新旧高架橋一体化施工におけるコンクリート打設中の列車 - 土木学会

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
Ⅰ-146
新旧高架橋一体化施工におけるコンクリート打設中の列車振動計測とその影響評価
清水建設(株)
正会員 ○岩城英朗,内田秀樹,古堀謙次,若原敏裕,小倉大季
西日本旅客鉄道(株)
1.はじめに
既設高架橋
正会員 吉永一義
新設高架橋
鉄道の線路等設備増設に伴う高架橋拡幅工事におい
て,既設張出しスラブと増設高架橋スラブの一体化が
埋込み型加速度計
必要とされる構造(図-1)を採用する場合がある 1).
当該構造は増設高架橋へ列車荷重を確実に伝達するた
既設スラブ
めに新旧スラブの密着が要求されるが,施工上の制約
新設スラブ
から列車走行下でコンクリート打設を行う事例が多く,
列車振動がコンクリートの新旧一体化に与える影響が
懸念材料として挙げられる.すなわち,コンクリート
図-1 対象構造物
加速度(mmG)
は打設時から列車振動を受けながら凝結していくため,
振動が鉄筋とコンクリートとの付着や新旧コンクリー
トの一体性に影響する可能性がある.しかし,これら
の影響に関する過去の研究実績
2),3)
は少なく,特に実
50
25
加速度(mmG)
では新幹線高架橋の実施工を対象にして列車走行時の
加速度応答を埋込み型加速度計により計測し,列車振
動が新旧一体化に及ぼす影響について検証を試みた.
2.計測概要
0
-25
新幹線通過
50
25
5
10
加速度(mmG)
ントの水和発熱に対する耐熱性ならびに防水性を有す
20
25
既設
day: 3/20 time: 22:58:45 - 22:59:15
30
新設
0
-25
新幹線通過
5
50
10
25
15
time (sec)
20
25
既設
day: 3/29 time: 22:58:45 - 22:59:15
30
新設
材齢 10 日
0
-25
-50
0
る埋込み型タイプである.新設側はコンクリート打設
15
time (sec)
材齢 1 日
図-2 に埋込み型加速度計の設置位置を示す.加速度
(MEMS)を使用して新たに開発したものであり,セメ
新設
打設前日
-50
0
計 は デ バ イ ス に Micro Electro Mechanical Systems
既設
day: 3/18 time: 22:58:45 - 22:59:15
-50
0
構造物に対して行った検討は乏しい.そこで,本研究
図-2 加速度計設置位置
前に計器を主筋に固定して埋設し,既設側はスラブ下
新幹線通過
5
10
15
time (sec)
20
25
30
図-3 振動測定結果(各日の 22:58:45~22:59:15)
面のコンクリートをはつった後,計器を躯体内部に設
置しモルタルで埋め戻した.計測は新設スラブのコン
ブがほぼ一体となって挙動していることが確認された.
クリート打設の前日から材齢 10 日まで 24 時間連続計
図-4 に加速度応答から算出したパワ・スペクトルを
測で実施した.
示す.パワ・スペクトルは図-3 に示した新幹線走行時
3.計測結果
の加速度時系列波形(サンプリング振動数 200Hz)から
(1) 加速度応答とパワ・スペクトル
30 秒間を抽出し,フーリエ変換した後,電気的なノイ
図-3 に鉛直方向の加速度記録を示す.図は,コンク
ズを除去するために周波数領域でフィルターをかけて
リート打設前日および材齢 1 日,10 日の各日における
算出した.図より卓越振動数は 15Hz 前後にあり,新旧
22:58:45~22:59:15(30 秒間)の記録である.当該時間
スラブで一致していることがわかる.列車走行による
は既設高架橋上を新幹線が通過する時間帯である.図
既設スラブの振動は新設部へ伝達され両者が一体とな
より新旧スラブの加速度応答は最大値に差異はあるも
って挙動していることが確認される.なお,コンクリ
のの位相ずれは認められないことがわかり,新旧スラ
ート打設前日の新設側において,卓越振動数が 25Hz に
キーワード
連絡先
新旧一体化施工,列車振動,パワ・スペクトル,高架橋
〒135-8530 東京都江東区越中島 3-4-17
TEL03-3820-6512
-291-
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
新設
6
4
2
8
5
10 15 20
振動数 (Hz)
day: 3/29
25
既設
30
既設
day: 3/20
8
新設
加速度最大値(mmG)
既設
打設前日
0
材齢 1 日
6
4
0
5
10 15 20
振動数 (Hz)
25
30
新設
材齢 10 日
6
4
2
0
* 各図は 22:58:45~22:59:15
の加速度応答より算出した.
5
10 15 20
振動数 (Hz)
25
30
新設
6
コンクリート
*列車通過時
打設前
4
2
0
5
10 15 20
振動数 (Hz)
25
30
打設前日
day: 3/18 time: 18:00-24:00
0
1
8
100
80
60
40
20
2
0
100
80
60
40
20
1
4
2
3
time (hour)
0
1
2
3
time (hour)
新設
5
既設
4
材齢 10day:
日 3/29 time: 18:00-24:00
6
新設
5
既設
4
6
新設
5
6
図-6 10 分毎の加速度記録から算出した最大値
day: 3/19 time: 15:42-15:44
新設
6
コンクリート
*列車通過時
打設後
4
2
0
3
time (hour)
既設
材齢 1 day:
日 3/20 time: 18:00-24:00
新設部と既設部の
加速度最大値の差 (mmG)
8
パワ・スペクトル (cm2/sec3)
パワ・スペクトル (cm2/sec3)
図-4 各日のパワ・スペクトル
day: 3/19 time: 15:14-15:16
100
80
60
40
20
2
加速度最大値(mmG)
パワ・スペクトル (cm2/sec3)
day: 3/18
加速度最大値(mmG)
8
パワ・スペクトル (cm2/sec3)
パワ・スペクトル (cm2/sec3)
Ⅰ-146
5
10 15 20
振動数 (Hz)
25
18
15
12
9
6
3
0
30
材齢 1 日(3/20)
2
4
6
8
10
計測開始日からの経過日数(日)
12
図-5 コンクリート打設前後のパワ・スペクトルの変化
図-7 新旧スラブにおける加速度最大値の変化
もみられるが,これは加速度計がコンクリートに埋設
の差異が小さくなる傾向がみられる.新設部コンクリ
される前の鉄筋単体の卓越振動数に対応する.
ートの剛性発現により新旧スラブの差異が小さくなっ
(2) コンクリート打設直後の応答特性の変化
たと考えられる.
新設部の加速度計がコンクリートに埋設される前後
4.まとめ
のパワ・スペクトルを図-5 に示す.加速度計周辺にコ
本研究で行った計測により,列車走行時における新
ンクリートが打設された時間は目視により確認した.
旧スラブの加速度応答波形の位相ならびに卓越振動数
打設前は前述のとおり新設部の卓越振動数が 25Hz にあ
に大きな差は認められず,新旧スラブがほぼ一体とな
るが,打設直後から計測終了までは検出されない.25Hz
って挙動していることが確認された.さらに,コンク
成分が鉄筋単体の応答特性と対応しているため,この
リートの凝結過程において懸念された列車振動によっ
計測結果がコンクリートの凝結過程に鉄筋とコンクリ
て鉄筋とコンクリートが個々に応答する挙動は,本計
ートが個々に応答する挙動が発生しなかったことを示
測の範囲内では認められなかった.
唆し,列車振動が鉄筋とコンクリートとの付着に悪影
【参考文献】
響を及ぼしていないことが認められる.
1) 下田誠剛,吉永一義,古堀謙次,浦野真次:高流動コンク
リートを用いた鉄道高架橋の一体化施工,コンクリート工
学,vol.48,No.3,pp.29-34,2010
2) 横井謙二ほか:列車振動が高流動コンクリートの品質に及
ぼす影響,コンクリート工学年次論文報告集,vol.20,No.2,
pp.451-456,1998
3) 垣内辰雄ほか:列車振動が新・旧高架橋スラブの接続に及
ぼす影響,土木学会第 53 回年次学術講演会,pp.410-411,
1998
(3) コンクリート硬化に伴う加速度最大値の時間変化
図-6 に 10 分毎の加速度記録から算出した最大値の
時間変化を示す.同図は,各日の 18:00~24:00 の結果
である.また,10 分毎の加速度最大値から新旧の差を
算出し,それらのデータの日平均値をプロットしたの
が図-7 である.材齢経過に伴い新設と既設の応答特性
-292-