熱流体物理研究室 - 九州大学 水素エネルギー国際研究センター

研究紹介
九州大学大学院工学研究院
九州大学大学院工学研究院
熱流体物理研究室
高田 保之(九州大学教授) 河野 正道
機械材料学研究室
近藤 良之(九州大学教授)
迫田 直也
(九州大学准教授) (九州大学助教)
▶http://www.mech.kyushu-u.ac.jp/~engmat/
▶http://mech.kyushu-u.ac.jp/~heat/
高圧水素の熱物性研究
水素機器部品を設計・製造するための強度評価
水素社会構築のためには、
水素の熱物性値は必要不可欠であり、
知的基
水素を利用するには、プロセスに加えて機器を安全に使用できる強度
盤情報としての役割を担います。しかしながら、現在、水素の熱物性値は
信頼性が重要です。水素は金属材料に侵入して、強度低下を引き起こす
十分とは言えない状況にあります。
そこで、
本研究では社会的なニーズを
場合があります。水素利用機器が長期間使用されても破壊しないように
考慮し、-40ºC ~ 500ºC、最大100MPaまでの超高圧域を対象として、
するために、水素利用機器部品の耐水素疲労設計法の構築を目標にして
PVT性質
(温度–圧力–密度または比体積の関係)
、粘性係数、熱伝導率と
います。
いった物性を高精度に測定し、その状態曲面を明らかにすることを研究
目的としています。
また、
得られたデータを基に状態方程式や整理式を作
❶長周期変動応力下の水素に助長された
き裂進展
成し、
これらを収録した熱物性データベースを開発しています。
高圧水素物性測定装置
超高圧水素容器などには、
鋼にクロムやモリブデンなどを添加して強度
を高くした材料が使用されます。しかし、水素が疲労き裂の成長を加速す
100MPa級の超高圧物性を精密に測定することは極めて困難であ
る作用は強度が高いほど顕著に現れます。
図は低合金鋼SCM440Hにおい
り、本研究では物性測定装置を、独自に設計、開発しています。また、全て
て疲労き裂の成長速度が通常の10000倍にも加速された実験結果を示し
遠隔操作による測定が可能です。PVT性質は、磁気式密度計で測定を
ます。
このような水素による急激なき裂進展の加速を避けるためには材料
行っています。粘性係数、熱伝導率はそれぞれ振動細線法および、非定常
の硬さの適切な選択が必要です。
短細線法を用いて測定しています。
A
B
❷水素侵入した低合金鋼の破壊じん性に及ぼす
負荷速度と焼戻し温度の影響
C
破壊じん性は急速な破壊を防ぐ設計に用いられる重要な指標です。図
に示す連続水素チャージ下の破壊じん性試験結果より、
破壊じん性値JIC
は水素により大幅に低下し、その低下は焼戻し温度が低いほど
(材料強度
が高いほど)
、
また、
ゆっくりと負荷するほど
(試験時間が長いほど)
顕著で
す。高圧水素容器には高強度の材料が必要であること、水素ガスの充てん
と放出はゆっくり行われることを考えると、
この問題は非常に重要です。
水素物性測定装置
(A) 磁気式密度計
(B) 振動細線法粘性係数測定装置
(C) 非定常短細線法熱伝導率測定装置
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