CFDによる水理現象の解析に関する調査・検討(固有研究)

2013 年度 下水道新技術研究所年報 [要約版]
CFDによる水理現象の解析に関する調査・検討(固有研究)
調査研究年度
2012 年度~2014 年度
浸水対策の推進
(目 的)
長大伏越しにおいては,空気圧縮を原因とした人孔蓋の飛散等の事故が顕在化している。従来は,
伏越し内の水と空気の複雑な流れについて,水理模型実験で行い検討している。しかしながら,空
気の挙動については相似則の問題があり,小型模型での再現が難しいという問題があった。
本研究では,長大伏越し内の水と空気の挙動について,混相流を考慮した数値流体力学(以下,
CFDとする。)を用いて解析を行う。CFDの解析結果と水理模型実験結果を比較検証し,CFD解析の適
用可能性について検証を行うものである。また,自由表面の表示方法として,空気についても水の
流れと一体的に解析できる「気液二層流(VOF法)」を用いた計算手法の利用可能性について検証を
行うことを目的とする。
(結 果)
1)計算条件
今回計算を行った施設形状は,過去に水
理模型実験を行った伏越しとした。計算モ
デルは,流出人孔から流入人孔(ドロップ
シャフトを含む)およびバイパス幹線全体
までの模型実験結果(図-1)を用いた。
CFD 解析は,模型実験で確認された空気混
入状態を再現するために,水-空気の混相
流として取り扱い,乱流モデルには混合長
図-1 実験における伏越しの現象(イメージ図)
モデルを用いた。自由表面の計算モデルに
は VOF 法を用いた。
2)結果
水が流出人孔に到達した後に段波が発
生し,段波が遡上する様子が確認された
(図-2)。段波遡上後の水面は,下流側か
ら除所に上昇して満管状態となり,流出人
孔の水位が上昇すると圧力流状態となっ
ている。段波発生時の流出人孔内の水位
は,管中心の高さで発生していた模型実験
結果に対して,解析結果は管頂を超える高
い位置で発生しており差異があった。しか
しながら,水面の形状(段波の戻りと管路
図-2 段波の遡上(CFD 解析結果)
内の水面の状況)については,比較的よい
近似が得られた。特に,段波の戻り時の波頭の先端部の崩落は模型実験と比較して一致が見られた。
段波発生後は,段波により管上部の空気が上流側に押し出され,流入人孔へ段波が到達するまで
空気の逆流が発生し,流入人孔から空気が噴出した。その後,段波が流入人孔に到達すると,流入
人孔の空気排出量が最大値を示し,激しく空気塊が流入人孔で排出されている。このときの空気排
出量は実験値の最大排出量約 20m3/s とほぼ一致している。
以上の結果から,伏越しにおける段波等の非定常現象と空気の挙動を示す「混相流」と「段波」
の流れは比較的良好に再現されていることが確認された。
(今後の予定)
長大伏せ越しにおける水と空気の挙動について,混相流を考慮した CFD 解析における流況につい
て解析を進めている。今後はさらに多くの現象を調査研究で確認する予定である。これらの研究を
活用して,雨水管きょ内における空気挙動を伴う複雑な水理現象を解析し,問題点を把握すること
により,安全な下水道施設の構築に貢献していく。
※ (公財)日本下水道新技術機構
問い合わせ先:研究第二部 小団扇 浩,石川 眞,塚田 繁,杉 伸太郎【03-5228-6598】
キーワード
数値流体力学(CFD),混相流,段波,伏越し,VOF 法