「2006年診療年報」からの抜粋 - 北九州市

内 科
丸山 俊博
1.内科の概要
年よりもやや減っている。感染症と膠原病および
(1)概要
その他の疾患は合わせて、入院件数で約13%であ
るが、在院日数が短いので、延入院数は約7%に
内科全体は一般内科、糖尿病内科、消化器内科、
なる。
循環器内科、呼吸器内科、心療内科、および総合
(3)担当医
診療科の7科に分れている。そのうち一般内科は
常勤8名のスタッフのうち、血液担当が3名、肝
肝臓病、血液疾患、感染症、膠原病を担当する。
2002年度からは総合診療科が設置され、一般内科
臓担当が3名(2007年に1名が退職)、膠原病と感
と共同で総合外来を担当している。
染症担当が3名で、2004年度には内科所属の研修
一般内科の病床数は77であり、3つの病棟にま
医が3名いたが、2005年度からは制度の変更によ
たがっている(別館3階・4階病棟、本館6階南病
りスーパーローテイトの研修医のみとなり、2006
棟)が、急患などでその他の病棟に入院する患者
年度も同様である。膠原病と感染症担当医が総合
も多い。別館3階には無菌室が7室ある。
診療科を兼務している。
(4)外来担当
(2)入院患者実績(表1)
2006年は延入院数25,878人で、1,038件の新入院
内科の初診(表2)はそれぞれの領域で担当日
があり、入院実患者数は650人である。2005年と
が決っている。また一部は兼務で総合外来を担当
比べ、入院件数や患者数がやや減少し、平均在院
している。再診(表3)は全て予約制である。
(5)カンファレンスなどの週間予定
日数が24.9日とやや延びている。血液疾患は延
15,051人、新入院が453人、入院実患者数は203人
毎週火曜の午後(16:00∼17:00)には内科全体
である。患者数は不変で、平均在院日数が33.2日
で症例検討を行なっている。内科としては月曜の
とやや延長している。入院業務の約60%を血液疾
夕方に(17:00∼)その週に入院した患者の検討
患が占める現状は変わらない。肝疾患は延9,098
を、木曜の午前中に主任部長による病棟回診を、
人、新入院が453件、入院実患者数は340人で、昨
そのほかに各診療グループによる入院患者のカン
表1.2006年の内科部門別入院患者
年間延
入院数
部門
(人)
年間入院
件数
(人)
年間入院
患者数
(%)
(人)
(%)
平均入院
回数
平均在院
日数
1日当り
入院患者数
(回)
(日)
(人)
血液
15.051
453
43.6
203
31.2
2.23
33.23
41.2
肝臓
9,098
453
43.6
340
52.3
1.33
20.08
24.9
内科
1.729
132
12.7
81
12.5
1.18
13.10
4.7
計
25.878
1,038
100.0
650
100.0
1.60
24.93
70.9
内科には感染症部門、膠原病部門とその他の疾患が含まれる。
表2.初診担当
部門
総合外来
月
水
木
金
部門
前田貴子 眞柴晃一 眞柴晃一 眞柴晃一 前田貴子
大野裕樹
杉尾康浩
感染症
膠原病 前田貴子
丸山俊博
月
火
水
木
金
肝 臓 河野 聡 丸山俊博 (河野聡) 河野 聡 丸山俊博
杉尾康浩
肝 臓 (河野聡)
血 液
表3.再診担当
火
河野 聡
血 液
青木健一 杉尾康浩 大野裕樹 青木健一
感染症
大野裕樹
杉尾康浩
青木健一 杉尾康浩 大野裕樹 青木健一
眞柴晃一 眞柴晃一
膠原病 前田貴子 古郷 功 前田貴子
眞柴晃一 眞柴晃一 眞柴晃一
前田貴子 古郷 功
36
古郷 功
ファレンスをほぼ毎週行なっている。
数紹介されている。北九州地区の基幹病院として、
(文責 丸山俊博)
近隣の医療施設とも密接に病診連携を取りながら
診療にあたっている。また自己免疫性肝炎や原発
2.血液部門
性胆汁性肝硬変、これらのオーバーラップといっ
(1)概要
た免疫異常に起因する各種肝疾患についても、症
当センターの内科血液グループでは急性白血病
例の蓄積を行い最新の診療を目指している。
(2)週間予定
や悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などの血液悪性腫
瘍に対する治療戦略として造血幹細胞移植を中心
月∼金曜午後:肝生検、経皮的エタノール注入
として行っています。移植前処置は超大量化学療
療法、ラジオ波焼灼療法、血管造影等の処置
法から抗癌剤を減量したRIST(Reduced Intensity
水曜16:00∼:肝疾患カンファレンス
(3)診療内容・実績
Stem Cell Tranplantation)など多様です。移植源
としては従来の自己末梢血、同種末梢血に加えて
2006年の当科における年間の肝疾患治療目的の
臍帯血が最近増加しています。これらの移植前処
入院件数は延べ457名であり、肝炎患者あるいは
置や移植源の多様化によって従来は適応外と判断
肝腫瘍を有する患者に対して肝臓の正確な状態の
された高齢者や臓器障害を有する患者さんにも移
把握また確定診断目的のため肝生検を施行してお
植が施行可能となったり、日々増悪する疾患に対
り、2006年における施行回数は肝生検は85回であ
して迅速な移植が可能になったりと治療戦略の幅
あり、肝腫瘍生検は23回であった。2004年12月か
が拡がっています。
らペグイントロンが導入され、今まで著効率の低
(2)実績
かったC型慢性肝炎患者に対してペグイントロン
昨年一年間で自己末梢血幹細胞移植20例、同種
とレベトールの併用療法の導入が行われ、2006年
骨髄移植5例、同種末梢血幹細胞移植9例、同種臍
のインターフェロン(IFN)治療患者数は77名に
帯血移植14例、併せて48例となっています。これ
達した。
は朝日新聞社発行の[いい病院2007]の79頁に全
B型肝炎については、その急性増悪時また非代
国ランキングで第8位として掲載されました。
償期肝硬変の肝炎悪化時のコントロールに際して
(3)担当医
ラミブジンの使用により治療奏功率の向上を図
大野裕樹(内科、部長)
り、ラミブジン耐性となった患者に対しては同様
杉尾康浩(内科、部長)
の抗ウイルス薬であるヘプセラを併用していた
青木健一(内科、部長)
が、より耐性のできにくいエンテカビルが2006年
(文責 大野裕樹)
7月から製造販売承認がなされ、今後さらに治療
成績の向上が図られるものと考える。
3.肝臓部門
肝硬変については、合併する静脈瘤、腹水や浮
(1)概要と基本方針
腫・黄疸、肝性脳症など多彩な病状に対し治療を
対象とする肝疾患は、B型・C型をはじめとす
行っており、薬剤師によるベッドサイドでの薬剤
る各種ウイルス性肝疾患(急性・慢性肝炎、肝硬
情報提供や服薬指導も取り入れている。特に食道
変)および肝細胞癌、自己免疫性肝疾患、アルコ
静脈瘤については、その破裂により全身状態が急
ールや薬物等の代謝性肝障害、脂肪肝、胆道系疾
速に悪化するため予防的治療に重点をおいてお
患など多岐にわたる。中でもC型肝炎をはじめと
り、2006年には消化器内科の協力を得、内視鏡的
するウイルス性肝炎に関しては、北九州地区は全
食道静脈瘤結紮術および硬化療法を83症例に対し
国1・2位を争う高浸淫地区であり、慢性肝炎∼肝
て施行している。
細胞癌まで各種の段階の患者が周辺地区からも多
また各種画像検査による癌の早期発見に全力を
37
あげており、2006年における新規肝細胞癌患者は
河野 聡(内科、部長)
77人、肝細胞癌関連患者の延べ入院数は266人に
2007年3月から1名欠員
及んだ。肝細胞癌に対してクリニカルパスを用い
(文責 河野 聡)
て血管造影による検査・治療を系統的にすすめ、
4.膠原病部門
2006年は229回の血管造影を行い、併せて加療を
(1)概要
行っている。エコーガイド下にて加療可能な肝細
胞癌に対しては積極的に経皮的エタノール注入療
現在日本リウマチ学会専門医2名で診療に当た
法(PEIT)やラジオ波焼灼療法(RFA)といっ
っている。対象疾患は関節リウマチが圧倒的に多
た局所療法を行っている。2006年のPEIT施行患
く、その他全身性エリテマトーデス、強皮症、多
者数は40名であり、延べPEIT回数は116回であっ
発性筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、シェー
た。また、RFA施行患者は47名、延べRFA回数は
グレン症候群、混合性結合組織病、ベーチェット
54回であった。現在、RFAを積極的に施行してお
病、大動脈炎症候群、ウェゲナー肉芽腫症、成人
り、人工胸水・人工腹水を作成し、比較的局所治
スティル病、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎
療が困難であったドーム直下あるいは肝表面の肝
などである。
細胞癌に対してもRFAを施行している。
TNFα阻害薬infliximabやetanerceptが導入され、
この5年で関節リウマチの治療が大きく変わって
2000∼2006年局所診療件数推移
120
246件
100
きた。現実にDMARD多剤無効例でも寛解に入れ
PEIT
RFA
ることが可能となり、また早期関節リウマチでは
TNFα阻害薬治療により治癒の可能性が議論され
80
ている。当センターでは可能な限り早期から
治
療 60
件
数 40
salazosulfapyridineまたはbucillamineを開始し、4∼
8週後に効果不十分であればmethotrexateを、12週
後効果不十分であればTNFα阻害薬を勧める方法
20
0
を採っている。既にinfliximabは30例に、
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 年
etanerceptは25例に投与した。問題になっていた
当院内科は血液疾患・膠原病・感染症といった
etanerceptの自己注射の問題も、外来看護師の協
全身疾患を対象としており、これらの疾患に合併
力により最近では全例自己注射に移行できてい
したり使用する薬剤に起因する肝障害について
る。ただTNFα阻害薬も万能ではなく無効例や再
も、他部門の医師と協力して診療にあたっている。
燃例も一部で出ており、無効例でのinfliximab、
また、自己免疫異常による各種肝障害を、九州大
etanercept相互の切り替えも何例か経験した。
学第1内科を中心とする多施設間で登録して、診
今後の課題としては、慢性ウイルス性肝炎(特
断や治療の質の向上にも努めている。
にB型肝炎)や間質性肺炎合併のRAをどうする
これらの治療成績や貴重な症例について、福
か、TNFα阻害薬の増量が認可されるか、IL-6阻
岡・北九州地区をはじめとする研究会や勉強会、
害薬MRAのRAへの認可とTNFα阻害薬との使い
また肝臓や消化器関連の学会へ活発に発表してい
分けなどの問題が挙げられる。
(2)実績
る。常に最新の医療情報や技術を患者へフィード
バックできるよう心がけ、診療成績を高めていき
2006年の1年間では関節リウマチ136名、全身性
たいと考えている。
エリテマトーデス12名、強皮症16名、多発性筋
(4)担当医
炎・皮膚筋炎2名、ベーチェット病5名、リウマチ
丸山俊博(内科、主任部長)
性多発筋痛症2名などの患者の紹介を受けた。
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2007年もTNFα阻害薬、tacrolimus、MRAなど
前田貴子(総合診療科、部長)
の新しい治療法を積極的に取り入れていきたいと
(文責 眞柴晃一)
考えている。外来初診日は月、木曜日である。
(3)担当医
古郷 功(内科、部長)
前田貴子(総合診療科、部長)
(文責 古郷 功)
5.感染症部門
(1)概要
当センターは、陰圧空調設備を整えた感染症病
棟(個室5床を含む16床)を擁し、感染症法にお
ける2類感染症指定医療機関である。港湾、空港、
陸路など国内外の物流拠点となっている北九州市
と周辺地区で発生した2類感染症、輸入感染症の
診療、入院を受け入れている。また、福岡県と感
染危機対策を協議し、福岡市立こども病院・感染
症センターなどの県下感染症指定病院と共に2003
年からはSARS対応、2005年からは新型インフル
エンザ発生時に入院を含む診療体制を整えてい
る。福岡県感染症危機管理対策活動や感染症発生
動向調査の基幹定点医療機関としての院外活動を
行っている。
当センターは、NICU、周産期母子医療センタ
ー、地域がん診療連携拠点病院など担い、全科揃
った636床の総合病院であり、全科の入院患者の
感染対策、病棟巡回、院内の感染症診療相談窓口
業務も行っている。
(2)実績
2006年も、コレラ疑い、細菌性赤痢、チフス、
新型インフルエンザ疑い、ビブリオバルニフィカ
ス感染症、ジアルジアなど種々の輸入感染症から
稀な劇症感染症の診療を行ったが、日常診療にお
いて稀でなくなりつつあるHIV、結核などを含む
一般感染症診療も行っている。また、院内での感
染症アウトブレイク事例(ノロウイルス感染によ
る嘔吐下痢症の集団発生など)の予防、対策、対
内対外の対応等を行った。
(3)担当医
眞柴晃一(総合診療科、主任部長)
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