Ⅰ 宮城南部森林計画区の概要 - 宮城県

Ⅰ
宮城南部森林計画区の概要
本計画区は,県の中南部を包括し,北部は宮城北部森林計画区に,西部は奥羽山脈を境として山形
県に,南部は福島県にそれぞれ接し, 東部は太平洋に面する仙台市外6市12町からなる総面積278,30
1haの区域である。包括される市町村は,次のとおり。
計 画 対 象 森 林 面 積
108,355.26
しろいしし
包
括
さ
れ
る
市
町
村
か く だ し
ざおうまち
しちかしゅくまち
ha
おおがわらまち
白石市,角田市,蔵王町,七ヶ宿町,大河原町,
大河原地方振興事務所管内
むらたまち
しばたまち
かわさきまち
まるもりまち
村田町,柴田町,川崎町,丸森町
せんだいし
しおがまし
な と り し
た が じ ょ う し
いわぬまし
仙台市,塩竈市,名取市,多賀城市,岩沼市
仙台地方振興事務所管内
わたりちょう
やまもとちょう
まつしままち
しちがはままち
りふちょう
亘理町,山 元 町,松島町,七ヶ浜町,利府町
1
(1)
自然的条件
地
形
ふながた
いずみ
本計画区の西端を南北に走る奥羽山脈は,北から船形山(1,500m・仙台市),泉ヶ岳(1,175m
だいとう
が ん と
か っ た
・仙台市),大東岳(1,366m・仙台市),雁戸山(1,485m・川崎町),刈田岳(1,758m・七ヶ宿町,
びょうぶ
蔵王町),屏風岳(1,825m,七ヶ宿町,蔵王町)を主峰とする山塊であるが,東方に向かうにつ
れ標高を減じながら,山麓部,丘陵部,平野部へと移行している。
まどのくら
て く ら
てんみょう
一方,東南部は,窓ノ倉山(674m・丸森町),手倉山(672m・丸森町),天明山(488m・丸森
あ ぶ く ま
町)を擁する阿武隈高地が,福島県から高度・幅を減じながら仙南丘陵地帯へと移行しており,
山頂部は準平原状で,起伏の少ないなだらかな山容を呈している。
河川は,福島県に源を発し,福島県中央部及び県南部を流域にもつ阿武隈川が計画区南部を北
東に流れ,奥羽山脈に源を発する白石川と合流したのち岩沼市・亘理町の境界で太平洋に注ぎ,
ひ ろ せ
また,同じく奥羽山脈に源を発し仙台市域を流下する名取川及び広瀬川が区域北部を東に流れ,
合流したのち仙台市・名取市の境界で太平洋に注いでおり,これらの河川の下流域には沖積平野
が広がっている。
(2)
地
質
奥羽山脈は新第三紀後期から第四紀にかけての地殻変動によって大きく隆起したところで,頂
部は第四紀の火山噴出物の安山岩類からなり,山麓部は第三紀の緑色凝灰岩などの凝灰岩類が基
盤を構成している。また,丘陵地帯は新第三紀の中新世や鮮新世に堆積した砂岩,泥岩などの堆
積岩と,第三紀及び第四紀の安山岩を主とする火山岩類からなっている。
阿武隈高地は,中生代の後期に貫入したきた花崗岩類が大勢を占める。
- 1 -
(3)
土
壌
奥羽山脈の標高800m以上の山岳地帯にはポドゾル化土壌が見られ,それ以下の山岳地帯から
丘陵地帯にかけては,褐色森林土が大勢を占めるが,山麓部の一部には火山灰を母材とする黒色
土が分布している。
阿武隈高地は,赤褐色系褐色森林土を主体とする褐色森林土が広く分布しているが,一部風化
した火山灰を元とする黒色土も分布している。
(4)
気
象
本計画区内にある7箇所の気象庁観測地点における平成14年∼16年の3か年平均は,次のとお
り。
イ
気
温
にっかわ
年平均気温は,山間部の新川(仙台市)で10.3℃と最も低く,沿岸部の亘理で12.5℃,最も
高いのは仙台の12.6℃で,計画区平均は11.7℃である。
ロ
年間降水量
年間降水量は,新川で1,464mmと最も多く,次いで川崎の1,444mm,最も少ないのは塩竈の
1,219mmで,7観測地の平均は1,329mmである。
ハ
最深積雪深
積雪は,西部山間地帯で多く,新川で43cm,白石で23cm,仙台で16㎝となっている。
(5)
植
イ
生
沿岸地帯
松島以南から福島県境までの海岸地帯は,海岸線からハマニンニク,コウボウムギ,ケカモ
ノハシ群落と続き,その背後に藩政時代から植栽されたクロマツ林が帯状に分布している。
松島の島しょはアカマツ林が主体をなし,林内には暖地性のヒサカキ,ネズミサシなどが見
られる。
ロ
平野地帯
平野部はほとんど耕地と市街地であるが,湿地帯周辺にはハンノキが,河川敷にはシロヤナギ,
イヌコリヤナギなどが見られる。
ハ
丘陵地帯
平野地帯から標高 300m程度までの丘陵地帯は,かつてモミ・イヌブナ林であったと考えら
が
れるが,繰り返し伐採された結果,アカマツやぼう芽*1力の強いコナラ・クリ林に変わり,高
木層にはカスミザクラ,アオハダ,ウリハダカエデなどが見られ,低木層には,ヤマツツジ,
ガマズミ,ムラサキシキブなどが,林床にはヤブコウジ,チゴユリ,タガネソウなどが多く見
られる。
ニ
阿武隈高地
丘陵地帯は県内で最も温暖な地域で,常緑広葉樹林の一つであるカシ林が分布していたが,
現在はほとんどがコナラ,クリ,クヌギの二次林*2やスギ,アカマツの人工林となっている。
と く ら
しかし,丸森町青葉南のモミ・イヌブナ林及び角田市斗蔵山のモミ・ウラジロガシ林など,
学術的に貴重な自然林が残っている。
*1
ぼう芽:主に広葉樹を伐採した後,切り株又は地際部から出る芽
*2
二次林:自然林が,災害又は人為的伐採等により消失し,その後に生育した森林
- 2 -
ホ
山地帯
標高300∼1,400mのこの地帯は,冷温帯落葉広葉樹として代表的なブナ林が,奥羽山脈の山
腹に広大な面積を占めている。林床にはチシマザサ,ヒメアオキ,エゾユズリハなどを伴い,
ブナ−チシマザサ群落と呼ばれている。ブナ林以外では,沢筋や湿潤地にはサワグルミ・トチ
ノキ林が発達し,一方,尾根筋で表土の浅い所にはキタゴヨウ・クロベ林が見られる。山地帯
の下部は,ほとんどの自然林が伐採され,ミズナラなどの二次林,スギなどの人工林及びスス
キ草原などとなっている。
ヘ
亜高山帯・高山帯
亜高山帯以上の植生は奥羽山脈に限られ,蔵王連峰の標高1,300∼1,700mの地域でアオモリ
トドマツ林が,船形山の標高1,350∼1,450mではミヤマナラなどの落葉低木群落が分布する。
また,蔵王連峰の標高1,500∼1,800mまでの範囲や船形山の山頂付近には,高山帯を代表する
ハイマツ群落が見られる。
2
(1)
社会経済的条件
人
口(平成17年7月31日時点の推計値・宮城県企画部統計課)
本計画区の人口は1,555,233人で,この5年間で19,961人増加している。
県総数2,354,902人の66%を占め,仙台市の1,003,046人を最高に,名取市(68,496人),多賀
城市(62,259人),塩竃市(60,302人)の順となり,最少は七ヶ宿町の1,953人となっている。
人口密度は計画区平均で559人/k㎡で,県平均323人/k㎡の約1.7倍となっている。
(2)
土地利用
本計画区の総面積は,278,301haで県土面積728,530haの38%に当たり,土地利用の現況は次の
とおり。
(単位 面積:ha)
農
総
総 面 積
数
地
田
(14.5%)
40,491
(100%)
278,301
用
そ
畑
28,219
12,193
森
総
採草放牧地
数
(26.3%)
73,147
79
林
の
備
他
うち宅地
23,125
考
民有林の内訳
総 数
国
有
林
民
有
林
地域森林計画対象森林
108,355 ha
(59.2%)
164,663
地域森林計画対象外森林
55,855
108,808
453 ha
本計画区の森林率は59%と県平均(57%)に比べやや多く,市町村別では,七ヶ宿町の92%を
最高に,川崎町,丸森町,白石市,蔵王町で県平均を超えている。
農用地は15%と県平均より約5ポイント低いが,亘理町(48%)外7市町が県平均を超え,仙
- 3 -
南及び仙台東部農業地帯の一角を形成している。また,宅地は県平均6%に対し,仙台市及びそ
の周辺市町で10∼45%と,これらの地域で宅地が占める割合が大きくなっている。
(3)
地域産業
本計画区内の産業別純生産額は,第1次産業462億2,800万円(計画区内の総生産額に対する割
合0.8%),第2次産業1兆1,492億4,300万円(同18.9%)
,第3次産業4兆9千億7,100万円(同80.
3%)で,県全体に占める割合はそれぞれ26%,63%,74%となっており,第2次・第3次産業
の割合が大きい。
なお,林業生産額は13億600万円で県全体の林業生産額の25%となっている。
また,就業者総数は 753,291人で県全体の65%を占め,これを産業別で見ると,第1次産業
2万2,980人(うち林業350人)
,第2次産業17万2,801人,第3次産業54万7,682人となっており,
第1次産業,第2次産業は都市化の進展等により減少傾向が続いている反面,第3次産業は増加
傾向にある。
(4)
交通網
じょうばん
せんせき
鉄道は,JR仙台駅を中心に東北新幹線,東北本線,常 磐線が計画区東部を南北に縦断し,仙石
せんざん
線,仙山線がそれぞれ東西に横断しているほか,阿武隈急行が柴田町から角田市,丸森町を経
て福島市までをつないでいる。
道路は,
東北自動車道と三陸自動車道,仙台東部道路が計画区中央部と沿岸部を南北に縦断し,
福島県と県北部や岩手県とを結ぶとともに,東北自動車道から分岐する山形自動車道が山形県と
をつないでいる。また,国道4号・国道6号・国道45号・国道48号等が仙台市を中心に東西南北
に延び,周辺各都市に通じ,さらに,主要県道が地域の重要な交通網となって産業経済発展の基
盤となっている。
一方,近年の国際化に伴い,仙台空港や仙台塩釜港(仙台港区)が拡充整備され,各産業の発
展に寄与している。
3
(1)
森林・林業の概要
森林資源
森林面積は164,663haで,その内訳は国有林が55,855ha(国有林率:34%)
,民有林が108,808
ha(民有林率:66%)となっている。
民有林のうち本計画の対象となる森林の面積は108,355haで,県全体の計画対象森林面積の38
%を占める。また,材積は1,763万5,769âで,県全体の35%を占めている。
所有形態別では県有林4,396ha(4%),市町村有林9,691ha(9%),財産区*1有林290ha(0.3%),
私有林93,978ha(87%)となっている。
林地の利用状況は立木地105,698ha,竹林880ha,無立木地1,777haであり,普通林*2・制限林*3
別では普通林79,561ha,制限林28,794haで,制限林の割合は27%となっている。
*1
財産区:特別地方公共団体の一つ。市町村の一部で山林などの財産を持つ法人。
*2
普通林:制限林以外の森林
*3
制限林:保安林や自然公園特別地域などで,法令により伐採の制限を受けている森林
- 4 -
立木地のうち針葉樹・広葉樹別の割合は,面積では針葉樹49%,広葉樹51%,材積では針葉樹
67%,広葉樹33%となっており,1ヘクタール当たりの平均材積は針葉樹228â,広葉樹109âで,
全体平均では167âである。平均材積は全体平均で前計画より15â増加している。 また,人工林
率は46%で,県平均54%を下回っている。
樹種別では,人工林はスギ32,049ha(材積8,752千â,ヘクタール当たり材積273â)
,ヒノキ
2,374ha(同245千â,103â/ha),アカマツ12,419ha(同1,908千â,154â/ha)となっており,
スギは人工林の針葉樹のうち面積で65%,材積で77%を占める。また,天然林はアカマツ1,718
ha(同354千â,206â/ha)
,クヌギ1,364ha(同160千â,117â/ha),その他広葉樹52,366ha
(同5,703千â,109â/ha)でコナラ・クリ林が主体を占めている。
人工林の主体を占めるスギについて齢級別構成を見ると,Ⅵ齢級(26∼30年生)が2,678ha,Ⅶ
齢級(31∼35年生)が3,696ha,Ⅷ齢級(36∼40年生)が5,379ha,Ⅸ齢級(41∼45年生)が5,236ha,
Ⅹ齢級(46∼50年生)が4,137haとⅧ齢級がピークとなっており,5年前のピークがⅦ齢級であ
ったことから森林資源は着実に充実してきていることがわかる。
(2)
林業・木材産業の概況
本計画区内で1ha以上の山林を保有する林家数は7,544戸で,県全体(20,761戸)の36%を占
めている。特に10ha以上を保有する林家数は693戸で,県全体の同規模の林家数(2,019戸)の3
4%となっており,宮城北部森林計画区に比べて保有規模が小さいことが伺える。
産業別の就業者数で見ると,本計画区内で林業に就業している人数は350人で,県全体の林業
就業者数(1,085人)の32%を占めているが,この人数は第一次産業の就業者数の1.5%に過ぎな
い。また,産業別の純生産額では,本計画区の林業生産額は13億600万円で県全体の林業生産額
(51億8,100万円)の25%を占めているが,これは本計画区の第一次産業の生産額の2.8%に過ぎ
ない。
本計画区内の林業事業体については,素材生産業は82事業体,木材木製品製造業が52事業体と
なっている。
一方,森林組合は本計画区内に6組合があり,組合員数は7,204人,組合員が所有する森林面
積は56,836haで,民有林面積の52%を占めている。払込済出資金の合計は260,136千円で,1組
合当たりは43,356千円となっている。執行体制について見ると,常勤役員を置いている組合は2
組合,常勤役職員は6組合で46名となっている。
組合活動を経済事業取扱高でみると,事業総額は1,724,930千円で県全体の30%となっており,
森林造成事業,利用・福利厚生事業が組合事業の主要な部門となっている。
雇用労働者は171人(県全体の23%)で,年間延べ労働日数は34,216日(同28%),1人当たり
の年間労働日数は200日となっている。
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