平成13年2月9日 超電導工学試験 担当:伊藤・堺 斗内・村上 【問題 1】以下の文章の空欄(a)-(k)および(い)を埋めなさい。但し、(a)-(k)は数式、 (い)については式以 外にも知るところを述べなさい。(配点 35%) 超伝導研究の所期には、ミクロな電子状態も電子間相互作用も全然判明していない。ただマクロな電磁 気的特性として、基本的な B=0 の完全反磁性という事実が分かっているのみであった。これを基にしてマク ロな物性の間の法則として熱力学を用いて、他のマクロな性質について導き出してみることにする。 ギブスの自由エネルギーは、単に温度 T、エントロピーS などの熱的特性だけでなく、次のように外部 磁場 H に対する磁化 M で、電場 E の下での電気分極ベクトル P、さらに圧力p、体積 V などの電磁気的、 熱力学的諸量も含んでいる一般的なエネルギーポテンシャルである。これら用いて自由エネルギーG を表す と G = F − pV − H ⋅ M − E ⋅ P F = U − TS ここで U は内部エネルギー、F はヘルムホルツの自由エネルギーである。この内 P は誘電体以外の金属超伝 導体内ではほとんどゼロなので、最終的には除くことにする。G は全微分可能で次のようになる。 dG = (a) (1) 超伝導は固体であるため、dV = 0、また電圧一定下におかれた場合 dV = 0,dp = 0 となる。また熱力学的に、 入ってきた熱量 q と外部に対してした仕事 W を用いて dU = (b) (c) が成り立つので、これは(1)式中の dG = と等しい。これらを式(1)に代入すると、 (d) (2) の関係が成り立つ。 ところで、ギブスの自由エネルギーG は相空間にわたって連続的に変化するので、超伝導相 S から常伝 導相 N の境界線を横切って状態変化するときにも、その両側で等しく、dG = 0 となる。すなわち G N = GS である。そのために相転位の熱力学では二つの相を関係づけるものとして U や F で議論するよりも G を用 いる方が有効である。 さて、相境界上の1点 (T , H c (T ) ) (K 点とする)での G を求めるために dG を (T, 0) の状態(L 点と する)から磁場 H を増大する経路にそって2点間の磁気エネルギー差を用いて積分を表すと、 G S (T , H c ) = (e) と表現できる。この経路上では T:一定、dT = 0 なので式(2)から G S (K ) = http://handai.net/ (f) + + G S (L ) (3) http://handai-te[or handai-te2].hp.infoseek.co.jp/ ここで超伝導 S 状態では、 B = µ 0 (H + M ) = 0 (4) 従って、M =−H。これを式(3)に用いると、結局 G S (T , H c ) − GS (T , 0) = (g) GN(K) を考えてみよう。 G N (K ) = G N (T , H c ) = G N (T , 0 ) − (5) 一方、K 点での N 側における (h) ところが N 状態では、式(2)における M が S 状態とは異なって、通常の金属超伝導体では、MN であるために結局 G N (T , H c ) ≅ G N (0 ) = 0, B = µ0H (6) 式(5)と式(6)の比較において、K 点では元々エネルギー的に連続であるため G S (K ) = G N (K ) である。そのた め次の関係がえられる。 G S (T , 0 ) = G N (T , 0 ) − (i) (7) この関係は大変重要なもので、導出時の磁場印加過程とは無関係に、純粋に T < TC、H = 0 の状態である L 点において、超伝導状態(S)にある試料は、仮にその電子状態が同じ L 点で常伝導(N)に保った時よりう も自由エネルギーで (i) だけ低いということを意味する。 T = TC では両者は等しいが、T → 0 とともに Hc(T) は式 (い) ますそのエネルギー差は大きくなる。このため、今度は L 点にある試料を T に従って増大するので、ます < TC に冷却すると、エネルギ ー的に安定な S 状態に自然に転位することになる。 今度は L 点の試料 (T, Hc = 0) に磁界 H を印加してゆくと H <Hc では式(5)に従って、 G S (T , H ) = G S (T , 0 ) + (j) これに式(7)を合わせると結局 G S (T , H ) = G N (T , 0) − (k) となり、だんだん H とともにエネルギーは増大して H =Hc の K 点において両者の差はなくなり、G は連続 的に推移する。 【問題 2】超伝導体の特性を表す物理量としてξとλがある。 (配点 15%) (1) これらの量は超伝導特性のうち、何を表したものか。 (2) T = 0 におけるそれぞれの定義式を示しなさい。 (3) T < TC の時のそれぞれの温度依存性ξ(T), λ(T) を示しなさい。 【問題 3】 NS(E) Nn(0) (配点 25%) 次の超伝導体における準粒子の励起エネルギーE を与える式を用いて、T = 0K における準粒子の状態密度 NS(E)を求めて図示せよ。 0 E = ε 2 + ∆2 但し、εはフェルミ面から測った常伝導状態の電子のエネルギー、Δは超伝導 http://handai.net/ + http://handai-te[or handai-te2].hp.infoseek.co.jp/ E ギャップ、また常伝導状態での状態密度はフェルミ面近傍で一定値 Nn(0)をとるものとする。 【問題 4】 (配点 25%) ① 以下の空欄【a】∼【g】に適する語句または式を入れよ。 X 抵抗の無い超伝導体中を流れる電流は【a】の運動と密接に関係して おり、この【a】波はむやみに散乱されずに非常に長い距離にわたっ S N て【b】な関係にある。この性質により超伝導体では以下に示すよう Y な興味ある現象を見ることができる。 図に示すように常伝導領域(N 領域)を囲む超伝導リング(S 領域) Z 内に点線で示されるような閉路を考えてみよう。磁界が存在し、ま たリングを周回する超伝導電流が存在する場合、この曲線上の任意 図 超伝導リング の二つの点の間には【a】波の位相差が生じ、XYZX の閉路の周りを めぐって生じる位相差は、 (∆θ ) XYZX = 4πm 4πe J s ⋅ dl + A ⋅ dl ³ hn s e h ³ ―――――――――― ① で与えられる。ただし、m は電子質量、ns は超伝導電子密度、e は素電荷、h はプランク定数、Js は超 伝導電流密度、A は【c】である。 今 dS を面積素とすると、Stokes の定理および curl A = B より (∆θ ) XYZX = 4πm 4πe J s ⋅ dl + B ⋅ dS ³ hn s e h ³³ S ―――――――――― ② となる。 一方、 【a】波の【b】性より、この閉路の周りの位相差が【d】の n 倍(但し、n は整数)でなければな らないことから、 (∆θ )XYZX =【d】n ――――――――― ③ ――――――――― ④ が得られる。 よって、この②および③の関係からリングを貫く磁束φ が φ =【e】n で与えられることがわかる。 ここに、φ0 =【e】のことを【f】といい、その値は約【g】Web である(但し、h = 6.6×10-34 [J・s], e = 1.6×10-19 [C])。 以上のことから、超伝導リングを貫く磁束はφ0 を単位として量子化されることがわかる。このような 超伝導リングに【h】を組み込んだデバイスは【i】として知られ r、超高感度な磁気センサーとして用い られている。 ② ジョセフソンの基礎方程式を示せ。ただし、ジョセフソン接合の両端での位相差を∆φ 、臨界電流を とする。 http://handai.net/ + http://handai-te[or handai-te2].hp.infoseek.co.jp/ Ic
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