論文「森林セラピ-が参加者の健康指標に及ぼす影響を明らかにする研究」

四国公衆衛生学雑誌第 55 巻 1 号 2010 . 2 月
森林セラピ-が参加者の健康指標に及ぼす影響を明らかにする研究
宜保美紀 *1,2,3 棚田純代 *1 川澤和郎
西村みずえ *3 古谷裕子 *3 水足浩 *4 的場俊
*1
*1,3
近年、新しい森林資源の活用として、林野庁が「森林セラピー」を提唱している。梼原町は、平成 19年 3 月
森林セラピー・ステアリングコミッティによるセラピー基地・ロードの認定を得た。今回、梼原町の森林セ
ラピーによる健康への影響を、神経・内分泌・免疫ネットワーク、アンチエイジング(老化関連指標)、酸化
ストレスの側面から測定した。対象は健康な 10名( 30-73 歳、女性 7 、男性 3 名)で、森林散策、栄養計
算された食事、療養泉への入浴、医師等によるアドバイスを実施し、セラピー体験前・体験直後、 6 週間後に
検査を行った。セラピ-体験直後に有意に改善した項目は、腹囲、うつ自己評価尺度、ストレス耐性度、収縮
期血圧、唾液アミラーゼ、ナチュラルキラ-細胞活性、デヒドロエピアンドロステロンサルフェ―ト( DHEAS )、遊離トリヨードサイロニン( T3 )、マロンジアルデヒド修飾 LDL ( MDA-LDL 、酸化 LDL)で
あった。 6 週間後では体験前に比べ、腹囲、中性脂肪が有意に低下、 DHEA-S 及び遊離 T3 が有意に上昇し
ており、総合的なウェルネスケアとしての「森林セラピ-」の影響と考えられた。
Key words: 森林セラピ-、神経・内分泌・免疫ネットワーク、 NK 活性、アンチエイジング、酸化ストレ
ス
Ⅰ はじめに
ドイツでは、温泉、水、森林等の地形を活かし
た自然療法を実施する保養地が国内に 300 か所
以上あり、レクリエ-ション、保養、医療(理学
療法や健康教育)に重点を置いた様々なプログラ
ムが提供され、社会健康保険の適応を最長 13日
間まで受けることもできるという 1,2 )。
ますます顕著になりつつある日本の少子高齢化
社会においても、高齢になっても心身の最適なメ
ンテナンスを図りながら、「生涯現役」を実践す
ることが望まれる。このような状況の中で日本の
豊かな森林資源の新しい活用として「森林セラピ
ー」が林野庁等によって提唱されている 3) 。梼
原町は、平成 19年 3 月、 森林セラピー・ステア
リングコミッティ(林野庁、国土緑化推進機構 、
日本ウェルネス協会から構成) によるセラピー基
地・ロードの認定を得た。
森林セラピーの健康に対する科学的効果につい
ての知見として、ストレスの緩和(主観的評価及
びコルチゾール、カテコールアミンなどのストレ
スホルモン、心拍変動性、脳血流量による客観的
評価 4-7 ) )、ナチュラルキラー細胞活性(以下 NK
活性と略す) 8 )、抗がん蛋白の増加 8, 9 )とい
った免疫力の増強効果が報告されている。また、
森林地域での居住者は死亡
梼原町立国保梼原病院
*1
・町立松原診療所
保健福祉支援センター
*3
・ゆすはら森林セラピ-研究
会
*4
*2
・梼原町
連絡先:高知県高岡郡梼原町川西路 2320-1 〒 7850612 梼原病院 宜保美紀
率が低いという疫学研究が Lancet に掲載 10 )さ
れ、本邦においても森林化率が高い都道府県ほど
悪性新生物による標準化死亡比が低いことが報告
11 )
されている。森林化率 91% という当町でも、
全国に比べ全死亡の標準化死亡比が 21%低く、
疾 患 別 死 亡 で は が ん に よ る 死 亡 が 35% 低 い
( 1995-2004 年人口動態統計による)。
今回、我々は森林セラピー推進のための基礎資
料を得ることを目的とし、神経・内分泌・免疫ネ
ットワーク、老化関連指標、酸化ストレスの側面
から評価を試みた。これまでの経験から、関心を
もつ関係者は健康への効果がセラピ-後において
も維持されるかどうか確認を望んでいた。しかし
森林セラピーの事後効果に関する報告はまだ少な
い 8 )。そこで、今回、セラピー終了 6 週間後の
健康指標への影響についても評価した。
Ⅱ 対象と方法
対象は、インターネットと口伝えでの応募に応
じ、申し込んだ 10名である。居住地は、関西が
8 名、高知市が 2 名、年齢は 30-73 歳で、平均
±標準偏差 57±13歳、性別は女性 7 名( 55±15
歳)、男性 3 名( 61±4.8 歳)であった。職業
は在職中が 6 名、定年退職後が 4 名で、退職後
を含めると公務員が 7 名と多く、うち 6 名が管
理職、 4 名が教育機関に勤務していた。また、
睡眠 6 時間以下が 6 割を占め、一日 VDT 作業時
間が平均 4.7±2.2 時間とかなり長い傾向があっ
た。喫煙者は 1 名のみであった。
樹木から排出される揮発性成分で特有の香りを
生み出し、人に対する生理的作用ももつと言われ
るテルペンの濃度が季節的に高いのは7-9月と
報告されている 12 ) ため、森林セラピーの実施時
期は、 9 月 3-6 日とした。初日に JR高知駅に集合
し、梼原町森林セラピ-基地まで車で迎えた。 2-3
日目にセラピーメニューを実施し、 4 日目に解散
した。宿泊はセラピ-基地内のホテル及びセラピ
ーロードに近い民宿で、森林散策は久保谷セラピ
-ロ-ド( 2 日目)および樹齢 500 年の赤ガシや
ヒメシャラの天然保護林である久保谷風景林( 3
日目)で行った。
実施内容としては、まず、オリエンテ-ション
資料を事前に郵便・電子メールによって送付し、
森林と健康についての簡単な自主学習をしてもら
った。来町初日に心理カウンセラーによるグルー
プミーティング、 2 - 3 日目に各約 3-4 kmの
森林散策を森林ガイド、健康運動指導士、心理カ
ウンセラー、医師が同行して実施した。 2 日目
の午後に、理学療法士による姿勢や筋緊張などへ
の個別指導、アロマテラピストによるセルフアロ
マテラピ-を行った。 2 日目夜には地元住民の健
康運動教室に自由参加した。 3 日目夜にミーティ
ングで対象者間でのセラピ-体験の共有を行った
4 日目に医師が個々の対象者への健康アドバイス
を行った。
滞在期間中、管理栄養士が対象者個々の体格・
日常生活強度に合わせ計算したカロリー・たんぱ
く質・塩分その他の栄養推奨量から成る地元素材
の食事をホテル・民宿で用意した。飲酒は「健康
日本21」で適正とされる量までとし、特に血
液・尿検査前夜である 1 日目夕及び 3 日目夕には、
夕食以降にカフェインの摂取及び間食を控えても
らった。入浴は、初日と3日目はセラピー基地に
ある、アルカリ性炭酸水素塩低単純温泉で、酸化
還元電位 Oxidation-reduction Potential (以下 ORP
と略す) +20 m V の還元性を示す温泉に、 2 日
目はセラピ-ロ-ドに近い民宿にあるアルカリ性
単純硫黄冷鉱泉で ORPが -110m V と強い還元性を
示す「療養泉」(環境省自然環境局の定義による)
に入ってもらった。
検査は、森林セラピー体験前の検査として、来
町初日夕に身体測定(身長、体重、体脂肪、握
力)を、翌 2 日目朝 7 時空腹時に血圧・脈拍、採
血・採尿・唾液検査、高次脳機能検査をホテルで
実施した。体験直後の検査として 3 日目夕に再度
身体測定し、翌 4 日目朝 7 時空腹時(前の検査時
より 48時間後)に体験前と同じ検査を実施した。
さらに 6 週間後の 10月18日に大阪国際空港会議
室(伊丹市)と「 龍馬のうまれたまち記念館」
(高知市)に検査会場を設け、実施した。ただし、
対象者が検査場所へ出向くことを考慮し、セラピ
ー前・直後と同じ時間に検査するのは断念し、午
前 9 時空腹時での検査となった。
セラピー 2 、 4 日目に採血した血液は、 NK活
性測定分をヘパリン容器で 25℃で保存しながら
直ちに高知大学医学部に搬送し、採血 3 時間後
にアッセイ開始した。残りの血液は凝固促進剤・
分離剤入りの採血管に入れ、約 15分静置後、遠
心分離し、梼原病院に搬送し、採血から 1 時間
後には血清を -30℃ で冷凍保存した。尿も同様
に冷凍保存した。 6 週間後の検査は、関西の 1
名を除いて、それぞれの検査会場に午前 9 時前
に集合してもらい、 9 時すぎに採血、その後、
唾液、身体測定、高次脳機能検査を実施した。NK
活性検査分の血液を関西の対象者分は空路で、高
知市対象者分は陸路で高知大学まで搬送し、前・
直後と同じく約 3 時間後にアッセイを開始した。
尿および残りの血液は凝固促進剤・分離剤入りの
採血管で遠心分離し、約 4℃ に冷蔵しながら陸
路で搬送し、関西の対象者分は採血 9 時間後に、
高知市内の対象者分は採血 3 時間後に梼原病院
に持ち帰り、冷凍保存した。検査会場に来ること
ができなかった関西の 1 名は、 10月15日に関西
の診療所で午前 7 時に採血し、 NK活性検査用の
血液を 25℃で保存しながら空路で高知大学に搬
送し、採血 3 時間後にアッセイ開始した。また、
その他の検査用の血液は凝固促進剤・分離剤入り
の採血管で遠心分離した上、尿とともに約 4℃
に保存しながら、空路で搬送し、採血 5 時間後
に梼原病院で冷凍した。
倫理的配慮として、対象者には文書によって研
究目的を説明し、集団としての解析結果が学術目
的で公表されることについて、文書で承諾を得た。
各検査方法は下記のとおりである。
測定項目
1.糖・脂質代謝
体重・ Body Mass Index (以下 BMI と略す)・体
脂肪:体内脂肪計 TBF-310 (生体インピーダンス法
による。株式会社タニタ、東京都)で計測。
腹囲:上肢を下ろし立位で呼気時に臍の高さで計
測。
血糖:全血で簡易血糖測定器で測定。
中 性 脂 肪 、 総 コ レ ス テ ロ ー ル 、 High density
lipoprotein (以下 HDL と略す)、 Low density
lipoprotein (以下 LDL と略す):血清で酵素法
を 用 い て 自 動 分 析 装 置 BECKMAN COULTER
AU400( ベックマン・コールター・バイオメディ
カル株式会社、東京都 ) で測定。また、動脈硬化
指数(総コレステロール値から HDL値を引いた値
をHDL値で割った値)を算出した。
2.精神・神経・内分泌
Zung のうつ自己評価尺度 Self-rating Depression
Scale (以下 SDS と略す)及びストレス耐性度チ
ェックリスト(ストレッサーに対し、調和的かつ
適正に認知・対処する能力を評価する自記式質問
票 13 ) ):セラピーの 2 週間前、セラピー終了
5-6 日後及び 6 週間後に、参加者各自の自宅で記
入してもらった。
血圧: 20分以上安静にした後、座位で自動血圧計
で測定。
唾液アミラーゼ(交感神経の興奮を反映して上昇
する消化酵素 14 ) ):スティックで唾液より採取
し、ニプロ酵素分析装置「唾液アミラーゼモニタ
ー」(ニプロ株式会社、大阪市)で測定。
コルチゾール:血清で Radioimmunoassay(以下 RIA
と略す ) チューブ固相法で測定。
3.免疫
ナチュラルキラ-細胞活性( NK 活性):標的細
胞として白血病細胞 K562 を用い、あらかじめ標
識した放射性 Crの遊離割合を測定。
4.アンチエイジング ( 老化指標 )
高次脳機能検査: PC 上で作動するウイスコンシ
ン・カード・ソーティングテスト(慶応 F-S バ
ージョン。以下 WCST と略す。)を用い、測定。
希望者には事前に練習してもらった。
デヒドロエピアンドロステロンサルフェ―ト
( DHEA-S ):血清で RIA チューブ固相法で測定。
甲状腺刺激ホルモン( TSH )、遊離 トリヨード
サイロニン( T3 ):血清で化学発光免疫測定法
で測定。
インスリン様成長因子 1 ( IGF-1 ):血清で免疫
放射定量ビーズ固相法で測定。
5 .
酸化ストレス
マ ロ ン ジ ア ル デ ヒ ド 修 飾 LDL ( MDALDL ) : 血 清 で Enzyme-Linked ImmunoSorbent
Assay (以下 ELISA 法と略す)で測定。
尿 8- ヒ ド ロ キ シ デ オ キ シ グ ア ノ シ ン ( 8OHdG ):早朝第1尿を ELISA 法で測定し、尿ク
レアチニン量で補正。
ホ モ シ ス テ イ ン : 血 清 で 酵 素 法 ( ENZYMATIC
HOMOCYSTEINE ASSAYⅡ 株)医学生物学研究所、
名 古 屋 市 ) を 用 い て 自 動 分 析 装 置 BECKMAN
COULTER AU400 で梼原病院にて測定。本酵素法
と従来より研究機関などでよく用いられている
HPLC 法との相関係数は 0.997 と良好である。
血液・尿検査のうち梼原病院で測定したもの以
外は、 NK活性を高知大学医学部に、その他を三
菱化学メディエンス株式会社(東京都)に測定依
頼した。 統計的解析は対応のあるt検定で行った。
Ⅲ 結果
セラピー体験前・直後、 6 週間後の結果を平
均値 ±標準偏差として、各検査時の間を比較し
た両側検定結果とともに表1に示す。
1 .
糖・脂質代謝
対象者の体重、 BMI 、体脂肪の平均値はいず
れもほぼ良好で、 3 回の検査間で変化がなかっ
た。腹囲は体験前の 82.6±9.7cm に比べて体験
直後で 80.6±9.4cm と有意に減少し(有意確率
<0.01 ) 、 6 週 間 後 も 体 験 前 に 比 べ て
79.0±8.3cm と低い傾向を示した(有意確率
<0.05 、 片 側 検 定 ) 。 血 糖 は 体 験 前 の
87.9±12.4 mg/dl に 比 べ て 体 験 翌 朝 で
84.3±9.4 mg/dl と低下傾向を示したが、有意
ではなかった。中性脂肪は体験前 98.7±55.9
mg/dl 、体験翌朝 98.3±47.6 mg/dl で変化がな
かったが、 6 週間後は 77.9±40.6mg/dl と体験
前・翌朝ともに比べて有意に低下していた(有意
確率 <0.05 )。総コレステロール及び HDLが体
験前( 211.2±42.5 、 74.9±16.5mg/dl )に比
べ
て
体
験
翌
朝
( 204.8±35.0 、 70.2±13.9mg/dl )で有意に
低下していた(有意確率 <0.05 )。動脈硬化指
数 は 3 回 の 間 で 変 化 が な か っ た 。
( 1.9±0.7、 2.0±0.7、 2.0±0.8)
2 .
精神・神経・内分泌
体験前に比べ、体験 5-6 日後で、うつ自己評
価 尺 度 は 34.7±3.7→32.1±4.5 と 有 意 に 低 下
( 有 意 確 率 <0.05 ) し 、 ス ト レ ス 耐 性 度 が
58.3±7.1→61.6±5.4 と向上する傾向を示した
(有意確率 <0.05 、片側検定)。収縮期血圧は
体 験 前 に 比 べ 体 験 翌 朝 で 120.3±21.0 か ら
111.9±16.9 mm Hgと有意に低下していた(有
意確率 <0.01 )。拡張期血圧、脈拍には変化が
なかった。交感神経の緊張により血中のノルエピ
ネフリンが増加すると連動して上昇する唾液アミ
ラーゼ 14) ( 30KU/L以下がストレスなしとされ
る)も 34±26.2→23.1±14.7KU/L と体験翌朝で
低下傾向を示した(有意 確率 <0.05 、片側検
定)。コルチゾールは体験前と体験翌朝との間で
変化がなく、 6 週間後に体験前後よりも上昇し
ていた。
表1.森林セラピー体験前・直後・
6 週間後の変化
有意確率は対応のあるt検定(両側)による。 **<0.01 、
体験前
平均値±標準偏差
体験直後
平均値±標準偏
差
*<0.05 、 N.S≧0.1
6 週間後
前との比較
前との比較
後との比較
有意確率
有意確率
N.S.
N.S.
N.S.
0.05
7
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
*
0.00
6
N.S.
**
215.1±44.7
0.03
4
N.S.
*
74.4±14.5
N.S.
N.S.
120.5±35.0
2.0±0.8
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
*
34.4±2.8
N.S.
59.3±6.1
N.S.
0.09
8
N.S.
**
117.2±20.9
N.S.
N.S.
74.2±12.2
N.S.
N.S.
69.2±7.9
N.S.
N.S.
45.1±33.0
N.S.
N.S.
11.7±5.8
0.00
1
0.00
4
**
N.S.
0.1
有意確率
平均値±標準偏
差
1. 糖・脂質代謝
体重 (kg)
BMI
体脂肪 (%)
腹囲 (cm)
55.6±7.6
21.7±2.4
23.3±7.0
82.6±9.7
55.7±7.5
21.9±2.4
23.2±6.5
80.6±9.4
血糖 (mg/dl)
87.9±12.4
84.3±9.4
中性脂肪(mg/dl)
98.7±55.9
98.3±47.6
TCHO (mg/dl)
211.2±42.5
204.8±35.0
HDL (mg/dl)
74.9±16.5
70.2±13.9
LDL (mg/dl)
動脈硬化指数
114.3±34.4
1.9±0.7
113.2±30.4
2.0±0.7
2. 精神・神経・内分泌
うつ自己評価尺度 (点)
34.7±3.7
32.1±4.5
ストレス耐性度(点)
58.3±7.1
61.6±5.4
収縮期血圧 (mm Hg)
120.3±21.0
111.9±16.9
拡張期血圧 (mm Hg)
79.3±13.6
78.5±8.9
0.0
4
0.0
9
0.0
1
N.S.
脈拍 (/分)
66.4±6.9
66.7±10.3
N.S.
唾液アミラ-ゼ(KU/L)
34±26.2
23.1±14.7
コルチゾール(μg/dl)
17.3±6.8
16.6±7.4
0.0
7
N.S.
3. 免疫
NK 活性 (%)
27.3±14.1
35.1±13.7
0.0
3
*
33.9±14.9
28.6±12.5
0.07
7
N.S.
カテゴリー達成数
第 1 カテゴリ達成までの
試行反応数
全誤反応数
4.3±1.8
9.7±14.7
5.3±1.3
2.5±2.7
5.0±1.4
4.4±6.2
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
14.5±4.6
11.4±2.5
*
12.4±2.2
N.S.
N.S.
Milner 型保続性の誤り
5.7±6.1
1.7±3.5
2.3±5.0
N.S.
N.S.
Nelson 保続性の誤り
DHEA-S(μg/dl)
8.5±10.3
85.2±31.5
6.7±6.5
98.3±42.9
*
9.1±9.1
127.3±38.4
2.19±1.7
3.45±0.28
**
2.07±0.97
3.5±0.28
*
N.S.
0.06
5
N.S.
N.S.
2.2±1.7
3.27±0.37
N.S.
0.00
5
N.S.
0.02
**
TSH (μIU/ml)
遊離 T3 (pg/ml)
IGF-1 (ng/ml)
171.3±41.2
153.4±35.9
0.1
0.1
4
0.0
4
0.1
3
N.S.
0.0
3
N.S.
0.0
1
0.0
1
**
162.2±46.0
N.S.
N.S.
5. 酸化ストレス
MDA-LDL(U/L)
60.6±31.5
51±27.9
*
6.8±1.4
ホモシステイン(μmol/L)
10.0±2.4
0.00
8
0.00
6
N.S.
**
8-OHdG (ng/mg・Cre)
0.04
2
0.00
2
N.S.
時間で補正 (%) 4. アンチエイジング(老化関連指標)
WCS
T
N.S.
N.S.
N.S.
0.0
1
0.1
9
N.S.
0.0
9
0.0
4
N.S.
0.1
6
**
55.4±7.8
21.6±2.4
23.1±7.2
79.0±8.3
90.9±13.3
77.9±40.6
*
77.7±45.9
7.3±1.0
0.0
2
N.S.
8.0±1.9
10.2±2.4
N.S.
10.0±2.8
**
**
**
3. 免疫
NK 活性(正常参考値 :20% 以上)が、体験前の
27.3±14.1 %に比べ、体験翌朝で 35.1±13.7 %と
30% の上昇が見られた(有意確率 <0.05 )。 6 週
間後( 9 時採血)の値は 33.9±14.9 %で体験前よ
り上昇していたが、この上昇は 6 週間後の検査の
時間が前後2回より 2 時間遅かったことによる日内
変動の影響と考えられた。この時間差の影響を除く
ために、これまでの報告 15,16 )を参考にこの時間帯
の NK 活 性 の 上 昇 の 割 合 で 補 正 す る と 平 均
28.6±12.5 %と類推されたが、これは体験前とほぼ
同じ値であった。(図1)
図1.NK活性の推移 *p<0.05
(平均±標準偏差)
60
低下しており(有意確率 <0.01 )、 6 週間後には
162.2±46.0 ng/ml と前と同じレベルに戻ってい
た。
5 .
酸化ストレス
MDA-LDL ( 正 常 :77U/L 以 下 ) が 体 験 前 の
60.6±31.5 U/L から体験後に 51.0±27.9 U/L と有
意に低下していた(有意確率 <0.05 )。しかし 6
週間後には 77.7±45.9 U/L と前・後の値に比べて
有意に上昇していた。(図3) 8-OHdG は体験前
6.8±1.4 、体験後 7.3±1.0 ng/mg ・ Cre と変化が
な か っ た が 、 6 週 間 後 に MDA-LDL と 同 様 に
8.0±1.9 ng/mg ・ Cre と前・後に比べ有意に上昇
していた。ホモシステインは 3 回の値ともに
10μmol/L 程度で変化が見られなかった。
*
図 3 . M DA - L DL の 推 移
40
(平均値±標準偏差)
*
%
140
20
**
120
*
100
0
体験翌朝
6週間後
U/L
体験前
4 .
アンチエイジング ( 老化指標 )
ウイスコンシン・カード・ソーティングテストでは、
体験前に比べ体験翌朝で、カテゴリー達成数が上昇
傾向を示し、全誤反応数が有意に低下していた(有
意確率 <0.05 )。 DHEA-S (正常参考値 :50μg/dl
以上 図2)、遊離 T3 が体験前に比べ体験翌朝に
有意に上昇し、 6 週間後にも上昇が維持されていた。
( DHEA-S で 体 験 前 85.2±31.5→ 体 験 翌 朝
98.3±42.9→6 週間後 127.3±38.4μg/dl 、遊離
T3
で
3.27±0.37→3.45±0.28→3.50±0.28
pg/ml )
図 2 . DHEA- S の 推 移
(平均値±標準偏差)
**
200
◆
*p<0.05
**p<0.01
◆p<0.05
(片側検定)
*
150
μg/dl
*p<0.05
**p<0.01
I
100
50
0
体験前
体験翌朝
6週間後
GF-1 は体験前の 171.3±41.2 ng/ml に比べ体験
翌朝に正常範囲であるが、 153.4±35.9 ng/ml と
80
60
40
20
0
体験前
体験翌朝
6週間後
Ⅳ 考察
1 .
糖・脂質代謝
腹囲が森林セラピ-体験前より体験後で有意に減
少し、 6 週間後でも維持されていた。腹囲の測定
はマニュアル化し、一定の手技で行ったが、体験直
後の平均 2cm の減少は精度管理の不足による変動
の可能性も考えられる。セラピーで理学療法士によ
る個別指導を行ったため、姿勢の改善により腹囲の
減少が見られた可能性も考えられる。また、中性脂
肪が、体験後では変化がなかったものの 6 週間後
に有意に減少していた。森林セラピ-の 6 週間後
の行動変容について自記式アンケ-トで聞くと、10
名の対象者のうち、食事面で 8 名、運動面で 9 名
が気をつけるようになったと答えていた。腹囲、中
性脂肪 17) が体験前に比べて 6 週間後で低下してい
たのは、カロリー・栄養素の整った食事、運動、睡
眠をセラピー期間中に実体験したことで、健康習慣
への具体的なイメ - ジが得られやすく、健康アド
バイスが日常生活により取り入れやすくなったもの
と考えられる。血糖値は今回有意ではなかったもの
の体験翌朝に低下傾向を示していた。糖尿病患者が
18)
森林で歩行した場合、血糖値が有意に低下し
、森林浴での血糖の低下は温水プールでの運動浴よ
りも大きかったこと 19) 、看護学生において森林歩行
前後のインスリンの低下が市街地での歩行よりも顕
著であったとの報告もなされている 20) 。総コレス
テロール、 HDLは、体験前に比べて体験翌朝で有意
に低下していた。森林散策の運動の効果で HDLが
上昇することが期待されたが、逆の結果であった。
この原因については、 IGF-1 が HDLと正の相関を
示すとの報告 21 )があることから、今回 IGF-1 が
体験前後で有意に低下していたことが HDLの低下
に関連していた可能性が考えられる。 IGF-1 と連
動した HDLの低下分が総コレステロールの低下につ
ながったものと推察される。
2.精神・神経・内分泌
体験後にうつ自己評価尺度点数が有意に低下し、
ストレス耐性度チェックリスト点数が向上傾向を示
しており、森林散策の後、不安が減少し、爽快な気
分が増すというこれまでの報告と共通していた 57 )
。
また、体験前に比べ体験翌朝で収縮期血圧が有意
に低下し、さらに交感神経の緊張により血中のノル
エピネフリンが増加すると連動して上昇するといわ
れる唾液アミラーゼ 14) が低下傾向を示していたの
は、森林散策で副交感神経が優位になるというこれ
までの報告 4,7,8 )と一致していた。ただし、リラク
セーションによって低下するといわれるコルチゾー
ル 6,7) が今回は体験前と体験翌朝との間で変化が見
られなかった。 6 週間後にコルチゾールが前後より
も上昇していたのは、採血時間の相違による日内変
動によるものと考えられる 22 )。
3 .
免疫
ナチュラルキラー( NK)細胞は、がんや感染症を
防ぐ上で非常に重要であり、約 3600人を 11年間追跡
した調査では NK活性の高い人はがん発症が有意に少
ないことがわかっている 23) 。また、よい生活習慣の
人では活性が高い 24) 。今回の森林セラピーでは 、
NK活性が体験前の 27.3±14.1 %から、体験翌朝に
35.1±13.7 %へと有意に上昇していた(上昇率
30% )。森林セラピー後の NK活性の上昇の要因に
ついては、樹木、特にスギ、ヒノキが多く産生する
といわれているテルペン 12) から構成されるフィトン
チッドを NK細胞に投与することで抗がん活性や細胞
内
の
抗
が
ん
蛋
白
( perforin 、 granzymeA 、 granulysin )が増加す
るという報告がされている 9) こと、また、 NK活性
は、笑いなどの爽快な気分で上昇 25) し、ストレス
により活性が低下する 26) ことが報告され、物質
的・精神的両面の影響で変動することがわかってい
る。このことより今回の対象者での森林セラピ-体
験後の NK活性の増加は、樹木のフィトンチッドに
よる化学的な効果及び森林や地元の人々との交流に
よってもたらされたメンタルな効果の両方によって
生じたものと考えられた。
4.アンチエイジング ( 老化指標 )
高次脳機能検査としてアンチエイジング・ドック
などでよく用いられているウイスコンシン・カー
ド・ソーティングテストで体験翌朝に有意に成績の
上昇が見られたが、これはセラピーの効果だけでは
なく、習熟による効果もあるかもしれない。
DHEA-S 、遊離 T3 、 IGF-1 は、加齢とともに
低下することから、アンチエイジング・ドックでの
老化の評価としてよく測定される項目である
DHEA はステロイドホルモンの中で、血中に最
も高濃度に存在するホルモンで、 この DHEA から
テストステロン、 エストロゲンなどの性ホルモン
が生成され、免疫力やストレスに対する抵抗性を維
持し、糖尿病・脂質異常・高血圧・骨粗鬆症などを
予防に寄与すると言われている 27) 。また、 DHEA
は、適正な食事・生きがいの保持で分泌が増加する
27,28)
。測定は安定型の DHEA-S を用いた。今回、
DHEA-S 、遊離 T3 が体験前に比べ体験翌朝に有
意に上昇し、 6 週間後にも維持されていた。
DHEA-S は日内変動が少ない 29 )こと、遊離 T3
の日内変動は早朝に高くその後低下することが報告
30 )
されており、 6 週間後のこれらの上昇は 2 時
間の採血の遅れによるものではなく、森林セラピ-
とその後の生活行動変容による可能性が高い。一方、
IGF-1 は、成長ホルモンに刺激され肝臓で分泌さ
れる、インスリンに配列が高度に類似したポリペプ
チドで、骨・筋量を保持するなどの効果をもち、加
齢とともに低下する 27) 。 IGF-1 が、体験前に比べ
体験翌朝に正常範囲ではあるが有意に低下し、 6 週
間後には体験前と同じレベルに戻っていた。 48時
間後の低下の要因としては、血中 IGF-1 は、たん
ぱく質もしくはカロリー摂取の減少に短期間で反応
して低下することが報告されており 31 )、今回、
栄養計算の上提供されたたんぱく質・カロリーが、
対象者が従来摂取している量よりも少ない量だった
ため、連動して低下した可能性が高い。実際、対象
者から「セラピ-の食事を体験すると、これまで動
物性食品を多く摂っていたことがわかりました」と
いう声が聞かれていた。 IGF-1 は骨・筋量の保持
に有効 27 )という面もあるが、近年解明が進んでい
るエピジェネティックスによると、哺乳類を含む殆
どの種で血中の IGF-1 が細胞膜レセプタ-に結合す
ると、それが細胞内での伝達シグナルとなり、結果
的に活性酸素を処理する酵素(スーパ-オキサイド
ディスムタ-ゼ)の産生が抑制されることが判明し
ている 27 ) 。また、血中 IGF-1 が高すぎると大腸
がんなどの腫瘍細胞の増殖を促進することも報告さ
れており 32) 、 IGF-1 は適正なレベルであることが重
要である。たんぱく質は必須の栄養素であるが、多
く摂り過ぎることで IGF-1 を必要以上に高めること
が懸念されるため、今回のセラピー時に適正な量の
たんぱく質を摂取してもらったことで、 IGF-1 が
正常範囲内で低下したことは不利益ではなかったと
考えられる。
5.酸化ストレス
活性酸素による酸化ストレスは、遺伝子の傷つき
による発がん・催奇形性や動脈硬化、老化の重要な
原因と考えられている 27,33,34 )。肥満、野菜摂取不
足、運動不足、喫煙、過量飲酒などのよくない生活
習慣、ストレスや加齢によって酸化ストレスを処理
する能力が低下する 27,35,36 )ことから、高齢になっ
ても個々の健康資源を最大に活かすためには、この
酸化ストレスに対処することが不可欠である。今回、
脂質・核酸・アミノ酸の酸化ストレス物質のうち、
酸化 LDL の代表的な物質である MDA-LDL 、遺伝
子核酸であるグアノシンが酸化されて生じる 8OHdG 、そして必須アミノ酸であるメチオニンの代
謝中に生じ、活性酸素を発生させるホモシステイン
を測定した。その結果、上記 3 種類の酸化ストレ
ス物質のうち、 MDA-LDL が体験前よりも体験翌朝
に有意に低下していた。しかし 6 週間後には前・
後に比べて有意に上昇していた。 MDA-LDL は虚
血性心疾患をもつ人で有意に高いことが報告されて
おり 37 ) 、動脈硬化を引き起こす物質と考えられて
いる。一方、尿 8-OHdG は体験前後で変化がなかっ
たが、 6 週間後に MDA-LDL と同様に前・後に比
べ有意に上昇していた。
森林環境には酸化ストレスを緩和する還元的要素
が色々備わっている。まず、森林により涵養される
水資源の豊富な環境では、空気中にマイナスに荷電
した粒子が多く存在する 38 )が、このマイナス荷電
粒子の豊富な環境下では、インターロイキン2や NK
活性が上昇し、ウイルスや癌に対する免疫力が高ま
ることも報告されている 39 )。活性酸素を生じる紫
外線や放射線 40 )にさらされている植物は自分で身
を守るためにさまざまな抗酸化物質を生み出す力を
身につけてきた 27) 。新鮮な山菜や野菜にはビタミン
やポリフェノ-ルなど、抗酸化的な栄養素が豊富で
ある。また、純水の酸化還元電位( ORP)は大気下
で +250mV であるが、今回のセラピーで入浴したセ
ラピー基地の温泉水の ORP は +20mV 、特にセラピ
ーロード近くの療養泉は -110mVという非常に還元
的すなわち抗酸化的な湯である。 ORP-35m V の温
泉に 10日間入泉することで核酸が酸化されて生じ
る尿中 8-0HdG が有意に低下したと報告されてお
り 41 )、本研究の温泉入浴でも酸化ストレスに抗す
る効果が MDA-LDL の低下につながった可能性が
ある。
居住地である都市部での 6 週間後の検査では、
MDA-LDL 及び 8-OHdG が体験前の値に比べて有
意に上昇していた。 6 週間後の検査では、関西か
らの検体の搬送に時間を要し、凍結保存までに 9 -
11時間を冷蔵保存の状態で経過したが、 MDALDL・ 8-OHdG ともに冷蔵で 1 日置いても安定な
物質であり 42) 、測定プロセスの差異による変動と
は考えにくい。今回、セラピー体験前の検査を到着
翌朝に行ったため、前の検査時点までに対象者が当
地に 16時間滞在し、山の空気を吸い、還元的な温
泉に入浴したため、体験前の酸化ストレス物質の値
がすでに若干低下してしまった可能性が否定できな
い。セラピー前の検査を居住地で測定していれば違
った数値となっていた可能性があり、今後の課題と
したい。
ホモシステインは 3 回ともに変化が見られなか
った。 vitaminB6 ・ B12 ・葉酸の摂取で血中ホモ
システインを低く維持できるが、対象者は普段の食
生活でこれらのビタミンが十分摂取できており、変
化が見られなかったのかもしれない。
今回の研究ではコントロ-ル群を設置できていな
いため、非森林地帯においても得られるかもしれな
い栄養、運動や休養などの変化が検査値に及ぼす影
響を除外できていない。しかし、これまでの先行研
究 4-8,43) によると運動量や休養を統制しても非森林
地帯に比べ、森林地帯では、主観的気分、血圧下降、
コルチゾ-ル・カテコ-ルアミンなどのストレスホ
ルモンの低下、心拍変動性・脳血流量の鎮静化など
のリラクセ-ション効果及び NK活性の上昇が有意
に得られることが報告されており、今回我々の研究
結果でも見られたリラクセ - ション効果や抗がん
免疫力の増強は、やはり森林セラピ-の効果を表し
ている可能性がある。一方、森林セラピーにおける
アンチエイジングホルモンや酸化ストレスへの影響
については、若干の研究 44,45 ) が散見されるのみ
であり、今後、さらに十分な解析が必要である。
Ⅴ おわりに
今回の研究で、リラクセ-ション、抗がん免疫の
活性化、アンチエイジングホルモンの上昇、酸化ス
トレスの緩和という面で、森林セラピ-が健康にも
たらす影響を客観的に示すことができた。健康への
恩恵という視点での森林のもつ公益的機能を再確認
できたことは我々中山間地に生きる者にとって大き
な誇りである。今後も森林セラピ-の実践と研究を
続け、森林がもたらしてくれる価値を地域住民とと
もに意識化・共有化し、来訪者を迎える住民自身の健
康と地域活性化 46 ) 、ひいては都市部住民の健康と
環境保全への貢献につながることを願うものである。
具体的には、森林セラピ-という付加価値を備えた
人間ドックや健診の可能性を関係者の間で検討して
いるところである。
謝辞
この研究は、地域社会振興財団の平成21年度長
寿社会づくりソフト事業による助成をいただき、梼
原町が行った。
セラピ-のメニューつくりからに熱心に取り組み、
研究に協力してくださった地元松原区住民の皆さん
と雲の上のホテルの皆さん、立ち上げから支えてく
ださった 農村工学研究所の坂本誠さん、甲南大学
教授・兵庫県臨床心理士会長の羽下大信さん、 関
西の研修企画グル-プ「WEプロデュース」の皆さ
ん、産業医事務所「すてっぷ」の長井聡里所長、 N
PO公共経営品質研究会藤田光一さん他の皆さん、
高知県須崎林業事務所の岩本保さんはじめ高知県
職員の皆さん、検査に協力してくださった 高知大
学医学部溝渕俊二教授、渡部 嘉哉研究員、 そして今
回被験者として参加して下さったモニターの皆さん
に深謝いたします。
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EFFECTS OF FOREST THERAPY ON PARTICIPANTS’ HEALTH
Gibo Miki*1,2,3, Tanada Sumiyo*1,Kawazawa Kazurou*1,Nishimura Mizue *3,Huruya Yuuko *3,Mizutari Hiroshi *4,Matoba
Shun*1,3
National Health Insurance Yusuhara Hospital*1 ・ Matsubara Clinic*2 ・ The Center of Health and Welfare of Yusuhara Town *3 ・
The Study Group of forest therapy in Yusuhara *4
In recent years, forestry agencies have advocated “forest therapy” as a practical application of new forest resources.
Yusuhara Town was authorized as the forest-therapy quarter and road by the Forest Therapy Steering Committee in March
2007. In this study, the effects of forest therapy on health was measured in terms of its effects on the neuroendocrineimmune network, anti-aging (aging-related index), and oxidative stress. The study involved 10 healthy individuals (age
range, 30–73 years; 7 women and 3 men). They participated in a forest walk, bathed in a spring, and received medical
advices; moreover, the nutritional value of their meal was calculated. Several tests were performed before, immediately
after the experience, and 6 weeks later. The following items significantly improved immediately after the experience:
abdominal circumference, Self-rating Depression Scale score, degree of stress tolerance, blood pressure, salivary amylase
level, natural killer (NK) cell activity, and the serum levels of dehydroepiandrosterone-sulfate (DHEA-S), free
triiodothyronine (T3), and malondialdehyde-modified low-density lipoprotein (MDA-LDL) (oxidized LDL). In 6 weeks, a
significant decrease in the abdominal circumference and triglyceride (TG) levels and increase in DHEA-S and free T3
were noticed, when compared with the values before the experience. The results were attributable to the effects of forest
therapy, which was considered to be a comprehensive wellness- and care-oriented system.
Key words: forest therapy, neuroendocrine-immune network, NK cell activity, anti-aging, oxidative stress
森林セラピ-が参加者の健康指標に及ぼす影響を明らかにする研究
宜保美紀
*1,2,3
棚田純代
梼原町立国保梼原病院
*1
*1
川澤和郎
・町立松原診療所
*2
*1
西村みずえ
*3
古谷裕子
*3
水足浩
*4
的場俊
*1,3
・梼原町保健福祉支援センター *3 ・ゆすはら森林セラピ-研究会 *4
近年、新しい森林資源の活用として、林野庁が「森林セラピー」を提唱している。梼原町は、平成 19年 3 月
森林セラピー・ステアリングコミッティによるセラピー基地・ロードの認定を得た。今回、梼原町の森林セ
ラピーによる健康への影響を、神経・内分泌・免疫ネットワーク、アンチエイジング(老化関連指標)、酸化
ストレスの側面から測定した。対象は健康な 10名( 30-73 歳、女性 7 、男性 3 名)で、森林散策、栄養計
算された食事、療養泉への入浴、医師等によるアドバイスを実施し、セラピー体験前・体験直後、 6 週間後に
検査を行った。セラピ-体験直後に有意に改善した項目は、腹囲、うつ自己評価尺度、ストレス耐性度、収縮
期血圧、唾液アミラーゼ、ナチュラルキラ-細胞活性、デヒドロエピアンドロステロンサルフェ―ト( DHEAS )、遊離トリヨードサイロニン( T3 )、マロンジアルデヒド修飾 LDL ( MDA-LDL 、酸化 LDL)で
あった。 6 週間後では体験前に比べ、腹囲、中性脂肪が有意に低下、 DHEA-S 及び遊離 T3 が有意に上昇し
ており、総合的なウェルネスケアとしての「森林セラピ-」の影響と考えられた。
Key words: 森林セラピ-、神経・内分泌・免疫ネットワーク、NK 活性、アンチエイジング、酸化スト
レス