
density increases by around 17% after lithium doping, likely due to the fact
that lithium doping is more effective for materials with micropores of 0.8 nm
or smaller. The activated carbon from PAN, improved from 4.60 to 4.83 kg/m 3 .
Lithium improved the hydrogen adsorption affinity of the activated carbon
from rice husk from 5.12 kg/m 3 to 5.33 kg/m 3 . Lithium doping was found to
improve hydrogen adsorption affinity in a micropore volume basis
experimentally.
Chapter 6 describes conclusions. This thesis showed that the lithium doped
activated carbons are successfully applicable to hydrogen storage materials
used at ambient temperatures.