平成14年7月27日 再生計画補足案提出受理(抜粋) - 赤石建設

添付資料目次
1.はじめに
2.経済状況の変遷、そして今後
(1)建設業界の現状分析と、今後の方向性
A.現状に至る状況
B.これからの方向性
(2)(株)赤石建設の現状分析
A.
営業面について
a.不況による受注減
b.競業の激化と利益率の低下
c.赤字工事の直接的原因
d.営業の差別化難
e.新規顧客の減少
B.
財務面について
a.財務諸表上の問題点
b.資金繰表上の問題点
c. 管理費、労務費の問題点
3.再生計画案補足
(1)建設業としての当社再生のありかた
再生計画案の礎とした再生事業計画の基本方針
(2)その具体的計画
A.
①
②
③
④
経営方針(ビジョン)の確立
事業理念(共存共栄主義)
建設事業部、不動産事業部の両翼
独自のコンサルティングセールス
下職会、顧客会員化の確立、維持運営
B.
①
②
③
④
⑤
⑥
経営戦略の構築
今後における成功要因
財務体質の強化(経営審査事項基準)
関連新規事業の模索
組繊の再構築及び人事の改善
地域性に特化(ランチェスター戦略)
赤石建設のIT戦略
C. 経営戦術の策定
① 利益率重視の営業活動
② 対官公庁の営業
③ 民間営業の特殊性
④ 工事粗利益による目標管理
⑤ 工事原価率圧縮
・ アウトソーシングとコネクション
・ 建設 CALS の重要度
⑥ 自給監査能力
D. 事業収支計画立案と評価
① 資金繰りおよび利益計画の策定
② 再生計画の評価
4.
終わりに
1.
はじめに
巷では記録的な不況が継続し「景気回復の兆しが見えつつある」という、
政府の直近の見解も、今ひとつ実感の無い昨今となっていますが、民事再生
法の手続きの開始決定を頂いた当社としては、どうにか活路を見出し、再生
にかける所存です。しかし、日本の経済状態は瀕死の状況であることが明白
で、再生といっても、もちろん政府の後ろ盾があることを前提としてでさえ、
一筋縄ではいかないでしょう。
一昨年に記録した企業の倒産金額は、戦後最大であったし、昨年は戦後最
大の倒産件数、そして今年に入ると6月までは、週に1社の割合で上場企業
が倒産しており、これも戦後最大である。
さらに、当社が再生法の申し立てを申請する前月の本年 2 月には、同月比
較で連続過去最悪の倒産件数を記録、その中でも当社が分類される土木・建
設業の破綻は、過去最高件数を記録し、申請月の 3 月に至っては全国倒産企
業の負債総額は、単月で 2 兆円を超える状態であった。
その 3 月の倒産を原因別でいうと、販売不振、赤字累積、売掛金回収難を
原因とする「不況型倒産」が最も多くなっており、倒産形態では消滅型(破
産、特別精算)が 80 件という、非常に幸先が暗いデーターしか見えてこな
いのだ。
そんな折、単に数字合わせの再生計画案を作り上げても(仮にそれに現状
の景気の分析が加味されていたとしても)、机上の空論になる恐れが高いの
でないかと思う。したがって、当社としては債務の弁済計画となる今回の再
生計画案の根拠として、以下に続く事業計画案を添付することにした。
真に再生する為には同種の成功例を踏襲するだけでは覚束ず、それを疑い
再度検討し、遂行することも大切ではないか。さらには、構造不況に太刀打
ちできるように、仕事の方法に抜本的な対策を講ずるとともに、内部の動き
に対しては一つ一つ精査してゆく環境つくりを目標とする。そして一人一人
の社員が皆、常に洞察し、かつ挑戦してゆく、お互いにそんな意気込みが感
じ取れるようになれば、という願いを抱きつつ、全社一丸となりこの債権計
画を進行してゆこうと考えている。
(4)
2.経済状況の変遷、そして今後
(1)建設業界の現状分析と、今後の方向性
A.現状に至る状況
建設産業の構造変化を建設産業独自のものと捉えると、視点を誤る心配
がある。日本の建設産業構造は、経済、政治、行政などの構造と仕組みの
中で構築されたものであり、日本の社会構造そのものとも言える要素を多
分に秘めているという主張に異論は少ないはずである。
従って、これまでにもさまざまな社会構造の変化がおきるたびに、建設
産業も構造の変化を、要求されてきたはずだ。しかし、国内の建設市場が
一貫して拡大基調を維持してきた事が原因で、建設産業が構造変化を迫ら
れてきた。業界は、それを正しく認識し、かつ適切に対応するという努力
と行動を、怠ってきたのだと思う。
そして近年、バブル経済の終息を境に、日本のあらゆる構造が急変した
ために、建設業も構造変化を一気に迫られることになった。これを機に他
産業にくらべ産業構造改革が遅れている建設業が、勇気と決断をもって構
造改革に取り組み、遅れを挽回しなければ、社会構造そのものから取り残
されることになりかねないのではないか。
そういった状況に対する危機感が未だに建設業に不足しているのです。
幸いにして、政府が経済対策を重視した積極財政策を打ち出し、公共事
業予算の増額を図る政策に転じたことで、国内建設市場の極端な縮小は回
避された。しかし、これは短期的な措置であり、建設市場の縮小基調は変
わっておらず、建設産業が構造的変化を迫られている事と、急いでそれに
対処しなければならないという基本的状況は、少しも変化してはいないの
だ。むしろこの2∼3 年間で、建設産業にとって事態は厳しさを増したと
いっても過言ではない。
なぜなら、国民の意識構造が急速に変化し始めており、今後それがさら
に進行するのは間違いないからだ。例えば、高齢化、少子化の進行、雇用
形態の変化などにより、生活者個人負担が増加する社会構造に向かいつつ
あることを察知して、これまでの国民の公共依存の価値観に、変化が見え
始めているのだ。
(5)
行政構造も、行政改革を目的とした 2001 年1月の省庁再編成により、
行政の仕組みだけでなく、公共事業の、投資理念、発注システム、生産シ
ステム、国と地方自治体と住民それぞれの役割責任分担の仕組みが大きく
変化し、それが明確になると予想される。建設業界がそれにどう対応して
ゆくか、である。
B.これからの流れ
首都東京の建設産業構造の変化も、こうした日本全体の大きな変化と密
接不可分な関係にあるのは旧知のことで、特に首都東京は他の地域よりも
変化に敏感で、その現象も先駆的に表面化する特性があることを考えれば、
首都の建設企業は、積極的に構造改革に挑戦していかなければなりません。
その意味では、首都の建設業の構造改革は、個々の建設企業の経営者自
身が過去の経営判断や価値基準にとらわれない、白紙からの出発を恐れな
い意識改革から始まることを意識すべきなのではないか。
(住民の意識と公共調達理念の変化)
バブル経済の挫折によるさまざまな影響は、まず企業経営の転換を迫り、
次に地方自治体の財政悪化を招き、さらに個人の家計を圧迫するというプ
ロセスをたどりつつある。
従って、首都の住民が社会生活を営んでいく上での個人負担が増大する
事により、税の有効活用に対しての納税者の厳しい目が注がれるように
なるのは当然の事でしょう。納税者の税負担に対する意識は、これまで
より高度でかつ緻密なもに変化し、納税を「義務」の遂行として捉える
一方で、税負担に見合う適正な公共サービスの享受、つまり「利権」の
要求となって顕在化してくる可能性がある。
それは、公共事業の費用対効果の事前・事後調査、経済効率の検証追求
などを、行政側や発注者側に、強く求める形となって現れてくるものと
われる。公共投資の費用対効果が重視されるようになれば、地域と住民
にとって真に必要なモノをできるだけ少ない費用で作り出し、そのモノ
がどれだけ価値を生み出し続けるかを検証する仕組みが構築されてくる
はずだ。
また、公共事業の経済効率化や執行の合理化の追求は、公共工事の発
注システムの再検討を促すこととなり、入札・契約制度の多様化が進行す
ると同時に、従来型の細分化発注を見直す議論や動きが表面化してくる
はずである。
(6)
具体的には、工事の種類や内容によっては最も効率的な発注規模が設
定され`上請け’ のような生産構造は許されない市場となる。公共投資/
バリュー・フォー・マネーの追及、公共事業の経済効率の追求は、現行
の会計法・予決算令、地方自治体・施行令などの関連法の見直しも促すこ
とになってくるはずだ。
こうした公共事業市場の構造変化は、首都の建設業の構造変化を迫るこ
とになり、競争原理と情報開示に裏打ちされた産業構造の構築を要求さ
れてくることが予想される。
競争原理とは、価格競争のことではなく、高品質の生産をいかに効率
よく行うかの競争であり、そのことによって社会や消費者にどれだけ利
益をもたらしかの競争である。
一方に情報開示とは、競争原理に基づいた企業の努力とその成果が正当
に評価されるように、競争の仕組みとその結果を明らかにすることだ。
つまり、競争原理と情報開示は不可分の関係にあり、企業の創意工夫な
どの競争結果が、社会的な評価と認知につながる仕組みが機能する市場に
立脚した産業構造をつくりあげるための二大要素といえる。
ところで、東京都の財政事情を考えたときに、今後のインフラ形成に民
間の資金調達や民間の経営ノウハウを活かすPFI方式、リース方式、
BOT方式などの手法が導入されてくることが予想される。
また、生産方式もVE、DB、CM、PM、などの新しい生産システム
が正式に認知され、工事の種類に応じて積極的に採用していく機運が高
まっていくでしょう。こうした構造変化に、当社赤石建設のような首都
の中小企業が的確に対応していくためには次の点に留意する必要がある。
まず、首都の都市秩序と都市生活を維持向上していくために、公助(国、
都、区、市、町)、互助(地域単位)、自助(個人、企業)の精神に立っ
て、それぞれが応分の負担と努力をしていくという流れの中で、中堅・
中小企業が地域密着型企業として何をすべきか、何ができるかを明確に
して、それを社会に向かって開示していくべきだ。
次に地元企業優先が地元住民利益の優先と矛盾しない道を見出し、そ
れを具体的に且つわかりやすく理論構築する。さらに、これまで建設企
業の最大競争ファクターは価格であり、このために過当競争や、アウト
ソーシング費用を抑制するプライスダウンシステムの色彩が強い生産
構造を、総合工事業者が設計者や、専門施工業者や資材事業者などと連
携した合理的なコストダウンシステムに変えていく必要があるのだ。
(7)
そして次に、従来の企業評価や格付けの指標が経営事項審査からビッ
ドボンド(入札権)の導入による民間機関の審査に移行することも想定
し、企業体質改善強化を推進し、不良・不適格業者が排除される市場の
形成に協力していく姿勢が必要である。
さらには、総合工事業者はというと、その価値とその商品を明確にし
ていかなければならない。専門工事業者の施工管理能力が向上しており、
総合工事業者の存在が生み出すユーザーメリットを明らかにしなけれ
ば、CM方式、異業種JV,コストオン方式などの、新しい生産システ
ムに対処できなくなる懸念がある。
いずれにしても、これからの首都の地域づくりは、行政と住民の共生、
「使う側」と「作る側」の共生、需要側と供給側の共生のなかで進める
ことになると考えられ、その市場構築の中で、地元企業の優位性と貢献
性を明らかにしていくことが重要なのだ。
赤石建設は、CO−,つまり「ともに」や「共生」を意味する接頭語
COを用い、CO−Trial、と呼ぶことにしました。再生計画を1
つの舞台と考えて、Akaishi-CO-Trial=ACT1(1幕目)として、皆
と一緒に挑戦してゆく所存である。
*参考資料
・日本経済再生の展望(国際証券キャピタルマーケット本部)
・経済産業政策の重点(経済産業省/2001 年 8 月)
・建設業界の動向と格付けの視点(東京都建設業協会)
(8)
(2)㈱赤石建設の現状分析
民事再生法申請手続きの1年前より赤石建設第38期経営改善計画を策
定しており、具体的な現状分析や問題点をあげていた。基本的な改善事項
は、再生申請直近の現状に近いものがあるので、ここにその一部を取り上
げ、それを考察することで、これからの再生計画の指針としたい。
A. 営業面について
a.不況による受注減
当社の売上は、平成 4 年度9月決算の 16.8 億のピークに次の表に示す
ように、年々減少の傾向にあります。
平成 12 年になっても約10億円台の売上があるが、その内 6 億円以上
が官公庁に対しての売上である。バブル経済崩壊後、税金が投入されて故
意に支えられた需要である、対官公庁の売上がほぼ横這いか、やや上昇に
推移していることから考えると、民間工事の落ち込みがかなり影響してい
るのがわかる。
また、表面上はわからないが、平成10年前後より、新規顧客からの新
築工事が大幅に減少するが、その分改修改善工事の受注が平均してあった
ことにより売上の体裁は保った形になっている。
しかし、業界全体の不況によるものと、政府の金融政策の影響による資
金調達、そして当社の代表が騙された結果となった(株)ララとの事業の
協調路線の影響とが重なり合って、37期下半期よりの売上が極端に落ち
込み、今期売上げ(予測)が半減することになったのである。
(ちなみに、売上の数字は工事と入金の関係上、半年前の数字が計上され
ており、実質とは半期のずれが生ずる)
32 期
33 期
34 期
35 期
36 期
37 期
38 期
平成
平成
平成
平成
平成
平成
平成
7年
8年
9年
10 年
11 年
12 年
13 年
9月決算期
9月決算期
9月決算期
9月決算期
9月決算期
9月決算期
9月決算期
16.2 億円
12,2 億円
14.3 億円
12.5 億円
9.4 億円
10.5 億円
12.0 億円
b.競業の激化と利益率の低下
近年の大幅な赤字の原因として、競争激化による売上減少の危機感
より、中堅サブコン(三平建設、大日成建設他)の一括下請け工事を
受注し、結果的に大きな赤字工事を毎年のように出してしまったこと
が原因としてある。
そこに多くの会社としての勢力を配分してしまったため、より利益
率の良い工事の受注機会を失ってしまった。
一方で、明らかに採算の悪い工事に対しては、受注をあきらめる強
い営業姿勢と財務体質が必要であった。
(売上より利益率重視の営業の
徹底)
又、官庁工事については、東京都発注工事に於いて、その種類によ
って当たり外れがあり、採算の悪い工事に対しては、勇気を持って自
社発注の工事管理をせず、一括外注で最低利益の確保の道もあった。
C.赤字工事の直接的原因
赤字工事を発生させたもう一方の原因として、バブル時期の管理者
不足による雇用体制の結果、現場管理者、発注管理者の管理能力の未
熟さが、予定実行予算を上回る予算オーバーの工事を生んだ。
近年不要社員のリストラ、又若年管理者の成長により、少数精鋭の
改善の道を歩んでいる。
d.営業の差別化難
最近でこそ異業種から参入してきたリフォーム業者が、様々な手法
で営業アプローチを始めているが、業界自体は、最近まで旧態依然と
したままであった。斬新的どころか、差別化を狙ったと思われる営業
をしている会社はほとんど見かけず、官庁営業が主であった当社も多
聞にもれず他社との差別化を考えた営業方法とは程遠いものであった。
これは、今後の課題のひとつである。
e.新規顧客の減少
これは、上記dに起因するものであるが、減少したのは単に携わ
っていなかったからである。
B.財政面について
a.財務諸表上の問題点
弊社の営業先の重点顧客として、官公庁(東京、江東区)がある。こ
れらの発注指名に選ばれるためには、毎年、経営審査事項の審査が必要
であり、赤字決算は、ランク維持のためには絶望的になる。
前年度の新ランク(8 月より)で弊社は建築 750(前期、同 765)、土
木 633(前期、同 653)点であり、東京都では在来の工事実績を加味す
ることで、かろうじて建築Bランク、土木Cランクを維持している(別
表、経営審査事項参照)。
今後、役所の受注機会の増加は期待できないことを考えると、一件あ
たりの工事価格の大きいAランクを目指すことが、会社成長の鍵であろ
う。
最近の経営審査の点数の考え方は、従来の売上重点主義ではなく財務
体質の健全性、安定性に於かれている。判りやすくいえば下記の如くで
ある。
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
流動資産(現金預金)
固定資産は少なく
動負債(短期借入金)を少なく
固定負債(長期借入金)を少なく
自己資本(資本金、資本繰入金等)大きく
弊社の場合、いずれの数値も悪化の傾向にあり、その改善は急務であ
る。
同業者を比較した場合、社歴、従業員数、技術者人数、売上高、その
他の指数については充分である。
b.
資金繰表上の問題点
弊社の債務の中でかなりの部分を占める手形の発行高が、現時点
(平成 13 年 4 月)での受注計画数から算出すると、約1億∼1.5
億円を超える額で推移しており、その決済のため新たな工事契約の
必要に迫られている悪循環に陥っている。更に、銀行借入金の元金
返済だけでも年間5700万円となっているため、仮に年間利損益
が0であったとしても必ず同額の補充が必要である。(但し、金利
交渉は必要)
一時的な支払不足に関しては、メインバンクのあさひ銀行との折
衝により、契約工事に見合った形でのつなぎ融資で対応してはいた
ものの、再建のための一歩進んだ金利の提言、返済期限の長期化等
による返済資金の流動化に協力してもらうことが出来なかった。
そのためには、新規工事の受注、事業計画、組織再編成の掲示、
不動産売却等の積極的姿勢が求められるのは云うまでもない。
一方、東京スター銀行については、新規借り入れの可能性は皆
無に近いといってよい。従って、弊社としても返済に努めるのみ
である。(但し、金利交渉は必要)
c.
管理費、労務費の問題点
今期、38期の月々の一般管理費は、前年度をふまえ人件費を含
む一般管理費の大幅削減を予算化し、その実績を比較してみたが、
概ねその通り推移した。しかしながら、売上に対する実績の大幅減
によって、残念ながら最終利益に於いて黒字目標を達成できなかっ
た。
売上高の伸び、利益率の大幅増加が望めない現在、来期は更なる
一般管理費の削減を試みなければならない。しかし、今期どの科
目に於いても相当の切り詰めを行ってきた経緯を省みると、基本
的業務活動のあり方、経営システムの抜本的な解決が急務となる
状況である.
(1) 事務所移転による地代家賃等、収入増加
(2)更なる人件費の削減(リストラ、賃金カット)
などが有効であろう。
また、平成13年2月現在の会社員(含、役員)の一覧を別表、
給与査定一覧表に示す。当初24人であった従業員数を年々削減
し続けた結果、現在パートを含め10人となっている。
更なる合理化のためには、来期以降も役員を含めた人員削減を
実施する必要がある。
以上が、民事再生手続き申請を行った1年前の具体的問題点であ
ったが、改善のための時間的問題や資金の調達に限界を生じ、実際の
成果をみるまでも無かったのである。ゼネコンを目指し、ゼネコン
体質への移行を夢見ていたターゲットそのものが、時代に対応する
ものでなく、またそのための力不足も表面化した結果となった。
3.再生計画案補足
(1)建設業としての当社再生のありかた
A. 再生債務者は、設立時から地元を主とした戸建の建築を基幹事業としな
がらも、顧客の要望から事業所や工場、それに寺社仏閣や大規模なJV
までもこなすようになり、近年では売上の半分以上は公共事業が占める
ような状況であった。
しかし、バブル経済が崩壊してからは下請け会社の経営悪化を防ぐ目
的と同時に、自社の売上げの拡大・維持に固執してしまうようになり、
その為いろいろな対策を講じつつも効果があがらず、結果的には自社及
び代表者の資産を食いつぶしながら、自社の売上げと下請けの仕事を維
持するという、本末転倒な状態にあったのである。
今後は、薄利に目をつぶらざるを得ない場合の多い高売上主義から決
別し、当面は売上が半分でも利益率が倍にもなりえるリフォーム業務に
尽力し、小さくも体力の在る会社を目指すことにする。
そして、続けてきた経費・労務費のコストダウンの仕上げ、さらには
地域性を鑑み、関連会社の事業である基礎地盤技術を利用した(江東エ
リアの弱点でもある)軟土での建築をより安全に施行する工法等の販促
と実用を積極的に遂行してゆく計画もある。
それ等の業務に加え、安定収入と経営の機軸となりうる当社旧来の顧
客を会員化する計画を具体化している。既存顧客の約300軒を掘り起
こし、独自の情報収集・提供をすることによってそのコアとなる300
を数倍にして、江東エリアにおける No.1を目指そうとするものである。
B. 本再生計画は、会社の指針を、当社の業種が陥りやすい売上高を追う拡
大生産方式から、収益や仕事の質を重視する簡素かつ本質的なやり方に変
更する(すでにしているが)という、特色を持ってまとめている。
当然、前記事業のコストの削減に気をつけ、温故知新ともいえる旧来の
顧客の再抱え込み、そこから顧客の裾野を広げようとする新規会員(顧
客)の開拓計画、さらにはそれに関連する形で展開しようとする新規事
業をも視野に入れ、収益性が確実に向上するという予測を持って作成し
たものなのである。
(2)その具体的計画
A. 経営方針(ビジョン)の確立
① 事業理念(共存共栄主義)
建設業界の特殊性の一つに、重層下請構造がある。この構造そのものが
建築工事の末端価格の信憑性が問題となる要因となっている。したがって、
ゼネコン不要論まで話題になり、今後日本も、現在アメリカで主流とされ
るCM(コンストラクションマネージメント)方式へ契約形態が変化して
いくと言われている。
ただ単に元請業者として、下請業者を低価格で競争させ、受注戦争に勝
ち抜くだけが方法ではない。ゼネコンとしての監理能力の特異性に着目し、
CMに専業していくことで、下請、元請業者という従来の関係を超えた新
たな生産グループ体を作ることで、資本力の乏しい中小零細建設業者の生
き残れるのではないかと考える。そのためには、価格競争中心の従来の競
争原理を超え、本来の地域住人のニーズをくみ上げることが出来る、その
地域に根ざした集団・組織の構築が必要であり、「まず消費者ありき」を
原点に、今でこそ地域での共存共栄の道を真剣に考えるべきである。
② 建設事業部、不動産事業部の両翼
現時点で元気の良い建設業者といえるのは、安価な土地に高付加価値を
付け販売している会社のみである。土地の有効利用を積極的に展開してい
る会社だけが業績がいい。
今後、土地価格は、ますます安値に供給されることが予想される。更に、
有効利用されないで放置される土地が増えてくる傾向があり、コンサルテ
ィングセールスをモットーとする当社としても、有給不動産活用は今後の
事業展開の柱にすべきと考える。幸い赤石建設は古くから宅地建物取引業
としての認可も受けており、地場の土地に関わる情報は古くから保有して
おり、その着手は容易である。
一方、本来の建築事業としては、競争激化している新築工事に積極的に
参画するのを避け、利益率の安定しているリフォームを中心とする改築、
改装、外構、解体等に焦点を合せ、長年の建築のノウハウと顧客実績をも
とに、地域密着型の生き残り戦略が有効と思われる。これに関しても、先
に記した300件の顧客情報を基に、長年継続してきた建物に関する点検、
サービス業務の密度を高め、現在の営業資源を全てここに投入することで
さらなる効果をあげる予定である。
③
独自のコンサルティングセールス
再生法申請を契機に、新築中心からリフォーム中心へ、そして従来の待
ちの営業から積極的に責める営業へと変革が必須となってきた。そこには
単に建築に関わる知的集団という枠を超えた、新たな生活情報に関わる知
識の収集と提供やサービス業務の必要性が問われている。特にリフォーム
の営業には消費者の生活に関わるあらゆる相談に対応できる、いわばホテ
ルのコンソルジュのような適切なアドバイスができれば、と考えている。
そのサービスを、当社社員なら誰でも提供できるノウハウが完成したら、
他社との差物化をする際に、非常に強い武器となる。
現在、赤石建設再建に向けての支援者の一部から、それぞれの会社及び個
人の顧客情報を(東京都内東部地域に限定してだが)、グルーピングして
カテゴライズして、お互いの商売に反映させる仕組みを作ってほしいとの
要望もある。
従来、建築業界では、
建築士、設計士
宅地建物取引業者
土地家屋調査士
不動産鑑定士
測量士、税理士
等の専門家の力を借りるだけで事足りていたが、より細部に渡る、また
広範囲に渡る、知識を有する専門家がいれば、より高度なサービスとアド
バイスが提供でき、受注獲得のチャンスが増大すると思われる。以下に、
今後積極的に力を貸して戴ける協力体制の専門家を列記する。
インテリア、アウテリア関連の専門化
色彩、デザイン、環境関係の専門家
社会保険労務士(助成金申請代行等含)
ファイナンシャルプランナー、公認会計士
銀行、証券関連の専門家
生損保等リスクマネジメントの専門家
弁護士、司法書士、
介護福祉士等老人福祉関連の専門家
コンピューター関連の専門家
その他各種コンサルタント等
問題は、これらの力が特定の地域に根ざした、地域のためになる情報を
発信できるか否か、であり、その主旨について共通の認識を持つメンバー
で構成することができるかどうかである。当社の民事再生法申請はある意
味、地域で商売を営んでいる方々にはショックな出来事であったであろう
し、他人事では無いとの声を頂く。
こういったケースを防ぐために(大手企業の参入にいずれの業種も危
機意識を持っていることから)、真の地場産業の活性化を目指すことを目
的として、その力を結集することでは利害が一致する。これを集約、拡大
することで新たな地域密着型の営業、当社で言えば、リフォームの道が開
けると確信する。
④
下職会、顧客会員化の確立、維持運営
建設業界でサービスを提供する本来のグループは、各専門職の下請けの
組織である。最今の不況で、これらの会社も従来の考え方では維持すら出
来ない状態であり、専門職の域を脱し、多能工的リフォーム市場に進出し
始めている。まさにリフォーム業界も競争激化の時代に突入したといって
よい。地場のリフォームに携わるこれら専門業者の力を結集することは、
大手リフォーム会社の参入に対抗する唯一の手段であるにも係わらず、実
際はわが道を行く親方日の丸的発想の会社が多いので、有効な対応策がと
れていない。
赤石建設の下職会に「再友会」というのがある。彼らにとって、赤石建
設の民事再生法申請は、身近な老舗会社でありながら、時代に対応できな
かった結果を目の当たりにし、その事実を真摯に受け止め、新たな地場産
業の生き残りを真剣に考えるきっかけを与えた。そして、今回の民事再生
を期に、元請従属型の旧態依存とした会を脱皮し、自らの力で活路を見出
し、積極的に先手を打ってでる会社も現れた。
ここに来て、前述の新たな共同体としての地場産業の意識を共に理解し、
共にこの窮地を打開していく新生「再友会」の結束が必要であり望まれて
いる。
一方、得意先であるの地場の中小零細企業も、その将来性に深い不安を
抱いている。従来の従属関係の立場でなく、前述の生活情報を共有できる
仲間として共に情報を共有化し、それぞれの商いに役立てていく場を求め
ているのは確かである。
赤石建設はこれらの人脈を地域の情報ネットワークとして組織化し、
様々な生活、経営情報をシステム化することで、新たなコミュニテイーを
形成することを模索している。また、それらの人脈を会員化することで、
維持管理の費用を捻出するばかりでなく、リフォーム事業を展開するため
の有効な仕組みを同時に作り上げることが出来る。
建物の瑕疵担保責任の期間を経過した定期健診や建物診断は、まさに会
員ならではのサービスと位置付ける良い例である。
B. 経営戦略の構築
① 今後における成功要因
赤石建設再生の道は、これからの益々の日本社会の高齢化と低成長経済
の環境下での建設需要を考えれば、大変厳しい状況が予測される。一握り
の勝ち組として生き残るためには幾つかの成功要因を整備し、それを至急
実行に移さなければならない。すなわち、
a. 時代にあった財務体質への移行
b. 関連新事業の展開
c. 組織の再構築及び人事の改善
d. 地域に特化
e. 赤石建設独自のIT戦略
の各項目について具体的戦略を展開する必要がある。
② 財務体質の強化(経営審査事項基準)
今日の資本調達手段は、従来とは異なり多様に変化している。同時に、
銀行を中心とする金融機関だけを頼りにして経営基盤を作るのではなく、
スポンサー企業やパートナー企業を含めた他の資本調達の道を模索し、更
に営業協力を含めた相互支援の体制を確立し、共存共栄の中で生き残りを
図る必要がある。ましてや民事再生会社にとっては尚更のことである。
当然、金融機関等の信頼を獲得するまでには、数年の年月が必要とされ
ることから、身の丈の資金調達能力を踏まえたうえで、受注工事の規模も
従来のように無理はせず選別受注をし、自己資本比率、固定比率、流動比
率等の各財務指数の改善を損なうことなく、健全な成長を目指すべきであ
る。このことは、官公庁工事における建設業経営審査事項の評価基準にも
一致することで、従来の売上高拡大偏重主義を脱皮、健全なる財務体質に
移行し、付加価値の高い生産性を上げれば、自然と結果として、高得点、
高評価を得、しいては多くの受注機会に恵まれることになる。
赤石建設第39期(平 13 年 9 月)と8年後の再生債権弁済終了後のバラ
ンスシートの対比を予想した結果を下表に示す。これによると、平成22
年9月期決算では、大幅に各財務指標が改善され、将来における官公庁工
事受注に相当有利な条件を備えることが出来ると予測される。
③
関連新事業の模索
会社再生の中長期目標を達成するための具体的事業は、次の項目である。
a. 不動産事業の具体的展開
赤石建設の再生に向けて地域(江戸川区、江東区)の土地所有者がスポ
ンサーとして協力することが具体的になった。現時点ではオーナーの所
有する物件の維持管理メンテナンスが主流であるが、マンション、ビル
の建物管理により固定収入の確保をしつつ、資金的条件が整えば、不動産
の有効活用(小型マンション建設、建売事業)に展開が可能となる。
b. 軟弱地盤改良工法の活用
軟弱地盤、及びそこにすでに建っている小規模建物(木造構造物、鉄
骨 3 階以下の構造物)の耐震性、耐久性をより強固にするために開発さ
れた地盤改良のための新工法「ND圧密工法」は、
・小型機械で作業が出来、狭い敷地、狭い道等に対応できる
・工期が短く作業に富む
・地盤改良材は、環境に配慮した自然材料で施工が可能
・木造住宅、または建売用地の地盤に適し、低価格である
・建物の地盤及び基礎部分に関連した顧客クレームにも対応
の特徴を持っている。今後、一般消費者の欠陥住宅の知識復旧に伴い、
建物だけでなくその基礎部分、更に、その地盤に関する関心は高まり、
そのための改良の需要が見込まれている。
我が社は、従来よりその営業権を持っていたものの、売上規模の効果
から積極的営業に活用できなかった。再生を期に、売上重視から利益重
視に変わるこれから、リフォーム営業の強力な支援ツールとする予定で
ある。
c.
生活コンサルティングサービスと顧客管理システム
赤石建設の再生に向けての強力なサポーターの一つに、前述した民事
再生法を期にネットワーク化した専門家の集団がある。また新たな枠組
みの中の下職会も立ち上げつつある。安価で顧客の財産管理をサポート
するコンサルティングシステムを構築することは、消費者と地域に密着
したリフォーム、リニューアル営業展開の強力となる。
顧客の会員化は、大事な財産である顧客の建物管理をし、リフォーム獲
得に繋げるうえで、有効な手段となろう。現在平成15年10月稼動目
標にシステムの構築を作り上げている。
④
組織の再構築及び人事の改善
当社の民事再生法申請を期に、社内体制も大幅に変わりつつあって、リ
フォーム事業に特化するための人材を集約することが当面の課題である。
平成14年6月末時点で総人員10名だが、一部アウトソースによって外
注に依頼することはあるものの、今後の再生計画の実現のためには、売上
規模、固定費の計画上の安定化が必要であり、人員の増減は全く予定して
いない。
詳説すると、従来の採算性の悪い事業を切り捨て、得意分野に特化する
には充分なスタッフではあるが、今後の成長を考えれば、建築関連の各資格
(特にリフォーム関連)取得を目標とした更なる個人の能力アップが必須
であり、そのための会社としてのバックアップ体制も必要である。現在資金
的な面から労働省の各種助成金制度の活用を検討しており、計画的に運用
することで再生計画の財務面の安定化を図るつもりである。
一方、前述の新規事業に関わるスタッフについては、別途、アウトソース
で対応し、結果主義の対価でコスト管理することで、リスク負担を最小限に
留め、固定費の増大に歯止めをかけている。
それらの人事に関わる全体的な組織化については、再生計画に基づく事
業が軌道に乗るまでは、事務的スペースについては、本体である赤石建設
の負担とし、それ以外の費用については、全て外部委託者の責任範囲とする
ことで対応し、短期間で赤石建設の再生を可能にする方針である。
⑤
地域性に特化(ランチェスター戦略)
地域密着型企業を目指す中で、顧客管理システムを含めた生活情報ネ
ットワークを構築し、それをリフォーム事業に展開している中小零細企
業は、まだ見当たらない。一部大手建築関連企業が運用しているものの、
物理的に全国区で適用しているシステムであり、それぞれの地域に特化
した仕組みとは言えない。
また、大手に負けない最大の特徴は、システムのみならずそれを運用
する人的パワーである。その地域に生活し、その地域に根ざした人材が
窓口になっていることである。
この考え方を実践に移し結果を出すことで、よりきめの細かい情報網
を活用し、地域に特化した中小企業であるがゆえに可能なリフォーム営
業のビジネスモデルを作り上げることが最終的目標である。
⑥
赤石建設の IT 戦略
ランチェスター戦略でいうところの弱者の戦略である、小地域での No1
を目指すやり方を展開してゆくには、IT導入は不可欠である。グループ
ウエア等による営業管理もそうであるし、建設 CALS、また、今後の官公庁
受注に関しての電子入札への形態の移行を考慮すると、必須であり、必要
最低限の準備である。承知のとおり、国土交通省では、電子入札の運用を部
分的に実施しているし、今後工事規模の大小に拘わらず西暦2004年ま
でには全てこの方式に移行することになっている。同時に我が社が最も影
響ある地方時自体,すなわち東京都、江東区発注の入札形態も追従すると
言われていることを考えると、一刻も猶予はならない。
現在それら建設業を取巻く社会的環境に対応すべくITの具体化を進め
ており、現在、パソコンネットワークの構築を完了し、基本的な事務、営
業管理、工事管理等に活用し始めた。更に前述した顧客管理システムや地
域情報ネットワーク等のより高度なシステムに移行するため、アウトソー
スを含めた組織体制の構築に努めている。
C.経営戦術の策定
①
利益率重視の営業活動
赤石建設の過去の工事利益率を工事種類別に分析すると以下のように
なる。
官庁工事で一件当りの工事金額が 1 億を超えるもの
総利益率10%を下回る物件が多いが、赤字工事にな
るリスクは少ない。
官庁工事で一件当りの工事金額が 1 億未満のもの
総利益率は10%を超え、リスクも少ない。
民間工事で一件当りの工事金額が 1 億を超えるもの
総利益率10%を下回り、リスクも多い
民間工事で一件当りの工事金額が 1 億未満のもの
総利益10%前後であるが、新築に関してはリスクが
多い
民間工事で一件当りの工事金額が1000万未満のもの
総利益率15%前後で、比較的成約期間が短くて済む。
民間工事で一件当りの工事金額が 1 億未満のもの
総利益率20%を超え、リスクはほとんど無い。売上原
価に関わる社内人件費は増大する。
総利益率は近年受注競争の激化により総じて低下の傾向にある。この
数年業績低迷の最大の要因であった大型工事受注については、当初から
リスクを見越したうえで見積し、いわゆるゼネコン体質から脱却する。
小型工事、リフォームを中心とするリニューアル部門については、20%
を超える高利益率を確保、リスク負担も少ないことを含め、今後の会社
再建の柱と位置付ける。そして会社の人的パワーをそこに結集すること
で、リフォーム部門だけで生き残ることが可能なスキームを確立する。
②
対官公庁営業
再生決定した今年度の決算予想(平成14年9月)は、再生債権の免除
による免除益があるもの、資産の部の不良債権の評価損、固定資産等の
時価評価損を計上することで、大幅な債務超過が予想される。
対官公庁営業に対しては、事前に経営審査事項を受け、施工能力にあ
った評点付けをされる。そしてそのランクに応じた工事の入札参加を希
望することになる。しかし、債務超過がある限り、従来の東京都及び江東
区ランク(Bランク)を維持することは困難となろう。従って、今後の
計画では、一刻も早く債務超過を無くすと共に、当面(今後3年)は、官庁
工事を全く当てにしない再生計画を立てる必要がある。
一方でその時の会社の財務内容のみならず、指名参加に有利に評価さ
れる過去の工事実績は、過去5ヵ年有効であることから、3年から5年
後の再起を見据えた上で水面下の営業活動を推進する予定である。
③
民間営業の特殊性
我が社の民事再生法手続きの動向は、地元住民の間では多少なりとも関
心事の一つである。
そこで、地域に特化した民間営業の具体的戦術について以下の如く考
える。すなわち、
徹底した地元の建物定期健診、巡回営業(年4回)
新聞折込、チラシ等によるリフォーム営業
地域住民(主婦、資格者)を利用したマーケテイング網の組織的営業
社長個人の人脈ネットワークに対するDM
ホームページ、その他の広告媒体を利用したネームバリュー作戦
24時間対応FAX見積受付サービス
以上、再生法影響下における地域での信頼を短期間で一新するには、上
記媒体を利用して、積極的に会社再生課程に関する正しい情報を公開し、
トップ自ら地域に出向くことが必要であると考える。
④
工事粗利益率による目標管理
今まで、担当者に任せることが多かった工事の原価管理を、経理と密
接に連携する社内会議、定例原価会議を慣行、総利益率20%以上確保
の意識徹底を図る。同時に、目標達成に対する奨励金制度と罰則規定を
導入し能力主義に移行する。
また、施工技術のノウハウの共有化や経験不足な監理者に対するバッ
クアップ体制として社内IT化による情報交換のシステム(ノートパソ
コン、デジカメ、電子メール等を利用)のうえで、より効率的なリフォ
ーム監理を行う。
⑤
工事原価率圧縮
・アウトソースのシステム化と人的ルートの併用
土地有効利用、財産管理、税務、法律、金融、保険、労務、老人
福祉等の地域に根ざした専門家による生活情報提供ネットワークを
構築し、顧客、下職を含めた共存共栄の理念に基づく地域情報シス
テムを確立する。
これら、リフォームに関わる生活情報の提供により、付加価値のあ
る営業展開が可能となり、実質的にダンピングの無い高利益率の工
事獲得が可能となる。
また、不得意な部分であった、大型工事、新築工事の監理について
は、価格の安定した外部人材を活用し、長期に渡り人件費の増大を防
ぐと共に、IT化等の未経験な開発業務については、アウトソースで
対応し、これからの企画型プロジェクトに対応できる人的ルートを
作り上げることで、より業務の効率化が進み、工事原価の圧縮を可
能にする。
・建設 CALS の重要性
現在話題となっている建設 CALS は、中小零細企業にとって、これ
からの新たな時代に対応できるか否かの最大の関心事であると言わ
れている。
行政主導で始まり、西暦2004年稼動を目標に開発、試験稼動
した新たな建設生産情報システムとも言うべきCALSは大手建設
業者だけの問題ではない。
官公庁の電子入札システムの実施もこの一環であり、国土交通省、
東京都においては、官報において、実施スケジュールと業者が対応
すべきハードの設置条件やソフト面での適応方法について具体的指
針が発表されている。我が社においては、ハード面の対応は完了済み
であるので、それを運用する人材の教育が必要とされる。
一方で、CALSに於ける建設生産情報の集約化と共有化に立ち
遅れることは、より低価格で効率の高い生産物や生産方法を導入す
るビジネスチャンスを失うことにつながる。現在外部スタッフによ
り、そのための調査研究を進めている。
⑥
自給監査能力
・プラン・ドウ―・シー・チェック
計画、実行し、そしてその評価をし、問題を改善し、新たな計画を、、、
昔から経営計画策定のサイクルとして言われる基本的循環である。
これからの建設業においては、そのサイクルで得られる様々な技
術的ノウハウが会社の蓄積となる。ややもすれば、結果だけが全て
の個人能力主義へ移行せざるを得ない状況ではあるものの、その情
報管理が会社の生死を決めることになる。
我が社における再生法申請の決断の最大のポイントは、従来の顧
客が今後引き続き新生赤石建設の顧客として取引していただけるか
にあった。大方の取引先が、会社よりも退社した担当社員との結び
つきを優先しているのかと危惧したが、結果、そうではなく、取引
先と担当者、上司、社長(会社)との関係、これらのバランス感覚が
大事であることが分かり、それに対応する組織力があると確信出来
たからである。
プラン・ドウ−・シー・チェックは、個々の社員だけの能力、効率
アップを促すものではない。一つの事業の検証を末端社員からトッ
プの社長まで共に実践することで大きな成果が期待できる。大手企
業では決して出来ないし、地域に根ざした中小企業だからこそ可能
なのである。
地域にとって本当に必要な建設業とは何か、日々、個々としてこ
の自給監査能力に磨きをかけ、組織として会議等で慣例化すること
にする。
D.事業計画の立案と評価
①
資金繰り及び利益計画の策定
今後 8 年にわたる事業計画を具体化したプランとして、本文別表に弁
済計画表として示す。また今後 1 年の短期資金繰り表を別表ロに示す。
また、今回の再生を成功ならしめる要因として個人財産(社長、他)の
土地、建物の売却が上げられる。その明細と売却予定価格を別表ハ 所
有土地一覧に示す。
②
再生計画の評価
今後再生計画に基づく会社の将来予測をする方法として、会社の財
表諸表を用いた財務分析の方法を用い評価することにする。
サンプリングとして、赤石建設の以下の期を取り上げ、代表的財務指標
を時系列に比較、評価する。すなわち
安定性の評価
収益性の評価
成長性の評価
効率性の評価
安全性の評価
自己資本比率
総資本経常利益率
売上高伸び率
棚卸資産資産回転率
流動比率
を用いて評価すると共に、総合的評価として、
「レーダーチャート」を
用いた分析を行う。
但し、本再生計画の基本的目標は、従来の売上重視の考え方を一変し、
利益率重視の再生案であることから、成長性の評価については、その
ことを踏まえたうえで、再評価することを前提とする。
また、時系列的に取り上げる期については、以下の如くとする。すな
わち
第38期 平成13年9月期 再生法申請直前期実績
第39期 平成14年9月期 再生法申請時の期予測
第41期 平成16年9月期 別除権土地売却完了期予測
第47期 平成22年9月期 再生債権弁済完了期予測
第49期 平成24年9月期 再生計画申請より10年後予測
の事業における転換期を取り上げた。
また、他社のサンプルも参考にし、将来の目標値の設定につなげるも
のとする。
別図イ
別図ロ
別図ハ
別図二
別図ホ
別図へ
安定性の評価
収益性の評価
成長性の評価
効率性の評価
安全性の評価
総合的評価
自己資本比率
総資本経常利益率
売上高伸び率
棚卸資産資産回転率
流動比率
レーダーチャート
以上の検討を加えると、いずれの数値も改善が見られ、具体的数値
目標とて掲げることが出来る。
4.終わりに
現在、基礎およびそれを支える地盤が、建築業者や一般ユーザーにとって重大
な関心事になっています。その背景には、釧路地震や阪神大震災、さらには予
想される東海地震によって、建物の耐震性への関心が集まっているからです。
そのような中で、建物の耐震性はもとより、地盤の軟弱や地質による自然災害
の被害や液状化、不同沈下などの耳慣れない現象もクローズアップされていま
す。
また、欠陥住宅問題もメディアで取り上げられ、社会問題となっています。
その原因は建設地の地盤、地質に起因するものが多く、それらが背景となって
平成 12 年度には品確法が施行され、建築業者に対しては長期保証の義務化など、
住宅建築を取り巻く環境も一段と厳しくなってまいりました。
こうした中、基礎およびそれを支える地盤の重要性は言うまでもありません。
つまり、住宅は、地上の目に見える部分だけをしっかりつくっても、もちろ
ん頑強な家はできません。基礎やそれを支える地盤こそが、丈夫な家づくりを
進める上でカギを握ると言えます。
さて、何をいいたいかというと、会社の再建、または組織つくり,強いては
日常生活までもすべて、基礎が大事である、ということです。
再生計画案で、さまざまな提案や主張をしてきました。しかし、それらは、
すべて、基本・基礎があって初めて成立するものなのです。当社は、未来の子
供たち、そして現代のなかま、さらには私たちが今ここにいられる礎を作って
くれた祖先たち、皆に感謝をして、基本を忘れることなくやってゆこうと思っ
ています。
そう、ACT2(2 幕目)へ向かって、今、前進をはじめます。
株式会社赤石建設
社員一同
別
図
別図イ
別図ロ
別図ハ
別図二
別図ホ
別図へ
別
参
安定性の評価
収益性の評価
成長性の評価
効率性の評価
安全性の評価
総合的評価
表
別表イ
別表ロ
別表ハ
一
一
覧
自己資本比率
総資本経常利益率
売上高伸び率
棚卸資産資産回転率
流動比率
レーダーチャート
覧
財務分析表
短期資金収支(月間)表
所有物件一覧表
物件評価1−22
考
資
料
建設業の現状分析と今後