凍結にともなう不飽和砂中の水分移動と透水係数の変化 Water flow and hydraulic conductivity in frozen unsaturated sand ○和気朋己 渡辺晋生 ○Tomomi Wake Kunio Watanabe はじめに 寒冷地における春先の土壌水分の分布や冬期の地表からの水蒸気フラックスを考える 際、あるいは土壌改良や汚染物質の漏洩防止などに土の凍結を利用する際、凍結に伴う土中の物質 移動や土の性質の変化を理解することが重要である。そこで本研究では、不飽和砂を一方向から凍 結した場合に生じる水分移動と透水係数の変化を求めることを目的とする。 試料と方法 吸引圧 h > -102 cm の水分特性を van 78mm Genuchten (VG)式で表現できる鳥取砂丘砂(体積含 水率θ = 0.15 cm3 cm-3)を、内径 7.8 cm、高さ 35 cm 温度制御板 のアクリルカラムに乾燥密度 1.45 g cm-3 で充填した。 金属フィルター 熱電対と TDR センサーを 5 cm 毎に設置し、カラム 50mm TDR 側面を断熱した(fig. 1)。TDR は不凍水量を測定でき TDR るよう校正した(1)。試料を 1 日間一定温度に静置し、 TDR 初期温度と初期水分分布を与えた。その後、カラム TDR 350mm の上下端の温度を制御し、 試料を上端より凍結した。 TDR 初期温度、上下端の温度は 3、-7.5、2℃(実験①) TDR および 5、-5、5℃(実験②)である。カラムへの給 TDR 試料 試料カラム (5cm×7段) 断熱材 排水は無しとした。試料の凍結中、試料内の温度分 金属フィルター 布と液状水分布をモニターした。任意の時間に試料 温度制御板 断熱カラム を 5 cm 毎に切り、炉乾により各層の全水量を求めた。 結果と考察 fig.1 凍結実験装置 Schematic diagram of experimental apparatus 温度分布と液状水分布をモニターす ることで、本装置により再現よく凍結実験が行える 0 ことが確認できた。fig. 2 に、試料内の温度分布の経 5 に温度差を与えてからの経過時間である。制御板に 10 温度差を与えると、試料端面の温度は速やかに制御 板の温度に達した。0℃面の進行速度は 0-6, 6-48, 48-72 時間で 0.53, 0.18, 0.06 cm hr-1 と凍結の進行に 伴い遅くなった。72 時間経過しても、0℃以下の試 Depth(cm) 時変化を示す。図中の時間は、カラム両端の制御板 15 20 料の温度分布は、0℃以上の様に直線状に達しなか 30 った。温度勾配は未凍土より凍土で大きくなった。 35 これは凍土と未凍土の熱伝導率の違いによる。fig. 3 に、fig. 2 の各時間における水分分布を示す。図中実 実験① 0時間 6時間 48時間 72時間 25 -8 -6 -4 -2 0 Temperature(℃) 2 fig.2 温度分布 Temperature profile in freezing sand(ex①) 三重大学大学院生物資源学研究科 Graduate School of Bioresources , Mie University , 凍土, 水分移動, 透水係数 4 線は炉乾法で測定した全水量、破線は TDR で測定 0 した不凍水量である。0℃面の進行と共に、6 時間 5 で 2.5 cm 付近、48 時間で 12.5 cm 付近と、水分量が 10 凍結面への吸水によると思われる。温度分布に大き な違いは見られなくなった 48 時間以降も、凍土層 Depth(cm) 増加する場所も進行した。これは、氷の生成に伴う 0℃ (6時間) 15 20 での水分増加、未凍土層での水分減少は継続した。 25 また、10 cm 深迄の凍土層内には、水分移動は見ら 30 れなかった。 35 ここで、試料中の水に相平衡の状態方程式である 一般化クラジウスクラペイロンの式が成り立つと ⎛T −T ⎞ h= ln ⎜ m ⎟ g ⎝ Tm ⎠ 実験① 0時間 6時間 48時間 72時間 0 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 Water Contentθ (cm3/cm3) 0.30 fig.3 全水量(実線)と不凍水量(破線)分布 Total water content and unflozen water content profiles し、fig. 2 と式(1)から不凍水の h を求めた。 Lf 0℃ (48時間) 0℃ (72時間) 0 (1) 5 10 り、氷の融解潜熱は Lf = 334 kJ kg-1 で一定とした。 また、0.07< θ <0.30 では VG 式が成り立つとし、fig.3 から未凍土中の h を算出した。求めた h 分布を fig.4 Depth(cm) ここで、g は重力加速度、Tm は氷の融点(273K)であ 15 凍結領域 20 に示す。未凍土層では h > -102 cm、凍土層では h < 25 -103 cm になった。次に fig. 3 より各時間の水分フラ 30 ックス、fig. 2 から温度勾配、fig. 4 から圧力勾配を 35 10 算出し、 凍土の不飽和透水係数 K(h)を求めた(fig.5)。 実験① 0時間 6時間 48時間 72時間 102 103 104 Pressure head |h|(cm) fig.4 圧力分布 Pressure head profile in freezing sand(ex①) h > -102 cm までは|h|の増加にともない K(h)が急激に 減少したが、h < -102 cm では K(h)の減少は緩やかに 10-2 ∆T ∆h − K ( h) − K ( h) ∆z ∆z −3 −1 γ ≈ −2.09 × 10 K J w = − K (h)γ h なった。実験条件が異なっても K(h)は類似の傾向を 10-4 温度勾配を考慮した場合とほぼ同じ値となった。こ のことから、本実験においては、凍土中の水分移動 K(h)(cm/sec) 示した。また、温度勾配を考慮せず圧力勾配と水分 フラックスのみから凍土の K(h)を算出したところ、 (VM)の式で推定した K(h) (破線)も示した。本実験か ら算出した K(h)は蒸発法の結果とよく一致した。ま た、VM 式のような式では h < -102cm の K(h)を過小 凍結領域 10-6 10-8 は圧力勾配が支配的と考えられる。fig. 5 には別途、 蒸発法で求めた K(h) (実線)と van Genuchten -Mualem 105 10-10 10-12 1 実験① 実験② 蒸発法 VMeq 10 102 103 104 Pressure head |h|(cm) 105 fig.5 h-K(h)関係 K(h) in freezing sand 評価することが明らかになった。 おわりに 不飽和砂の一方向凍結実験を行った結果、凍結にともなう水分・熱移動と凍土の不飽和 透水係数が明らかになった。今後は、異なる土性や凍結条件において実験を行い、結果を比較する。 参考文献 (1) 和気・渡辺 (2006) TDR 法を用いた凍結過程にある不飽和土中の液状水量の測定について 農業土木学会要旨集
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