2 足歩行ロボットのモデルベース開発(SILS) デモンストレーション概説書 近年、制御システム開発において、モデルベース開発(Model Based Development:MBD)と呼ばれる開発手法が注目 されています。MBD における SILS(Software In the Loop Simulation)は、シミュレーション環境上に構築した制御対象の モデルに対し、制御則をソフトウェアとして評価 / 検証するものです。本デモは 2 足歩行ロボット教材「e-nuvo(イーヌー ボー)」(株式会社ゼットエムピー)を用いて、ロボットの制御則の評価 / 検証を SILS にて行った事例をご紹介します。SILS 環境は MATLAB ®/Simulink ®上に構築します。 キーワード: 2 足歩行ロボット、e -n u v o 、S I L S 、レガシーコード、自動生成コード、S -F u n c t i o n 、S i m M e c h a n i c s、 SimPowerSystems、PWM 制御 1 導入 一般に、設計/開発において、既存システムのレガシー (資産)を活用しながら、レガシーの一部を新規で置き換 えていくことは多々見受けられます。 本デモは2足歩行ロ ボットの制御則設計でのレガシーから M BD へのリプ レースを想定し、MBD の手法でどのように行うか図 1-1 のフローに従い事例を示します。但し、レガシーの一部 の置き換えに特化する考えではなく、フローからレガ シーコードの項を除けば、一般的な新規システムにおけ るSILSのフローと見なすことが可能です。 図 2-1 e-nuvo のモータ及び制御基板の位置 図 1-1 リプレースのフロー 2 e-nuvo について 図 2-2 e-nuvo の PID 制御則の構造 2 足歩行ロボット e-nuvo は、各脚 6 関節、計 12 関節を備 えています。「1 関節」=「1 モータ」=「1 自由度」であ 3 SILS について り、12自由度を持つ二足歩行ロボットであると表現する こともできます。各関節の回転方向は、足首:ロール方向 とピッチ方向の2自由度、膝:ピッチ方向のみの1自由度、 股関節:ピッチ・ロール・ヨーの 3 自由度となります。 また、各モータ、制御用の基板等は、図 2-1 の位置に配置 されています。e-nuvoの動作を定める 12関節分の角度設 3 . 1 導入 本章では、図1-1のフローに基づき、デモにおけるSILS の工程を説明します。 す。各関節は DCギアドモータ 12点により駆動されます。 3 . 2 ①レガシーコードと等価な S i mu l in k モデルの作成 図 2-1 のサブ CPU 基板上の H8S(株式会社ルネサステクノ 本デモで用いるレガシーコードは図2-2におけるPID制 ロジ)に実装されたソフトウェアより関節角度の設定値追 御則を記述したものです。 図3-1にレガシーコードと等価 従の PID 制御が行われます。関節角はセンサ(ポテンショ なSimulinkモデルを示します。 レガシーコードでは各変数 メータ)により取得されます。DCギアドモータはHブリッ に様々な数値型を指定しており、 Simulinkモデルでは各箇 ジで PWM 制御されます。(図 2-2 参照)。 所でその型に合わせることが必要です。 定値は e-nuvoの外部から時系列データとして与えられま 2 足歩 行 ロ ボッ ト の モデ ル ベ ース 開 発( S I L S ) 3.5 ④ SILS 環境の構築 図 3-3 に、Simulinkで作成した SILS環境を示します。② 右足膝の関節以外の関節には、角度、角速度及び角加速 度で構成されるモーションデータが与えられます。②右 足膝の関節について、以下のようにSILSを構築します。2 足歩行ロボットの機構系、電気系を合わせたモデルを制 御対象とします。①機構系モデルは SimMechanicsで構成 します。③電気系モデルは SimPowerSystemsの DC モータ と Hブリッジ、PWM生成器及びギア等で構成します。④ は PID制御則となり、⑤ Simulinkモデル、⑥レガシーコー ド及び⑦自動生成Cコードを適宜切り替えられます。⑥、 ⑦は各々レガシーコード、 自動生成Cコードをラップした S-Function です。このモデルの狙いは図 2-2 における関 図 3-1 Simulink モデルとレガシーコード 節1個分のPID制御構造をシミュレーション環境上に再現 3 . 3 ② S imu l in k モデルの C コード自動 生成 し、Simulink、レガシーコード及び自動生成 Cコードの評 価を行うことです。 SimulinkモデルからCコードを自動生成し、ターゲット に実装する技術は、MBD を支える基幹の一つと言えま す。図 3-1 に示した Simulinkモデルから Simulinkオプショ ンの Real-Time Workshop®及び Real-Time Workshop Embedded Coderを用いて、実装により適したCコード自動生 成を行うことが可能です。 3 . 4 ③ S imu l in k モデルと C コードの 評価 C コードと Simulink モデルの等価の確認には以下の手 順が有効な手法の一つです。C コードを S-Function に取 り込み、Simulink 環境上で Simulink モデルと S-Function に等しい入力を与えたとき、等しい出力が出るかを評価 図 3-3 SILS 環境のモデル します。図3-1の評価用モデルでは、レガシーコードと自 動生成コードをS-Functionに取り込み、各々②と③として 3.5 ⑤ SILS 環境上での評価 います。①は図3-1①に示したSimulinkモデルです。シミュ 図 3-4 左に、図 3-3のモデルのシミュレーション結果を レーションの結果⑤から、①と②、②と③の差分出力は 示します。①では実機と同様に、設定値に対してやや遅 常時 0 となり、等価なことが確認できます。 れ気味で追従する傾向が確認できます。 ②は図3-3④が出 力するデューティ比です。参考までに図 3-4 右に他モー ションの実測データを示します。 図 3-4 シミュレーション結果と他モーションの実測値 使用ツール等 図 3-2 Simulink モデルと C コードの評価環境 MATLAB, Simulink, SimMechanics,SimPowerSystems, Real-Time Workshop,Real-Time Workshop Embedded Coder © 2009 The MathWorks, Inc. /〒15 3- 00 42 東京都目黒区青葉台4-7-7青葉台ヒルズ10F TEL( 03)573 8-4855 F AX(03) 5738-4 838 2足歩行ロボット「e-nuvo」については 株式会社ゼットエムピー 教材担当 E-mail:[email protected] http://www.zmp.co.jp/html/products_education.html 株式会社ゼットエムピーにお問い合わせください。
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