〔工夫したゲーム(易しいゲーム・簡易化されたゲーム)を中心とした実践例〕 中学校 1・2年生 球技(ネット型:バレーボール) 1.本実践例を作成する際,留意した点等について バレーボールは,ネットを境にした2チームが,チーム内で協力し合ってボールを落とさないようにつなぎ,相手 のコートにボールを落としたり,相手のミスを誘ったりして対戦するスポーツである。 生徒にバレーボールを楽しませ,質の高いゲームを展開させるためには,パスなどの技能を向上させること, ボールに素早く対応する動きやチーム内で協力してボールをつないだり,より攻撃的に相手チームに返したりする 方法などを理解・工夫させることが必要である。 しかし,動きの中でのパスの技能をすべての生徒に身に付けさせるためには,多くの時間が必要になる。パスが 正確に行えず,ボールがつながらないまま授業を進めると,フォーメーションやカバーリングといった動きについて 理解したり,工夫したりしようとする意欲は高まらない。 そこで,工夫したゲームを授業の中心に位置づけることで,身に付けるべき技能や理解すべき動きを焦点化し, より活発な動きが見られるバレーボールの授業を展開しようと考えた。 具体的には,ボールをチーム内でつなぎ,相手コートにより攻撃的なボールを返すためには,ボールに対応する 素早い動きを行うこと,正確にボールをパスすることが必要であるが,パスの種類やボールへの対応パターンは多 岐にわたるので,ゲームに制限を加え,身に付ける技能や動きを明確にしようと考えた。また,ゲームを授業の中 心に位置づけることで,チーム内で協力して動くことや定位置や空いた場所といったイメージについて,理解した り,工夫したりできるようにもしていきたい。 2.指導計画例(単元の概要) 時間 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ 0 10 学 20 習 過 30 程 40 50 オリエン テーション 基本 練習 基本練習 基本練習+ドリル練習① チーム練習 ドリル練習② ゲーム③ ドリル練習① 協力して戦おう! ゲーム② 正規のルールに制限など加え て行う。 ゲーム① ルールや方法は,大きな枠組 スパイクやブロックをしよう! みを教師が提示し,細かな点は 生徒に決定させる。 ボールキャッチからのバレーボール! 得点について,スパイクを打ったらアウトでも1 トーナメント戦やリーグ戦を行 試しの 点,決まったら3点。ブロックを行い,手に触れた いながら,チームごと勝敗を競わ ゲーム ら2点,決まったら4点。などとしながら。 せるなどして行う。 〈初期 → 中期 → 終期〉 反省 反省 等 3.ゲームに向けての取組について (1)基本練習 ○ 体ほぐしの主旨を生かしながら,短時間に体と心がほぐせるような運動を行う。 ○ 技能に注目したり,何かを身に付けさせようとする内容は,ドリル練習で行う。 ○ 少しでも多くボールに触れながらの運動になるよう,2∼3人を中心に行う。 ☆ 運動例 ・一人でいろいろなボールキャッチを行う。(投げ上げてから手をたたく,回転する,前転して・・・) ・二人組で,いろいろなボールの受け渡しを行う。(頭上で,体をひねって,またの下から・・・) ・二人(三人)組によるバレーボールでのキャッチボール(いろいろなボールの投げ方で) ・いろいろな動きを入れながらのキャッチボール(サイドステップ,ジャンプ,中腰での・・・) ・3∼4mくらい素早く動き(ダッシュやストップがあるような)ながらのキャッチボール ・三人以上で,円をつくり,ボールを投げ上げたあと移動してキャッチする。 など (2)ドリル練習① ○ アンダーハンドレシーブとオーバーハンドレシーブが身に付くために工夫された練習を行う。 ○ 止まった状態から,左右に数歩動いて,少し走ったあと,向きを変えて など状態を変えながら行う。 ☆ 練習内容例 ・ボールを迎える前の姿勢や体勢が身に付くための練習。 ・ボールと手(腕)が触れる部分の細かな意識を確認しながらのパス練習。 ・ボールを送り出すための腕や足,体全体の動きが確認できる練習。 ・ボールを素早く捉えたり,次のプレーに素早く対応したりするためのステップなどを確認できる練習。 ・身に付いた技能を確認しながら,より正確にできるために繰り返し行う練習。 など (3)ドリル練習② ○ スパイクやブロックの基本的な技能が身に付くための分解練習を行う。 ○ スパイクやブッロク以外のネット際でもプレーについても同時に扱えるとよい。 練習内容例 ・フォームやボールのミートについて体験する,ジャンプやネットを使わずに行うスパイク練習。 ・力をコントロールし,壁に向かったり二人組で行う,スパイク練習。(可能ならレシーブも付けて) ・繰り返して行う,ネットを利用してのスパイク練習。 ・ネット際に軽くボールを投げ上げて行う,ブロック練習やそのカバー。 ・スパイクとブロック,できればそのカバーを含めてのネット際のプレーの練習。 (4)チーム練習 ○ ゲームにおけるどんな場面のどんな技能や動きについて練習するのかを明確にする。 ○ 自分のコートに空いた場所をつくらないためにどのように動いたりするべきか理解できるための練習。 ○ できない人やわからない人も積極的に意見や感想など出し合う中で取り組むこと。 ○ ゲームにおいてうまくいっていないところや失敗してしまったところ修正できる練習を工夫すること。 4.工夫したゲームについて (1)『ゲーム1』(ボールキャッチからのバレーボール!)について ○ バドミントンのコートを使用する。ネットの高さは,180cm∼190cm程度。 ○ 4対4で対戦する。(サーブ権が変わる時にローテーションする。) ○ ボールは,少し空気を抜いた柔らかめのものを使用。 ○ 相手コートから来たボールを必ず三人が触れて相手コートに返すこととする。 ☆初期は,一人目はボールの落下地点に入りボールをキャッチして二人目に投げ渡す。二人目は三人目が パスしやすいようにボールを投げ上げる。三人目はオーバーハンドパスかアンダーハンドパスで相手コートに ボールを返す。 ☆中期は,二人目もパスで。 ☆終期は,すべてパスで行う。 (2)『ゲーム2』(スパイクやブロックをしよう!)について ○ 正規のバレーボールのコートで。ネットの高さは,ゲーム1と同じくらいで。 ○ 6対6で。ローテーションについては実態に応じて取り入れる。 ○ ゲーム1のルールを踏襲(初期,中期も必要に応じて採用)しながら,得点について次のルールを加える。 ☆スパイクを打ったらアウトでも1点,決まったら3点。 ☆ブロックを行い,手に触れたら2点,決まったら4点。などとする。 ☆ゲーム1から続けている3人がかかわっての返球に加え,ネット際での技能向上を目指したゲームができるよ う,ルールや方法に工夫を加えながら行う。 (3)『ゲーム3』(協力して戦おう!)について ○ これまでの学習経験を生かし,正規のルールに近づけつつ,一部のルールや方法に制限など加えて行 う。 ☆ ゲームのルールや方法は,大きな枠組みを教師が提示し,細かな点は生徒に決定させる。 ☆ トーナメント戦やリーグ戦を行うなどして,チームごと勝敗を競わせてもよい。 ☆ 毎時間の完結型にするか,2・3時間をかけての対戦とするか,生徒の実態を見ながら判断する。その際, 学習してきた内容や態度,思考・判断的なことが再確認できることを大切にしながら,判断する。
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