特集 5 ぼーっとしている?反応が鈍い! 循環器病棟の急変予測シミュレーション 5 洞(房)結節枝(SN) 右冠動脈(RCA) 左冠動脈主幹部 11 鈍角(縁)枝(OM) 13 6 円錐枝(CB) 左回旋枝 左冠動脈(LCA) 左回旋枝(LCX) 1 12 前右室枝(RVB) 7 第一対角枝(D1) 左前下行枝(LAD) 9 15 2 後側壁枝(PL) 10 第二対角枝(D2) 中隔穿通枝(SEP) 右冠動脈 房室結節枝(AVN) 14 鋭角(縁)枝(AM) 3 8 図1 冠動脈の解剖 右冠動脈 (RCA) 洞結節 プルキンエ線維 房室結節 刺激伝導系 房室結節 左脚 支配冠動脈 右冠動脈(房室結節枝) 左前下行枝(第 1 中隔枝) 右脚および左脚前半部 左前下行枝 左脚後半部 左前下行枝+右冠動脈(後下 行枝)の中隔枝 ヒス束 右脚 弁膜症 弁膜症として,大動脈弁狭窄症,僧帽弁狭窄症な 1 刺激伝導系と支配されている 冠動脈( 図 2 ) どが挙げられます。これらは,左心系の閉塞に伴 高くなり,運動時や労作時に症状を認めます。症 40 ・ 2015/1 Vol.5 No.1 中隔 後1/3 下壁 左室 後壁 側壁 左回旋枝 (LCX) 冠動脈の走行と灌流領域 状が出現した場合の予後は不良です。本疾患は, の障害が強いと,左室から十分な血液が送り出さ 運動中に末梢血管抵抗が低下するにもかかわら れなくなるため,動悸(不整脈),息切れ,起座 ず,大動脈弁狭窄により心拍出量は増加せず,血 呼吸,浮腫などの症状とともに,頭がぼーっとす 圧低下を生じます。とくに,頻脈性の心房細動を ると訴えることがあります。 症状が現れますが,原因としては左房内の巨大血 心臓を拍動させるための興奮の流れを「刺激伝導系」と呼 びます。心臓の電気刺激は洞結節で発生し,心房を収縮さ せ,房室結節→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維へと 伝わっていき,心室の収縮を起こします。 ぼーっとする,反応が鈍いという症状をきたす 脈弁狭窄症では,重症化すると症状の出現頻度が 左冠動脈 (LCA) 後乳頭筋 やすくなります。僧帽弁狭窄症の場合は,まれに メモ すことにより,症状が発生します。とくに,大動 図3 左前下行枝 (LAD) 合併する症例は血圧低下が著しく,症状を起こし 刺激伝導系と支配されている冠動脈 い急激に心拍出量が減少し,脳血流の低下をきた 中隔 前壁 右室 前2/3 前乳頭筋 右冠動脈(房室結節枝) ヒス束・脚中枢側 図2 後下行枝(PD) 4 左前下行枝 メモ 2 動脈の走行と灌流領域( 図3 ) 冠動脈の走行・灌流領域は,狭窄・閉塞の際に虚血をきた す範囲を考えるうえで重要です。 不整脈 栓による僧帽弁閉塞や,僧帽弁狭窄そのものによ 不整脈が発生する原因は,冠動脈疾患,心臓弁 る閉塞,頻脈性心房細動による心拍出量の低下が 膜症,心不全,先天性心疾患など心臓に起因する 考えられます。僧帽弁閉鎖不全による症状の出現 疾患による刺激伝導系の異常です。また,自律神 は頻度が少なく,本疾患の重症化や心不全増悪に 経の異常な興奮によっても不整脈が起こります。 伴う心室性不整脈が原因となります。 不整脈は,徐脈性不整脈と頻脈性不整脈の 2 つ また,心不全は虚血性心疾患,弁膜症や先天性 に大きく分かれ,まれに電解質異常による不整脈 心疾患などが原因で心筋が急性,または慢性に障 もみられます( 害され,心臓本来のポンプ機能が発揮できなくな くなる不整脈で,通常は 1 分間の心拍数が 60 回 ることで起こります。とくに,左室のポンプ機能 未満になるものをいいます。心拍数が少ないため, 表2 )。徐脈性不整脈は,脈が遅 2015/1 Vol.5 No.1 ・ 41
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