2D08 環境報告書用紙の LCA (科学技術振興事業団)○中澤 克仁、(三菱製紙㈱) 桂 徹、庭田 博章 (東海大・工) 片山 恵一、(東大・生研) 坂村 博康、安井 至 CO2 emission (kg/t-Paper) 1. 緒言 近年、市民や社会との環境に関するコミュニケーションを図る手段の一つとして、環境報告書を発行する企業が 年々増加しつつある。この報告書自体についても、白色度が低く、古紙配合率の高い再生紙を使用したり、VOC (揮発性有機化合物)の発生が少ない大豆油インクで印刷するなど、環境的な配慮がなされたものが多くなっている。 しかし、企業としては環境への影響を考慮した上で選択した用紙であったとしても、様々な環境負荷を定量的に分 析し、総合的に評価した場合、必ずしも地球環境への影響が小さいとは限らない。本研究では、各企業の環境報告 書を入手し、そこで使用されている用紙の仕様を調査した上で、ライフサイクル・アセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)手法により、各種用紙の環境負荷分析および環境影響評価を試みた。 2. システム境界および前提条件 ・機能単位:印刷用紙(坪量 104.7g/m2)1000kg製造を対象とし、塗工紙については塗工量を 30g/m2とした。 ・システム範囲:植林からチップ化、木材パルプ・古紙パルプ(DIP)製造、抄紙、塗工、仕上げ、流通・使用、廃棄、 古紙回収までとした。 ・環境負荷項目:エネルギー消費量、CO2排出量、SOx・NOx排出量、焼却灰等の固形廃棄物排出量を対象とした。 3. LCI 分析および LCIA Table 1 Several papers used for environmental reports. Papers Units 1 2 3 4 5 Table1 に示したような 5 種類の <Characteristics> Non-coated Non-coated Non-coated Coated Coated Coated / Non-coated 環境報告書用紙におけるライフ Brightness % 70 80 80 80 80 <Pulp contents> サイクルインベントリー(LCI)分析 Wood pulp % 0 0 70 0 100 DIP:Newsprint % 50 0 0 50 0 を行い、化石燃料起源のCO2 排 DIP:Office waste % 50 100 0 50 0 Nonwood:Bagasse % 0 0 30 0 0 出量の結果をFig.1 に示した。用 紙 1 と用紙 4 の比較から、非塗工紙と塗工 1800 Waste 紙のCO2排出量の差は極めて小さいことが 1600 Distribution 確認された。また、DIPを 100%配合した用 1400 Finishing Coating 紙のCO2排出量は、木材パルプを配合した 1200 Paper production 用紙よりも大きくなることが用紙 4 と用紙 5 1000 Bagasse pulp production DIP production 800 の比較から明らかとなった。これは、木材パ Wood pulp production 600 ルプではパルプ製造工程で発生する廃液 Chippng Afforestation 400 (黒液)燃焼によるエネルギーを木材パル 200 プ製造・抄紙工程で利用できるのに対して、 0 DIPではパルプ製造時のエネルギーとして 1 2 3 4 5 Fig.1 CO emissions caused by fossil fuel consumption for life cycle of papers used for 化石燃料(石炭・重油等)を使用する必要 environmental reports. 300 があるためである。 また、ライフサイクル影響評価(LCIA)とし 250 て、EPS2000 による 5 種類の用紙における Land use 200 環境影響評価の結果を Fig.2 に示した。こ の結果、各種用紙間における統合値の差 Emissions to water 150 は小さく、用紙 4 と用紙 5 を比較した場合、 Emissions to air DIP を 100%配合した用紙に比べて木材パ 100 Resources ルプを配合した用紙の環境影響が小さいこ 50 とが認められた。また、用紙 1 と用紙 4 の比 較から、塗工紙よりも非塗工紙による環境 0 1 2 3 4 5 影響が大きいことが明らかになった。 ELU (/t-Paper) 2 Fig.2 Comparison among papers used for environmental reports by EPS 2000. LCA of Papers Used for Environmental Reports, Katsuhito Nakazawa (JST), Toru Katsura, Hiroaki Niwata (Mitsubishi Paper Mills, Ltd), Keiichi Katayama (Tokai University), Hiroyasu Sakamura, Itaru Yasui (IIS, University of Tokyo), Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-8505, Tel: 03-5452-6098 (Ex.58001), E-mail: [email protected]
© Copyright 2025 ExpyDoc