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第 28 回群馬消化器病研究会
した. 病理結果は両病変とも高 化腺癌, 粘膜癌, 脈管侵
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襲なし, 完全切除であり治癒切除と診断した.
16.家族性大腸腺腫症に合併した上部消化管癌の2例
萩原
,小野里康博,飯塚 春尚
蘇原 直人,石原
弘(しらかわ診療所
群馬消化器内視鏡医療センター)
柿崎
暁
部小弯前壁の 2 か所のⅡa+Ⅱc病
変の ESD を行った. こちらも病理結果は両病変とも高
化腺癌, 粘膜癌, 脈管侵襲なし, 完全切除であり, 治癒
切除と診断した. 【おわりに】 家族性大腸腺腫症に十
二指腸球部の早期十二指腸癌および多発早期胃癌を合併
(群馬大医・附属病院・肝臓・代謝内科)
小川 哲 ,富澤
直樹(前橋赤十字病院
消化器病センター 外科)
伊藤 秀明
後に前 部後壁, 前
に 3ヶ月
し, いずれも内視鏡治療し得た症例を 2 例経験した. 同
疾患に対しては上部消化管癌の合併にも十 に留意する
必要があると えられた.
(同 病理部)
【はじめに】 家族性大腸腺腫症に合併する十二指腸癌は
17.胃原発腺扁平上皮癌の1例
十二指腸乳頭部に多く, 胃幽門部に胃腺腫を合併する頻
山田 達也,坂元 一郎,大木
度は約 10%と言われているが, 癌化する危険性は低いと
中村 正治(国立病院機構
孝
されている. 今回我々は, 家族性大腸腺腫症に十二指腸
高崎 合医療センター 外科)
球部の早期十二指腸癌および多発早期胃癌を合併し, い
【患 者】 80 歳, 女性. 【主 訴】 労作時息切れ, 心窩
ずれも内視鏡治療し得た症例を 2 例経験したので, 若干
部痛. 【既往歴】 28 年前 (52 歳) より, 再生不良性 血
の文献的
で, 蛋白同化ステロイドの投与を受けていた. 【現病歴】
察も加え報告する. 【症例1】 69 歳女性
[現病歴]41 歳時, 家族性大腸腺腫症にて大腸全摘を
平成 20 年 10 月, 労作時息切れ, 心窩部痛があり, 再生不
行った. 61 歳時, 胃腺腫に対し EMR 施行された. 64 歳
良性 血で治療を受けていた当院内科に入院, 小球性の
時, 委縮性胃炎を認めヘリコバクター・ピロリ菌を除菌.
血の進行を指摘された. 消化管の精査の結果, 多発ポ
69 歳時, 近医で多発胃腺腫を指摘され当院紹介となっ
リープを併存した, 前 部から体下部の進行胃癌と診断
た.[家族歴]母 52 歳時, 大腸癌で死亡. 姉 33 歳時, 大腸
された. 腫瘍部の生検では, 中
癌で死亡. 母方兄弟の 3 人が大腸癌で死亡.[経過]当院
同年 11 月上旬, 幽門側胃切除, D2 郭清術を施行した. 病
での上部内視鏡検査にて体中部小弯にⅡa 様の小隆起が
理所見は, 腺扁平上皮癌で,pT3 (SE),pN0,H0,P0,CY0,
多発し, 表面構造の軽度不整を認めたが, 異常血管は目
M0, fStage であった. 胃内の多発ポリープの病理所見
立たず生検は中等度異型を伴う管状腺腫 Group Ⅲであ
は, 過形成性ポリープであった. 術後は,
り, 経過観察することとした. 一方, 同時に十二指腸球部
え, 因果関係は明らかでないが, 血小板数の改善も認め
前壁に褪色調の小陥凹性病変を認め, NBI 拡大観察では,
られた. 再生不良性
口径不同で樹枝状に枝 かれした異常血管が明瞭に観察
補助化学療法は施行できなかった. 術後 1 年を経過した
され, 腫瘍性病変を疑い生検を施行したが, Group Ⅲ
現在, 無再発で生存している. 【
atypical gland ( 枝を伴う異型腺管で核異型を認める)
平上皮癌は比較的まれで, その頻度は 1 %未満とされて
であった. 家族性大腸腺腫症は十二指腸にも腺腫や腺癌
いる. 今回, 再生不良性 血に併発し, 切除後に 血の改
の発生が多いことが知られ, 生命予後に影響すると言わ
善に加え, 血小板数の改善をみたまれな 1 例を経験した
れるため, 内視鏡的切除の方針とし EMR-C を施行した.
ので報告する.
病理結果は高
化腺癌の所見であった.
血の改善に加
血による汎血球減少のため, 術後
察】 胃原発の腺扁
化腺癌, 粘膜癌, 脈管侵襲なし, 完全切除
であり治癒切除と診断した. 【症例2】 62 歳女性 [現
病歴]43 歳時,直腸癌,家族性大腸腺腫症にて大腸全摘を
行った. 62 歳時, 前 部のビランの生検にて Group Ⅲで
あり当院紹介となった.[家族歴]母 46 歳時, 死亡 (詳細
不明). 母方の従兄
18.内視鏡センターの現状
和田 正浩 (高崎PET 合画像診断センター
内視鏡部)
藤田 欣一,新井 昌明,真木 武志
大腸癌で死亡. 子 10 歳時, 癌死 (詳
(真木病院 外科)
細不明)[経過]当院の上部消化管内視鏡検査にて前 部
当内視鏡センターでは 2006 年 5 月の開院以来, 31000
にタコイボビラン様の所見が多発しており, 2 か所より
件以上 (上部 ; 約 26500 件, 下部 ; 約 4500 件) の消化管
Group Ⅲ atypical gland を認めたが明らかな癌とは言え
内視鏡を施行した. 治療内視鏡は, 大腸 EMR・PP を約
ず経過観察となった. 半年後の再検にて前 部大弯のⅡ
1100 件, ESD を 180 件 (胃 ; 115 件, 大腸 ; 60 件, 食道 ;
a+Ⅱc病変より Group Ⅳ adenocarcinoma suspected に
3 件, 十二指腸 ; 2 件), また, ダブルバルーン内視鏡
て ESD を行った. 同時に幽門前壁のⅡa も ESD を施行
(DBE) を 69 件施行した. 内視鏡センターの現状を報告