縮小版 道示,補剛板の設計 ~ 道示Ⅱ, 4.2.4,4.2.5 の背景と適用留意

20141217
技術者のための構造力学
~
縮小版 道示,補剛板の設計
道示Ⅱ,4.2.4,4.2.5 の背景と適用留意事項
~
三好崇夫
加藤久人
1.はじめに
近年,鋼橋の実務設計では既存の汎用設計ソフトに依存することが多く,そのプログラムの背景にあ
るロジックをあまり理解することがなくとも,あらましの設計が遂行でき,誰しもが専門技術者である
かのごとき錯覚が生まれているようである.身の回りの鋼橋技術者 10 人に道示Ⅱ1),4.2.4,4.2.5 補剛板
の設計について内容の理解度を問うたところ,10 人ともの回答が「設計の流れはかろうじて分かってい
るが,背景のロジックについては難しくてよく解らない」という共通のものであった.このロジックに
関して,文献 2),3)で既に解説がなされている.特に諸式の誘導に関しては 3)に詳しい.しかし,残念
ながらロジックの全貌を簡潔に紹介する解説が無く,板座屈に精通しない人にはかなりハードルの高い
内容となっている.
道示Ⅱ1)のこの規定は昭和 47 年版 4)(1972 年)に現れ,その後,昭和 55 年版 5)(1980 年)で若干改訂が加
えられて以来,現在に至るまで変更なく続いているものである.Giencke6)が直交異方性板を対象に導い
た弾性線形座屈理論に基づき,残留応力の影響を間接的に考慮した内容で,1980 年当時,類似の規格が
DIN41147),AASHTO8)に記載されていることが文献 9),10)に記述されている.
近い将来,道示の本規定も,より実際構造の挙動を的確に網羅する終局強度に基づく規定に変更され
るとの情報は耳にするが,過去 30 年間に渡り,作り続けられた夥しい数の鋼製橋梁はこの基準に拠っ
ており,これらの維持管理,補強に際して実務設計者は建設当時の設計内容をレビューする必要に迫ら
れる.また,最近はアジアの途上国に向けてインフラ技術を積極的に輸出し,リーダーシップの発揮か
らアジアでの我が国のプレゼンスを高める努力が求められている.途上国に我が国の技術を紹介する上
で規格の提示は基本であり,当然その背景をなすロジックの説明が求められる.そもそも新しい規格に
移行するとしても,従来の規格の内容把握が不十分であれば,移行に伴う長所,短所を比較できない.
このコンピュータ化された現代の技術者に今,最も求められることは,まさに温故知新ではないだろう
か.
このような状況を鑑み,本稿の流れは以下とし,上記の課題解決に一助となる情報を提供することが
目的である.道示Ⅱ1)に規定される補剛板の設計に関して,
(1) 道示 4.2.4,4.2.5 に規定される補剛板設計の流れを概説する.
(2) 補剛板に対する許容応力度の規定を両縁支持板のそれと対比のうえ説明する.
(3) 全体パネル,横リブ間パネル,板要素パネルの座屈係数,換算幅厚比パラメーターを説明する.
(4) 板要素パネルに局部座屈発生を考慮する場合の縦リブ,横リブの必要剛比の算出式を誘導する.
(5) 板要素パネルの局部座屈が考慮不要の場合の縦リブ,横リブの必要剛比の算出式を誘導する.
(6)
上記(4),(5)の理解を深めるため,横軸を幅厚比,縦軸を応力としたグラフを用いて,オイラー曲
線と道示の基準耐荷力曲線の関係を説明する.
なお,本資料は「技術者のための構造力学」の Web ページに掲載の「1.道示,補剛板の設計」の縮
小版として作成したものであり,詳細については当該資料を参照されたい.
1
20141217
技術者のための構造力学
σ 全体パネル
σ
bs
bs
b=s×bs
横リブ間パネル
bs
板要素パネル
a
a
L=q×a
t
a
t
a
図-1
補剛板の全体パネル,横リブ間パネルと板要素パネル
t0 の計算
α0 の計算
式(4.6)⇒道示 表-4.2.6
Yes
Yes
α≦α0 ?
γT の計算
道示
No
t<t0 ?
No
Yes
γT の計算
道示
γL の計算
式-4.2.5-2
図-2
道示
γT の計算
γT =0
式-4.2.6
γL の計算
式-4.2.7-2
補剛板の設計基準
No
α>α0 ?
γT の計算
γT =0
式-4.2.6
γL の計算
道示
4.2.5(4)の式注
式(3.15)⇒道示
道示
式-4.2.5-1
γL の計算
道示
式-4.2.7-1
本稿の掲示章節と道示適用式
2.補剛板設計の流れ
鋼構造部材はできるだけ薄い鋼板を用いて断面を構成するほど薄肉軽量で経済的なものとなる.しか
し,薄っぺらな鋼板を用いて断面を構成すると,座屈に対する強度は大きく低下する.そこで,鋼板の
座屈強度の向上を目的に,鋼板の縦横にリブを設置したのが補剛板である.
図-1 に示すように,横リブにより長さ方向が q 分割,即ち L=q×a,縦リブにより板幅方向が s 分割,
即ち b=s×bs に分割された補剛板を考える.4 辺が単純支持された L×b の領域を全体パネル,横リブ間で
区切られた a×b の領域を横リブ間パネル,ならびに縦リブと横リブもしくは単純支持辺で囲まれた最小
単位の a×bs の領域を板要素パネルと称することにする.
補剛板の設計では母材の板厚 t と縦補剛材の配置,断面積 AL をあらまし選定し,作用する応力が後述
する板要素の許容応力以下となるよう,さらに縦リブ,横リブの剛性が所要の必要剛性を満足するよう
板厚,リブ配置,断面諸量を試行錯誤的に決定してゆく.
道示 4.2.5 により,リブの剛性は図-2 に示す流れに従い,母材の板厚 t と板パネルに局部座屈の考慮
を要する板厚 t0 の大小関係,および,板要素のアスペクト比 α=a / b と限界縦横比 α0 の大小関係によ
り4つのパターンに分かれた必要剛性の式を満足するよう決定される.t0,α0 の内容は後述する.
2
20141217
技術者のための構造力学
3.全体パネル,横リブ間パネル,板要素パネルの座屈係数
補剛板に対して,縦横のリブが無いものは無補剛板と呼ばれ,その周辺が単純支持されているものが
道示Ⅱ1)4.2.2 の圧縮応力を受ける両縁支持板である.長さ a,幅 b,板厚 t の両縁支持板の弾性座屈応力
σcr は,線形座屈理論より次式で与えられる.
  k  k
cr
e
 E
1
121    b t 
2
2
2
(2.1)
ここに,σe:基本座屈応力,E:弾性係数,および μ:ポアソン比である.k は座屈係数と呼ばれ,長
さ方向に一様な圧縮力を受ける両縁支持板においては,座屈による全ポテンシャルエネルギーを 0 とす
る方程式から次式のように求められる 11).
2
 b n a
k  m 

 a m b
2
(2.2)
ここに,m,n:それぞれ両縁支持板の長さ方向,幅方向に生じる座屈波形の数である.
弾性座屈応力 σcr は,鋼材の強度の基準である降伏応力 σY に比べて大きいか小さいかが直感的に分か
りにくいため,次式に示すように,式(2.1)の σcr を σY で無次元化して σcr/σY と表すと,σcr と σY との比較
が行いやすくなる.右辺分母の R を換算幅厚比と呼ぶ.
 cr k e
1
1


 2
2
Y
Y
R
 1 121   2   Y b 


k
E t 

(2.7)
換算幅厚比を用いると,弾性座屈応力を幅厚比のみならず材料特性値の関数として統一的に表現でき
るため,座屈に対する強度を与える設計式にも多用されている.両縁支持板の無次元化された弾性座屈
応力 σcr/σY は次のように表される.

1


1 R
(0  R  1.0)
(1.0  R )
cr
2
Y
(2.9)
弾性座屈応力が降伏応力を超えることはないので,
0≦R≦1.0 では σcr/σY=1.0 として頭打ちにしている.
溶接製作部材は溶接時の熱影響によって残留応力や初期たわみが発生し,それらはその強度を低下せし
める.道示Ⅱの 4.2.2 では基準圧縮強度 σu を規定する耐荷力曲線として以下を採用している.
(0  R  0.7)

1


0.5 R (0.7  R)
u
2
(2.10)
Y
図-3 には,式(2.9)の Euler 曲線および式(2.10)の両縁支持板の耐荷力曲線を示した.
補剛板に生ずる局部座屈としては,次の 3 つのパターンを考慮する必要がある.
①全体パネル(縦 L,幅 b のパネル)の座屈
②横リブ間パネル(縦 a,幅 b のパネル)の座屈
③板要素パネル(縦 a,幅 bs のパネル)の座屈
補剛板の設計では,上記①~③の座屈について,式(2.1)の座屈係数 k に代えて各々の座屈係数を kL,
ka,ks とするとき,基本的には,板厚,補剛材の剛性調整により,kL >ka >ks の関係が満たされることを
確認することになる.これにより,座屈は最初に板要素パネルに生ずることとなり,このとき横リブ間
パネル,全体パネルには座屈が発生しない.即ち,作用応力が板要素パネルの弾性座屈応力以下であれ
ば板パネルの安全が確保されることを保証するものである.
式(2.1)より,それぞれ①,②の座屈に対する弾性座屈応力 σL cr,σa cr は次式で表される.
3
20141217
技術者のための構造力学
1.2
Euler曲線
1
耐荷力曲線
σu/σY or σu/σY
0.8
0.6
0.4
0.2
座屈を考慮
しない領域
座屈を考慮する領域
0
0
0.7
0.5
1
換算幅厚比 R
弾性座屈が生じない領域
1.5
2
弾性座屈が生ずる領域
無補剛板の Euler 曲線と耐荷力曲線
図-3


 E
k k
121   b t 
 E
k k
121   b t 
2
L cr
L
e
L
2
2
(3.1)
2
2
(3.2)
2
a cr
a
e
a
ここに,kL,ka:それぞれ,①と②の座屈に対する座屈係数である.
3.1
板要素パネルの座屈係数
一方,③の座屈に対する弾性座屈応力 σs
cr は,式(2.2)の
m,n を変化させたとき座屈係数の最小値が
4.0 であることから,b を bs(=b/s)と置きかえることによって,次式で表される.
 s cr
 2E
 2E
2
4
 4s
 k s e
2
2
121   2 bs t 
121   2 b t 
(3.3)
式(3.3)において,ks は③の座屈に対する座屈係数であって,次式で表される.
k s  4s 2
3.2
(3.4)
全体パネルの座屈係数
式(3.1)における座屈係数 kL は,座屈による全ポテンシャルエネルギーを 0 とする方程式から求められ
る.このとき座屈のモード形状として縦方向に m 個,横方向に n 個の波が生じているとしている.
kL 
1
1  s L
 mb n 2 L 

n4 L
2 b 



m
s

q T 

  L

2
mb 
mb
L
 L

2
2
(3.5)
ここに,q,s:それぞれ横リブ間パネルの総数,縦リブ間パネルの総数,γL:板パネルの板曲げ剛性
に対する縦リブの曲げ剛比(=EIL/(Db)),γT:板パネルの板曲げ剛性に対する横リブの曲げ剛比(=EIT/(Db)),
D:板パネルの板曲げ剛性(=Et3/(12(1-μ2))),E:鋼材の弾性係数,μ:鋼材のポアソン比,IL:縦リブ 1
本の断面 2 次モーメント,IT:縦リブ 1 本の断面 2 次モーメント,δL:板パネルの断面積に対する縦リ
ブの断面積比(=AL/(bt)),AL:縦リブ 1 本の断面積である.
kL は n=1 のときに最小となることは明らかである.式(3.5)を L の関数として kL をグラフ化すると図-
4 のようになる.同図から kL は L=Lmin でその最小値 kLmin をとり,kL が kLmin であると捉えることは,設
4
20141217
座屈係数 kL
座屈係数 ka
技術者のための構造力学
m=1
m=2
m=3
m=1
m=2
m=3
m=4
kamin
式(3.18)の
適用領域
kL
式(3.14)の適用領域
kL min
Lmin
L
α0
全体パネルの長さ L
図-4
2
2α0
0
6
0
3α0
12 
0
4α0
縦横比 α
みなし最小座屈係数 kLmin
図-5
横リブ間パネルの座屈係数 ka と縦横比 α の関係
計において常に最小の弾性座屈応力を考えることになるため安全側の解釈となる.Lmin は式(3.5)に q =
L/a を代入して L について微分し,0 とおくことによって極値として求められる.kL
min は座屈係数を
L
の関数と見なしたときの kL の最小値で,q = L/a として a を定数と考えることから本来の座屈係数とは異
なる.その意味において本稿では kLmin を座屈係数のみなし最小値と呼ぶ.さらに,q = L/a を代入する
ことによって後述 γL の算出式が簡潔に導出できる.
k L min 
3.3
2
1  s L

1 

1  s 1 
L



T
 

 
(3.8)
横リブ間パネルの座屈係数
横リブ間パネルの座屈係数は式(3.5)の L を a とし,かつ横リブが無いことから γT = 0 として求まる.
 m n 2 

m2


s L 



2
m  
 

2
1
ka 
1  s L
(3.9)
ka は n=1 のときに最小となることは明らかである.α について微分し,極値を与える α を求めると,

min
a min
0. 25
 m1  s L 
b

ka の最小値 kamin は次のように表される.
k a min 

2
1  1  s L
1  s L
(3.13)

(3.14)
限界縦横比 α0 として次式を定義する.
  1  s 
0
0.25
(3.15)
L
式(3.9)をグラフ化すると図-5 のようになる.α≦α0 の場合の最小の座屈係数は,m =1 とし,次式で
与えられる.
1
ka 
1  s L
 1

1

     2 s L 
 
 

2
   
0
一方,α>α0 の場合の最小の座屈係数は,任意の m に対して式(3.14)で与えられる.
5
(3.18)
20141217
技術者のための構造力学
座屈係数 k
kLmin
ka or kamin
座屈係数 ka,ks
ka
式(3.18)
式(3.8)
kamin
γT=0
式(3.14)
γT*
ks=4s2
式(3.4)
式(3.14)
または
式(3.18)
γL*
γT
縦リブ剛比 γL
横リブ剛比 γT
図-6
3.4
γL
座屈係数 k と横リブ剛比 γT の関係
図-7
座屈係数 ka,ks と縦リブ剛比 γL の関係
横リブの必要剛性
補剛板の横リブは②横リブ間パネルの座屈を①全体パネルの座屈に先行させるために設置される.①,
②に対する弾性座屈応力 σL cr,σa cr は式(3.1),(3.2)で表され,σL cr>σa cr であるためには各々の座屈係数が
kL>ka である必要がある.α≦α0 の場合,kL>ka となるための条件式を導くため,図-6 には,式(3.8)のみ
なし最小値 kLmin,ならびに式(3.18)の座屈係数 ka と,横リブ剛比 γT の関係を示した.式(3.8)と式(3.18)
の交点を γT*と表すことにすれば,
 
*
T
1  s L
5



3
4
41  s L  2
(3.19)
一方,α>α0 の場合について,kL≧ka となるための条件式を導くと,式(3.8)と式(3.14)を kL min≧ka min に
代入して γT について解けば次式を得る.
 0
(3.20)
T
3.5
縦リブの必要剛性
横リブの必要剛比 γT*を確保しておけば,横リブ間パネルの座屈を全体パネルの座屈に先行させること
ができるから,さらに板要素パネルの座屈が横リブ間パネルの座屈に先行するように縦リブの必要剛比
を確保すれば,板要素パネルの座屈は全体パネルの座屈にも先行することになる.
図-7 は,ka または ks と縦リブ剛比 γL の関係を示す.γL >γL*の領域では ka≧ks となるため,板要素パ
ネルにおける座屈が横リブ間パネルの座屈に先行する.α≦α0 の場合,式(3.4)と(3.18)を ka≧ks に代入し
て γL=γL*と置き,γL*について解く.この場合,図-7 中,式(3.18),ka は右上がりの直線である.これが
道示(4.2.5)の第 2 の式である.
  4 s 1  s
*
L
1   

2
2
L
2
s
(3.29)
α>α0 の場合,式(3.4)と(3.14)を ka min≧ks に代入して γL=γL*と置き,γL*について解く.この場合,図-7
中,式(3.14),ka min は右上がりの曲線である.これが道示(4.2.7)の第 2 の式である.
 
*
L
1

2s 2 1  s L   12  1
s
6
(3.30)
20141217
技術者のための構造力学
4.道示における補剛板の設計
4.1
補剛板設計の流れ
補剛板設計の手順については2章の冒頭で説明した.許容応力度については,道示Ⅱ1)表-4.2.5 に示
されている.本表では後述する換算幅厚比 RR に対応して,座屈を考慮する必要があるか否かに分けて
許容応力度を定めている.本稿では幅厚比の境界値を b/t0,b/t1,b/t2 として説明する.b/t≦b/t0 のとき,
即ち t≧t0 が座屈を考慮しない場合である.b/t1 は補剛板の座屈に対する強度の基本となる耐荷力曲線形
状が変化する点(弾性座屈応力が降伏応力に等しくなるときの幅厚比)における換算幅厚比に対応する
幅厚比である.b/t2 < 80 は過度にスレンダーな補剛板を使用しないようにするための最大幅厚比である.
道示Ⅱの 4.2.5 に規定されている.補剛板に関する換算幅厚比を求めるため,式(3.3)で表される板要素
パネルに対する弾性座屈応力 σs cr を降伏応力 σY で無次元化すると,
 s cr k s
1
1
e 

 2
2
Y
Y
RR
 1 121   2   Y b 


E t 
4s 2

(4.1)
右辺の RR が補剛板の換算幅厚比である.
溶接熱影響や初期不整を考慮し,道示Ⅱの 4.2.4 では補剛板の基準圧縮強度 σu をを以下の式で与えて
いる.
(0  R R  0.5)
1
u 
  1.5  R R
(0.5  RR  1.0)
Y 
2
2
 0.5 R R  0.7 RR  (1.0  R R )
(0  t  t 0 )
(t 0  t  t1 )
(t1  t  t 2 )
(4.4)
式(4.4)による補剛板の耐荷力曲線を図-8 に示す.RR<0.5 では補剛板が降伏によって破壊するため設
計上は座屈を考慮する必要がない.RR≧0.5 では補剛板が非弾性座屈によって破壊するため,設計上は
座屈を考慮する必要がある.式(4.4)を約 1.7 の安全率で除して,鋼材ごと,板厚ごとに幅厚比の関数と
して許容圧縮応力度に書き直したものが道示Ⅱの表-4.2.5 である.
道示Ⅱ1)では,補剛板の縦,横補剛材断面の剛性を表現するために,それらの曲げ剛性と板パネルの
板曲げ剛性との比で表される剛比が用いられている.道示Ⅱ1)では,縦 or 横リブの剛比 γL,γT は次のよ
1.2
1
σscr/σY or σu/σY
0.8
0.6
0.4
Euler曲線
無補剛板の耐荷力曲線
補剛板の耐荷力曲線
0.2
0
0
0.5
局部座屈を考
慮しない領域
図-8
0.7
1
1.5
換算幅厚比 R or RR
局部座屈を考慮 する領域
補剛板の Euler 曲線と耐荷力曲線
7
2
20141217
技術者のための構造力学
うに定義している.
 L or  L 
EI L or T

Db
EI L or T
3
Et
b
121  0.3 2 
EI L or T

bt 3
11
(4.9)
道示(4.2.6)横リブ必要剛性は式(3.19)のうち影響の少ない第 2,3 項を省略し,式(4.9)を用いて以下と
している.
IT 
4.2
bt 3 1  s L

11 4 3
(4.12)
t≧t0 の場合の縦リブの必要剛比
t≧t0 の場合,板要素パネルの換算幅厚比は RR<0.5 であり,板要素パネルの弾性座屈応力 σs cr は降伏応
力よりも大きいため,その圧縮強度は降伏応力に等しいものにできる.圧縮強度 σu は弾性座屈応力 σs cr
が降伏応力 σY に到達するときの板厚 t0 を式(3.3)の板厚 t に代入した次式で表される.
 
u
s cr
 Y 
 Ek
121   b t 
2
s
2
2
(4.15)
0
式(3.2)で与えられる横リブ間パネルの弾性座屈応力 σa
cr が式(4.15)で与えられる σu 以上になるための
条件は,σu≦σa cr より次式で表される.
 Ek
 Ek

121   b t  121   b t 
2
2
s
a
2
2
2
2
(4.16)
0
式(4.16)を横リブ間パネルの座屈係数 ka について解けば次式を得る.
t 
ka  k s  0 
t
2
(4.17)
よって,t≧t0 かつ α≦α0 の場合の縦リブの必要剛比は,式(3.18)と式(3.4)を式(4.17)に代入することに
よって次のように導かれる.
1
1  s L
2
2
 1

1

2  t0 
     2 s L   4 s  
 
 

t 
(4.18)
式(4.18)を γL について解けば道示Ⅱの(4.2.5)の第1の式が得られる.

2

2
 1
t 
 L  4 s 0  1  s L  
s
t 
2
2
(4.19)
一方,t≧t0 かつ α>α0 の場合の縦リブの必要剛比は,式(3.14)と式(3.4)を式(4.17)に代入することによっ
て次のように導かれる.


2
t 
1  1  s L  4 s 2  0 
1  s L
t
2
(4.21)
式(4.21)を γL について解けば道示Ⅱの(4.2.7)の第1の式が得られる.
2


1  2  t 0 
 L  2s   1  s L   1  1
s   t 



2
(4.22)
道示Ⅱに示される,板要素パネルと横リブ間パネルの換算幅厚比 RR,RF 間の関係について纏める.
横リブ間パネルの換算幅厚比 RF は式(3.2)の両辺を降伏応力 σY で無次元化して得られる.
8
20141217
技術者のための構造力学
 a cr k a
1
e 

Y
Y
 1 b 121   2   Y

 
ka
E
  t
2




1
2
RF
(4.24)
t<t0 即ち RR>0.5 の場合は板要素パネルの座屈を考慮するので,横リブ間パネルの弾性座屈応力 σa cr と
板要素パネルの弾性座屈応力 σs cr に σa cr>σs cr の関係を要求する.従って,式(4.1),(4.24)より,



R
R
Y
(4.28)
Y
2
2
F
R
t≧t0 即ち RR≦0.5 の場合,板要素パネルの圧縮強度は降伏応力に等しく,その圧縮強度は弾性座屈応
力 σs cr が降伏応力に等しくなる時の RR=0.5 を式(4.1)に代入して次のように表される.

s cr


0.5
(4.30)
Y
2
横リブ間パネルの弾性座屈応力 σa cr が板要素パネルの圧縮強度以上になるには,式(4.24),(4.30)より,



R
0.5
Y
(4.31)
Y
2
2
F
式(4.28)と(4.31)をまとめると次のように表される.
RF  0.5
RF  RR
( R R ≦ 0.5)

( R R  0.5) 
(4.33)
道示Ⅱの解 4.2.4 では,板要素パネルの換算幅厚比 RR と横リブ間パネルの換算幅厚比 RF は式(4.33)の
関係を満足するように規定している.RR と RF の許容される範囲を図-9 の斜線部に示す.
5.むすび
5.1
応力-幅厚比関係に着目した補剛板の必要剛比
これまでの解説を応力-幅厚比のグラフに立ち戻り再び説明し結びとする.
全体パネルの弾性座屈応力は(3.1)より,

 k L e  k L
L cr
 E
C
k
b t 
121   b t 
2
2
2
L
2
(6.1)
横リブ間パネルの弾性座屈応力は(3.2)より,
横リブ間パネルの
換算幅厚比 RF
 a cr
 2E
C
 ka e  ka
 ka
2
2
b t 2
121   b t 
0.5
許容される範囲
0.5
板要素パネルの換算幅厚比 RR
図-9
許容される換算幅厚比 RR と RF の範囲
9
(6.2)
20141217
技術者のための構造力学
σ
式(6.3)=σs cr
式(6.1)=σL cr
式(6.6)
式(6.2)=σa cr
4σY
O
σY
A’
C’
A
b/t0
図-10
B
b/t1 b/tx b/t2
座屈を考慮
する範囲
C
b/t
座屈を考慮する場合の圧縮強度
板要素パネルの弾性座屈応力は(3.3)より,
 s cr  4
 2E
 2E
C
2

4
s
 ks
2
2
2
2
b t 2
121   bs t 
121   b t 
(6.3)
式(6.1)~(6.3)において,C は次式で表される定数である.
C
 2E
121   2 
(6.4)
板要素パネルの終局強度は降伏応力より高くなることはないので,座屈が発生しない範囲では次の関
係式が成立する.
 s cr   y
(6.5)
道示Ⅱの基準耐荷力曲線で弾性座屈応力が降伏応力に到達するときの幅厚比を b/t1 とする.溶接時の
熱影響,初期たわみによる強度の低下を考慮し,補剛板の強度は,弾性座屈応力 σs cr よりも小さいため,
式(6.3)に代えて基準圧縮強度 σu を以下としている.
 u  0.5 s cr  0.5ks
これは,道示Ⅱ (解
C
b t 2
(6.6)
4.2.3)の第 3 式の無次元表示を応力表示に変えたものである.
4.1節で述べた t0,t1,t2 を補剛板の幅 b との比として図-10 の横軸に示す.点 B は b/t1 に対応す
る点であり,点 B~点 C 間の基準耐荷力曲線は式(6.6)で表される.また,点 O~点 A 間は σs cr = σY を示
す直線であり,点 A は b/t0 に対応する点,点 A~点 B 間は再び直線であり,道示(解 4.2.3)の第 2 式に対
応する.また,RR = 0.5 から b / t0 = 0.5 b / t1 に設定されている.さらに,点 A'は式(6.3)で表される板要
素パネルの Euler 曲線上で b/t0 に対応する点で σs cr=4σy ,点 C’は b/t2 に対応する点である.
以下では検証する補剛板の板厚を tx として,t0≧tx≧t2 の場合と tx≧t0 の場合について縦リブ,横リブ
の必要剛比の考え方を示す.
Ⅰ.t0≧tx≧t2 の場合
この場合には板要素の局部座屈を考慮する必要があり,図-10 に示すようにこの範囲の弾性座屈応力
を与える Euler 曲線は式(6.3)の点 A'~C'である.板厚 tx の幅厚比 b/tx を同図中に破線で示している.
10
20141217
技術者のための構造力学
σ
式(6.3)=σs cr
A”
式(6.6)
O’
A’
σa cr,A=4σY
A B'
O
σY
B
C
C’
式(6.7)
b/tx b/t0
座屈を考慮
しない範囲
図-11
b/t1
b/t2
b/t
座屈を考慮しない場合の圧縮強度
板要素パネルの座屈が横リブ間パネルの座屈に先行し,横リブ間パネルの座屈が全体パネルの座屈に
先行する条件は,それぞれ ks≦ka と ka≦kL であるが,このことは同図中では式(6.2)で表される σa cr の曲
線が式(6.3)で表される σs
cr の曲線より上にあることを要求するものであり,さらに,式(6.1)で表される
σL cr の曲線が式(6.2)より上にあることを要求するものである.
前者より縦リブの必要剛比 γL の算出式が誘導され,後者から横リブの必要剛比 γT が誘導される.
Ⅱ.tx≧t0 の場合
この場合には板要素の座屈を考慮する必要はなく,図-11 に示すようにこの範囲でもⅠ.と同様の考
え方により,ks≦ka と ka≦kL なる関係から縦横リブの剛比を決定する.ただし,Ⅰ.で説明した図-10
の式(6.3)の代わりに以下に示す式(6.7)を弾性座屈応力の曲線として用いる.
 s cr
2
t
C
C
 ks x
 ks 02
2
2
b t 
t x b t 
(6.7)
式(6.7)は,tx≧t0 の場合に仮想の板要素パネルを想定し,その座屈係数を ks x と考えている.式(6.3)と
式(6.7)の比較から,同じ b/tx に対して常に式(6.7)は式(6.3)より(t0/tx)2 倍小さい値をとる.このことは,tx
≧t0 の場合には板要素パネルに局部座屈を考慮しないため,同じ縦横比,縦リブ本数,断面積比で比較
すると,縦リブの必要剛比は板要素パネルに局部座屈を考慮する場合に比べて小さくできるとの解釈か
ら定められている.また,式(6.7)は t が tx のとき図-11 の A"で示されるように 4σy となる.このことは
後述,式(6.12)~(6.13)で確認する.式(4.17)の t を tx とし,両辺に C/(b/t)2 を乗ずると,
2
ka
t
C
C
 ks 02
2
2
b t 
t x b t 
式(6.8)の左辺は式(6.2)より横リブ間パネルの弾性座屈応力度 σa
(6.8)
cr
を表しており,式(6.8)の右辺は式
(6.7)より仮想の板要素パネルの弾性座屈応力度 σ's cr を表している.よって,次の関係が成立する.
 a cr   s cr
(6.9)
式(6.9)は tx≧t0 の場合には横リブ間パネルの弾性座屈応力が板要素パネルの弾性座屈応力以上になる
ことを表している.式(6.7)は以下のように書き改められる.
11
20141217
技術者のための構造力学
2
t
C
C
 ks x
 ks 0 2
 ks
2
2
b t 
t x b t 
 s cr
C
b2
 t0 
 t 
 tx 
(6.10)
2
一方,式(6.3)は以下のように書き改められる.
 s cr  k s
C
C
 ks 2
2
b
b t 
t2
(6.11)
式(6.10),(6.11)の比較から,式(6.10)は板厚が t・(t0/ti)の仮想板要素の弾性座屈応力と解釈される.つま
り,tx≧t0 では板要素の座屈を考慮しなくてもよいので,横リブ間パネルの強度を式(6.3)に対して低下で
き,経済性を向上させることができる.ちなみに,式(6.10)による t=tx の弾性座屈応力は次式で表される.
C
b2
 s cr  k s
 t0 
 t 
 tx 
 ks
2
C
b2
 t0
 t x
 tx
 ks



2
C
b2
t 02
(6.12)
道示Ⅱの(解 4.2.3)の設定より,t0 = 2t1 であり,式(6.3)の t が t1 のとき σs cr = σY となることから,
  k
s cr
s
C
C
C
 ks
 4k s 2  4 Y
2
2
b
b
b
2
2
2t1 
t0
t12
(6.13)
横リブ間パネルの座屈係数 ka が上記 ksx より大きくなることを保証し,縦リブの必要剛比を算出する.
α≦α0 では ksx ≦ka の関係に式(6.10)を用いて,以下の通り式(4.18)が導かれる.
2
ks x  ks
2
t0
t
1
 4 s 2 02 ≦
2
1  s L
ti
ti
2
 1

1



  2 s L   k a

 

 
(6.15)
一方で,α>α0 では ksx ≦ka min の関係に式(6.10)を用いて,以下の通り式(4.21)が導かれる.
k s x  4s
2
t0
2
ti
2
≦


2
1  1  s L  k a min
1  s L
(6.16)
これらの座屈係数は結局のところ,横リブ間パネルの強度を図-11 の O’-A’-C’より高くすることから
決定されている.さらに,全体パネルの弾性座屈応力の曲線としてはこれよりさらに上の曲線が要求さ
れる.そして,式(3.19)から α≦α0 では,横リブの必要剛比 γT の算出式が誘導され,式(3.20)から α>α0
では γT=0 である.
【参考文献】
1)
社団法人
2)
中井 博,北田俊行:鋼橋設計の基礎,共立出版,1992.
3)
大倉一郎:鋼構造設計学の基礎,東洋書店,2004.
4)
社団法人
日本道路協会:道路橋示方書・同解説
Ⅰ共通編,Ⅱ鋼橋編,1972.
5)
社団法人
日本道路協会:道路橋示方書・同解説
Ⅰ共通編,Ⅱ鋼橋編,1980.
6)
Giencke. E.:Uber die Berechnung regelmassiger Konstruktionen als Kotinuum,Stahlbau,Jg. 33,H.1,
日本道路協会:道路橋示方書・同解説
S.1~6, und H. 2, S. 39~48,1964.
12
Ⅰ共通編,Ⅱ鋼橋編,2012.
20141217
技術者のための構造力学
7)
DIN 4114 Blatt 1:Stahlbau,Stabilitatsfalle(Knickung,Kippung,Beulung),Berechnungsgrundlagen,
Vorshriften,1959.
DIN 4114 Blatt 2:Stahlbau,Stabilitatsfalle(Knickung,Kippung,Beulung),Berechnungsgrundlagen,
Richtlinien,1953.
8)
AASHTO:Standard Specifications for Highway Bridges,12th. edition,1977.
9)
小松定夫,牛尾正之:圧縮補剛板の弾塑性座屈強度と合理的設計法について,土木学会論文報告集,
第 278 号,1978.10
10)
三上市蔵,堂垣正博,
米沢
博:連続補剛板の非弾性座屈,土木学会論文報告集,第 298 号,
pp.17-30,
1980.
11)
福本唀士:土木学会編
12)
土木学会:鋼構造シリーズ 2 座屈設計ガイドライン,技報堂出版,1987.
新体系土木工学9
構造物の座屈・安定解析,技報堂出版,1982.
【付録】
本稿で用いた記号の定義とそれらの道示Ⅱ1),文献 3)において用いられている記号との対応関係につ
いて表-A.1 に纏めた.
表-A.1
本稿で使用する記号の定義と道示Ⅱ1),文献 3)で使用されている記号との対応
道示Ⅱ1) 文献 3)
-
m
-
n
-
q
N
s
It
It
Il
Il
Al
Al
γt
γt
γl
γl
-
D
-
E
-
μ
δl
δl
-
R
-
R
RR
R
RF
R
-
kL
-
ka
-
ks
-
kLmin
-
kamin
a
a
b
b
-
b0
α
α
本稿
m
n
q
s
IT
IL
AL
γT
γL
D
E
μ
δL
R
Rp
RR
RF
kL
ka
ks
kLmin
kamin
a
b
bs
α
記号の意味
全体パネル内の縦方向座屈波数
全体パネル内の横方向座屈波数
全体パネル内の縦方分割数
全体パネル内の横方分割数
横補剛材 1 本の断面二次モーメント
縦補剛材 1 本の断面二次モーメント
縦補剛材 1 本の断面積
板曲げ剛性 D に対する横補剛材の曲げ剛比(=EIL/(Db))
板曲げ剛性 D に対する縦補剛材の曲げ剛比(=EIT/(Db))
補剛板パネルの板曲げ剛性
鋼板の弾性係数
鋼板のポアソン比
補剛板パネルの断面積に対する縦補剛材の断面積比(=AL/(bt))
長方形板の換算幅厚比
両縁支持無補剛板の換算幅厚比
補剛板の板要素パネルの換算幅厚比
補剛板の横リブ間パネルの換算幅厚比
補剛板の全体パネルの座屈係数
補剛板の横リブ間パネルの座屈係数
補剛板の板要素パネルの座屈係数
補剛板の全体パネルの座屈係数のみなし最小値
補剛板の横リブ間パネルの座屈係数の最小値
補剛板の横リブ間隔
補剛板の板パネルの全幅
板要素パネルの幅(縦リブ間隔)
板要素パネルの縦横比(=a/bs)
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技術者のための構造力学
α0
t
-
α0
t
β
α0
t
b/t
-
βcr
b / t0
-
-
-
t0
-
-
Lm
-
b / t1
b / t2
Lmin
t0
板要素パネルの限界縦横比
補剛板の板パネルの板厚
補剛板全体の幅厚比
RR=0.5 を満たす補剛板全体の幅厚比,あるいは RP=0.7 を満たす両縁支持
板の幅厚比
RR=1.0 を満たす補剛板全体の幅厚比
補剛板全体の最大幅厚比,あるいは両縁支持板の最大幅厚比
全体パネルの座屈係数 kL のみなし最小値を与える仮想長さ
補剛板パネルの降伏限界板厚
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