平成24年度農作物病害虫発生予察技術資料第8号

平成24年度農作物病害虫発生予察技術資料第8号
平成24年(2012)年11月5日
山 口 県 病 害 虫 防 除 所
イチゴのうどんこ病およびハダニ類の発生状況と防除対策について
10月下旬の巡回調査の結果、イチゴのうどんこ病、ハダニ類はやや多い状況でした。
ついては、下記を参考に防除指導の徹底をお願いします。
記
Ⅰ うどんこ病
1 発生状況
10月下旬の巡回調査では、発生ほ場率35.0%(平年17.0%)、発病株率12.8%(平年
5.8%)、発病葉率6.9%(平年3.4%)で平年に比べやや多かった(図1)。
30
25
発
病 20
株
15
率
% 10
5
0
H14
H15
図1
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
平年
年次別のイチゴうどんこ病発病株率(10月下旬)
2 今後の予想
(1) 対象地域 県内全域
(2) 発 生 量 やや多
3 防除対策
(1) ほ場をよく観察し、うどんこ病(図2、図3参照)の発生が見られるほ場では、発病
している葉、果実を可能な限り除去し、ほ場外で適正に処分する。
(2) 予防散布に努めるとともに、発生が認められる場合には、早期に防除を実施する。
なお、薬剤散布後は、防除効果を確認し、その後も発生が認められる場合は、約7
日おきに1回~2回薬剤を散布する。
4 防除上注意すべき事項
(1)
(2)
(3)
(4)
窒素肥料の過多や葉の過繁茂は発生を助長するので、適切な栽培管理を行う。
薬剤が果実や葉裏にもかかるよう、十分な液量を丁寧に散布する。
薬剤耐性菌の発達を避けるため、同一系統薬剤の連用は避ける(表1)。
適正な薬剤散布作業の実施、農薬使用基準の遵守など安全で効果的な防除に努める。
図2
葉の発病状況
図3
果実の発病状況
表1 イチゴうどんこ病の主な防除薬剤
系統
商品名
ボトキラー水和剤
インプレッション水和剤
銅,生物農薬
発病前~発病初期
-
2000倍
発病前~発病初期まで
-
1000~2000倍
収穫前日まで
-
クリーンカップ
1000~2000倍
収穫前日まで
-
アカリタッチ乳剤
2000倍
収穫前日まで
-
イオウフロアブル
500~1000倍
-
-
3kg/10a
-
-
300~600倍
収穫前日まで
-
500倍
収穫前日まで
-
カリグリーン
800~1000倍
収穫前日まで
-
ハーモメイト水溶剤
800~1000倍
収穫前日まで
-
オレート液剤
100倍
発病初期~収穫前日まで
-
エコピタ液剤
100倍
収穫前日まで
-
500~1000倍
-
-
4000倍
収穫前日まで(生育期)
2回以内
モレスタン水和剤 ※1
フルピカフロアブル
3000~4000倍
収穫前日まで
2回以内
2000~3000倍
収穫前日まで
3回以内
ジーファイン水和剤
750~1000倍
収穫前日まで
-
サンヨール
500~1000倍
収穫前日まで
6回以内
フルピカフロアブル
2000~3000倍
収穫前日まで
3回以内
アフェットフロアブル
2000倍
収穫前日まで
3回以内
パンチョTF顆粒水和剤
2000倍
収穫前日まで
2回以内
アミスター20フロアブル
1500~2000倍
収穫前日まで
本圃:3回以内
ストロビーフロアブル
3000~5000倍
収穫前日まで
3回以内
サンリット水和剤
2000~4000倍
収穫前日まで
3回以内
サプロール乳剤
2000倍
収穫前日まで
5回以内
スコア顆粒水和剤
2000倍
収穫前日まで
3回以内
トリフミン水和剤
3000~5000倍
収穫前日まで
5回以内
5000倍
収穫前日まで
3回以内
サンクリスタル乳剤
ムシラップ
その他
サルファーゾル
ベルクート水和剤
その他,銅
銅
アニリノピリミジン
※2
酸アミド(SDHI)
酸アミド,EBI
※2
バイコラール水和剤
ラリー水和剤
抗生物質
使用回数
アグロケア水和剤
硫黄粉剤50
EBI
15g/10a/日
(ダクト内投入)
使用時期
(収穫前日数)
1000倍(散布)
生物農薬
ストロビルリン
希釈倍数
4000~8000倍
収穫前日まで
3回以内
ルビゲン水和剤
4000倍
収穫前日まで
3回以内
ポリオキシンAL水溶剤
5000倍
ポリオキシンAL水和剤
1000倍
収穫14日前まで
3回以内
ポリオキシンAL乳剤
1000倍
※1 モレスタン水和剤は、カブリダニ類に対して長期間影響するので注意する。
※2 薬剤使用回数に関するガイドライン(耐性菌未発生ほ場の場合)
ストロビルリン系剤は単剤の場合は1作1回まで、SDHI剤ほかとの混用(効果が期待
できる他の成分を含む)の場合は1作2回まで。
SDHI剤は単剤の場合は1作1回まで、ストロビルリン系剤ほかとの混用(効果が期待
できる他の成分を含む)の場合は1作2回まで。
Ⅱ
ハダニ類
1
発生状況
10 月下旬の巡回調査では、発生ほ場率 30.0%(平年 22.0%)、寄生株率 11.5%(平年
5.9%)で平年に比べやや多かった(図4)。
また、一部で多発ほ場が認められ、主要種はナミハダニであった(図5)。
2
今後の予想
(1)対象地域 県内全域
(2)発 生 量 やや多
3
防除対策
(1)ハダニ類は部分的に発生することがあるので、ほ場全体をよく観察する。
<(参考資料)イチゴのハダニ類簡易調査法を参照>
(2)ハダニ類の発生を認めたら、直ちに防除を行う(表2参照)。
4
防除上注意すべき事項
(1)薬剤は葉裏まで十分かかるよう丁寧に散布する。
(2)薬剤抵抗性を発達させないため、同一系統薬剤の連用は避ける(表2参照)。
(3)気門封鎖剤はハダニ類の卵には効果がないため、7~10 日間隔で連続散布する。
(4)生物農薬(ミヤコカブリダニ、チリカブリダニ)は、次のことに注意して使用する。
ア カブリダニ類はハダニ類の発生初期、または、影響の少ない剤で防除した後に放
飼する。ミヤコカブリダニはハダニ類の発生前に放飼してもよい。
イ ハダニが発生している場合は、チリカブリダニとミヤコカブリダニを同時に放飼
する。特に、チリカブリダニはハダニが発生している場所へ重点的に放飼すること
が望ましい。
ウ ミヤコカブリダニまたはチリカブリダニを放飼したほ場において、ハダニ類の多
発が認められたときは、カブリダニ類への影響の少ない薬剤を散布する。
エ うどんこ病の防除に使用する硫黄のくん煙は、カブリダニ類の定着に影響がある
ので、1日2時間程度にとどめる。
図5
ナミハダニ
(雌成虫)
表2 イチゴのハダニ類の主な防除薬剤
使用時期
系統
商
品
名
使用倍率、使用量
(収穫前日
数)
スパイカルEX
100~300 ミリリットル/10a
(ミヤコカブリダニ)
スパイデックス
(チリカブリダニ)
カブリダニPP
(チリカブリダニ)
チリトップ
(チリカブリダニ)
(約 2000~6000 頭)
100~300ミリリットル/10a
(約2000~6000頭)
3瓶/10a
(6000頭/10a)
使用
回数
ミツバチ カブリダ
の安全日 ニ類への
数
注1
影響
発生初期
-
○
発生初期
-
○
発生初期
-
○
発生初期
-
○
収穫前日
-
○
△
収穫前日
-
○
△
収穫前日
-
○
○
収穫前日
-
○
△
収穫前日
-
○
△
収穫前日
6
○
○
収穫前日
1
○
○
2
処理翌日
△
2
2~3日
△
トフェン
収穫前日
/10a
2000倍,100~300リットル/
アファーム乳剤
収穫前日
10a
1000 倍,100~350 リットル
ダニサラバフロアブル
収穫前日
/10a
2
処理翌日
○
シエノピ
スターマイトフロアブ 2000 倍,100~300 リットル
ラフェン
ル
収穫前日
2
処理翌日
○
ビフェナ
マイトコーネフロアブ 1000 倍,100~300 リットル
ゼート
ル
収穫前日
2
処理翌日
○
処理翌日
△
処理翌日
△
2~3 日
×
生物農薬
アカリタッチ乳剤
粘着くん液剤
サンクリスタル乳剤
気門封鎖
エコピタ液剤
ムシラップ
サンヨール
ナフトキ
ノン
マクロラ
イド
シフルメ
エトキサ
ゾール
カネマイトフロアブル
コロマイト水和剤
バロックフロアブル
エトキサ
ゾール、
ダニメツフロアブル
気門封鎖
ピレスロ
イド
アーデント水和剤
6000頭/10a
1000~3000 倍,100~
400 リットル/10a
100倍,150~300リットル/
10a
300~600倍,150~500リ
ットル/10a
100倍,100~300リットル/
10a
500倍,100~300リットル/
10a
500倍,100~300リットル/
10a
1000~1500 倍,150~
300 リットル/10a
2000 倍,100~300 リットル
/10a
/10a
2000 倍,100~350 リットル
/10a
1000 倍,150~350 リットル
/10a
1000 倍,150~300 リットル
/10a
収穫前日
注2
1
収穫前日
収穫前日
4
注1 ミツバチの安全日数
「○」:影響なし(「薬液が乾けば影響なし」を含む)
・本表は、各県の資料及びメーカー資料を参考に安全日数を掲載した。
・通常の使用では影響がない剤であっても、薬液が乾かなかったり、臭いが残る場合は、訪花活動に
影響を及ぼす場合がある。
・低温・曇雨天が続く場合は薬剤の分解が進まず、遅くまで影響が残ることがある。
・巣 門 を 開 け 、ミ ツ バ チ を 再 導 入 す る 前 に は 、換 気 を 十 分 に 図 り 、薬 液 が 乾 い て い る こ と を 確 認 す る 。
注2 カブリダニ類への影響
日 本 バ イ オ ロ ジ カ ル コ ン ト ロ ー ル 協 議 会 資 料 を 参 考 に ミ ヤ コ カ ブ リ ダ ニ 、チ リ カ ブ リ ダ ニ へ の 影 響
をまとめた。
「 ×」 : 使 用 不 可
「△」:影響あり
「○」:影響なし
(参考資料)イチゴのハダニ類簡易調査法
<調査手順>
1 ハダニの発生しやすい場所(暖房機周辺や出入り口付近)から下葉を
10枚程度集め、白い紙袋に入れる。
2 施設内に一日おき、葉を乾燥させる。
3 翌日、紙袋の上部を歩行するハダニ (成虫、幼虫) 等の有無を確認する。
ナミハダニの集団
<見分けるポイント>
ナミハダニ(0.5 ㎜)
(黄緑色)
カンザワハダニ (0.5 ㎜) ワタアブラムシ(2㎜程度)
(赤色)
(緑色、黄色等個体差あり)
【生物農薬】ミヤコカブリダニ(0.4 ㎜)
(オレンジ色、洋なし型)
(ナミハダニを補食中)
チリカブリダニ(0.5 ㎜)
(赤色、足が長い)