ダイヤモンドナノ粒子の 機能化とその応用 東京理科大学 理工学部 講師 工業化学科 近藤 剛史 1 ダイヤモンド ダイヤモンドの特性 - 物理的・化学的に極めて安定 生体親和性に優れる ワイドバンドギャップ (~5.5 eV) ドーピングによる導電性制御が可能 Fig. ダイヤモンドの結晶構造. ダイヤモンドの形態 - 粒状(天然・高圧合成) - 薄膜(化学気相成長) - ナノ粒子(爆轟法) ダイヤモンドの応用 工具 電子デバイス SAWデバイス ヒートシンク 超伝導 バイオセンサー 電気化学センサー 電解用電極 優れた基礎物性のため、幅広く機能性材料として応用可能 2 研究内容 1. ダイヤモンドナノ粒子の表面化学修飾 2. 導電性ダイヤモンドナノ粒子の作製 log (σ / S cm−1) -2 -3 -4 3桁以上増加 -5 -6 0 10 20 30 Treatment time / h 3. 多孔質ダイヤモンド球状粒子の作製と カラム充填剤への応用 4. 金属ナノ粒子内包多孔質ダイヤモンド 球状粒子の作製と不均一触媒への応用 3 表面修飾によるダイヤモンドナノ粒子の機能化 ダイヤモンド ・物理的・化学的安定性 ・高い機械的強度 ・高屈折率 ・生体適合性 ・・・優れた特性 ・表面は水素や酸素原子で終端化 ・・・官能基の導入が可能 ・ナノコンポジット ・光学材料 ・潤滑剤 ・DDS ・バイオイメージング ・・・ナノダイヤモンド (ND) に 修飾基を導入することで 機能性材料として応用 応用の幅を広げるために表面化学修飾法の開発が重要 末端アルケンを用いた熱的反応によるダイヤモンドナノ粒子の表面化学修飾 4 オクタデシル基修飾の評価 100 C-H 伸縮振動 95 90 Abs [-] 重量 [%] O-ND 85 分散なし C18-ND (18 h) 分散あり C18-ND (42 h) 80 75 測定条件 昇温速度:5 ℃/min 測定範囲:200 ℃-600 ℃ 雰囲気:大気 O-ND 70 分散なし C18-ND (18 h) 分散あり C18-ND (42 h) 3400 2400 1400 65 400 200 Wavenumber [cm-1] 図 1 O-ND, C18ND (42 h) の IR スペクトル 300 分散なし C18-ND に比べて分散あり C18-ND では ・C-H 伸縮振動のピーク強度が増加 ・重量減少率が増加 500 600 温度 [℃] 図 2 O-ND, C18ND (42 h) の TGA 曲線 ・2800–2900 cm-1 の CH2,CH3 基による C-H 伸縮振動のピーク ・オクタデシル基の熱分解による 200–470 ℃ の重量減少 400 アルキル鎖の導入 ビーズミルにより修飾量が増加 5 溶媒への分散性評価 水 0.6 0.4 42.2 nm (4 %) 0.2 数平均分布 [-] 数平均分布 [-] 11.8 nm (96 %) 0.8 0 10 100 1 2-プロパノール 0.8 0.6 20.9 nm 0.4 0.2 数平均分布 [-] 1 1 0.6 743.6 nm 0.4 0.2 0 0 1000 クロロホルム 0.8 10 100 10 1000 粒子径 [nm] 粒子径 [nm] 100 1000 粒子径 [nm] 図 7 O-ND の DLS 測定結果 1 0.6 551.9 nm 0.4 0.2 0 1 2-プロパノール 0.8 数平均分布 [-] 水 0.8 数平均分布 [-] 数平均分布 [-] 1 0.6 83.4 nm 0.4 0.2 100 粒子径 [nm] 1000 0.6 0.4 81.7 nm (8 %) 0.2 0 0 10 20.8 nm クロロホルム (92 %) 0.8 10 100 粒子径 [nm] 1000 10 100 1000 粒子径 [nm] 図 8 分散あり C18-ND の DLS 測定結果 0.75 wt% 分散液調製 超音波処理 3 h DLS 測定 ・O-ND と C18-ND を比較すると、アルキル鎖の導入により 水への分散性は減少、疎水性のクロロホルムへの分散性が向上 ・C18-ND はクロロホルム中で均一に分散 6 導電性ダイヤモンドナノ粒子 期待される用途・・・化学的安定性に優れた導電材料/電極材料 ◆ 電気化学キャパシタ用電極材料(広い電位窓による高エネルギー密度化) ◆ 燃料電池触媒担体(優れた耐腐食性により劣化を抑制) ◆ 微小電極・センサー(ナノサイズの電極) ◆ 導電性フィラー(優れた化学的耐性) BDNDの作製 水素雰囲気中で加熱 (ND中にホウ素原子が拡散) ナノダイヤモンド(ND)/ ホウ素粉末混合物 ボロンドープND(BDND)/ ホウ素粉末混合物 酸処理によるホウ素 の除去および洗浄 BDNDを回収 7 導電率の向上 導電率 (S/cm) の対数 導電率 (S/cm) の対数 -2 -3 -4 900℃ 1000℃ -5 -6 0 5 10 15 20 25 時間(h) (h) 時間 加熱時間に対するBDNDの導電率の関係 900℃のサンプルは加熱時間が6時間以降から、1000℃のサンプルは加熱時間が 4時間以降から導電率の増加がみられ、加熱時間を増加させる程導電率が向上した 8 多孔質ダイヤモンド球状粒子 ●多孔質ダイヤモンド球状粒子(PDSP) ダイヤモンドナノ粒子 (DNP) 物理的・化学的安定性、生体親和性に優れる ダイヤモンドを素材とする多孔質材料として、 新規に多孔質ダイヤモンド球状粒子(PDSP) を開発した 化学的に極めて安定な多孔質材料として、 触媒・物質分離・イオン交換・吸着・ ドラッグデリバリー等へ汎用的に応用可能 ●HPLCカラム充填剤への応用 メソ孔 シリカゲル: 理論段数・耐圧性に優れ、安価であることから 広く利用されているが、アルカリ溶離液に溶解 しやすいため、使用できるpH範囲が限られる 有機ポリマー: 幅広いpH範囲で利用できるが、溶媒の種類に よっては膨潤し、機械的強度が劣化する 数マイクロメートル Fig. 多孔質ダイヤモンド球状粒子(PDSP). オクタデシル基修飾PDSP(C18-PDSP)を作製し、化学的に安定なHPLC用カラム充填剤 としての応用を検討した 9 dV/dD / cm3 nm−1 g−1 1次粒子径による細孔特性の制御 MD-20 (dave= 24 nm) CVD diamond ND (20–50 nm) MD-30 (dave= 35 nm) MD-50 (dave= 52 nm) pore (4-9 nm) Pore diameter / nm PDSP Fig. 異なる1次粒子径のダイヤモンドナノ粒子を用い たPDSPの細孔径分布 ND Particle size / nm BET surface area / m2 g−1 Total pore volume / cc g−1 Average pore diameter / nm 4.8±0.7 292 0.610 8.4 MD-20 24±6 188 0.202 4.3 MD-30 35±9 137 0.196 5.7 MD-50 52±12 81 0.190 9.4 NanoAmando 10 C18-PDSPのHPLCカラム充填剤への応用 C18-PDSP充填カラムにより分離 n-alkylbenzenes Intensity / Arb. units C2 C3 C4 C 5 0 a 10 C6 20 Time / min 30 methyl benzoate Intensity / Arb. units HPLC chart uracil b toluene naphthalene 0 10 20 30 Time / min 40 50 60 Fig. C18-PDSP充填カラムを利用したHPLCによる物質分離.(a) n-アルキルベンゼン類, (b) ウラシル・ 安息香酸メチル・トルエン・ナフタレン.移動相:水/アセトニトリル(グラジエント)、 流量: 0.1 mL min−1、温度: 40 °C、検出波長: 254 nm. C18-PDSPは、HPLC用逆相カラム充填剤として利用できることがわかった 11 金属ナノ粒子内包PDSP Diamond nanoparticle Pt nanoparticle ・PtNPを3次元的に、物理的に固定 ・PDSPのメソ孔を介して、分子のアクセスが可能 ・耐熱性・耐薬品性に優れた担体 ・反応系からの分離・回収が容易 PtNP@PDSP 本研究の内容 ・PtNP@PDSPの作製(粒子径制御・さまざまな白金含有量) ・PtNPの分散担持の確認 ・シクロヘキサン脱水素反応をモデル反応とする触媒活性評価 12 PtNP@PDSPのSTEM像 10 nm 100 nm Fig. STEM images of PtNP (1 wt%)@O-PDSP 400 °C以上の熱処理後でもPtNPの凝集・融合は見られず、 分散担持が維持された 13 PtNP@PDSPの触媒活性評価 Table. PtNP@PDSP と PtNP 担持カーボン (Vulcan XC-72) のシクロヘキサン脱水素反応における比較 白金含有量 触媒量 平均粒子径 ベンゼン生成量 単位重量あたりの (wt.%) (mg) (μ m) (mmol/L) ベンゼン生成量 (mol/L・g) ブランク 0 PtNP@PDSP 1.0 100 5 45 0.45 PtNP@PDSP (再使用) 1.0 85 5 40 0.47 PtNP@PDSP 3.0 100 5 115 PtNP@PDSP 1.0 100 1 44 PtNP担持カーボン 10 10 29 サンプル ・PtNP@PDSP は、繰り返し利用が可能であることが示唆された ・反応物が PtNP@PDSP のメソ孔を介して効率的に PtNP に到達できる PtNP@PDSP PtNP 担持カーボン メソ孔 (約 10 nm) ミクロ孔 (約 1 nm) PtNP : 活性サイト 14 新技術の特徴・従来技術との比較 ダイヤモンドナノ粒子の表面化学修飾 • 有機溶媒中に良好に分散する粒子を開発した 導電性ダイヤモンドナノ粒子 • ダイヤモンドナノ粒子の導電率を3桁向上させた ダイヤモンドカラム充填剤 • 耐アルカリ性に優れたカラム充填剤を開発した 15 想定される用途 ダイヤモンドナノ粒子の表面化学修飾 • ポリマーとの複合化によるナノコンポジット 導電性ダイヤモンドナノ粒子 • 耐腐食性に優れた導電粉体、電極材料 ダイヤモンドカラム充填剤 • アルカリ溶離液を用いたHPLC分離分析 金属ナノ粒子内包多孔質ダイヤモンド粒子 • 容易な回収、繰り返し耐久性、化学的安定性に優 れた不均一触媒 16 実用化に向けた課題 ダイヤモンドナノ粒子の表面化学修飾 • 修飾量の向上、評価法の確立 導電性ダイヤモンドナノ粒子 • さらなる導電性の向上 ダイヤモンドカラム充填剤/金属ナノ粒子内包多孔 質ダイヤモンド粒子 • 粒子サイズの制御、表面修飾法の確立 17 企業への期待 • ダイヤモンドを素材として利用することにより、 問題解決や飛躍的な性能の向上が見込まれる研究 テーマの提案・共同研究 18 本技術に関する知的財産権 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: 球状多孔質ダイヤモンド粒子及びその製造方法 特開2012-121790 学校法人東京理科大学 近藤 剛史・湯浅 真・河合 武司・小林 茉莉・亀島 貴・門田 靖彦 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: ボロンドープダイヤモンドナノ粒子の製造方法 特願2014-052173 学校法人東京理科大学 近藤 剛史・湯浅 真・浦井 純一・岡田 成美 発明の名称: 出願番号: 出願人: 発明者: ダイヤモンド含有コアシェル粒子及びその製造方法 特願2014-175326 学校法人東京理科大学 近藤 剛史・相川 達男・湯浅 真・齋藤 徹 など 19 お問い合わせ先 東京理科大学 研究戦略・産学連携センター コーディネーター 牛窪 孝 TEL 03-5876 - 1534 FAX 03-5876 - 1676 e-mail [email protected] 20
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