(57)【要約】 下記で示した構造を有するクロマンおよびクロメン化合 物類

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(57)【要約】
下記で示した構造を有するクロマンおよびクロメン化合
物類およびそれの製薬上許容される塩は、特に高脂血症
、高コレステロール血症、異常脂血症および他の脂質障
害の治療および管理において、そしてアテローム性動脈
硬化などのそれら疾患に関連する状態および続発症の発
症遅延またはリスク低下において、治療化合物として有
用である。
【化20】
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有する化合物または該化合物の製薬上許容される塩。
【化1】
10
[式中、
R
1
およびR
2
はそれぞれ、独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで
置換されていても良いC1 ∼C3 アルキルであり;
R
3
は、
(a)H、および
(b)独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されていても良い
C1 ∼C3 アルキル
からなる群から選択され;
R
4
20
は、独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されていても良
いC1 ∼C3 アルキルであり;
R
5
は、Hおよび独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されて
いても良いC1 ∼C3 アルキルからなる群から選択され;
R
6
は、H、Cl、CH3 およびCF3 から選択され;
R
7
は、Hならびに独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換され
ていても良いC1 ∼C3 アルキルから選択され;
AおよびBはそれぞれ、H、Cl、F、CH3 およびCF3 から選択され;
R
5
およびR
7
に結合した環炭素原子を連結する点線は、存在しても良い二重結合であ
り;
30
XおよびYは独立にOおよびSから選択され;
nは2∼3の整数である。]
【請求項2】
XおよびYがそれぞれOである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A、BおよびR
7
がHである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
5
がCF3 である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
5
がC1 ∼C3 アルキルである請求項1に記載の化合物。
40
【請求項6】
R
6
がCl、CH3 およびCF3 から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
6
がClである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R
3
およびR
4
がそれぞれ独立に、CH3 、C2 H5 およびC3 H7 から選択される請
求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R
1
およびR
【請求項10】
2
がそれぞれ、CH3 またはC2 H5 である請求項1に記載の化合物。
50
(3)
R
1
およびR
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2
がそれぞれCH3 である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
1
およびR
2
がそれぞれ独立にCH3 またはC2 H5 からなる群から選択され;
R
3
およびR
4
がそれぞれ独立にCH3 、C2 H5 およびC3 H7 からなる群から選択
され;
R
5
がCF3 であり;
R
6
がClであり;
R
7
、AおよびBがHであり;
R
5
およびR
7
に結合している環炭素原子を連結する点線が二重結合であり;
XおよびYがOであり;
nが2∼3の整数である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R
1
およびR
2
がそれぞれCH3 である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
下記に示した式を有する請求項1に記載の化合物または該化合物の製薬上許容される塩
。
10
(4)
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【化2】
10
20
30
40
(5)
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10
20
30
【請求項14】
請求項1に記載の化合物または該化合物の製薬上許容される塩および製薬上許容される
40
担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物または該化合物の製薬上許容される塩および製薬上許容される
担体を必須に含む医薬組成物。
【請求項16】
処置を必要とする患者での異常脂血症、高コレステロール血症、高脂血症、高トリグリ
セリド血症、低HDLレベルおよび高LDLレベルからなる群から選択される1以上の脂
質障害の治療方法であって、前記患者に対して、治療上有効量の請求項1に記載の化合物
を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項17】
50
(6)
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処置を必要とする患者での異常脂血症の治療方法であって、前記患者に対して治療上有
効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項18】
処置を必要とする患者での低HDLレベルを上昇させる方法であって、前記患者に対し
て治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項19】
処置を必要とする患者での高LDLレベル低下させる方法であって、前記患者に対して
治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項20】
処置を必要とする患者での肥満の治療方法であって、前記患者に対して治療上有効量の
10
請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項21】
処置を必要とする患者でのアテローム性動脈硬化の治療方法であって、前記患者に対し
て治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項22】
アテローム性動脈硬化発症のリスクがある患者でのアテローム性動脈硬化発症リスクの
低下方法であって、前記患者に対して治療上有効量の請求項1に記載の化合物を投与する
段階を含む、前記方法。
【請求項23】
治療または管理を必要とする患者での1以上の疾患、障害または状態の治療方法であっ
20
て、前記疾患、障害または状態が(1)脂質障害、(2)異常脂血症、(3)高脂血症、
(4)高トリグリセリド血症、(5)高コレステロール血症、(6)低HDLレベル、(
7)高LDLレベル、(8)アテローム性動脈硬化およびそれの続発症、(9)腹部肥満
を含む肥満、(10)血管再狭窄、(11)網膜症、(12)非インシュリン依存型糖尿
病(NIDDM)、(13)高血糖、(14)耐糖能障害、(15)インシュリン耐性、
(16)過敏性腸症候群、(17)クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、
(18)膵臓炎、(19)他の炎症状態、(20)神経変性疾患、(21)アルツハイマ
ー病、(22)乾癬、(23)尋常性座瘡、(24)PPARが介在する他の皮膚疾患お
よび皮膚状態、(25)高血圧、(26)悪液質、および(27)代謝症候群からなる群
から選択され、前記方法が有効量の請求項1に記載の化合物を投与する段階を含む、前記
30
方法。
【請求項24】
治療または管理を必要とする患者での1以上の疾患、障害または状態の治療方法であっ
て、前記疾患、障害または状態が(1)脂質障害、(2)異常脂血症、(3)高脂血症、
(4)高トリグリセリド血症、(5)高コレステロール血症、(6)低HDLレベル、(
7)高LDLレベル、(8)アテローム性動脈硬化およびそれの続発症、(9)腹部肥満
を含む肥満、(10)血管再狭窄、(11)網膜症、(12)非インシュリン依存型糖尿
病(NIDDM)、(13)高血糖、(14)耐糖能障害、(15)インシュリン耐性、
(16)過敏性腸症候群、(17)クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、
(18)膵臓炎、(19)他の炎症状態、(20)神経変性疾患、(21)アルツハイマ
40
ー病、(22)乾癬、(23)尋常性座瘡、(24)PPARが介在する他の皮膚疾患お
よび皮膚状態、(25)高血圧、(26)悪液質、および(27)代謝症候群からなる群
から選択され、前記方法が有効量の請求項1に記載の化合物ならびに
(a)PPARγ作働薬および部分作働薬;
(b)PPARα/γ二重作働薬;
(c)他のPPARα作働薬;
(d)PPARδ作働薬;
(e)ビグアニド類;
(f)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害薬;
(g)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害薬;
50
(7)
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(h)インシュリンまたはインシュリン模倣薬;
(i)スルホニル尿素類;
(j)α−グルコシダーゼ阻害薬;
(k)グルカゴン受容体拮抗薬;
(l)グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬;
(m)11−β−HSD 1型酵素阻害薬;
(n)11−β−HSD 1型受容体拮抗薬;
(o)エキセンディン−4、エキセンディン−3、GLP−1、GLP−1模倣薬およ
びGLP−1受容体作働薬;
(p)GIP、GIP模倣薬およびGIP受容体作働薬;
10
(q)PACAP、PACAP模倣薬およびPACAP受容体3作働薬;
(r)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;
(s)胆汁酸封鎖剤;
(t)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはそれの塩;
(u)エゼチミベおよび他のコレステロール吸収阻害薬;
(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害薬(ACAT阻害
薬);
(w)フェノール系抗酸化剤;
(x)回腸胆汁酸搬送体阻害薬;
(y)炎症状態治療用の薬剤;
20
(z)抗肥満化合物;
(aa)甲状腺ホルモン模倣薬;
(bb)LXR作働薬;
(cc)FXR作働薬;
(dd)PLTP阻害薬;
(ee)CETP阻害薬;
(ff)糖コルチコイド類;および
(gg)TNF封鎖剤
からなる群から選択される1以上の化合物を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項25】
30
高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、低HDLレベル、高LDLレベル、高
脂血症、高トリグリセリド血症および異常脂血症から選択される1以上の脂質障害の治療
方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療上有効量の請求項1に記載の化
合物および治療上有効量のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬を投与する段階を含む、前
記方法。
【請求項26】
前記HMG−CoAレダクターゼ阻害薬がスタチンであり、スタチンがロバスタチン、
シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン
、ZD−4522、リバスタチンおよびロスバスタチンからなる群から選択される請求項
25に記載の方法。
40
【請求項27】
アテローム性動脈硬化発症のリスクを有する患者でのアテローム性動脈硬化発症リスク
を低下させる方法であって、前記患者に、有効量の請求項1に記載の化合物および有効量
のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項28】
(1)請求項1に記載の化合物;
(2)
(a)PPARγ作働薬および部分作働薬;
(b)PPARα/γ二重作働薬;
(c)他のPPARα作働薬;
50
(8)
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(d)PPARδ作働薬;
(e)ビグアニド類;
(f)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害薬;
(g)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害薬;
(h)インシュリンまたはインシュリン模倣薬;
(i)スルホニル尿素類;
(j)α−グルコシダーゼ阻害薬;
(k)グルカゴン受容体拮抗薬;
(l)グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬;
(m)11−β−HSD 1型酵素阻害薬;
10
(n)11−β−HSD 1型受容体拮抗薬;
(o)エキセンディン−4、エキセンディン−3、GLP−1、GLP−1模倣薬お
よびGLP−1受容体作働薬;
(p)GIP、GIP模倣薬およびGIP受容体作働薬;
(q)PACAP、PACAP模倣薬およびPACAP受容体3作働薬;
(r)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;
(s)胆汁酸封鎖剤;
(t)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはそれの塩;
(u)エゼチミベおよび他のコレステロール吸収阻害薬;
(v)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害薬(ACAT阻
20
害薬);
(w)フェノール系抗酸化剤;
(x)回腸胆汁酸搬送体阻害薬;
(y)炎症状態治療用の薬剤;
(z)抗肥満化合物;
(aa)甲状腺ホルモン模倣薬;
(bb)LXR作働薬;
(cc)FXR作働薬;
(dd)PLTP阻害薬;
(ee)CETP阻害薬;
30
(ff)糖コルチコイド類;および
(gg)TNF封鎖剤
からなる群から選択される1以上の化合物;ならびに
(3)製薬上許容される担体
を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、高脂血症、高コレステロール血症、異常脂血症および他の脂質障害の
治療、ならびにアテローム性動脈硬化および非インシュリン依存型糖尿病(NIDDM)
40
と称される場合が多いII型糖尿病などの前記疾患に関連する状態および続発症の開始遅
延またはリスク低下において、治療化合物として有用な、ある種のクロマン化合物および
クロメン化合物ならびにそれの製薬上許容される塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質代謝の障害(異常脂血症)には、1種類以上の脂質(すなわち、コレステロールお
よびトリグリセリド類)および/またはアポリポ蛋白(すなわち、アポリポ蛋白A、B、
CおよびE)および/またはリポ蛋白(すなわち、低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度
リポ蛋白(VLDL)および中間型リポ蛋白(IDL)などの、脂質と脂質が血中を循環
できるようにするアポリポ蛋白とによって形成される巨大分子複合体)の異常濃度を特徴
50
(9)
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とする各種状態などがある。コレステロールは、大半が低密度リポ蛋白(LDL)で運搬
され、LDL−コレステロールにおける上昇が冠状動脈性心疾患の危険性と密接に相関し
ていることが明らかになって、この成分は一般に「悪玉」コレステロールとして知られて
いる。それより小さいコレステロール成分は、高密度リポ蛋白(HDL)で運搬され、一
般には「善玉」コレステロールとして知られている。実際、HDLの主要な機能は、動脈
壁に沈着したコレステロールを受け取り、それを輸送して肝臓に戻して、腸から排出させ
るというものであることが知られている。高レベルのLDLコレステロールを低下させる
ことが望ましいが、HDLコレステロールのレベルを上昇させることも望ましい。HDL
レベル上昇は冠状動脈性心疾患(CHD)リスクの低下に関連していることが認められて
い る ( 例 え ば 、 Gordon et al., Am. J. Med., 62, 707-714 (1977); Stampfer et al., N
10
. England J. Med., 325, 373-381 (1991);お よ び Kannel et al., Ann. Internal Med.,
90, 85-91 (1979)参 照 ) 。 H D L 上 昇 剤 の 例 と し て は ニ コ チ ン 酸 が あ る が 、 H D L 上 昇 を
生じさせる用量では潮紅などの望ましくない効果を伴うことから、その薬剤の利用性には
制限がある。
【0003】
異 常 脂 血 症 は 、 上 記 の 変 化 の 組 み 合 わ せ に 応 じ て フ レ ド リ ク ソ ン ( Fredrickson) が 最
初に分類したものである。フレドリクソンの分類には6種類があり(すなわち、I型、I
Ia型、IIb型、III型、IV型およびV型)、最も一般的なものは孤立性高コレス
テロール血症(またはIIa型)であり、これは通常は総コレステロールおよびLDLコ
レステロールの高濃度を伴う。高コレステロール血症の所期治療は多くの場合、適切な身
20
体運動と組み合わせて食事を低脂肪・低コレステロールのものに変えるというものであり
、次に食事および運動のみでLDL低下が達成されない場合には薬物療法が行われる。
【0004】
第2の一般的な形の異常脂血症は、高脂血症またはフレドリクソン分類のIIb型およ
びIII型の混合または組み合わせである。この異常脂血症は、II型糖尿病、肥満およ
び代謝症候群患者で広く認められる場合が多い。この異常脂血症ではLDLコレステロー
ルにわずかに上昇があり、小型で密集したLDLコレステロール粒子、VLDLおよび/
またはIDL (すなわち、トリグリセリド豊富リポ蛋白)および総トリグリセリドのよ
り顕著な上昇を伴う。さらに、HDL濃度が低い場合が多い。
【0005】
30
ペルオキシゾーム増殖因子は、齧歯類に投与した場合に、肝臓および腎臓のペルオキシ
ゾームの大きさおよび数の大幅な上昇を誘発し、同時にβ−酸化サイクルの酵素発現増加
を介した脂肪酸を代謝するペルオキシゾームの能力を上昇させる構造的に多様な化合物群
である。この群の化合物には、フィブレート類の脂質調節薬、除草剤、フタレート系可塑
剤ならびにII型糖尿病の治療に関して研究中である化合物群であるグリタゾン類などが
あるが、これらに限定されるものではない。ペルオキシゾーム増殖は、高脂肪食および低
温順応などの食事上または生理上の要素によっても誘発される。
【0006】
ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の3種類のサブタイプが発見およ
び報告されている。これらはペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体アルファ(PPAR
40
α)、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)およびペルオキシゾ
ーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)である。PPARαは、多くの中鎖およ
び長鎖脂肪酸によって活性化され、それは脂肪酸のβ酸化刺激に関与する。PPARαは
さらに、齧歯類およびヒトにおけるフィブレート類および脂肪酸の活性にも関連している
。 ク ロ フ ィ ブ レ ー ト 、 フ ェ ノ フ ィ ブ レ ー ト 、 ベ ザ フ ィ ブ レ ー ト 、 シ プ ロ フ ィ ブ レ ー ト ( ci
profibrate) 、 ベ ク ロ フ ィ ブ レ ー ト ( beclofibrate) お よ び エ ト フ ィ ブ レ ー ト な ど の フ ィ
ブ リ ン 酸 ( fibric acid) 誘 導 体 な ら び に ゲ ム フ ィ ブ ロ ジ ル は 、 そ れ ぞ れ が P P A R α リ
ガンドおよび/または活性化剤であり、血漿トリグリセリドの大幅な低下ならびにHDL
のある程度の上昇を生じさせる。LDLコレステロールに対する効果は、一貫性がなく、
化合物および/または異常脂血表現型によって決まるものと考えられる。これらの理由か
50
(10)
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ら、この種類の化合物は主として、高トリグリセリド血症(すなわちフレドリクソンIV
型およびV型)および/または混合型高脂血症の治療に用いられてきた。
【0007】
PPARγ受容体サブタイプは、脂肪細胞分化のプログラム活性化に関与し、肝臓での
ペルオキシゾーム増殖の刺激には関与しない。PPARγにはPPARγ1とPPARγ
2という2種類の公知の蛋白イソ型があり、これらはPPARγ2受容体がアミノ末端に
さらに28個のアミノ酸を有するという点のみで異なっている。これらヒトイソ型のDN
A 配 列 は 、 エ ル ブ レ ヒ ト ら の 報 告 に 記 載 さ れ て い る ( Elbrecht et al., BBRC 224; 431-4
37 (1996)) 。 マ ウ ス に お い て P P A R γ 2 は 、 脂 肪 細 胞 で 特 異 的 に 発 現 さ れ る 。 ト ン ト
ノ ツ ら は ( Tontonoz et al., Cell 79: 1147-1156 (1994)) 、 P P A R γ 2 の 一 つ の 生 理
10
的役割が脂肪細胞分化の誘発であることを示す証拠を提供している。核ホルモン受容体ス
ーパーファミリーの他のものと同様にPPARγ2は、他の蛋白との相互作用および例え
ば応答遺伝子の5′隣接領域におけるホルモン応答要素への結合によって、遺伝子発現を
調節する。PPARγ2応答遺伝子の例としては、組織特異的脂肪細胞P2遺伝子である
。フィブレート類および脂肪酸などのペルオキシゾーム増殖因子は、PPAR類の転写活
性を活性化するが、PPARγサブタイプの可能な天然リガンドとしてはプロスタグラン
ジンJ2誘導体のみが確認されており、これらはまた、高親和性でチアゾリジンジオン系
抗糖尿病薬に結合する。
【0008】
ヒト核受容体遺伝子PPARδ(hPPARδ)は、ヒト骨肉腫細胞cDNAライブラ
20
リ か ら ク ロ ー ニ ン グ さ れ て お り 、 シ ュ ミ ッ ト ら の 報 告 に 詳 細 に 記 載 さ れ て い る ( A.Schmid
t et al., Molecular Endocrinology, 6: 1634-1641 (1992)) 。 留 意 す べ き 点 と し て 、 こ
の文献中でPPARδは、PPARβおよびNUC1とも称されており、これらの各名称
は同一受容体を指すものである。シュミットらの報告では、この受容体はNUC1と称さ
れている。
【0009】
WO96/01430には、ヒトPPARサブタイプであるhNUC1Bが開示されて
いる。hNUC1Bのアミノ酸配列は、1個のアミノ酸のみ、すなわち292位のアラニ
ンのみがヒトPPARδ(その出願ではhNUC1と称されている)と異なっている。そ
の 出 願 に 記 載 の in vivo実 験 に 基 づ い て 、 そ の 著 者 ら は 、 h N U C 1 B 蛋 白 が h P P A R
30
αおよび甲状腺ホルモン受容体活性を抑制することを示唆している。
【0010】
WO97/28149には、PPARδの作働薬がHDL血漿レベル上昇において有用
であることが開示されている。PPARδ作動薬は最近、関節リウマチなどの各種炎症疾
患の治療において有用であると、米国暫定特許出願第60/297356号に開示されて
いる。WO97/27857、97/28115、97/28137および97/278
47には、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗アテローム性動脈硬化薬および抗高脂血症薬として
有用であって、PPAR類を活性化する化合物が開示されている。
【0011】
グリタゾン類が、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(PPAR)ファミリーの受
40
容体に結合して、上記の生物体に関係するある種の転写因子を制御することで、その効果
を発揮することが示唆されている。グリタゾン類は、ベンジル−2,4−チアゾリジンジ
オ ン 誘 導 体 で あ る ( Hulin et al., Current Pharm. Design (1996) 2, 85-102参 照 ) 。
【0012】
PPAR作働薬である多くのグリタゾン類が、糖尿病治療での使用に関して承認されて
い る 。 そ れ に は ト ロ グ リ タ ゾ ン ( troglitazone) 、 ロ シ グ リ タ ゾ ン ( rosiglitazone) お
よ び ピ オ グ リ タ ゾ ン ( pioglitazone) な ど が あ り 、 そ れ ら は い ず れ も 主 と し て ま た は 専 ら
PPARγ作働薬である。KRP−297などの現在開発中であるか臨床試験段階である
比較的新しいPPAR作働薬の多くが、二重PPARαおよびγ活性を有する。PPAR
α/γ作働薬は、NIDDM患者におけるインシュリン感受性および脂質プロファイルの
50
(11)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
両方を改善するものと期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
グリタゾン類はNIDDMの治療において有用であったが、その化合物の使用に関連す
る重篤な有害事象がいくつかあり、特にトログリタゾンは最終的に中止となった。最も重
篤な有害事象は肝臓毒性であり、それによって多くの死亡があった。グリタゾン類を用い
て起こった問題のため、多くの研究機関における研究者は、1,3−チアゾリジンジオン
部分を持たない、従ってグリタゾン類ではない種類のPPAR作働薬の研究を行ってきて
いる。
10
【0014】
各種PPARサブタイプの作働薬である化合物は、その化合物がグリタゾン類であるか
否かを問わず糖尿病ならびにPPAR作働薬投与に応答する状態の治療において有用であ
ると期待される。それには、異常脂血症、糖尿病および関連する状態などがある。PPA
Rα作働薬は、高LDLレベルを低下させ、高トリグリセリドレベルを低下させ、そして
HDLレベルを上昇させることで、脂質プロファイルを改善し、異常脂血症を改善する。
PPARγ作働薬は、インシュリン感受性を高めて、NIDDM患者におけるインシュリ
ン分泌促進薬およびインシュリン注射の必要性を低下させる。PPARδの役割について
はあまり詳しくは知られていないが、PPARδもII型糖尿病患者における高脂血症お
よび高血糖症を管理する上で役立つように思われる。
20
【0015】
本明細書に記載の化合物は、1,3−チアゾリジンジオン部分を持たない新たな種類の
強力なPPARα作働薬である。これは、PPARγおよびPPARδ受容体では活性を
ほとんど示さないことから選択的である。好ましい化合物は、PPARα結合アッセイを
用いてIC5
0
が250nM未満というPPARα受容体に対して高い親和性を有する。
この化合物は、PPARγ結合アッセイで15000を超えるIC5
アッセイで50000を超えるIC5
0
0
とPPARδ結合
を有する。この化合物は、PPARα作働薬によ
って治療または改善される疾患、障害および状態の治療において有用である。
【0016】
この化合物は、混合型もしくは糖尿病性の異常脂血症;LDL−Cおよび/または非H
30
DL−Cにおける上昇によって発現される孤立性高コレステロール血症などの他の脂質障
害;高トリグリセリド血症;トリグリセリド豊富リポ蛋白上昇;および低HDLコレステ
ロール濃度のような1以上の状態の治療において有用である。この化合物は、アテローム
性動脈硬化、肥満、血管再狭窄および炎症状態の治療または改善でも有用であり得る。脂
質障害および肥満、そして恐らくはインシュリン耐性および/または高血糖の治療および
改善において有用であることから、本発明の化合物は症候群Xとも称される代謝症候群を
治療または改善する上でも有効であり得る。これらは、代謝症候群を定義する基準となる
ものなどのリスク因子の一部を改善することにより、アテローム性動脈硬化発症リスクの
ある患者でのアテローム性動脈硬化のリスクを低下させる上でも役立ち得る。
【0017】
本発明は、製薬上許容される塩およびプロドラッグを含めて式Iの構造を有する化合物
を提供する。
【0018】
40
(12)
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【化3】
10
式Iの化合物において、
R
1
およびR
2
はそれぞれ、独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで
置換されていても良いC1 ∼C3 アルキルであり;
R
3
は、
(a)H、および
(b)独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されていても良い
C1 ∼C3 アルキル
からなる群から選択され;
R
4
は、独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されていても良
いC1 ∼C3 アルキルであり;
R
5
20
は、Hおよび独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されて
いても良いC1 ∼C3 アルキルからなる群から選択され;
R
6
は、H、Cl、CH3 およびCF3 から選択され;
R
7
は、Hまたは独立にFおよびClから選択される1∼5個のハロゲンで置換されて
いても良いC1 ∼C3 アルキルであり;
AおよびBはそれぞれ独立に、H、Cl、F、CH3 およびCF3 から選択され;
R
5
およびR
7
に結合した環炭素原子を連結する点線は、存在しても良い二重結合であ
り;
XおよびYはそれぞれOまたはSであり;
nは2または3である。
30
【0019】
上記の要約において、C3 アルキルまたはC3 ∼6 アルキルなどの炭素数によってアル
キル基について言及する場合、直鎖または分岐のアルキル基を指す。
【0020】
上記の化合物は、PPARα作働薬による処置に応答する疾患または状態の治療におい
て有効である。この化合物は、高脂血症、異常脂血症、高コレステロール血症、高トリグ
リセリド血症および肥満という疾患または状態のうちの1以上を治療または改善する上で
有効であるものと予期される。これら化合物のあるものは、処置を必要とする哺乳動物患
者およびヒト患者での非インシュリン依存型糖尿病(NIDDM)の治療または改善にお
いて、さらには高脂血症、異常脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症お
40
よび肥満などの多くの場合NIDDMに関連しているが非糖尿病患者でも存在し得る状態
の治療および改善においても効力を有する可能性がある。この化合物は、アテローム性動
脈硬化、高インシュリン血症、インシュリン耐性、血管再狭窄および炎症状態の治療にお
いても有効であることができる。この化合物は、アテローム性動脈硬化、血管再狭窄およ
び網膜症などのNIDDMの続発症の1以上について、それら疾患の進行に寄与する状態
の一部を改善することで遅延またはリスク低下させることができる。この化合物は、冠動
脈性心臓疾患などの代謝症候群を有するヒト患者において起こる心血管事象を低減する上
でも有効となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
50
(13)
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本発明は多くの実施形態を有する。いくつかの好ましい化合物小群について下記で説明
する。
【0022】
1実施形態は、XおよびYがそれぞれOである式Iの構造を有する化合物の小群である
。
【0023】
別の実施形態は、A、BおよびR
7
がHである式Iの構造を有する化合物の小群である
。
【0024】
R
5
がCF3 である式Iの化合物は、本発明の化合物の別の好ましい小群を含む。
10
【0025】
R
5
がC1 ∼C3 アルキルである式Iの化合物は、化合物の別の好ましい小群である。
【0026】
式Iを有する化合物の別の小群では、R
6
。この小群の多くの好ましい化合物では、R
はCl、CH3 およびCF3 から選択される
6
はClである。
【0027】
式Iを有する化合物の別の実施形態では、R
であり;R
R
4
4
3
がH、CH3 、C2 H5 またはC3 H7
がCH3 、C2 H5 またはC3 H7 である。好ましい小群では、R
3
および
はそれぞれ、CH3 、C2 H5 およびC3 H7 から選択される。
【0028】
20
式Iを有する化合物のさらに別の実施形態では、R
1
およびR
2
はそれぞれ独立に、C
H3 またはC2 H5 であることができる。
【0029】
式Iの化合物の好ましい小群は、R
1
およびR
2
がそれぞれCH3 である化合物を含む
。
【0030】
製薬上許容される塩を含めた式Iを有する化合物の好ましい小集合は、
R
1
およびR
2
がそれぞれ独立にCH3 またはC2 H5 であり;
R
3
およびR
4
がそれぞれ独立にCH3 、C2 H5 およびC3 H7 から選択され;
R
5
がCF3 であり;
R
6
がClであり;
R
7
、AおよびBがいずれもHであり;
R
5
およびR
7
30
に結合している環炭素原子を連結する点線が二重結合であり;
XおよびYがOであり;
nが2または3であると記述される。
【0031】
直前に記載の化合物の好ましい小群は、R
1
およびR
2
がそれぞれCH3 である化合物
を含む。
【0032】
別の好ましい小群は、nが3である化合物を含む。
40
【0033】
本発明の化合物の具体例を実施例1∼9に提供している。これらの化合物は、実施例の
直前にある化合物表に図示してある。
【0034】
本発明はさらに、製薬上許容される塩を含めた上記のいずれかの化合物および製薬上許
容される担体を含む医薬組成物を含むものである。
【0035】
定義
「アルキル」という用語ならびにアルコキシまたはアルケニルなどの接頭語「アルク」
を有する他の基は、炭素鎖が別途定義されていない限り、直鎖または複数の分岐箇所を有
50
(14)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
する鎖を含めた分岐であることができる炭素鎖を意味する。アルキル基の例としては、メ
チル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペ
ンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどがある。イソプロピルならびにse
c−およびtert−ブチルは分岐したものである。
【0036】
「アルケニル」とは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し、直鎖または分岐で
あることができる炭素鎖を意味する。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、イソプ
ロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−
メチル−2−ブテニルなどがある。
【0037】
10
「シクロアルキル」とは、別段の断りがない限り、炭素原子数3∼10の単環式または
二環式の飽和炭素環を意味する。その用語には、アリール基などの別の環系に縮合した単
環式もしくは二環式の飽和炭素環も含まれる。シクロアルキルの例としては、シクロプロ
ピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどがある。
【0038】
ある構造での置換基または基を説明するのに用いられる場合の「アリール」(および「
アリーレン」)とは、全ての環が芳香族であり、炭素環原子のみを有する単環式もしくは
二環式もしくは三環式の基または置換基を意味する。「アリール」は、シクロアルキルま
たはヘテロ環基などの他の環基と縮合していても良い。アリール置換基の例には、フェニ
ルおよびナフチルなどがある。好ましいアリール基はフェニルである。
20
【0039】
「複素環」とは、N、SおよびOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する
完全飽和または部分飽和の環を意味し、その環は別断の断りがない限り3∼10個の原子
を有する。
【0040】
「ヘテロアリール」(および「ヘテロアリーレン」)は、N、OおよびS(SOおよび
SO2 を含む)から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を有し、環が5∼6個の原
子を有する芳香環を意味する。ヘテロアリールの例には、ピロリル、イソオキサゾリル、
イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾ
リル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニ
30
ル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニルおよびピラジニルなどがある。ヘテロアリール
および芳香環が互いに縮合して、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾ
チアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(S−オキサイ
ドおよびジオキサイドを含む)、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラン
などの二環式または三環式環系を形成していても良い。
【0041】
「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などがある。アルキル基上の最も
好ましいハロゲン置換基はフッ素である。
【0042】
「Me」および「Et」は、それぞれメチルおよびエチルを表す。
40
【0043】
化合物の「投与」または化合物を「投与する」という用語は、治療を必要とする患者に
対して、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味する。
【0044】
本発明の化合物を投与することができる「患者」は、サルおよび類人猿などの霊長類;
乳牛などのウシ類;馬などのウマ類;犬などのイヌ類;猫などのネコ類;山羊および羊な
どのヒツジ類;ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類などの哺乳動物か
ら選択することができる。患者は、ニワトリおよび他の鳥類などの非哺乳類動物も含むこ
とができる。好ましい患者はヒトである。
【0045】
50
(15)
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疾患や状態を治療するとは、指定された方法でその疾患または状態を扱うことを意味す
る。
【0046】
疾患または状態の改善とは、その疾患または状態を好転させること、あるいはそれをよ
り良好にすることを意味する。
【0047】
「 代 謝 症 候 群 」 は 、 文 献 に 定 義 が あ る ( Third Report of the National Cholesterol E
ducation Program Expert Panel on Detection, Evaluation and Treatment of High Blo
od Cholesterol In Adults (ATP-III). E. S. Ford et al, JAMA, vol. 287 (3), Jan. 1
6, 2002, pp.356-359) 。 す な わ ち 、 腹 部 肥 満 、 高 ト リ グ リ セ リ ド 血 症 、 低 H D L コ レ ス
10
テロール、高血圧および高絶食時血漿グルコースという症状のうちの3以上を有する場合
、その人物は代謝症候群を有するものと定義される。その基準については、ATP−II
Iで定義されている。
【0048】
医薬組成物における「組成物」という用語は、有効成分および担体を構成する不活性成
分、ならびに2種類以上の前記成分の組合せ、錯体形成もしくは凝集から、あるいは1以
上の前記成分の解離から、あるいは1以上の前記成分の他の種類の反応または相互作用か
ら直接または間接に生じる生成物を含む製造品を含むものである。従って本発明の医薬組
成物は、本発明の化合物および製薬上許容される担体を混合することで製造される組成物
を包含するものである。
20
【0049】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異体
式Iの化合物は、少なくとも1個の不斉中心を有することができる。したがって、これ
らの化合物は、ラセミ混合物、単独のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個
々のジアステレオマーとして得られ得る。本発明は、式Iの化合物のこのような全ての型
の異性体を含むものである。
【0050】
本明細書に記載の化合物の一部は、オレフィン性二重結合を有し、別段の断りがない限
り、EおよびZの両方の幾何異性体を含むものである。
【0051】
30
本明細書に記載の化合物の一部は、互変異体と称される、二重結合の移動を伴う水素の
結合位置が異なった形で存在する場合がある。例えば、ケト−エノール互変異体と称され
る場合が多いカルボニル(例:ケトン)とそれのエノール型がある。個々の互変異体およ
びそれらの混合物は式Iの化合物に包含される。
【0052】
所望に応じて、式Iの化合物のラセミ混合物は、エナンチオマー的に純粋な酸もしくは
塩基と形成される塩の分別結晶による古くから行われている分割によって分離することが
できる。式Iの化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物とカップリング
させることで、他のジアステレオマー誘導体を形成することができる。そのようなジアス
テレオマー混合物は、標準的なクロマトグラフィー法または再結晶プロトコールによって
40
分離することができる。次に、付加したキラル残基の開裂によって、これらのジアステレ
オマー誘導体を式Iの化合物の純粋なエナンチオマーに変換することができる。式Iの化
合物のラセミ混合物は、多くの例が当業界で公知の方法であるキラル固定相を用いるクロ
マトグラフィー法によって直接分離することもできる。
【0053】
別法として、一般式Iの化合物のエナンチオマーを、立体配置が既知の光学的に純粋な
原料または試薬を用いる立体特異的合成によって得ることができる。
【0054】
複数個の不斉中心を有し、ジアステレオマーの混合物として得られる式Iの化合物も同
様に、標準的な方法によって個々のジアステレオマーに分離することができ、それらは上
50
(16)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
記の方法に従って個々のエナンチオマーに分離することができる。
【0055】
塩
「製薬上許容される塩」という用語は、無機もしくは有機塩基および無機もしくは有機
酸などの製薬上許容される無毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。式Iのカルボ
ン酸化合物の場合、無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カル
シウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、
カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩などがある。特に好ましいものは、アンモニウム塩
、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。固体の形での
塩は、複数種類の結晶構造で存在する場合があり、水和物の形である場合もある。製薬上
10
許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級および3級アミン類、天然
置換アミン類などの置換アミン類、環状アミン類および塩基性イオン交換樹脂の塩などが
あり、例を挙げるとアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジル
エチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミ
ノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エ
チルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピル
アミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン
樹脂類、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、
トリプロピルアミン、トロメタミンの塩などがある。
【0056】
20
塩基性の化合物の場合、無機酸および有機酸などの製薬上許容される無毒性酸から塩を
製造することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カン
ファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸
、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタン
スルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、
p−トルエンスルホン酸などがある。特に好ましいものは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸
、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。
【0057】
本明細書で使用する場合、式Iの化合物についての言及は、製薬上許容される塩をも含
むものであることは明らかであろう。
30
【0058】
代謝物−プロドラッグ
プロドラッグとは、患者に投与している時に、あるいは患者に投与した後に特許請求の
化合物に変換される化合物である。そのプロドラッグは本発明の化合物であり、そのプロ
ドラッグの活性代謝物も、その代謝物が式Iを有する場合には、本発明の化合物である。
本発明のカルボン酸のプロドラッグの例としては、例えばC1 ∼C6 エステルのようなカ
ルボン酸のエステル、あるいは患者に投与された後にさらに容易に加水分解を受けやすく
する官能基を有するエステルがあるが、それらに限定されるものではない。
【0059】
この種類の化合物のプロドラッグの例は、下記式Iaを有する化合物として記載するこ
とができる。
【0060】
40
(17)
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【化4】
式中、Gは、哺乳動物患者への投与中または投与後に生理的条件下で容易に脱離して、
10
GがOHまたはそれのカルボン酸塩に変換された遊離カルボン酸もしくはそれのカルボン
酸塩を生じる基である。式Iaにおける他の置換基については、式Iに関して前記で定義
した通りである。
【0061】
式Iaのプロドラッグの例には、Gが−OR
)OR
a
、−OCH2 OC(O)R
OC(O)OR
a
a
a
、−OCH2 OR
a
、−OCH(CH3
、−OCH(CH3 )OC(O)R
、−OCH(CH3 )OC(O)OR
から選択され;各R
a
a
および−NR
b
a
、−OCH2
R
b
からなる群
が独立に、−CO2 H、−CONH2 、−NH2 、−OH、−OA
c、−NHAcおよびフェニルから選択される1個もしくは2個の基で置換されていても
良いC1
− 6
アルキルから選択され;各R
b
が独立にHおよびR
a
から選択される化合物
20
などがある。
【0062】
用途
本発明の化合物は、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体サブタイプ、特にはPPA
Rα強力な作働薬であり、PPARγやPPARδに関してはほとんど活性を持たない。
このように、本発明の化合物は、サブタイプPPARαの選択的かつ強力な作働薬である
。本発明の化合物は、治療、管理または改善がPPARαサブタイプの活性化によって生
じる疾患、障害および状態の治療、管理または改善において有用である。
【0063】
本発明のある重要な態様は、それが、異常脂血症、高コレステロール血症、高脂血症、
30
高トリグリセリド血症、低HDLレベル、高LDLレベルならびにアテローム性動脈硬化
およびそれの続発症などの各種脂質障害の治療または改善方法において、そのような処置
を必要とする患者に対して、治療上有効量の式Iを有する化合物を投与する段階を有する
方法を提供するというものである。
【0064】
本明細書で定義の化合物は、処置を必要とする哺乳動物またはヒト患者での1以上の下
記の疾患または状態を治療する上で用いることができ、その処置は、治療上有効量の式I
の化合物を処置を必要とする患者に投与する段階を有するものである。
【0065】
(1)脂質障害;
40
(2)高脂血症;
(3)低HDL−コレステロール;
(4)高LDL−コレステロール;
(5)高コレステロール血症;
(6)高トリグリセリド血症;
(7)高LDLコレステロールおよび低HDLコレステロールなどの異常脂血症;なら
びに
(8)アテローム性動脈硬化の続発症(狭心症、跛行、心臓発作、卒中など)を含むア
テローム性動脈硬化。
【0066】
50
(18)
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より一般的には、式Iを有する化合物を用いて、1以上の下記の疾患、障害および状態
を治療または改善することができる。すなわち、(1)脂質障害、(2)異常脂血症、(
3)高脂血症、(4)高トリグリセリド血症、(5)高コレステロール血症、(6)低H
DLレベル、(7)高LDLレベル、(8)アテローム性動脈硬化およびそれの続発症、
(9)腹部肥満を含む肥満、(10)血管再狭窄、(11)網膜症、(12)非インシュ
リン依存型糖尿病(NIDDM)、(13)高血糖、(14)耐糖能障害、(15)イン
シュリン耐性、(16)過敏性腸症候群、(17)クローン病および潰瘍性大腸炎などの
炎症性腸疾患、(18)膵臓炎、(19)他の炎症状態、(20)神経変性疾患、(21
)アルツハイマー病、(22)乾癬、(23)尋常性座瘡、(24)PPARが介在する
他の皮膚疾患および皮膚状態、(25)高血圧、(26)悪液質、および(27)症候群
10
Xと称される場合もある代謝症候群である。
【0067】
この化合物は、(1)腫瘍状態、(2)脂肪細胞腫瘍、(3)脂肪肉腫などの脂肪細胞
癌、(4)前立腺癌ならびに胃癌、乳癌、膀胱癌および結腸癌などの他の癌、ならびに(
5)血管新生の治療においても有用であり得る。
【0068】
本発明の化合物で治療することができる他の状態には、卵巣アンドロゲン過多症(多嚢
胞性卵巣症候群)、悪液質、ならびにインシュリン耐性が要素である他の障害などがある
。
【0069】
20
本発明はさらに、PPARα作働薬の投与によって治療される疾患または状態の治療ま
たは管理において有用な医薬の製造方法において、有効量の式Iの化合物を製薬上許容さ
れる担体または希釈剤と組み合わせる段階を有する方法に関するものでもある。
【0070】
本発明の別の態様は、悪液質の治療方法を提供するものである。PPARαは、飢餓に
対する適切なエネルギー節約応答に必要であることが知られており、不適切な代謝および
エネルギー利用は悪液質の消耗の原因であることは明らかである。従って本発明の化合物
は、悪液質の治療において有用となり得る。
【0071】
本発明の別の態様は、処置を必要とする哺乳動物またはヒト患者に対して有効量の式I
30
の化合物を投与することにより、PPARα作働薬によって調節される各種の皮膚疾患お
よび皮膚科状態の治療方法を提供する。これらの疾患および状態には、乾癬および尋常性
座瘡などがある。治療可能である他の皮膚疾患および皮膚科障害の例には、湿疹;狼瘡関
連皮膚病変;脂漏性湿疹および日光皮膚炎などの皮膚炎;脂漏性角化症、老年性角化症、
日光性角化症、光誘発角化症および毛包性角化症などの角化症;ケロイドおよびケロイド
形成に対する予防、いぼ、コンジロームもしくは尖圭コンジロームなどの疣贅、ならびに
性病疣贅、ウィルス疣贅、伝染性いぼ、白斑症、扁平苔癬などのヒト乳頭腫ウイルス(H
PV)乾癬;角膜炎、基底細胞癌などの皮膚癌、皮膚T細胞リンパ腫、ならびに局所良性
表皮腫瘍(角皮症、表皮母斑)などがある。
【0072】
40
投与および用量範囲
哺乳動物、特にヒトに有効量の本発明の化合物を与えるのには、いかなる好適な投与経
路も使用可能である。例えば経口、直腸、局所、非経口、眼球、肺、経鼻などの経路を用
いることができる。製剤には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、液剤、カプセル、クリ
ーム、軟膏、エアロゾルなどがある。好ましくは式Iの化合物は、経口投与される。
【0073】
使用される有効成分の有効用量は、使用される特定の化合物、投与経路、治療対象の状
態および治療対象の状態の重度によって変動し得る。そのような用量は、当業者であれば
容易に把握できるものである。
【0074】
50
(19)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、異常脂血症、高脂血症および式Iの化
合物が適応である他の疾患の治療または予防を行う場合、本発明の化合物を動物の体重1
kg当たり約0.1mg∼約100mgの1日用量で、好ましくは単一1日用量として、
あるいは1日2∼6回の分割用量で、あるいは徐放製剤で投与した場合に、満足な結果が
得られる。ほとんどの大型哺乳動物において、総1日用量は約1.0mg∼約1000m
g、好ましくは約1mg∼約50mgである。70kgの成人の場合、総1日用量は約7
mg∼約350mgとなる。この投与法は、具体的な化合物および患者に応じて変わるも
のである。用量は、至適な治療応答を得るために、上記の範囲内であるいは範囲外でも調
節することができる。
【0075】
10
医薬組成物
本発明の別の態様は、式Iの化合物と製薬上許容される担体とを含む医薬組成物を提供
す る 。 本 発 明 の 医 薬 組 成 物 は 、 有 効 成 分 と し て の 式 Iの 化 合 物 ま た は そ れ の 製 薬 上 許 容 さ
れる塩もしくはプロドラッグを含み、製薬上許容される担体および適宜に他の治療成分を
含むこともできる。より代表的には、式Iの特定の化合物またはそれの製薬上許容される
塩が、組成物中の唯一の有効成分である。「製薬上許容される塩」という用語は、無機塩
基もしくは酸および有機塩基もしくは酸などの製薬上許容される無毒性の塩基または酸か
ら製造される塩を指す。
【0076】
この組成物には、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉および静脈など)、眼球(眼
20
科)、肺(経鼻または口腔吸入)または経鼻投与に好適な組成物などがある。ただし、あ
る場合に最も適した経路は、治療対象の状態の性質および重度ならびに有効成分の性質に
よって決まる。それらは簡便には単位製剤で提供され、製薬業界で公知のいずれかの方法
によって調製することがきる。
【0077】
実際の使用においては式Iの化合物は、従来の医薬配合法に従って、医薬担体との直接
混合で有効成分として組み合わせることができる。この担体は、例えば経口または非経口
(静脈投与など)などの投与に望ましい剤型に応じて、多様な形態を取ることができる。
経口製剤用の組成物を得る場合、通常の医薬媒体を用いることができる。例えば、懸濁液
、エリキシル剤および液剤などの経口液体製剤の場合には、水、グリコール類、オイル類
30
、アルコール類、香味剤、保存剤、着色剤などを用いることができる。あるいは粉剤、硬
および軟カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプン類、糖類、微結晶
セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、
液体製剤より固体経口製剤の方が好ましい。
【0078】
投与が容易であることから、錠剤およびカプセルが最も有利な経口単位製剤を代表する
ものであり、この場合、固体医薬担体を用いることは明らかである。所望に応じて、錠剤
を標準的な水系または非水系法によってコーティングすることができる。このような組成
物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。これら組成物にお
ける活性化合物のパーセントは当然のことながら変動し得るものであり、簡便には単位重
40
量の約2%∼約60%とすることができる。このような治療上有用な組成物における活性
化合物の量は、有効用量が得られるようなものとする。活性化合物は、例えば液滴剤また
は噴霧剤として経鼻的に投与することもできる。
【0079】
錠剤、丸薬、カプセルなどには、トラガカントガム、アカシアガム、コーンスターチも
しくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャ
ガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;な
らびにショ糖、乳糖もしくはサッカリンなどの甘味剤を含有させることもできる。単位製
剤がカプセルである場合、これには上記種類の材料以外に、脂肪油などの液体担体を含有
させることもできる。
50
(20)
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【0080】
他の各種材料をコーティングとして存在させて、単位製剤の物理的形状を変えることが
できる。例えば、錠剤をシェラック、糖またはその両方でコーティングすることができる
。シロップもしくはエリキシルには、有効成分に加えて、甘味剤としてのショ糖、保存剤
としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素ならびにチェリー芳香もしくはオ
レンジ芳香などの芳香剤を含有させることができる。
【0081】
式Iの化合物はまた、非経口投与することもできる。ヒドロキシプロピルセルロースな
どの界面活性剤と適切に混和した水中で、これら活性化合物の液剤もしくは懸濁液を調製
することができる。グリセリン、液体ポリエチレングリコール類およびそれらのオイル中
10
の混合液で、分散液を調製することもできる。通常の保存および使用条件下では、これら
製剤には保存剤を含有させて、微生物の成長を防止することができる。
【0082】
注射用に好適な医薬製剤には、無菌の水溶液もしくは分散液ならびに無菌注射液もしく
は分散液の即時調製用の無菌粉末などがある。いずれの場合も製剤は無菌とし、容易に注
射できる程度の流動性でなければならない。この製剤は、製造および保管の条件下で安定
でなければならず、細菌および真菌などの微生物による汚染を起こさないように保存しな
ければならない。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例:グリセリン、プ
ロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、これらの好適な混合液および
植物油などを含む溶媒または分散媒とすることができる。
20
【0083】
併用療法
本発明の化合物は、式Iの化合物が有用な疾患または状態の治療または改善においてや
はり有用となり得る他薬剤と併用することができる。そのような他薬剤は、その薬剤につ
いて通常使用される経路および量で、式Iの化合物と同時または順次に投与することがで
きる。式Iの化合物を1以上の他薬剤と同時に用いる場合、そのような他薬剤および式I
の化合物を含む単位製剤の形での医薬組成物が好ましい。しかしながら前記併用療法は、
式Iの化合物と1以上の他薬剤を、重複する異なった投与計画で投与する療法も含むもの
である。1以上の他の有効成分と併用する場合、本発明の化合物および他の有効成分を、
それぞれを単独で使用する場合より低い用量で使用可能であることも想到される。従って
30
、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物以外に、1以上の他の有効成分を含むものが含
まれる。
【0084】
例えば、式Iの化合物は、(1)ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フ
ルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチンおよ
びZD−4522などのHMG−CoAレダクターゼ阻害薬等(これらに限定されるもの
ではない)のコレステロール生合成阻害薬;(2)コレステロール吸収阻害薬(例えば、
ス タ ノ ー ル エ ス テ ル 、 チ ク エ シ ド ( tiqueside) な ど の ス テ ロ ー ル グ リ コ シ ド ま た は エ ゼ
チ ミ ブ な ど の ア ゼ チ ジ ノ ン ) ; ( 3 ) A C A T 阻 害 薬 ( ア バ シ ミ ベ ( avasimibe) な ど )
、(4)ナイアシン;(5)胆汁酸封鎖剤;(6)ミクロソームトリグリセリド輸送阻害
40
薬;(7)胆汁酸再取り込み阻害薬;および(8)KRP−297などのPPARα/γ
作働薬などの1以上の他の脂質低下剤と併用して投与することができる。これらの併用治
療は、異常脂血症、高コレステロール血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、低HDL
レベル、高LDLレベルならびにアテローム性動脈硬化およびそれの続発症から選択され
る1以上の脂質障害または状態の治療または管理において特に有効であると予想される。
その併用療法によって、低下させた量の一方または両方の有効成分を用いて治療管理を行
うことができるか、ないしはその化合物のいずれかを単独で用いた場合に得られる管理に
基づいて予想されると考えられるものより良好な脂質管理を行うことが可能となり得る。
その併用療法によって、1以上の脂質障害および糖尿病の治療管理を行うことが可能とな
り得る。好ましい組合せには、請求項1の化合物とエゼチミベ、スタチン化合物(例:シ
50
(21)
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ンバスタチン、アトルバスタチンまたはロスバスタチン)などのコレステロール吸収阻害
薬、ACAT阻害薬またはフェノフィブラートもしくは別のフィブラートなどの別のPP
ARα作働薬から選択される1以上の他の化合物などがある。非常に好ましい組合せには
、本質的に本発明の化合物とコレステロール吸収阻害薬(エゼチミベ)、または本発明の
化合物とスタチン(例:シンバスタチン)、または本発明の化合物とスタチンおよびコレ
ステロール吸収阻害薬の両方から必須としてなる組合せなどがある。
【0085】
より一般的には、別個にまたは同じ医薬組成物で式Iの化合物と併用投与することがで
きる治療化合物類の例には、
(a)インシュリン増感剤;
10
(b)抗糖尿病化合物;
(c)コレステロール低下剤;
(d)抗肥満化合物;
(e)抗炎症化合物;および
(f)抗高血圧剤
などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
式Iを有する化合物と併用で投与することができる化合物類の例には、
( a ) グ リ タ ゾ ン 類 ( 例 : ト ロ グ リ タ ゾ ン ( troglitazone) 、 ピ オ グ リ タ ゾ ン ( piogli
tazone) 、 エ ン グ リ タ ゾ ン ( englitazone) 、 M C C − 5 5 5 、 ロ シ グ リ タ ゾ ン ( rosigli
20
tazone) な ど ) な ど の P P A R γ 作 働 薬 お よ び 部 分 作 働 薬 ;
(b)KRP−297などのPPARα/γ二重作働薬;
(c)ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびベザフィブレ
ートなどのフェノフィブリン酸誘導体のような他のPPARα作働薬;
(d)WO97/28149に開示のものなどのPPARδ作働薬;
(e)メトホルミンおよびフェンホルミンなどのビグアニド類;
(f)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害薬;
(g)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害薬;
(h)インシュリンまたはインシュリン模倣薬;
(i)トルブタミドおよびグリピジドなどのスルホニル尿素類または関連物;
30
(j)α−グルコシダーゼ阻害薬(アカルボースなど);
(k)グルカゴン受容体拮抗薬;
(l)グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬;
(m)11−β−HSD 1型酵素阻害薬;
(n)11−β−HSD 1型受容体拮抗薬;
(o)WO00/42026およびWO00/59887に開示のものなどのエキセン
ディン−4、エキセンディン−3、GLP−1、GLP−1模倣薬およびGLP−1受容
体作働薬;
(p)GIP、WO00/58360に開示のものなどのGIP模倣薬およびGIP受
容体作働薬;
40
(q)WO01/23420に開示のものなどのPACAP、PACAP模倣薬および
PACAP受容体3作働薬;
(r)HMG−CoAレダクターゼ阻害薬(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバス
タチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ロスバス
タチン、ZD−4522および他のスタチン類);
(s)胆汁酸封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポールおよび架橋デキストランのジア
ルキルアミノアルキル誘導体);
(t)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはそれの塩;
(u)エゼチミベおよび他のコレステロール吸収阻害薬;
(v)例えばアバシミベなどのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラー
50
(22)
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ゼ阻害薬(ACAT阻害薬);
(w)プロブコールなどのフェノール系抗酸化剤;
(x)回腸胆汁酸搬送体阻害薬;
( y ) ア ス ピ リ ン 、 非 ス テ ロ イ ド 系 抗 炎 症 薬 、 糖 コ ル チ コ イ ド 類 、 ア ズ ル フ ィ ジ ン ( az
ulfidine) お よ び シ ク ロ オ キ シ ゲ ナ ー ゼ 2 選 択 的 阻 害 薬 な ど の 炎 症 状 態 治 療 用 の 薬 剤 ;
(z)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、
オルリスタット、神経ペプチドY5阻害薬およびβ3アドレナリン受容体作働薬などの抗
肥満化合物;
(aa)甲状腺ホルモン模倣薬;
(bb)LXR作働薬;
10
(cc)FXR作働薬;
(dd)PLTP阻害薬;
(ee)CETP阻害薬;
(ff)糖コルチコイド類;および
(gg)TNF封鎖剤
などがある。
【0087】
上記の組合せには、本発明の化合物と他の一つの活性化合物との組合せなどがある。し
かしながら、組合せが、1以上の本発明の化合物および1以上の上記で挙げた他の活性化
合物から選択される2種類を超える有効成分を含むこともできることが想到される。その
20
例としては、1以上の式Iを有する化合物とインシュリン増感剤;抗糖尿病化合物;コレ
ステロール低下剤;抗肥満化合物;抗炎症化合物;および抗高血圧剤から選択される2以
上の活性化合物との組合せなどがあるが、それに限定されるものではない。
【0088】
異常脂血症を伴うII型糖尿病患者に適している可能性のある組合せの例には、1以上
の式Iを有する化合物およびビグアニド類、スルホニル尿素類、他のPPARγ作働薬、
PTP−1B阻害薬、DP−IV阻害薬、インシュリンおよび抗肥満化合物などの抗糖尿
病化合物から選択される1以上の化合物などがある。
【0089】
生物アッセイ
30
A)PPAR結合アッセイ
組換えヒトPPARγ、PPARδおよびPPARαを製造するため、ヒトPPARγ
2
、ヒトPPARδおよびヒトPPARαを、大腸菌でgst融合蛋白として発現させた
。 P P A R γ 2 に つ い て の 全 長 ヒ ト c D N A を 、 p G E X − 2 T 発 現 ベ ク タ ー ( Pharmaci
a) に サ ブ ク ロ ー ニ ン グ し た 。 P P A R δ お よ び P P A R α に つ い て の 全 長 ヒ ト c D N A
は 、 p G E X − K T 発 現 ベ ク タ ー ( Pharmacia) に サ ブ ク ロ ー ニ ン グ し た 。 個 々 の プ ラ ス
ミドを含む大腸菌を増殖させ、誘発させ、遠心によって回収した。再懸濁ペレットをフレ
ンチプレスで破壊し、残屑を12000×gでの遠心によって除去した。グルタチオンセ
ファロースでのアフィニティクロマトグラフィーによって、組換えヒトPPAR受容体を
精製した。カラムに負荷し、1回洗浄した後、受容体をグルタチオンで溶離させた。グリ
40
セリン(10%)を加えて受容体を安定化させ、小分けしたサンプルを−80℃で保存し
た。
【0090】
P P A R γ へ の 結 合 に つ い て は 、 ベ ル ガ ー ら の 報 告 ( Berger et al., Novel peroxisom
e proliferator-activated receptor (PPARγ ) and PPARδ ligands produce distinct b
iological effects. J. Biol. Chem. (1999), 274: 6718-6725) に 記 載 の 方 法 に 従 っ て 、
受容体の小分けサンプルを、0.1%無脂肪乾燥ミルクおよび10nM[
3
H2 ]AD5
075、(21Ci/mmol)、±被験化合物を含むTEGM(10mM Tris、
pH7.2、1mM EDTA、10%グリセリン、7μL/100mL β−メルカプ
トエタノール、10mMモリブデン酸Na、1mMジチオトレイトール、5μg/mLア
50
(23)
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プロチニン、2μg/mLロイペプチン、2μg/mLベンズアミジンおよび0.5mM
PMSF)中でインキュベートした。アッセイ液を、最終容量150μLで4℃にて約
16時間インキュベートした。未結合リガンドを、氷上で約10分間にわたってデキスト
ラン/ゼラチンコーティング活性炭100μLとともにインキュベーションすることで除
去した。4℃で10分間、3000rpmにて遠心した後、上清画分50μLをトップカ
ウ ン ト ( Topcount) で カ ウ ン ト し た 。
【0091】
P P A R δ へ の 結 合 に つ い て は 、 ベ ル ガ ー ら の 報 告 ( Berger et al., Novel peroxisom
e proliferator-activated receptorγ (PPARγ ) and PPARδ ligands produce distinct
biological effects. 1999 J. Biol. Chem. (1999), 274: 6718-6725) に 記 載 の 方 法 に
従って、受容体の小分けサンプルを、0.1%無脂肪乾燥ミルクおよび2.5nM[
2
3
10
H
]L−783483(17Ci/mmol)、±被験化合物を含むTEGM(10mM
Tris、pH7.2、1mM EDTA、10%グリセリン、7μL/100mL β−メルカプトエタノール、10mMモリブデン酸Na、1mMジチオトレイトール、5
μg/mLアプロチニン、2μg/mLロイペプチン、2μg/mLベンズアミジンおよ
び0.5mM PMSF)中でインキュベートした(L−783483は、3−クロロ−
4−(3−(7−プロピル−3−トリフルオロメチル−6−ベンズ−[4,5]−イソオ
キサゾールオキシ)プロピルチオ)フェニル酢酸、WO97/28137における実施例
20)。アッセイ液を、最終容量150μLで4℃にて約16時間インキュベートした。
未結合リガンドを、氷上で約10分間にわたってデキストラン/ゼラチンコーティング活
20
性炭100μLとともにインキュベーションすることで除去した。4℃で10分間、30
00rpmにて遠心した後、上清画分50μLをトップカウントでカウントした。
【0092】
PPARαへの結合については、受容体の小分けサンプルを、0.1%無脂肪乾燥ミル
クおよび5.0nM[
3
H2 ](3−(4−(3−フェニル−7−プロピル−6−ベンゾ
−[4,5]−イソオキサゾールオキシ)ブチルオキシ))フェニル酢酸(34Ci/m
mol)、±被験化合物を含むTEGM(10mM Tris、pH7.2、1mM E
DTA、10%グリセリン、7μL/100mL β−メルカプトエタノール、10mM
モリブデン酸Na、1mMジチオトレイトール、5μg/mLアプロチニン、2μg/m
Lロイペプチン、2μg/mLベンズアミジンおよび0.5mM PMSF)中でインキ
30
ュベートした。これは、WO 97/28137の実施例62のトリチウム標識体である
。アッセイ液を、最終容量150μLで4℃にて約16時間インキュベートした。未結合
リガンドを、氷上で約10分間にわたってデキストラン/ゼラチンコーティング活性炭1
00μLとともにインキュベーションすることで除去した。4℃で10分間、3000r
pmにて遠心した後、上清画分50μLをトップカウントでカウントした。
【0093】
B)Gal−4hPPARトランスアクチベーションアッセイ
キメラ受容体発現構築物pcDNA3−hPPARγ/GAL4、pcDNA3−hP
PARδ/GAL4、pcDNA3−hPPARα/GAL4を、それぞれhPPARγ
、hPPARδ、hPPARαのリガンド結合領域(LBD)に隣接する酵母GAL4転
40
写因子DBDを挿入することで得た。ヘルペスウィルス最小チミジンキナーゼプロモータ
ーおよびルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にGAL4応答要素のコピー5個を挿入
することで、レポーター構築物pUAS(5×)−tk−lucを形成した。pCMV−
lacZには、サイトメガロウィルスプロモーターの調節下にガラクトシダーゼZ遺伝子
がある。10%CO2 の加湿雰囲気下に37℃で、96ウェル細胞培養プレートにて、1
0 % 活 性 炭 除 去 ウ シ 胎 仔 血 清 ( Gemini Bio-Products, Calabasas, CA) 、 非 必 須 ア ミ ノ 酸
類、100単位/mLペニシリンGおよび100mg/mL硫酸ストレプトマイシンを含
む高グルコースのダルベッコの調整イーグル培地(DMEM)に細胞12×10
3
個/ウ
ェルでCOS−1細胞を接種した。24時間後、製造者の説明に従って、リポフェクタミ
ン ( Lipofectamine, GIBCO BRL, Gaithersburg, MD) を 用 い て ト ラ ン ス フ ェ ク シ ョ ン を 行
50
(24)
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った。すなわち、各ウェルのトランスフェクション混合物には、リポフェクタミン0.4
8μL、pcDNA3−PPAR/GAL4発現ベクター0.00075μg、pUAS
(5×)−tk−lucレポーターベクター0.045μgおよびトランスアクチベーシ
ョン効率についての内部対照としてのpCMV−lacZ 0.0002μgを含有させ
た。10%CO2 雰囲気下に37℃で、細胞をトランスフェクション混合物中にて5時間
インキュベートした。次に、5%活性炭除去ウシ胎仔血清、非必須アミノ酸類、100単
位/mLペニシリンGおよび100mg/mL硫酸ストレプトマイシン±上昇濃度被験化
合物を含む新鮮な高グルコースDMEM中、細胞を約48時間インキュベートした。化合
物をDMSO中で溶解させたことから、同等濃度のDMSOとともに対照細胞のインキュ
ベートを行った。最終DMSO濃度は≦0.1%であり、その濃度はトランスアクチベー
10
ション活性には影響しないことが明らかであった。製造者の説明に従って、レポーター溶
解 緩 衝 液 ( Reporter Lysis Buffer, Promega, Madison, WI) を 用 い て 細 胞 溶 解 物 を 得 た
。 細 胞 抽 出 物 に お け る ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 、 M L 3 0 0 0 光 度 計 ( Dynatech Laborator
ies, Chantilly, VA) で ル シ フ ェ ラ ー ゼ ア ッ セ イ 緩 衝 液 ( Luciferase Assay Buffer, Pro
mega, Madison, WI) を 用 い て 測 定 し た 。 β − ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 活 性 を 、 β − D − ガ ラ ク
ト ピ ラ ノ シ ド ( Calbiochem, San Diego, CA) を 用 い て 測 定 し た 。
【0094】
C . in vivo試 験
オ ス d b / d b マ ウ ス ( 1 0 ∼ 1 1 週 齢 C 5 7 B l / K F J 、 Jackson Labs, Bar Harb
or, ME) を ケ ー ジ 当 た り 5 匹 ず つ 飼 育 し 、 粉 砕 プ リ ナ ( Purina) 齧 歯 類 固 型 飼 料 お よ び 飲
20
料水を自由に摂取させた。動物およびそれの飼料の重量を2日に1回測定し、指定の用量
で媒体(0.5%カルボキシメチルセルロース)±被験化合物を強制経口投与によって1
日1回投与した。薬剤懸濁液は毎日調製した。試験期間中3∼5日間隔で尾放血によって
得た血液から、血漿のグルコースおよびトリグリセリド濃度を測定した。グルコースおよ
びトリグリセリドの測定は、通常の生理食塩水で1:6(容量基準)に希釈したヘパリン
添 加 血 漿 を 用 い て 、 自 動 分 析 装 置 ( Boehringer Mannheim Hitachi 911自 動 分 析 装 置 ; Boe
hringer Mannheim, Indianapolis, IN) で 実 施 し た 。 非 肥 満 動 物 は 、 同 じ 方 法 で 維 持 し た
、年齢を一致させた雑種マウスとした。
【0095】
体重約150gの雄ゴールデンシリアンハムスターを用いて、被験化合物の脂質調節効
30
果を測定する。ハムスターを箱で飼育し(1箱当たり5匹)、通常の齧歯類固型飼料を与
え、飲料水は自由に摂取させる。化合物を0.5% メチルセルロースに懸濁させ、1日
1回9日間にわたりハムスターに強制経口投与する(1群当たりハムスター10匹)。第
10日の朝に、ハムスターを二酸化炭素で屠殺し、心臓穿刺によって採血を行う。総コレ
ステロールおよびトリグリセリド類の血清レベルを測定する。
【0096】
平均体重約15kgの雄ビーグル犬成犬を用いて、被験化合物の脂質調節効果を測定す
る。イヌを個別に飼育し、コレステロールを含まない固形飼料を与え、飲料水は自由に摂
取させる。実験開始に先立って、尾静脈から週1回サンプルを採取し、血清コレステロー
ルレベルを測定する。化合物の血清コレステロールに対する効果を調べるため、化合物を
0.5%メチルセルロースに懸濁させ、イヌに対して2週間にわたって1日1回強制経口
投与する(1群あたりイヌ5匹)。投与期間中および投与期間後に採血を行い、総コレス
テロールおよびトリグリセリドの血清レベルを測定する。
【0097】
化合物の表
下記の表に、本発明に従って合成した化合物を示してある。詳細な合成は実施例にある
。
【0098】
40
(25)
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【化5】
10
20
30
40
(26)
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10
20
30
40
(27)
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【0099】
合成方法
本発明の化合物の製造方法を、下記の図式1に描いてある。
【0100】
留意すべき点として、図式1における構造で用いている置換基の番号付けは、本発明の
一般的記載における番号付けとは異なる。
【0101】
10
(28)
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【化6】
10
20
30
【0102】
最終化合物は、クロメン/クロマノール前駆体またはそれらの化合物のチオール類縁体
40
(III)と前駆体(II)との塩基触媒カップリングによって組み立てられる。別法と
して、これらの化合物は、前駆体(I)と(IV)のカップリングによっても得ることが
できる。カップリングは、DMF中で無機塩基(例:炭酸セシウム)の存在下に行う。そ
のカップリングは、ミツノブ反応条件下でも行うことができる。Lv(1 )およびLv(
2
)は当業界で公知の脱離基であり、好ましくは独立にハロゲン(好ましくはヨウ素また
は臭素)、あるいはメタンスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステル、あるいはミツ
ノブ反応条件下の場合にはヒドロキシルから選択される。所望のカルボン酸VIは、水系
塩基(例:KOH水溶液)条件下での式Vを有する化合物のエステル加水分解によって合
成することができる。
【0103】
50
(29)
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実施例
下記の実施例は、本発明の化合物の製造方法を含めて本発明を説明するために提供する
ものであり、いかなる形態でも本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明の範
囲は、専ら添付の特許請求の範囲で定義される。
【実施例1】
【0104】
2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−
2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸
【0105】
【化7】
10
段階A:2−(4−(ベンジルオキシ)フェノキシ)ブタン酸メチル
4−ベンジルオキシフェノール(30g、0.15mol)、炭酸セシウム(58.6
g、0.18mol)および2−ブロモブタン酸メチル(40.7g、0.22mol)
20
のCH3 CN(350mL)中混合物を、20時間還流状態に維持した。冷却後、混合物
を濾過し、減圧下に濃縮し、AcOEt/ヘキサンを用いるシリカゲルでのクロマトグラ
フィーを行って、標題化合物41.0g(91%)を得た。
【0106】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.45∼7.31(m、7H)、6
.9(d、2H、J=9.2Hz)、6.85(d、2H、J=9.2Hz)、5.02
(s、2H)、4.45(t、1H、J=6.3Hz)、3.76(s、3H)、1.9
8(dq、2H、J=7.4,6.3Hz)、1.08(t、3H、J=7.4Hz)。
【0107】
段階B:(4−(ベンジルオキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル
30
2−(4−(ベンジルオキシ)フェノキシ)ブタン酸メチル(30g、0.1mol)
のTHF(200mL)溶液に−78℃で、リチウムジイソプロピルアミド溶液(2M溶
液65mL)を加えた。添加終了後、得られた混合物を−78℃で30分間撹拌した。そ
れにヨウ化メチル(15mL)を加え、撹拌を4時間続け、その間に徐々に昇温させた。
飽和NH4 Cl水溶液で反応停止した後、層を分液し、水層をAcOEtで抽出し、合わ
せた有機相を水、ブラインで洗浄し、無水Na2 SO4 で脱水し、濃縮して所望の生成物
(32g)を得た。その生成物を、そのまま次の段階で用いた。
【0108】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.45∼7.19(m、7H)、6
.86(d、2H、J=9.3Hz)、6.84(d、2H、J=9.2Hz)、5.0
40
2(s、2H)、3.79(s、3H)、1.97(m、2H)、1.45(s、3H)
、0.99(t、3H、J=7.4Hz)。
【0109】
段階C:2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル
4−(ベンジルオキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(32g)のMeO
H(100mL)溶液を、約0.28MPa(40psi)で10%Pd/Cを用いて水
素化した。混合物をセライト層で濾過して触媒を除去した。濾液を濃縮して、粘稠油状残
留物を得た(21g、定量的)。
【0110】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ6.78(d、2H、J=9.0Hz
50
(30)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
)、6.72(d、2H、J=9.0Hz)、4.08(s、1H)、3.79(s、3
H)、1.98(m、2H)、1.43(s、3H)、0.99(t、3H、J=7.4
Hz)。
【0111】
段階D:2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸
メチル
2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(5g、22.32m
mol)のDMF(30mL)溶液に、炭酸セシウム(8.7g、26.7mmol)と
次にベンジル3−ブロモプロピルエーテル(7.7g、33.6mmol)を加えた。溶
液を45℃で24時間撹拌し、冷却し、水に投入した。AcOEtで抽出し、次に抽出液
10
を水で洗浄し、無水Na2 SO4 で脱水し、減圧下に濃縮することで、粗残留物を得た。
AcOEt/ヘキサンを用いてシリカゲルで精製することで、所望のアルキル化誘導体(
8.25g)を得た。その生成物をMeOH(75mL)に取り、約0.28MPa(4
0psi)で10%Pd/Cにて水素化して、2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)
フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(6.23g、定量的)を得た。
【0112】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ6.82(d、2H、J=9.4Hz
)、6.78(d、2H、J=9.2Hz)、4.08(t、2H、J=6.1Hz)、
3.87(t、2H、J=6Hz)、3.79(s、3H)、2.06∼1.92(m、
4H)、1.44(s、3H)、0.99(t、3H、J=7.4Hz)。
20
【0113】
段階E:6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメ
ン−7−オール
6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−2−オ
ン(1.5g、5.68mmol)の脱水THF(25mL)溶液に0℃で、メチルマグ
ネシウムクロライドのTHF溶液(3M溶液9.48mL)を加えた。0℃で1時間撹拌
後、飽和NH4 Cl水溶液で反応停止した。有機層を分離し、水で洗浄し、無水Na2 S
O4 で脱水し、濃縮して粗生成物を得た。それをトルエン(50mL)に溶かし、それに
p−トルエンスルホン酸(40mg)を加え、得られた溶液を、ディーン−スターク装置
を用いて水を共沸除去しながら1時間還流状態に維持した。溶液を水で1回洗浄し、無水
30
Na2 SO4 で脱水し、濃縮して褐色様残留物を得た。それについて、AcOEt/ヘキ
サンを用いるシリカゲルでの精製を行って、所望の生成物を得た(1.3g、83%)。
【0114】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ6.56(s、1H)、6.09(s
、1H)、5.63(s、1H)、1.48(s、6H)。
【0115】
段階F:2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメ
チル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブ
タン酸メチル
6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−
40
オール(0.66g、2.95mmol)、2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フ
ェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(1.0g、2.97mmol)およびトリフェ
ニルホスフィン(0.85g、3.24mmol)のTHF(25mL)溶液に、ジエチ
ルアゾジカルボキシレート(0.56g、3.21mmol)を加え(わずかに発熱)、
反応混合物を室温で終夜(16時間)撹拌する。減圧下に濃縮した後、得られた残留物に
ついてシリカゲルでのクロマトグラフィーを行って、2−(4−(3−((6−クロロ−
2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)
プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(0.99g)を得る。
【0116】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.3(s、1H)、6.81(q、
50
(31)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
4H、J=3Hz)、6.82(d、2H、J=7.5Hz)、6.51(s、1H)、
6.06(s、1H)、4.19(t、2H、J=6.1Hz)、4.14(t、2H、
J=6.1Hz)、3.79(s、3H)、2.29(m、2H)、1.95(m、2H
)、1.47(s、6H)、1.43(s、3H)、0.99(t、3H、J=7.5H
z)。
【0117】
段階G:2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメ
チル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブ
タン酸
上記のエステルをMeOH(10mL)に溶かし、室温にて50%NaOH水溶液(2
10
mL)で終夜(15時間)処理し、濃縮し、2N HCl水溶液で酸性とする。水溶液を
AcOEtで抽出し、無水Na2 SO4 で脱水し、濃縮して、標題化合物0.73gを得
る。
【0118】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.3(s、1H)、6.92(d、
2H、J=9.2Hz)、6.84(d、2H、J=9.0Hz)、6.51(s、1H
)、6.06(s、1H)、4.2(t、2H、J=6.0Hz)、4.17(t、2H
、J=6.0)、2.31(m、2H)、1.99∼1.8(m、2H)、1.47(s
、6H)、1.06(t、3H、J=7.4Hz)。MSm/e=529(M
+
+H)。
【実施例2】
20
【0119】
(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロ
メチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチル
ブタン酸
【0120】
【化8】
30
段階A
1)ラセミ体2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルブタン酸メチルの分割
【0121】
【化9】
40
【0122】
実施例1段階A∼Cに従って製造したラセミ体の2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−
2−メチルブタン酸メチル(144g)を、約15.2cm×約55.9cm(6インチ
× 2 2 イ ン チ ) カ ラ ム に 充 填 し た キ ア ラ セ ル ( Chiaracel) O J ( 3 k g − ゲ ル ) を 用 い
50
(32)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
る分取規模で分割した。30%EtOH−70%ヘプタンで溶離することで、先に溶出す
る(R)異性体(67.6g)および遅く溶出する(S)異性体(49.5g)を得た。
分 析 キ ラ セ ル ( Chiracel) O J カ ラ ム ( 4 . 6 m m × 2 5 0 m m 、 2 0 % E t O H − 8 0
%ヘプタン、流量:1mL/分、254nmで(+)CD偏向)で、先に溶出する(R)
異性体は、RT=13.31分を有しており、遅く溶出する(S)異性体はRT=18.
86分を有していた。
【0123】
2)絶対立体化学の決定
上記で記載の方法に従って得られた遅く移動する異性体を、(2R)−2−フェニルオ
キサゾリノンアミドAに変換した。異性体Aのキラル中心での立体化学は、X線結晶解析
10
によって(S)であることが認められた。それは、先に溶出する異性体がキラル中心で(
R)配置を有することを意味している。
【0124】
【化10】
20
異性体Aの構造は、単結晶X線結晶解析によって確認されている。回折試験に好適な結
晶を、アセトニトリル/水の混合液から成長させた。得られた結晶は空間群P21 および
セル定数a=10.544(2)、b=5.766(3)、c=15.589(2)Åの
単斜晶系であり、V=947.0(8)Å
95gcm
− 3
3
およびZ=2である。密度計算値は、1.2
である。
30
【0125】
回 折 測 定 は い ず れ も 、 θ 限 界 7 0 . 3 5 ° ま で リ ガ ク ( Rigaku) A F C 5 回 折 計 で 単 色
化CuKα放射線(λ=1.54184Å)を用いて行った。I≧2σ(I)レベルで観
察した1374個で測定した2009個から1908個の固有反射がある。構造を直接法
によって解き、244個のパラメータおよび全ての固有反射を用いるF
2
に関する密行列
最小二乗を用いて絞り込んだ。その絞り込みによって、R=0.063、wR=0.19
0、S=1.06で(Δ/σ)m
a x
<0.01という一致する統計データに収斂された
。
【0126】
この分子のコンピュータ作成の斜視図を図1に示した。原子間距離および原子間角のリ
ストを、それぞれ表1および表2に示した。
【0127】
40
(33)
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【化11】
10
20
【0128】
【表1】
30
【0129】
40
(34)
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【表2】
10
20
30
【0130】
段階B:(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリ
フルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2
−メチルブタン酸
実施例1段階DおよびF∼Gに記載の方法に従って、(2R)−2−(4−(3−ヒド
ロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチルおよび6−クロロ−2,2
−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−オールを用いて標題化
合物を製造した。
40
【0131】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.3(s、1H)、6.92(d、
2H、J=9.2Hz)、6.84(d、2H、J=9.0Hz)、6.51(s、1H
)、6.06(s、1H)、4.2(t、2H、J=6.0Hz)、4.17(t、2H
、J=6.0Hz)、2.31(m、2H)、1.99∼1.8(m、2H)、1.47
(s、6H)、1.06(t、3H、J=7.4Hz)。MSm/e=529(M
+
+H
)。
【実施例3】
【0132】
(2S)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロ
50
(35)
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メチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチル
ブタン酸
【0133】
【化12】
10
段階A:3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H
−クロメン−7−イル)オキシ)プロパン−1−オール
6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−
オール(10g、36.23mmol)のDMF(150mL)溶液に、炭酸セシウム(
24.8g、76.11mmol)を加え、次に3−ブロモ−1−プロパノール(7.6
g、54.3mmol)を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。水で希釈し、AcO
Eで抽出し、有機抽出液を水で洗浄し、無水Na2 SO粗アルキル化生成物を得た。Ac
OEt/ヘキサンを用いるシリカゲルでの精製によって、所望の3−((6−クロロ−2
20
,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プ
ロパン−1−オール(9.5g、78%)を得た。
【0134】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.32(s、1H)、6.92(d
、2H、J=9.2Hz)、6.51(s、1H)、6.07(s、1H)、4.19(
t、2H、J=5.7Hz)、3.92(t、2H、J=5.5Hz)、2.12(m、
2H)、1.48(s、6H)。
【0135】
段階B:(2S)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリ
フルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2
30
−メチルブタン酸メチル
3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメ
ン−7−イル)オキシ)プロパン−1−オール(0.5g、1.48mmol)、(2S
)−2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルブタン酸メチル(0.35g、1.
56mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.42g、1.6mmol)のTHF
(20mL)溶液に、ジエチルアゾジカルボキシレート(0.28g、1.6mmol)
を加え、溶液を室温で16時間撹拌した。減圧下に濃縮した後、そうして得られた残留物
について、AcOEt/ヘキサンを用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーを行って、
所望の化合物を得た(0.49g)。
【0136】
1
40
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.3(s、1H)、6.83(d、
2H、J=9.2Hz)、6.81(d、2H、J=9.2Hz)、6.51(s、1H
)、6.06(s、1H)、4.2(t、2H、J=6.1Hz)、4.15(t、2H
、J=6.1Hz)、3.79(s、3H)、2.29(m、2H)、1.99∼1.8
(m、2H)、1.47(s、6H)、1.44(s、3H)、0.99(t、3H、J
=7.4Hz)。
【0137】
段階C:(2S)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリ
フルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2
−メチルブタン酸
50
(36)
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上記のエステルを50%NaOH水溶液(1mL)のMeOH(10mL)溶液で加水
分解して、標題化合物0.45gを得た。
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.3(s、1H)、6.92(d、
2H、J=9.2Hz)、6.84(d、2H、J=9.0Hz)、6.51(s、1H
)、6.06(s、1H)、4.2(t、2H、J=6.0Hz)、4.17(t、2H
、J=6.0Hz)、2.31(m、2H)、1.99∼1.8(m、2H)、1.47
(s、6H)、1.06(t、3H、J=7.4Hz)。MSm/e=529(M
+
+H
)。
【実施例4】
【0138】
10
(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロ
メチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)エトキシ)フェノキシ)−2−メチルブ
タン酸
【0139】
【化13】
20
段階A:(2R)−2−(4−(3−ヒドロキシエトキシ)フェノキシ)−2−メチル
ブタン酸メチル
ベンジル3−ブロモプロピルエーテルに代えてベンジル2−ブロモエチルエーテルを用
い、実施例1段階Dに記載の方法に従って、(2R)−2−(4−ヒドロキシフェノキシ
)−2−メチルブタン酸メチルを所望の(2R)−2−(4−(3−ヒドロキシエトキシ
)フェノキシ)−2−メチルブタン酸メチルに変換した。
【0140】
1
30
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ6.84(d、2H、J=9.4Hz
)、6.81(d、2H、J=9.4Hz)、4.04(t、2H、J=4.3Hz)、
3.94(t、2H、J=4.3Hz)、3.79(s、3H)、1.96(m、2H)
、1.44(s、3H)、0.99(t、3H、J=7.6Hz)。
【0141】
段階B:(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリ
フルオロメチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)エトキシ)フェノキシ)−2−
メチルブタン酸
(2R)−2−(4−(3−ヒドロキシエトキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸
メチルおよび6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロ
40
メン−7−オールを用い、実施例1段階F∼Gに記載の一般的手順に従って標題化合物を
製造した。
【0142】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.33(s、1H)、6.9(bs
、4H)、6.56(s、1H)、6.09(s、1H)、4.35(s、4H)、2.
02∼1.86(m、2H)、1.49(s、6H)、1.43(s、3H)、1.08
(t、3H、J=7.3Hz)。MSm/e=515(M
+
+H)。
【実施例5】
【0143】
(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−3,4−ジヒドロ−
50
(37)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン酸
【0144】
【化14】
段階A:6−クロロ−2,2−ジメチルクロマン−7−オール
10
【化15】
【0145】
20
所望の6−クロロ−2,2−ジメチルクロマン−7−オールを、下記の方法で4−クロ
ロレゾルシンから合成した。3,3−ジメチルアクリル酸(7.0g)および4−クロロ
レ ゾ ル シ ン ( 1 0 g ) の イ ー ト ン ( Eaton) 試 薬 ( 5 0 m L ) 中 混 合 物 を 、 室 温 で 1 6 時
間撹拌した。終了後、混合物を氷に投入し、沈殿を濾過し、脱水し、含水メタノールで結
晶化させて、6−クロロ−7−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロ−4H
−クロメン−4−オン(8.7g)を得た。
【0146】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.88(s、1H)、6.58(s
、1H)、6.01(s、1H)、2.69(s、2H)、1.47(s、6H)。
【0147】
30
上記のフェノール(2.2g)を、臭化ベンジルを用いて相当するベンジルオキシ誘導
体に変換し、生成物をMeOH中NaBH4 で還元してアルコールを得た。それをTHF
中濃HClで処理して脱離誘導体を得た。その化合物をAcOEt中Pd/C触媒を用い
て水素化して、目的の6−クロロ−2,2−ジメチルクロマン−7−オール(1.55g
)を得た。
【0148】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.0(s、1H)、6.47(s、
1H)、5.3(s、1H)、2.69(t、2H、J=6.7Hz)、1.78(t、
2H、J=6.7Hz)、1.33(s、6H)。
【0149】
40
段階B:(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−3,4−ジ
ヒドロ−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブ
タン酸
(2R)−2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン
酸メチルおよび6−クロロ−2,2−ジメチルクロマン−7−オールを用い、実施例1段
階F∼Gに記載の一般的手順に従って標題化合物を製造した。
【0150】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.04(s、1H)、6.92(d
、2H、J=9.2Hz)、6.84(d、2H、J=9.0Hz)、6.42(s、1
H)、4.15(m、4H)、2.69(t、2H、J=6.7Hz)、2.28(m、
50
(38)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
2H)、2∼1.8(m、2H)、1.78(t、2H、J=6.9Hz)、1.42(
s、3H)、1.33(s、6H)、1.07(t、3H、J=7.4Hz)。
【実施例6】
【0151】
2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−
2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−エチルブタン酸
【0152】
【化16】
10
段階A:2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−エチルブタン酸
メチル
2−(4−(ベンジルオキシ)フェノキシ)ブタン酸メチルのアルキル化においてヨウ
化メチルに代えてトリフルオロメタンスルホン酸エチルを用い、実施例1段階B∼Dに記
載のものと同じ手順に従って、目的化合物である2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ
20
)フェノキシ)−2−エチルブタン酸メチルを製造した。
【0153】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ6.83(d、2H、J=9.4Hz
)、6.79(d、2H、J=9.0Hz)、4.09(t、2H、J=6.0Hz)、
3.87(t、2H、J=5.7Hz)、3.79(s、3H)、2.1∼1.9(m、
6H)、0.9(t、6H、J=7.5Hz)。
【0154】
段階B:2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメ
チル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−エチルブ
タン酸
30
2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−エチルブタン酸メチルお
よび6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7
−オールを用い、実施例1段階F∼Gに記載の一般的手順に従って標題化合物を製造した
。
【0155】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.31(s、1H)、6.95(d
、2H、J=9.2Hz)、6.86(d、2H、J=9.0Hz)、6.51(s、1
H)、6.06(s、1H)、4.2∼4.1(m、4H)、2.31(m、2H)、2
.0∼1.8(m、4H)、1.47(s、6H)、0.99(t、3H、J=7.2H
z)。
【実施例7】
【0156】
2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−
2H−クロメン−7−イル)オキシ)エトキシ)フェノキシ)−2−エチルブタン酸
【0157】
40
(39)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
【化17】
2−(4−(3−ヒドロキシエトキシ)フェノキシ)−2−エチルブタン酸メチルおよ
10
び6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−
オールを用い、実施例1段階F∼Gに記載の方法に従って標題化合物を製造した。
【0158】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.33(s、1H)、6.97(d
、2H、J=9.1Hz)、6.92(d、2H、J=9.1Hz)、6.57(s、1
H)、6.09(s、1H)、4.36(s、4H)、2.0∼1.8(m、4H)、1
.49(s、6H)、1.0(t、3H、J=7.3Hz)。
【実施例8】
【0159】
(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジエチル−4−(トリフルオロ
20
メチル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチル
ブタン酸
【0160】
【化18】
30
段階A:6−クロロ−2,2−ジエチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメ
ン−7−オール
メチルマグネシウムクロライドに代えてエチルマグネシウムクロライドを用い、実施例
1段階Eでの相当する6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(トリフルオロメチル)−2
H−クロメン−7−オールの製造について記載の方法と同様にして、この化合物を製造し
た。
【0161】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.25(s、1H)、6.57(s
40
、1H)、6.01(s、1H)、5.65(s、1H)、1.83∼1.63(m、4
H)、0.95(t、6H、J=7.4H)。
【0162】
段階B:2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジエチル−4−(トリフルオロメ
チル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブ
タン酸
6−クロロ−2,2−ジエチル−4−(トリフルオロメチル)−2H−クロメン−7−
オールおよび(2R)−2−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェノキシ)−2−メ
チルブタン酸メチルを用い、実施例1段階F∼Gに記載の一般的手順に従って標題化合物
を製造した。
50
(40)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
【0163】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.28(s、1H)、6.89(d
、2H、J=8.2Hz)、6.81(d、2H、J=9.2Hz)、6.51(s、1
H)、5.98(s、1H)、4.21(t、2H、J=6.0Hz)、4.18(t、
2H、J=6.0)、2.0∼1.68(m、6H)、1.41(s、3H)、1.07
(t、3H、J=7.3Hz)、0.95(t、3H、J=7.5Hz)。
【実施例9】
【0164】
(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(イソプロピル
)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチルブタン
10
酸
【0165】
【化19】
20
段階A:6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(イソプロピル)−2H−クロメン−7
−オール
4−クロロレゾルシン(2.0g、13.84mmol)およびイソブチリル酢酸エチ
ル(3.3g、20.7mmol)のイートン試薬(15mL)中混合物を、室温で16
時間撹拌し、氷に投入し、沈殿固体を濾過し、脱水し、含水メタノールから結晶化させて
、所望の6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(イソプロピル)−2H−クロメン−7−
オール(2.68g)を得た。
【0166】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.15(s、1H)、6.54(s
30
、1H)、5.52(s、1H)、5.34(s、1H)、2.75(m、1H)、1.
4(s、6H)、1.15(t、6H、J=6.9H)。
【0167】
段階B:(2R)−2−(4−(3−((6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(イソ
プロピル)−2H−クロメン−7−イル)オキシ)プロポキシ)フェノキシ)−2−メチ
ルブタン酸
6−クロロ−2,2−ジメチル−4−(イソプロピル)−2H−クロメン−7−オール
を用い、実施例1段階F∼Gに記載の一般的手順に従って標題化合物を製造した。
【0168】
1
H−NMR(400MHz、CDCl3 ):δ7.2(s、1H)、6.9(d、2
H、J=8.9Hz)、6.84(d、2H、J=8.9Hz)、6.5(s、1H)、
5.32(s、1H)、4.2∼4.16(m、4H)、2.77(m、1H)、2.3
1(m、2H)、2.0∼1.8(m、2H)、1.43(s、3H)、1.4(s、6
H)、1.15(d、6H、J=6.7Hz)、1.07(t、3H、J=7.3Hz)
。
40
(41)
【国際調査報告】
JP 2005-538109 A 2005.12.15
(42)
JP 2005-538109 A 2005.12.15
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(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A61P
3/04
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A61P
3/10
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A61P
9/10
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9/10
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9/12
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9/10
101 A61P 17/02
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9/12
A61P 17/06
A61P 17/02
A61P 25/00
A61P 17/06
A61P 25/28
A61P 25/00
A61P 27/02
A61P 25/28
A61P 29/00
A61P 27/02
A61P 29/00
(81)指定国 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,
BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,
GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,
EC,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,MZ,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM
,ZW
(74)代理人 100124855
弁理士 坪倉 道明
(72)発明者 デイサーイ,ランジツト・シー
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・07065−0907、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
(72)発明者 サホー,スーミヤ
アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・07065−0907、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126
Fターム(参考) 4C062 FF13
4C084 AA19 DC32 MA02 MA17 MA35 MA52 MA55 MA66 NA05 NA14
ZA011 ZA161 ZA361 ZA421 ZA451 ZA681 ZA701 ZA891 ZC331 ZC351
4C086 AA01 AA02 AA03 BA08 MA02 MA04 MA17 MA35 MA52 MA55
MA66 NA05 NA14 ZA01 ZA16 ZA36 ZA42 ZA45 ZA66 ZA68
ZA70 ZA89 ZB11 ZC20 ZC33 ZC35 ZC61