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会議報告
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長寿命放射性核種の分離に関する
第9回JNC/CEA技術情報交換会議
宮原 幸子
青嶋 厚
佐野 雄一
駒 義和
東海事業所 環境保全・研究開発センター 先進リサイクル研究開発部
1.はじめに
以下に主に仏側の発表概要をまとめる。
1991年(平成 3 年)6 月に調印されたPNC/CEA
間の協力協定に基づき(1996年 6 月に改訂)
、過去
2.1 MA分離
8 回にわたり核種分離研究に関する専門家会議が
高レベル廃液からMA(主にAmとCm)を分
開催され、有益な成果をあげてきた。当初、本会
離・回収するため、双方とも溶媒抽出による方法
議はアクチニド元素の湿式分離に関する研究のみ
を開発している。日本側からは有機リン系抽出剤
に内容を絞ったものであったが、第 3 回から長半
であるCMPOを用いたTRUEX法及びSETFICS法
減期FPの分離、また、第 5 回からは乾式分離に関
の研究成果が、フランス側からは窒素系抽出剤で
するテーマがそれぞれ追加され、発展的に拡充し
あるジアミド(マロンアミド)を用いたDIAMEX
ている。今回、第 9 回となるアクチニド及びFP核
法に関する研究成果がそれぞれ報告された。
DIAMEX法(Diamide Extraction)について、
種の分離に関する専門家会議が、2000年(平成12
年)6 月14日から16日にかけて仏国アビニヨン及
フローシート条件及びその結果、Ruの挙動、溶
びCEAマルクールセンターにおいて開催された。
媒の劣化及び抽出への影響が報告された。このほ
CEAで実施された長半減期放射性核種の分離研
究と、サイクル機構における先進リサイクル研究
かに、第三相の生成に関する研究結果及びLnの
抽出錯体の構造について報告された。
のうち湿式及び乾式分離研究について情報交換を
TRUEX混合溶媒を用いたFPの分配挙動につい
行った。会議の最終日には、CEAマルクールセン
て、TBP濃度、硝酸濃度、抽出時間に関する試験
ター内の施設を見学した。
結果を報告した。また、SETFICS法の安定な製品
回収を目的としてpH の変動に与える因子を計算
2.会議の概要
により評価した結果が示された。三価金属(硝酸
本会議では、以下のトピックについて相互に報
告された。
塩)の与える影響が硝酸に比べて大きいことが明
らかとなった。
① アクチニドの基礎化学
② 三価アクチニドとランタニド元素の溶媒抽出
分離
③ Amの酸化を利用したAm/Cm分離
④ 電解による白金族元素の回収
⑤ 晶析法によるUの回収
⑥ 乾式法に関する最近の成果
CEAは、長寿命放射性核種分離のうちマイナー
アクチニド(MA:Np、Am、Cm)
、129I、99Tc及
び 137Csを分離対象としている。Np、Am+Cm+
Ln(ランタニド)
、I、Cs、Tcのそれぞれの分離
技術については既に確認済みであり、2001年まで
にAm/Cm相互分離とAm・Cm/Ln相互分離技
術が確認される予定である。
会議参加者集合写真
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会議報告
2.2 新抽出剤開発
る報告がなされた。
CEAはAm/Cm分離法として、Am(Ⅲ)をAm
TRUEX法とDIAMEX法はAm・Cmとともにラ
ンタニド元素を回収する。Am・Cmを核変換する
(Ⅳ)
に電解酸化して抽出分離する方法
(SESAME)
には、三価アクチニド(An(Ⅲ)
:Am、Cm)と
を開発している。酸性溶液中におけるAm酸化の
Lnを相互に分離する必要がある。この目的のた
反応機構が示された。
め、日仏双方からポリ窒素配位子を用いたAn
(Ⅲ)
/Ln(Ⅲ)分離研究の成果が報告された。
サイクル機構は、電解還元析出法によるLLFP
元素等の分離回収技術開発を行っている。Pd添
CEAは欧州各国と協力して、新しい抽出剤BTP
加に伴うRu及びReの析出促進機構について、X
(ビストリアジニルピリジン)を開発し、この適
線回折法(XRD)、X線吸収端微細構造解析法
用開発を進めている。新抽出剤BTPを用いた分離
(EXAFS)及びサイクリックボルタンメトリー
法はSANEX法と呼ばれており、報告の中ではこ
(CV)を用いた検討結果について報告した。
れまでに実施したコールド及びホット試験の条件
及びその結果が示された。
このほかに、サイクル機構 からPUREXプロセ
スの前処理として晶析法の導入について報告し
BTPの最適な構造について基礎化学的な検討の
結果が報告された。
た。硝酸ウラニル水溶液に模擬FP元素を添加し
た原料液を用いた晶析試験結果を示した。晶析工
基礎化学的な研究も行われており、NMR測定
程の製品である硝酸ウラニル結晶の除染係数が10
による各種の多座窒素配位抽出剤(TPTZ、
∼100であること、及びウランの60%が回収でき
Terpyridine、BTP)のプロトン化に関して、有機
ることを報告した。
酸−中性抽出剤混合系でのTPTZの配位挙動が報
告された。また、窒素を配位子として有する化合
2.5 乾式分離技術開発
物と三価ランタニド及びアクチニドとの錯形成を
解析し、溶液中の化学種の数を評価する手法につ
NaCl−CaCl2溶融塩中のプルトニウムの電気化
学的挙動に関する研究が報告された。
いて報告された。
サイクル機構からは乾式分離技術開発の現状を
このほか、新しいAn(Ⅲ)とLnの分離法とし
て、酸性抽出剤(HDEHP)とジアミドを共に用
紹介した。実施体制、実験施設やこれまでに得ら
れた成果等を説明した。
いたSANEX2プロセスが紹介された。
2.6 施設見学
2.3 計算化学手法の適用
分離技術の研究開発施設であるATALANTEを
CEAにおいて、計算化学は化合物の性質に関す
見学した。ATALANTE 1 では、主にプロセス基
る基礎化学的な量子化学計算や、プロセス開発に
礎試験を行っているホットセルとグローブボック
必要なフローシート解析にと、幅広く利用されて
ス及び乾式試験エリアを見学した。
いる。
ATALANTE 2 は現在建設途上であり、2002年
分子軌道計算を用いた硝酸ウラニル水和物錯体
初めにホット試験を開始する予定である。セル等
の構造についてサイクル機構 が報告し、ランタ
の設備はほぼ完成しており、一部の分析設備が設
ニド元素とポリ窒素配位子の錯生成に関する検
置されている。今後、分離試験にかかわる設備が
討、SANEXプロセスのシミュレーション、カリ
順次据え付けられていく。
ックスクラウンによるCsの分離に関する検討に
ついてCEAから報告がなされた。
このほか、天然ウランが使用できる基礎試験エ
リアLEPIC、モックアップエリア及びガラス固化
カリックスアレーンはサイズ認識によるイオン
選択性に優れていることで知られている。クラウ
処理プラントのためのコールド試験用モックアッ
プエリアを見学した。
ンエーテルで装飾したカリックスアレーン(カリ
ックスクラウン)によるCsの分離研究について
3.おわりに
紹介し、Csの選択性に寄与する因子について報
告された。
分離技術に関するCEAの研究開発は、基礎から
応用まで幅広く行われているが、欧州内での協力
を行うなどして、有意義な成果を効率良くあげて
2.4 その他の分離技術開発
いる様子がうかがわれた。
電解還元析出法による長半減期FP元素等の分
会議を終えるに当たって、本技術協力が大変有
離回収、電解酸化法によるAm/Cm分離法に関す
意義なものであり、今後もMA及び長寿命FPの分
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CEAマルクール全景(平成12年6月23日撮影)
離及び非PUREX再処理に関する技術協力を継続
とした。
することで合意した。また、相互研究者を派遣す
るとともに、共同で研究成果を公開していくこと
次回は2001年10月31日から11月 2 日に日本にて
開催する予定である。
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