中間テスト対策問題

テスト対策プリント 安部哲哉 11 月 14 日
1. 行列の基本的な性質
以下で、行列の性質をいくつか紹介します。(どれも計算するだけですが、
重要なものばかりです。最初はこのセクションをスキップしても構いません。
後で必要になってから、解くと勉強になると思います。)
[ ]
[ ]
a1
b
a=
, b = 1 に対して
a2
b2
[[ ] [ ]]
[
]
[
]
a1
b1
a1 b1
a, b =
,
:=
a2
b2
a2 b2
と定義します1。このように表記すると、ある種の計算が直感的にできます。
[ ]
[ ]
a1
b
問 1.1. a =
, b = 1 に対して
a2
b2
[ ]
[
] x
a, b
= xa + yb
y
となることを計算して確認せよ。
問 1.2. 2次行列 A に対して、次が成り立つことを確認せよ。
[
] [ [ ]
[ ]]
v1 w1
v1
w
A
= A
,A 1
v2 w2
v2
w2
となることを計算して確認せよ。
[
]
v1 w1
ヒント: A
と置いて、具体的に計算せよ。
v2 w2
以後、t M で行列 M を転置した行列を表します。
]
a 1 b1
に対して、次を示せ。
問 1.3. 二次行列 A =
a 2 b2
[ ]
[ ]
[ ]
x
t
t x t
(A
)=
A (= x y t A)
y
y
[ ]
[ ]
x
x t
ヒント: t (A
) とt
A を計算して比べよ。
y
y
[
12次行列を2次元ベクトルを二つ並べたものと思う、ということ。
1
2
[
]
[ ]
[ ]
a 1 b1
a1
b
問 1.4. 二次行列 A =
に対して、a =
, b = 1 と置く。
a 2 b2
a2
b2
(1) 次を示せ。
[ 2
] [
]
a1 + a22
a1 b1 + a2 b2
⟨a, a⟩ ⟨a, b⟩
t
AA =
=
b1 a1 + b2 a2
b21 + b22
⟨b, a⟩ ⟨b, b⟩
ただし ⟨a, b⟩ は a と b の内積を表すとする2。
(2) 次は同値となることを確認せよ。
[
]
1 0
t
(i) AA =
となる。
0 1
(ii) ⟨a, a⟩ = 1, ⟨b, a⟩ = ⟨a, b⟩ = 0, ⟨b, b⟩ = 1 となる。
2. 行列式の計算
3 × 3 行列の計算の仕方を説明します。基本的には、サラスの公式を使えば
いいのですが、多くの場合は、もっと楽に計算できます。その方法を紹介しま
す。


 
 
a1 b1 c1
a1
b1





3 次行列 a2 b2 c2 の行列式とは、3 つのベクトル a = a2 , b = b2 ,
a3 b3 c2
a3
b3
 
c1

c = c2  がなす平行六面体の符号付き体積のことでした。実際に行列式の値
cn
を求めるときは、対応する体積を求めることは大変なので、(行列式の定義か
ら導かれる)サラスの公式を使って行列式を求めるのでした。
前期の授業では、行列式の性質を十分には説明しませんでした。ここでは、
行列式の 3 つの性質を(改めて)紹介します。
性質1:行列式で一つの列(または行)を α 倍すると、行列式は α 倍される。
 
 
 
c1
b1
a1





たとえば、3 つのベクトル a = a2 , b = b2 , c = c2  に対して、
cn
b3
a3
det[αa, b, c] = α det[a, b, c]
det[a, αb, c] = α det[a, b, c]
det[a, b, αc] = α det[a, b, c]
2人によって記号が違います。(a, b)
や a · b と書く人もいます。
3
となる。
性質 2:二つの列(または行)を入れ替えると符号が変わる。
 
 
 
a1
b1
c1





例えば、3 つのベクトル a = a2 , b = b2 , c = c2  に対して、
a3
b3
cn
det[a, b, c] = − det[b, a, c]
性質 3:行列式で、1つの列(または行)に α 倍を他の列(または行)に加え
ても行列式の値は変わらない。
 
 
 
a1
b1
c1
例えば、3 つのベクトル a = a2 , b = b2 , c =  c2  に対して、
a3
b3
cn
det[a, b, c] = det[a, b, c + αb]
(2列目を α 倍して、3 列目に足した。)
計算例: 

1 2 5
3 次行列 2 5 14 の行列式は −3. サラスの公式から求めてもいいが、次
3 8 20
のように計算してもよい。






[
]
1 2 5
1 2 5
1 2 5
1
4
det 2 5 14 = det 0 1 4  = det 0 1 4 = det
= 5−8 = −3.
2 5
3 8 20
3 8 20
0 2 5
3 つ目の等号は、余因子展開を用いた。(サラスの公式からも従う)
3. 固有値と固有ベクトル
3
n 次行列
λ(実数または複素数)と、あるベクト
 
 A に対して、あるスカラー
0
v1
 v2  0
  
ルv = 
 ...  ̸=  ...  が存在して
vn
0
Av = λv
3n × n 行列のこと。
4
となるとき、λ を A の固有値といい v を固有値 λ に対する固有ベクトルと
言います。n 次行列 A の固有多項式とは n 次多項式
fA (x) = det(xIn − A)
のことです。ここで In は n 次の単位行列を表します。
次の定理は重要です。(n = 2 の場合に限定して)証明までちゃんと理解す
ることが望まれます。
定理 3.1. n 次行列 A に対して次は同値。
(1) λ が A の固有値となる。
(2) λ が A の固有多項式 fA (x) の解となる。
次の定理は n 次多項式に関する基本的な結果を述べたものです。(証明は難
しいので、ここでは省略します。)
定理 3.2 (代数学の基本定理). n 次多項式
an xn + an−1 xn−1 + · · · + a0 = 0
は(複素数の範囲まで考えて、重解は重複度を込めて数えると)n 個の解
を持つ。ただし an ̸= 0 とする。
系 3.3. n 次行列 A に対して、A の相異なる固有値を λ1 , λ2 , · · · , λl とお
くと、A の固有多項式は
fA (x) = (x − λ1 )n1 (x − λ2 )n2 · · · (x − λl )nl
と書ける。ただし ni (i = 1, 2, · · · , l) は、n = n1 + n2 + · · · nl となる自然
数である。(ni は固有値 λi の重複度と呼ばれる。)
系 3.4. n 次行列 A に対して、A の相異なる固有値は n 個以下である。
3.1. n = 2 の場合.
[
]
a c
例 3.5. 二次行列 B =
の固有多項式は(定義から)
b d
[
]
x − a −c
fB (x) = det(xI2 − B) =
−b x − d
となります。
5
]
a c
の固有多項式は
問 3.6. 二次行列 B =
b d
[
fB (x) = x2 − (a + d)x + ad − bc
となることを証明せよ。
✓
訂正情報
✏
最初のバージョンでは
fB (x) = x2 − (a + d)x + ad − bd
と書いていましたが誤りです。正しくは、
fB (x) = x2 − (a + d)x + ad − bc
です。
✒
✑
[
]
2 1
問 3.7. 二次行列 A =
の固有値と固有ベクトルを求めよ。
5 −2
[
]
2 −2
問 3.8. 二次行列 C =
の固有値を求めよ。
2 2
✓
上の問題の意図
固有値は複素数になることがある。
✒
✓
上の問題の補足
この場合、(複素数まで考慮すると)固有ベクトルを考えることができる
が、この授業ではこれ以上は考察しない。
✒
問 ]3.9.
B の固有値が 1 と 2 で、対応する固有ベクトルがそれぞれ
[
[ 二次行列
]
2
−1
,
であったとする。このとき行列 B を求めよ。
3
2
✏
✑
✏
✑
6
3.2. n = 3 の場合.


3 1 1
問 3.10. (重要)二次行列 A =  1 2 1 の固有値と固有ベクトルを求
−1 0 1
めよ。


1 0 1
問 3.11. (重要)二次行列 B = 2 3 2 の固有値と固有ベクトルを求めよ。
1 0 1
4. 対角化
以後、(簡単のため)2次行列のみを考える。
定理 4.1. A を 2 次行列とする。A が相異なる固有値 λ1 , λ2 を持つとき、
A は対角化可能である。
[
]
4 −1
問 4.2. 二次行列 A =
を対角化せよ。
−3 2
[
]
2 1
問 4.3. 二次行列 B =
に対して、B n を求めよ。また、得られた結果に
1 2
n = 1 と n = 2 を代入して、検算せよ。(各自が計算した結果が正しい、と確
信を持つこと)
(某学生からの)質問. 行列 A が対角化可能であるとき、得られた対角行列は
一意的に決まりますか?
答え. 非常に良い質問です。(厳密に言うと)決まりません。
これを説明する前に、行列を対角化する議論を復習しましょう。まず
[ ] ( [ ]) A を
v
0
2 次行列として、λ1 , λ2 を相異なる固有値とします。また 1 ̸=
を λ1
v2
0
[ ] ( [ ])
0
w
̸=
を λ2 に対する固有ベクトルとします。
に対する固有ベクトル、 1
w2
0
7
固有ベクトルの定義から
[ ]
[ ]( [
])
v1
v1
λ 1 v1
A
= λ1
=
v2
v2
λ 1 v2
[
[ ]( [
]
])
w1
w1
λ2 w 1
A
= λ1
=
w2
w2
λ2 w 2
となります。このとき、次が成り立ちます。
[
[ ]] [
] [ [ ]
] [
][
]
v1 w 1
v1
w1
λ 1 v1 λ 2 w 1
v1 w 1 λ 1 0
A
= A
,A
=
=
v2 w 2
v2
w2
λ 1 v2 λ 2 w 2
v2 w 2
0 λ2
一つ目の等号に関しては、後で説明します。大切なのは最後の等号です。
(3
つの行列を4つ目の行列の積に変形できることを見抜くことは難しいですが、
4つ目の行列の積が3つの行列になることは計算すると、すぐにわかります。
)
[
]
v1 w 1
以前(前期)にやったことから、この場合は P =
は正則行列とな
v2 w 2
るので、
[
]
λ1 0
−1
P AP =
0 λ2
となり行列 A を対角化できました。
この議論は必ずマスターして下さい。
さて、今度は次を考えます。
] [ [ ]
[ ]] [
] [
][
]
w 1 v1
w1
v1
λ2 w1 λ1 v1
w 1 v1 λ 2 0
A
= A
,A
=
=
w 2 v2
w2
v2
λ2 w2 λ1 v2
w 2 v2
0 λ1
[
]
w 1 v1
は正則行列となるので、
以前やったことから、この場合も Q =
w 2 v2
[
[
λ 0
Q AQ = 2
0 λ1
−1
となり行列 A を対角化できました。
]
8
✓
✏
まとめ
A を 2 次行列が相異なる固有値 λ1 , λ2 を持つとき、対角化の結果は二通り
ある。P , Q を上で述べた行列とすると
[
]
λ1 0
−1
P AP =
,
0 λ2
[
]
λ2 0
−1
Q AQ =
.
0 λ1
固有値の順番を無視すると、対角化で得られた行列は一意的に定まる。
✒
定理 4.4. A を 2 次行列とする。A が固有値を一つしか持たないとする。
その固有値を λ とおく。このとき、次が成り立つ。
(1) λ に対する固有ベクトル v1 , v2 で一次独立なものが存在するならば、
A は対角化可能。
(2) λ に対する固有ベクトル達は、すべて一次従属だとする。このとき、
A は対角化可能ではない。
[
]
2 0
例 4.5. 二次行列 B =
の固有多項式は
0 2
fB (x) = (x − 2)2
となります。特に固有値は
[ ]
[ ]2 のみです。固有値は 2 の固有ベクトルとして、例
1
0
えば、v1 =
と v2 =
がとれます。ベクトル v1 と v2 は(明らかに)一
0
1
次独立なので、従って、定理 5.2 より、行列 B は対角化できます。(この場合
は、B はもともと対角行列なので、対角化する必要はありません。形式的にい
[
]
1 0
うと、正則行列 P =
に対して
0 1
[
]
2 0
−1
P BP =
0 2
となるので B は対角化可能です。)
[
]
2 1
問 4.6. 定理 5.2 を用いて、二次行列 A =
が対角化可能ではないこと
0 2
を証明せよ。
✑
9
5. 回転行列
行列
[
cos θ − sin θ
Rθ =
sin θ cos θ
]
を回転行列と言います(θ はある実数)。
5.1. 回転行列の幾何学的な性質. Rθ が回転行列と呼ばれる理由は、次の定理
が成り立つからです。 絵を描く
[ ]
[ ]
x
x
定理 5.1. (与えられた)平面ベクトル
に対して、Rθ
は平面ベ
y
y
[ ]
x
クトル
を原点を中心として θ 回転させた平面ベクトルを表す。
y
証明. 複素数を用いた証明を授業で説明しました。
□
5.2. 回転行列の代数的な性質.
定理 5.2. 次が成り立つ。
(1) det Rθ = 1,
[
]
1 0
t
(2) Rθ Rθ =
.
0 1
□
証明. チェックするだけ。
✓
(2) の言い換え
✏
Rθ の逆行列が t Rθ になる、と言ってもよいです。詳しくは、プリントの最
後で解説します。Rθ の逆行列が t Rθ になる、という視点は今後、
使いません。
✒
問 5.3. 二次行列 A =
[
]
2 3
に対して、
1 2
[
]
1 0
t
AA ̸=
0 1
となることを(具体的に計算することで)証明せよ。
✑
10
✓
✏
上の問題の意図
多くの行列 A に対して
[
]
1 0
AA =
0 1
とはならない。この等号が成り立つのは非常に珍しい。(逆に言うと、珍
しい行列には、良い性質が成り立つことが期待できる。)
t
✒
定理 5.4. 二次行列 A が次を満たすとする。
(1) det A = 1,
[
]
1 0
t
(2) AA =
0 1
このとき、A は回転行列となる。
[
]
[
]
a 1 b1
1 0
t
証明(飛ばしてもよい):まず A =
と置きます。すると AA =
a 2 b2
0 1
であることから
(1)
a21 + a22 = 1,
a1 b1 + a2 b2 = 0,
b21 + b22 = 1
が得られます。さらに det A = 1 という仮定から
a1 b2 − a2 b1 = 1
(2)
が得られます。以下では
a1 b1 + a2 b2 = 0,
a1 b2 − a2 b1 = 1
に着目します。一つ目の式の両辺を b1 倍、二つ目の両辺を b2 倍することにより
a1 b21 + a2 b1 b2 = 0,
a1 b22 − a2 b1 b2 = b2
が得られます。二つの式から
(3)
a1 (b21 + b22 ) = b2
が得られます。ここで等式 (1) の 3 番目の式を使うことにより、a1 = b2 が得ら
れます。同様の議論から b1 = −a2 も得られます。
演習:各自このことを証明せよ。
ヒント:再び
a1 b1 + a2 b2 = 0, a1 b2 − a2 b1 = 1
に着目して、一つ目の式の両辺を a1 倍、二つ目の両辺を −a2 倍して、同様の
議論をすればよい。
✑
11
以上より
[
a −a2
A= 1
a2 a1
]
[ ]
a
とかけることがわかりました。いま +
= 1 なので、ベクトル 1 は単
a2
位円周上の点です。従って、ある実数 θ が存在して
[ ] [
]
a1
cos θ
=
a2
sin θ
a21
と書けます。以上より
[
a22
cos θ − sin θ
A=
sin θ cos θ
と書けることがわかり、証明が完了しました。
]
5.3. 回転行列の作り方.
[ ]
[ ]
v1
w1
与えられた直交するベクトル v =
とw =
から、回転行列を構成す
v2
w2
ることができます。以下では、その方法を説明します。
[ ]
v
まず、ベクトルの長さについて復習します。ベクトル v = 1 の長さとは
v2
√
v12 + v22
のことです。高校数学では |v| と書いていたと思いますが、ここでは ||v|| と書
きます4。
 v 
 w 
1
1
 ||v|| 
 ||w|| 
ここで、ベクトル v ′ =  v2  と w′ =  w2  を考えます。すると、
||v||
||w||
⟨v ′ , v ′ ⟩ = 1, ⟨w′ , v ′ ⟩ = ⟨v ′ , w′ ⟩ = 0, ⟨w′ , w′ ⟩ = 1
となります。さらに、
 v
 w
w1 
v1 
1
1
 ||w|| ||v|| 
 ||v|| ||w|| 




′
′
′
′
P1 = [v , w ] = 
 , P2 = [w , v ] = 

 w2
 v2
w2 
v2 
||v|| ||w||
||w|| ||v||
と置きます。すると、P1 または P2 の行列式は 1 となります。(なぜか?考え
よ。)
(ちなみに、もう一方の行列式は −1 になります。)それを P と置きます。
すると定理 6.4 より P は回転行列となります。
4実数 a の絶対値は |a|、ベクトル v
の長さは ||v||、と書くのが慣例です。
「数の大きさ」と
「ベクトルの大きさ」は、異なる記号を使うということです。
(理由はありますが、ここでは説
明しません。)
12
6. 対称行列の性質
対称行列とは A = t A となる行列 A のことです。2次の対称行列は、
[
]
a b
A=
b c
と書けます。この記号のもと、次を示せ。
問 6.1. b ̸= 0 のとき、A は相異なる固有値を持つ事を証明せよ。
[
−b
問 6.2. A が相異なる固有値 λ1 と λ2 を持つとする。このとき、v =
a − λ1
[
]
−b
とw =
は固有値 λ1 と λ2 の固有ベクトルになることを証明せよ。
a − λ2
]
[
]
[
]
−b
−b
問 6.3. 二つの固有ベクトル v =
とw =
は直交すること
a − λ1
a − λ2
を証明せよ。
✓
✏
まとめ
対称行列の相異なる固有値に対応する固有ベクトルは、必ず直交する。
✒
• 固有ベクトルの定数倍は、再び固有ベクトル
• 直交するベクトルから、回転行列を作れる
という事実から次が得られます。
[
]
a b
定理 6.4. 対称行列 A =
(b ̸= 0) は回転行列を用いて、対角化する
b c
ことができる。
定理 6.4 が成り立つことを、具体例を通して理解しましょう。
[
]
3 2
問 6.5. (重要)
(問 8.3 の準備)対称行列
を回転行列 P を用いて対角
2 3
化せよ。
✑
13
問 6.6. (重要)上の検算をせよ。つまり、上で得られた P に対して
]
[
]
[
3 2
t
−1 3 2
P = P
P
P
2 3
2 3
を直接計算して、本当に対角行列になっていることを確認せよ。
√ ]
3
1
を回転行列を用いて対
問 6.7. (重要)(問 8.4 の準備)対称行列 √
3 −1
角化せよ。
[
[
]
5 −4
問 6.8. (重要)(問 8.5 の準備)対称行列
を回転行列を用いて対
−4 5
角化せよ。
7. 座標変換
まず、座標系を θ 回転させることを考えます。座標系を θ 回転させるとは、
図のようにすることです。
Figure 1. 元の座標系と θ 回転させた座標系.
14
[ ]
[ ′]
x
x
平面の点を元の座標で見た時
だったとして、新しい座標で見たら ′
y
y
だったとします。
Figure 2. 二つの座標系で見てみると、、、.
✓
[ ] [ ′]
x
x
と ′ の関係を記述する。
y
y
目標
✒
そのために、x′ 軸方向の単位ベクトル
e′1 と y ′ 軸方向の単位ベクトル e′2 を
[ ]
x
考えます。すると、もとの座標で
だったものは、
y
[ ]
x
= x′ e′1 + ye′2
y
となることがわかります。(ここが最も重要なポイントです。理解できるまで
考えて下さい。)
[ ]
[ ]
0
1
を θ 回転させ
を θ 回転、e′2 は e2 =
座標軸の構成から、e′1 は e1 =
1
0
たものです。
Rθ を θ 回転に対応する行列とします。つまり
[
]
cos θ − sin θ
Rθ =
sin θ cos θ
✏
✑
15
Figure 3. e1 と e2 (元の基底)、 e′1 と e′2 (変換後の基底.
とします。すると
[
e′1
cos θ − sin θ
= Rθ · e1 =
sin θ cos θ
[
e′2
cos θ − sin θ
= Rθ · e1 =
sin θ cos θ
][ ] [
]
1
cos θ
=
0
sin θ
][ ] [
]
0
− sin θ
=
1
cos θ
となることがわかります。今まで得られたことを整理すると
[ ]
[ ] [
][ ]
[ ′]
[ ′ ′ ] x′
x
cos θ − sin θ x′
x
′ ′
′
= x e1 + ye2 = e1 , e2
=
= Rθ ′
y
y′
sin θ cos θ
y′
y
✓
[ ]
[ ′]
x
x
= Rθ ′ となる。
y
y
結論
✒
[ ′]
[ ]
x
x
注: ′ = Rθ
y
y
✏
✑
ではない。
8. 2次曲線の分類
ax2 + 2bxy + cy 2 = d を(狭い意味での)2 次曲線といいます。
b = 0 のときは 2 次曲線は
ax2 + cy 2 = d
16
と書けるので、理解しやすいです。実際、次が成り立ちます。(高校のときに
習った事)
定理 8.1. d ̸= 0 とする。このとき 2 次曲線 ax2 + cy 2 = d は、楕円か双曲
線を表す。
問題は b ̸= 0 のときです。実は次が成り立ちます。
定理 8.2. d ̸= 0 とする。このとき 2 次曲線 ax2 + 2bxy + cy 2 = d は、楕
円か双曲線を表す。
証明. 前回の授業で説明しました。
この定理が成り立つことを、具体例を通して理解しましょう。
問 8.3. (重要)二次曲線 3x2 + 4xy + 3y 2 = 5 の概形を書け。
√
問 8.4. (重要)二次曲線 x2 + 2 3xy − y 2 = 8 の概形を書け。
問 8.5. (重要)二次曲線 5x2 − 8xy − 5y 2 = 13 の概形を書け。
9. おまけ:直交行列
割愛。
10. おまけ:逆行列
n 次行列 A の逆行列とは
BA = AB = In
となる行列 B のことでした。(In は n 次の単位行列)
定理 10.1. n 次行列 A に対して、ある行列 C が存在して
CA = In
となるならば、
AC = In
となる。つまり C は逆行列となる。
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補足
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X, Y を n 次行列とします。多くの場合、XY ̸= Y X となります。上の定
理が言っていることは、もし XY = In となったとしたら、この場合は、
Y X = In となるよ、つまり XY = Y X(= In ) となるよ、ということです。
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