3.各機器の入力調整 室内設置機器の設置に関するノウハウについて挙げるとなれば、その用途に応じた 設置時の入力調整などに違いがあり、これらについて述べることにします。 3.1 ATC装置 ATC装置では一般的に設置時に次の調整が必要で、設定の順序は次の通りです。 3.1.1 送信器の1,2号切替器の調整 ATC装置では一般的に多重系構成になっており、そのうち送信器は待機2重 系構成になっています。自系のレベルが低下した時にレベル検出器が検知し、故 障と判断して系切替を行います。このレベルの低下度は装置の各機器ごとで定め られており、メーカー出荷時に設定されていますが、設置時に確認する必要があ ります。 レベル検出器の調整は一般的に図3−1のように、検知リレーが落下した時の タップより、所定のタップ位置まで戻します。 検知タップ 入力レベル リレー電圧 ヒステリシス (V) 落下した目盛より戻す 8 7 6 5 4 3 2 1 0 ステップの目盛(dB) 図3−1 レベル検出器の設定 ◎設定のポイント◎ ・ タップの切替間隔はゆっくり行って下さい。検知リレーには落下時素が有るため、 早く行うと目盛が違ってしまう事があります。 ・ 特殊な場合を除き1,2系とも同量の補償をします。補償量は一般的に6dB前 後です。 ・ タップの値は必ず記録しておきます。 ・ 補償量が可変できないシステムがありますので、そのシステムの取扱説明書を参 照して下さい。 3.1.2 軌道回路短絡電流の調整 軌道回路の末端を所定の抵抗で(一般的には0.1Ω)短絡したとき、レール に流れる電流を調整します。短絡電流の値は周波数、軌道回路の長さ、伝送ケー 4−9 ブルの長さなど、いろいろな条件で値が異なってきますが、車上に確実に情報を 伝送できる短絡電流に設定します。電流値はシステムごとに異なりますので、送 信器のタップを調整して、そのシステムで規定されている調整値に設定します。 短絡電流の測定は、そのシステムで規定された電流計を使用し、レール上で測 定します。送信端も同様にして測定します。 ◎設定のポイント◎ ・ 短絡は確実に行って下さい。レールに錆がある場合は、接触抵抗が増加してしま い電流に誤差を生じてしまいます。そのため、確実に錆を除去してから短絡しま す。 ・ レールに錆がある場合などはインピーダンスボンドのリード端子などを良く磨い て短絡すると接触抵抗が減り、良いデータが得られます。 ・ 電流の測定は短絡位置より、約1.5m前方のレールの中心で行って下さい。 ・ 短絡電流の値は必ず記録しておきます。 ・ ねじ込み式の短絡リード線(てつでん)を使用すると、より確実に短絡できます。 3.1.3 軌道回路受信器の調整 短絡電流の調整が終了した後、軌道回路受信器の補償量を調整します。補償の 方法はレベル検出器の設定と同様に行います。この補償量はシステムごとに規定 されており、そのシステムで規定されている値に設定します。そして各軌道回路 ごとに設定する必要があります。補償量の調整は軌道回路の変動などに対し、受 信器を安定動作させ、確実に列車を検知させるために非常に重要な作業です。 軌道回路受信器の調整は一般的に図3−2のように、軌道リレーが動作した時 のタップより、所定のタップ位置まで戻します。システムの違いにより、軌道リ レーが落下したタップから補償する場合もありますので、システムごとの規定に 従って行うこととします。 入力レベル 動作タップ リレー電圧 ヒステリシス (V) 動作した目盛より戻す 11 10 9 8 7 6 5 4 補償器のステップ目盛 図3−2 軌道回路受信器の補償 4−10 3 2 1 ◎設定のポイント◎ ・ タップの切替間隔はゆっくり行って下さい。軌道リレーには落下、動作時素が有 るため、早く行うと目盛が違ってしまう事があります。 ・ 特殊な場合を除き全系とも同量の補償をします。補償量は一般的に10dB前後 です。 ・ タップの値は必ず記録しておきます。 3.1.4 短絡感度測定 軌道回路受信器の調整終了後、短絡感度の測定を行います。短絡感度は、その 軌道回路の列車検知を決定付ける車軸の短絡抵抗に相当します。抵抗値は軌道回 路に使用している周波数や回路構成などにより、変る事があります。 先ず、受信側に所定の短絡抵抗計を接続し、抵抗値を徐々に低下させて行き、 軌道回路受信器が落下した時の抵抗値を受信側の短絡感度とします。同様に送信 側も行います。一般には受信側と送信側はあまり変わらない値となります。 ◎設定のポイント◎ ・ 短絡は確実に行って下さい。短絡感度に相当する抵抗値は元々小さい値で、レー ルに錆がある場合は、接触抵抗が増加してしまい感度に誤差を生じてしまいます。 精度を得るため、確実に錆を除去してから短絡します。 ・ レールに錆がある場合などはインピーダンスボンドのリード端子などを良く磨い て短絡すると接触抵抗が減り、良いデータが得られます。 ・ 送信端では短絡電流が大きくなのますので、短絡抵抗計の電流容量に注意して下 さい。 ・ 短絡感度の値は必ず記録しておきます。 4−11 3.2 CTC装置 本項ではCTC6形のレベル調整方法について述べます。 3.2.1 基礎帯域回線(BP回線) (1) 回線チェック 回線が正しく接続されているか、CTC符号またはテスト符号を流し、各駅の 装置でオシロスコープ、レベルメータなどで確認します。 (2) 雑音測定 各駅装置の電源をすべて断とし、中継駅または端末駅側でDBPユニットのU リンクを抜き、上流/下流の回線側を600Ωにて終端して行います。(レベル メータは600Ωレンジを使用する。) 測定回路の構成を図3−3に示します。 U D 中央 中央 一般駅 又は DBP D 一般駅 又は 中継駅 DBP 中継駅 S S U 標準値 ・ピークノイズ -40dBm(P-P15.4mV 以下) ・ホワイトノイズ -50dBm R U R S S D R Uリンクを抜く D R Uリンクを抜く U 回線 回線側端子 D U 回線 D + − レベルメータ(600Ω レ ンジ)とオシロスコープ を併用 機器 600Ω終端 又はレベルメータ (600Ωレンジ) 機器 図3−3 測定回路の構成 (3) レベル測定 (a) テスト符号の発生方法 (ア) TEST-SWをONにして装置の立上げを行う。 (TEST-SWをONにした系を使用系にする。) (イ) TEST符号が出力したかの確認はDBPユニットのS/R表示灯が点灯の ままになる。 (b) テスト符号の停止方法 (ア) TEST-SWをOFFにして装置の立上げを行う。 4−12 (イ) TEST符号が停止したかの確認はDBPユニットのS/R表示灯が点灯の ままでないことより確認する。 (ウ) TEST-SWの場所 ・中央装置…………架の裏側 ・駅装置……………架の前側 (c) 送信レベルの測定 送信レベルの出力設定は、次のように2段階の切替が出来る様になっている。 レベル測定はDBPユニットのUリンク(U/D)にてレベルメータ(HIG Hレンジ)にて測定する。(通信の電話回線などに悪影響を与える恐れがあるた め、送信出力設定については客先責任者の確認をとること。) ・設定 ⇒ J13(1−C) +10dBm(S系ループ) J13(2−C) +5dBm(中央ループ) (d) 受信レベルの測定 受信レベルの設定は、次のように3段階の切替が出来る様になっている。 相手方よりテスト符号を送信してもらいDBPユニットのUリンク(U/D) にてレベルメータ(HIGHレンジ)にて測定し、測定したレベルにより受信 レベルの設定を行う。 ・設定 ⇒ J14(1) −19dBm(中央ループ標準) J14(2) −25dBm(S系ループ標準で受信レベルが +6∼−25dBm時設定) J14(3) −28dBm(S系ループで受信レベルが−25 ∼−28dBm時設定) テスト 受信 テスト 受信 テスト 受信 符号 レベル 符号 レベル 符号 レベル 出力 出力 出力 A B C 中央又は中継駅 一般駅 中継駅又は端末駅 図3−4 受信レベルの測定 中央および各駅の送信、受信レベル設定は標準に設定しておく。 ・A駅よりテスト符号出力および出力レベル設定、B、C駅にて受信レベル測定 を行う。 ライン ・C駅よりテスト符号出力および出力レベル設定、A、B駅にて受信レベル測定 を行う。 ライン 4−13 ・B駅よりテスト符号出力および出力レベル設定、A、C駅にて受信レベル測定 を行う。 ライン 3.2.2 搬送回線(PM回線) 搬送回線を使用する場合の構成を図3−5に示します。 中央 端末 MTB MTB (搬送用) (搬送用) M24 M24 (PMMODEM) (PMMODEM) SRP-PB SRP-PB (BP-PM変換) (BP-PM変換) 処理部 処理部 図3−5 搬送回線の構成 (1) 雑音測定 中央および端末装置の電源を断にし、MTBユニットの送信側Uリンクを抜き、 回線側を600Ω終端、受信側Uリンクを抜き、回線側でレベルメータ、オシロ スコープにより受信側にて測定する。S/Nが20dB以上確保できること。 (レベルメータは600Ωレンジを使用する。) MTB 20 Uリンクを抜く 送信 MT 30 10 R-ATT + − 600Ω終端 レベルメータ(600Ωレンジ)と オシロスコープを併用 受信 20 30 10 S-ATT 図3−6 雑音レベルの測定 4−14 MT (2) レベル測定 (a) 送信レベル設定 通信端局に何dBm出力して良いか、客先に確認を行う。 出力レベルが確定したら、そのレベルになるようにMTBユニットのS-ATT で調整する。調整後、MTBユニットのUリンクおよびM24ユニットのUリン ク(4WS)のレベルを測定する。 (b) 受信レベル設定 相手側の出力レベル決定後、M24ユニットのUリンク(4WS)にて-25 dBmになるようにMTBユニットのR-ATTを調整する。 調整後、M24ユニットのUリンク(4WS)およびMTBユニットのUリンク (受信)のレベルを設定する。レベル測定はレベルメータのHIGHレン ジで行う。 (c) アイモニターの確認 アイモニター端子(X,Y,AG)にオシロスコープを接続し、X−Yリサー ジュ波形にて受信信号星座を確認する。(オシロスコープはX−Yリサージュ機 能付きを用意する。) アイモニターは系が左図の様になるのでA.B. Y C.Dの各点が、できるだけ小さくまとまる様に M24ユニットのスイッチ設定により調整する。 A SW1-3 D X B ケーブル等化調整 SW1-4 C SW3-6 SW3-7 図3−7 リサージュ 手動等化調整 SW3-8 (d) すべてのレベル調整が終了した後に常用/迂回ともにレベルダイヤを作成す ること。 ◎設定のポイント◎ ・ノイズの測定や受信レベルの測定は、ごく低レベルの測定になります。外部ノイズ に影響されないように、測定回路の極性を合わせ、測定はシールド線を、バランス 回路にはバランス形の測定器を使用して測定して下さい。 ・レベルの測定にはオシロスコープを併用して、誤った測定をしていないことを確認 しながら行って下さい。 ・測定したレベルは必ず記録しておきます。 4−15 付表4−1 現地調査チェックリスト (屋内設置工事)(1/1) 工事名称 ○ ○ ○ ∼ 実施年月日 ○ ○ 年 ○ ○月 ○ ○日 実施場所 ○ ○ ○ 機器室(屋内) 作業責任者 作業内容 設置工事 事前調査 作業人員 確 認 項 ○ ○ ○間信号設備工事 目 判 (○) 定 注 意 事 項 1.設計図書に基づき各部寸法測定 良 ・ 否 ― 2.機器室ドアの種類 引戸・観音 開閉時に障害物となる可能性 3.ドアの幅・高さ、施錠 良 ・ 否 機器搬入可否、施錠可否 4.天井の高さ(特に梁下など) 良 ・ 否 架高+ラック高+点検スペース 5.照明器具、音声機器(SP) 良 ・ 否 球交換など保守支障の有無 6.防災機器、吸排気口の位置 良 ・ 否 動作確認など保守支障の有無 7.出入り口と照明スイッチ位置 良 ・ 否 入出時のスイッチ操作の利便性 8.床の荷重強度と機器重量の関係 良 ・ 否 電源装置の設置方法と対策の要否 コンクリー・アクセス 機器の設置方法と地震対策の要否 10. 床アンカーボルト打設の可否 可 ・ 否 機器の固定方法と地震対策の要否 11. 床の仕上り(水平度、平滑性) 良 ・ 否 床直しの要否、矯正器具の要否 9.床の種類 12. 壁の種類 13. 壁アンカーボルト打設の可否 コン・ボー・ブロック 機器の取付け方法と地震対策の要否 可 ・ 否 機器の取付け方法と地震対策の要否 14. 天井の種類(化粧天井及び構造) コン・ボー・ブロック 機器の支持方法と地震対策の要否 15. 天井アンカーボルト打設の可否 可 ・ 否 機器の支持方法と地震対策の要否 16. ケーブル引込み口の位置、大きさ 適 ・ 否 ケーブル防護、ケーブル占積率 17. ケーブルピットルート、大きさ 適 ・ 否 ケーブル防護、ケーブル占積率 18. 既設ケーブルの有無 有 ・ 無 保存(いつまで)か、撤去か 19. 既設ケーブルの転用の可否 有 ・ 無 線種、余長、ルート、劣化の程度 20. アース設備の有無及び種類 有 ・ 無 1 種、2種、3種 21. アース端子箱の位置 適 ・ 否 アース配線可能の適否 22. 引込み電源ケーブル 適 ・ 否 受電容量、ケーブル種別・容量、ルート、余長 23. 他設備との各ケーブルの適否 適 ・ 否 ケーブル種別・容量、ルート、余長 24. 設置機器の据付位置 良 ・ 否 保守スペース、照明状態 25. 将来の増設スペースの有無 有 ・ 無 保守スペース、照明状態、搬出入路 26. 仮設機器等設置スペースの有無 有 ・ 無 搬出入路 4−16 付表4−2 現地調査チェックリスト (屋外設置工事)(1/1) 工事名称 ○ ○ ○ ∼ 実施年月日 ○ ○ 年 ○ ○月 ○ ○日 実施場所 ○ ○ ○ 機器室(屋外) 作業責任者 作業内容 設置工事 事前調査 作業人員 確 認 項 ○ ○ ○間信号設備工事 目 1.設計図書に基づき各部寸法測定 2.道床の種類 判 (○) 定 良 ・ 否 バラス・コン・スラブ 注 意 事 項 ― 機器設置固定方法、基礎コン方式 3.機器設置位置 良 ・ 否 見通し、建築限界(扉開放時を注意)、 支持物強度、保守スペース確保 4.設備環境状況 良 ・ 否 太陽光、温度、風雨、排水、湿度の適否 他架設物との接触 5.基礎コンクリートの要否 要 ・ 否 列車風、振動、差し筋 6.ケーブル敷設方式(架空)、 支持間隔 良 ・ 否 支持固定方式、敷設スペース、 建築限界、離隔距離 7.ケーブル敷設方式(地上) 良 ・ 否 支持固定方式、敷設スペース、 建築限界、競合スペース 8.ケーブルルート、トラフ、 ダクトの大きさ 適 ・ 否 建築限界、ケーブル防護、ケーブル占積率 9.線路横断の有無 有 ・ 無 軌道横断方法(架線横断回避) 10. 既設ケーブルの有無 有 ・ 無 保存(いつ迄か)、撤去か 11. 既設ケーブルの転用の可否 有 ・ 無 線種、余長、ルート、劣化の程度 12. アースの有無及び種類 有 ・ 無 1 種、2種、3種 13. アースのルート、端子箱の位置 適 ・ 否 アース配線可能の適否 14. 固定、支持点の構造物強度 良 ・ 否 アンカー植込み、ボルト止め可否 4−17 付表4−3 現地調査チェックリスト (機器搬入)(1/1) 工事名称 ○ ○ ○ ∼ 実施年月日 ○ ○ 年 ○ ○月 ○ ○日 実施場所 ○ ○ ○ 機器室(屋内外) 作業責任者 作業内容 機器搬入 事前調査 作業人員 確 認 項 ○ ○ ○間信号設備工事 目 判 (○) 定 注 意 事 項 1.地図及び設計図書に基づき 各部寸法測定 良 ・ 否 ― 2.搬入最近点までの道路状態 良 ・ 否 トラック、クレーン車の運行可否 車輌の待機場所、民家の有無 3.搬入口、搬入通路の広さ 良 ・ 否 通路の広さ・高さ、支持物の有無 通路高低差の有無 4. 搬入道路の養生の要否 要 ・ 否 歩道の使用、重機の据付位置・方法 仮設シート・バリケード等の防護の要否 5. 搬入道路の時間帯制限 有 ・ 無 道路占有の規模、民家の有無、 運搬車輌の通行の可否 6.搬入通路の養生の要否 要 ・ 否 床・壁の仕上がり状態、 仮設シート・バリケード等の防護の要否 7.開梱場所の有無 有 ・ 無 共有場所か、 夜間時の照明の必要性 8.集積場所 有 ・ 無 共有場所か、 施錠可能か、シート等防護処置の必要性、 4−18
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