高性能ナトリウムイオン蓄電池の 新技術 東京理科大学 理学部第一部 応用化学科 教授 駒場 慎一 1 研究背景 多様化する発電 ~ 火力、原子力、太陽光、風力 特に、自然エネルギーの発電は不安定 2013年度に急増の太陽電池設置が、電力系統に悪影響 “いかに効率的にエネルギーを利用するのか?” 電気エネルギーを蓄える (蓄電技術)、 そして、効率的に使うための “二次電池” 2 市販二次電池の蓄電エネルギー比較 希少資源不使用 毒性なし レアメタル リチウム、コバルト ナトリウムイオン レアメタル ニッケル、ランタン 毒性(イタイイタイ病) カドミウム 毒性、劇物 鉛、硫酸 3 リチウムイオン電池~動作原理図 黒鉛 Si, Sn Co, Ni, Mn, Fe リチウムイオンと電子の移動により充放電が行われる。 動作電圧が高く(約4V)、エネルギー密度が高い 4 拡大を続けるリチウム電池の市場 • ビデオカメラ用の電源として1991年にSONYから発売 18650-type; 900 mAh • その後、20年間に渡りエネルギー密度が向上 Panasonic Samsung LG Sony etc. 18650-type; 2,200 – 3,000 mAh (1.7 – 2.5 $ / 電池) • 全世界の生産量 30億個/年 市場規模, >1 兆円/年 そして、今後さらなる市場拡大が期待される。 5 リチウムとナトリウムの比較 3 Li Lithium 6.941 11 リチウム • Li電池の普及とともに資源価格が高騰 (1990年以来、100%上昇) • 地殻中に0.002 % (20ppm) 、レアメタルの一つ • 資源は南アメリカに偏在、我が国は全量を輸入に依存 ナトリウム Na • 資源量は無尽蔵 (海水中、地殻の2-3%) Sodium 22.98976 • 低コスト Naイオン二次電池の開発 6 世界初の実証: 新型ナトリウムイオン電池 Na+の脱挿入反応で充電・放電 3ボルト級電池 優れた入出力 過去に成功例のない新型3ボルト級電池の成果を基に, 電極活物質,電解液,バインダーに使う新材料を次々と開発 7 ナトリウムイオン電池に関する論文数 8 ナトリウム電池の構成要素 電池は複合化学製品 化学・材料メーカーの参入 ・正極: 遷移金属酸化物、セラミックス材料 (NaFe0.5Mn0.5O2など) ・負極: 炭素材料、Ti酸化物など (ハードカーボン など) ・電解液 : 有機溶媒、イオン液体 (PC, EC:DEC など) ・電解質: 無機塩 (NaPF6, NaTFSA) ・バインダー、セパレーター:高分子材料 ・集電体、外装:金属箔、液漏れ防止など、封止技術 Naイオン電池の実現 9 地殻中の元素の存在量 *CRC Practical Handbook of Physical Properties of Rocks and Minerals, CRC Press, Boca Raton, FL, (1989). **S.R. Taylor, S.M. McLennan, The continental crust: Its composition and evolution, Blackwell Sci. Publ., Oxford, 330 pp. (1985). 10 電極材料 + 構成部材 の双方でコスト低減 11 負極材料の探索: 黒鉛 vs. ハードカーボン 可逆容量の維持率 初回充放電曲線 Voltage / V graphite 1.5 hard carbon decomposition of electrolyte 1.0 0.5 Capacity / mAh g-1 300 2.0 250 hard carbon 200 150 100 graphite 50 0 0.0 0 100 200 300 Capacity / mAh g -1 0 400 10 20 30 Cycle number 40 50 After 5 cycles 1 M NaClO4 EC:DMC 黒鉛 不活性 ハードカーボン 高活性 : 220 mAh g-1 しかし、電極特性はサイクルとともに低下 12 Naイオン電池用電解液の最適化 PC and EC:DEC が最も優れた特性を示す (ビーカーセルでの評価) PC 250 200 EC:DEC -1 Q / mAh g 炭酸ジメチル (DMC) 150 EC:EMC 炭酸エチレン 炭酸プロピレン (EC) (PC) EC:DMC PC After 5th cycle After 5th cycle 100 50 EC:DMC 0 0 20 40 60 80 100 120 Cycle number / - 100 サイクル後でも容量劣化はほとんどない サイクル特性は電解液の安定性 に大きく依存 PC, EC > DMC 13 電解液: 添加剤と電解質 300 By FEC + NaPF6 Q / mAh g -1 250 NaPF6 PC+FEC NaPF6 EC:PC+FEC 200 150 NaPF6 EC:PC NaClO4 PC+FEC 100 NaPF6 PC 50 0 By FEC NaClO4 PC Na/HC (with PVdF) coin-cells 0 20 40 60 80 By NaPF6 100 Cycle number / - FEC Komaba et al., ACS Appl. Mater. Interfaces, 3, 4165 (2011). Mouad, Komaba, et al., Electrochem. Commun., in press (2014). 11 負極にはバインダーも重要 300 PANa Excellent stability by PANa and CMC Q / mAh g -1 250 CMC 200 CH2OR H O H OR O H H H 150 OR n PVDF 100 50 0 Na / 1 M NaPF6 PC / HC cell 0 20 40 60 Cycle number / - 80 Mouad, Nakano, Komaba et al., Electrochem. Commun. in press (2014) 100 正極材料(遷移金属酸化物)のコスト From U.S. Geological Survey 50 London Metal Exchange (ロンドン金属取引所) Co Ti, Cr, Fe, Mn (Ores) 8000 Ni Cu 6000 V Al 20 4000 JPY / kg USD / lbs. 40 30 10000 10 2000 0 0 2005 2006 2007 2008 小型Li電池の主流Coは利用不可能 レアメタルフリーな材料の探索 2009 2010 CoをNiに代替: コスト半減 CoをMn、Feに代替: コスト1/10以下 16 新規P2型正極材料 17 新規正極材料: 超高速充放電 18 18 Naイオン電池の特徴・従来型Li電池との比較 Liイオン電池 Naイオン電池 正極(mAh/g) 140 > 150 負極 (mAh/g) 360 250 - 300 平均動作電圧 (V) 3.7 V 3 – 3.5 V 現状、エネルギー密度はLiに劣るが、性能は進化を続けている。 Co, Ni, Cuを必要としないレアメタルフリー構成を実現可能 大型電池の利用を想定 (定置用、EV用などスマートグリットシステムの根幹技術となる可能性) 19 Naイオン電池の特徴・従来型大型電池との比較 動作電圧 (V) Pb電池 Ni-MH電池 Naイオン 電池 2.0 V 1.2 V 3.0 V 理論エネルギー 密度 (Wh/kg) 167 200 340 (現行型) 600 (次世代) 動作温度 室温 室温 室温 安全性、毒性 有毒 安全性は 実績有り 安全性は現状では疑問 有り ただし、改善の余地有り コスト ◎ △ ◎ 20 3種のNa電池の特徴・比較 動作電圧 (V) NaS電池 イオン液体 Na電池* Naイオン 電池 2.0 V 3.0 V ? 3.0 V 理論エネルギー 密度 (Wh/kg) 750 --- 340 (現行型) 600 (次世代) 動作温度 300 ℃ 70 - 80℃ 室温 安全性、毒性 安全性疑問 FSAベース 安全? 毒性? 安全性現状では疑 問あり ただし、改善の余地 有り コスト ? ? ◎ *住友電工と京都大学による 21 実用化に向けた課題 • 現在、各種材料の評価を進めており、小型の Naイオン二次電池の動作は実証済。 • エネルギー密度をLIB並みに高める新材料、 その安全性の評価を進めることが課題 • Naイオン二次電池として、早期の実用化 に向けた研究開発を推進して頂ける企業 が必要 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 国際公開番号 国際出願番号 • 発明の名称 : : : : ナトリウムイオン二次電池 WO/2010/109889 PCT/JP2010/002149 国際公開番号 国際出願番号 • 発明の名称 : WO/2012/060295 : PCT/JP2011/074950 : 複合金属酸化物、Na二次電池用正極活物質、 複合金属酸化物、当該複合金属酸化物の製造 方法、Na二次電池用正極活物質、 Na二次電池用正極、及びNa二次電池 Na二次電池用正極、及びNa二次電池 公開番号 出願人 : 2012-072126 : 学校法人東京理科大学 23 本技術に関する問い合わせ先 東京理科大学 研究戦略・産学連携センター 角田勝則(つのだ かつのり) [email protected] 24
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