産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の現状と今後の展望 81 産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の 現状と今後の展望 Present Situation and Future of Industrial Wire and Cable, Metal Enclosed Bus Ways and Miscellaneous Electric Products 南 正 樹* Masaki MINAMI 佐 野 仁** Hitoshi SANO 産業用電線・ケーブルは発変電所,各種産業施設,建物内,モータ等の産業用機器及び車両用等広範囲の分 野で使用されている。バスダクトは発変電所や工場内の電力幹線として使用されている。本報では,これら, 産業用電線・ケーブルおよバスダクト及び機器電材品の現状および今後の展望につき述べる。 Many kinds of wire and cable are used in industrial field, such as power stations, substations, manufacturing plants, buildings, industrial machines and electric cars. Metal enclosed bus ways are used for main power lines in power stations, substations and plants. In this paper, we report present situation and future of those wire and cables, metal enclosed bus ways and miscellaneous electric products. 1.は じ め に 抗分よりもインダクタンス分が主要である場合が多い。こ のような場合,導体サイズを大きくしても電圧降下への効 産業用電線・ケーブルは発変電所,各種産業施設,建物 果は少なく,インダクタンスの小さなケーブルが必要とさ 内,モータ等の産業用機器及び車両用等広範囲の分野で使 れる。これに応えるため,低インピーダンスでしかも施工 用されている。バスダクトは発変電所や工場内の電力幹線 性,経済性が一般ケーブル並みの低インピーダンスケーブ として使用されている。本報では,これら,産業用電線・ ル(LZ ケーブル)を開発,納入している。このケーブル ケーブル,バスダクト及びケーブル配線工事省力化機器, は 3 の倍数のコアを撚り合わせ各相を幾何学的に平等にな 防水型照明システム,防災工事材料などの機器電材品の現 るように配置し,インダクタンス,結果としてインピーダ 状および今後の展望につき述べる。 ンスを小さくしたものである。 2.産業用電線・ケーブルの現状 産業用電線・ケーブルはプラスチック絶縁電線・ケーブ ルおよびゴム絶縁電線・ケーブルに大別される。プラスチ 一方 CX-CV ケーブルは,導体にエナメル線を用いて導 体抵抗の表皮効果低減をはかり,しかも導体と外部導体を 同軸構造としてケーブルのインダクタンスを減少させた中 間周波誘導加熱炉用等の電力ケーブルである。 ック絶縁では,CV 等の電力用ケーブル,CVV 等の制御ケ ーブルおよび IV 等の絶縁電線,ゴム絶縁では LHH 等の口 出し線,レントゲンケーブル等が代表品種であり,その他 線心 用途に応じ各種製品が使用されている。以下に,当社の特 絶縁体 (ビニル又は架橋ポリエチレン) 遮 蔽 層(遮蔽付の場合のみ) 色ある製品を中心に,ご報告する。 2.1 プラスチック絶縁電線・ケーブルの現状 抑えテープ 大型コンピュータ用の電源幹線等の高周波用や溶接機等 黒 の力率が極度に低い負荷用ケーブルは導体サイズが許容電 白 流でなく電圧降下制限より決定され,しかも電圧降下は抵 * 電線技術部 ** 電線機器部 導 体 シ ー ス(ビニル) 赤 図 1 “LZ”ケーブルの断面図 昭 和 電 線 レ ビ ュ ー 82 中心導体(リッツ線) 絶 縁 体 テ ー プ 外 部 導 体 セパレータ 絶 縁 体 半 導 電 層 遮蔽銅テープ テ ー プ シ ー ス (1 500 V CX-CV) Vol. 51, No. 1 (2001) 大型ビル内では,各階への分岐線を予め工場で処理した 分岐付きケーブルが,配線の信頼性向上と配線工事の省力 化を目的とし使用されている。分岐部の絶縁処理はモール ド成形方式が採用されており,耐水性向上を機にトンネル 内照明用電源線としても使用されている。さらに耐火電線 の分岐付きケーブルも納入している。 大容量母線としては一般にバスダクト等の裸母線が使用 されているが,裸母線より低インピーダンスで曲げやすく, 図 2 1 500 V CX CV ケーブルの断面図 コンパクトで保守管理の容易なフラットケーブルが開発さ れている。これは複数の円形導体を平面状に並べた上に架 コンピュータおよび計装施設等に使用するケーブルは大 橋ポリエチレン絶縁体およびシースを被覆した平形の電力 別して計装用ケーブル,電源ケーブルおよび照明・空調等 ケーブルで,一般にはビニルシースが用いられるが,高難 の付帯設備用ケーブルに分けられる。一般に計装用ケーブ 燃ノンハロゲンシースを被覆したケーブルも納入してい ルでは線心を対よりし,遮蔽を施したものが多く使用され, る。一般のケーブルに比べ相間距離が小さいため低インピ 誘導障害対策が通常施されている。一方電源用ケーブルに ーダンスであり,ケーブルの小サイズ化が図れる。工場内 は遮蔽が施されておらず,また金属製電線管に入れて布設 でプレハブ加工を行う事で品質の安定と工期短縮が可能, する等の処置もほとんどとられていないため計装用ケーブ 布設スペースの縮小,長尺のため現場での接続作業が少な ルへ障害を及ぼす場合も考えられる。とくに原因不明の偶 い等の特長を有する。 発的な障害対策として電源用ケーブルにも遮蔽を施した方 製鋼所のアーク炉等の電源は力率の低下や電流の高周波 がより高度の信頼性が与えられる。この対策として銅・鉄 成分が入力電源側にながれ電灯のちらつき等の原因となる テープ巻き遮蔽ケーブルおよび鉄テープの下に軟銅集合よ 事がある。この防止として,コンデンサと空心リアクトル り線を施し曲げ易く,取り扱い容易な電磁遮蔽ケーブル コイルを組み合わせたフィルタが電源回路に用いられる。 従来,空心リアクトルコイルには,平形銅線に,絶縁とし (ノイレックスケーブル)を納入している。 てプラスチックテープを巻き,絶縁樹脂を含浸させた導体 が用いられてきたが,耐水性の改良として,絶縁体に架橋 導 体 ポリエチレンを被覆し,保護被覆としてビニルシースを施 絶縁体 した矩形導体 CV ケーブルを納入している。矩形導体のた 介 在 め,コイルの占積率が大で完成品がコンパクトになり,コ 抑えテープ 軟銅集合より線 導 体(円形圧縮軟銅より線) 絶縁体(架橋ポリエチレン) B b 鉄テープ 抑えテープ シース(ビニル) a A シース 図 4 フラットケーブル(CVF)の断面図 図 3 ノイレックスケーブルの断面図 表 1 600 V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース平形ケーブル(CVF)構造表 銅 導 体 絶縁体 シース 仕上げ法 概 算 最 大 試 験 最 小 厚 さ 厚 さ 絶縁抵抗 mm kg/km 導体抵抗 20 ℃ Ω/km 電 圧 mm (約) A×B mm × mm 質 量 (並列導体) 寸 法 a×b mm × mm V/I 分 MΩkm 円形圧縮 54.0 × 10.8 2.5 2.3 64 × 21 4 500 0.0458 3 000 800 5 × 100 〃 60.0 × 12.0 3.0 2.5 71 × 23 5 640 0.0366 3 500 〃 600 6 × 100 〃 72.0 × 12.0 3.0 2.7 84 × 24 6 770 0.0305 〃 〃 800 4 × 200 〃 68.0 × 17.0 3.5 2.8 81 × 30 8 640 0.0229 〃 〃 1 000 5 × 200 〃 85.0 × 17.0 3.5 3.1 99 × 31 10 800 0.0183 〃 700 公 称 断面積 mm2 構 成 形 状 本× mm2 400 5 × 80 500 産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の現状と今後の展望 83 導 体 絶縁体 シース 図 5 矩形導体 CV ケーブル断面図 表 2 空心リアクトルコイル用矩形銅導体架橋ポリエチレン 絶縁ビニルシースケーブル構造表 線 心 数 心 1 公称断面図 mm2 125 構 成 本/mm 37/7/0.8 外 径 mm 10.2 × 17.3 形 状 − 平角成型 マンホールより線 絶 縁 体 厚 さ mm 2.0 シ ー ス 厚 さ mm 1.5 導 体 仕 上 外 径(約) mm 18 × 25 kg/km 1 480 最大導体抵抗(20 ℃) Ω/km 0.151 試 験 電 圧(AC) kV/1 分 3.0 最 小 絶 縁 抵 抗 MΩ・km 1 500 概 算 質 量 図 6 防鼠性試験結果 い,新たに唐辛子の辛味成分であるカプサイシンをマイク ロカプセル化した防鼠材を練りこんだ防鼠ケーブル(MCCV 他)を開発し,更に,難燃およびハロゲンフリー難燃 タイプ(FPM,NHM)も開発している。 2.2 ゴム絶縁電線・ケーブルの現状 ゴムは経済性でビニル,架橋ポリエチレン等の汎用プラ スチックに劣るが,ゴムの有する柔軟性を活かした各種用 途に使用されている。 レントゲンケーブルは X 管球と直流高電圧発生装置を結 ぶケーブルとして使用され,絶えず,移動屈曲を受けるた め可とう性が必要である。また X 線発生装置の機器に組み イル巻き時の作業性も良い,温度上昇に対しコイル変形が 込んで使用されるので細径化ならびに軽量化が必要であ 少なく特性が安定している等の特長を有する。 る。このような要求に答えるため,構造の見直しや低圧絶 化学工場等の耐薬品性が必要なケーブルとして,鉛ラミ 縁材料に従来の EP ゴムに替えフッ素系材料を使用して絶 ネート薬品ケーブルを開発している。本ケーブルは,薄い 縁厚低減を行った細径化品を開発した。また,充電時の時 鉛箔にプラスチックをラミネートしたものをシース押出時 間短縮のため,低静電容量化が求められ,内部半導電層外 の熱によりシースと溶着し一体化させたもので,メタルコ 径を小さくして静電容量を抑制した低静電容量レントゲン ルゲートケーブル等の金属シ−ス品に比べて曲げ易く,一 ケーブルを開発している。X 線装置では,技術的進歩に伴 般のケーブルと外径の差もほとんど無いことから,取り扱 い,X 線用ケーブル部でのわずかなコロナ(部分放電)が いが容易で,遮水効果も期待出来るものである。 ノイズとなり X 線画像の乱れの原因となる場合があり,こ 地熱発電所,石油コンビナートあるいは製鉄所等では, 硫化水素を含んだ土壌中に布設された架橋ポリエチレン絶 のコロナ特性の向上のため,発生源となる高圧絶縁体と外 部半導電層間の密着性を向上させた特殊な外部半導電テー 縁あるいはポリエチレン絶縁ケーブルは,ケーブル内に侵 入した硫化物によって,導体の銅と硫黄が反応して絶縁体 中に化学トリーを生じ,絶縁破壊に至る場合がある。この 化学トリーの発生を防ぐため,従来の金属シースに代わる ものとして,遮硫化効果を有するプラスチック材料を開発 し,外径および重量が従来ケーブル並みで布設工事の作業 性も同等の遮硫化ケーブルを開発し,地熱発電所に納入し ている。 小動物による電線・ケーブルの被害の内,白蟻と鼠によ る食害の例は多数報告されている。白蟻については,ナイ ロン等の強靭なポリマーを最外層に被覆する事により機械 的保護を施したケ−ブルを納入している。鼠に対しては防 導体 低圧絶縁体 半導電層 高圧絶縁体 半導電テープ 遮蔽編組 シース 〔高圧部線心〕 導 体 鼠材を最外層へ練りこむ方法が有効であり,これまでは, シクロヘキシミドが使用されていたが,生産中止にともな 図 7 低静電容量レントゲンケーブル断面図 昭 和 電 線 レ ビ ュ ー 84 Vol. 51, No. 1 (2001) 表 3 DC 75 kV ケーブルの構造及び特性比較 一般用 XV 低静電容量 新型低静電容量 (当社標準) XV *1 XV*2 単 位 2 構 導 体 サ イ ズ mm 1.5 1.5 1.5 造 仕 上 り 外 径 mm 20 20 20 耐 電 圧 120 kV/10分 良 良 良 気 静 電 容 量(高圧部) μF/km 0.26 ∼ 0.27 0.13 ∼ 0.14 0.15 ∼ 0.16 特 D C 破 壊 電 圧 kV 260 ∼ 290 300 ∼ 330 300 ∼ 350 性 衝 撃 破 壊 電 圧 kV 200 ∼ 240 200 ∼ 220 260 ∼ 280 電 内部導体 半導電層 内部絶縁体(EPゴム) 半導電層 外部導体 半導電テープ 外部絶縁体(ポリエチレン) 半導電テープ 遮蔽テープ(軟銅テープ) 抑えテープ シース (難燃性ビニル) *1 内導テープ式 *2 内導押出式 低圧導体 図 9 DC 138 kV FP-PEV 構造 低圧絶縁体 高圧導体 表 6 DC 138 kV FP-PEV 構造表 内部半導電層 公 称 電 圧 kV 高圧絶縁体 線 心 数 − 1 公 称 断 面 積 mm2 22 構 成 本/mm 7/2.0 外 径 mm 6.0 内 部 絶 縁 体(EP ゴム)厚 さ mm 11.0 外部半導電層 内 部 導 体 錫メッキ 軟銅撚線 ( 遮蔽編組 シース ) 外 部 導 体 (軟鋼線) 図 8 ローノイズタイプ DC 75 kV X 線装置用ケーブル断面図 表 4 ローノイズタイプ DC 75 kV X 線装置用ケーブルの構造 定 格 電 圧 kV 線 心 数 心 サ イ ズ mm 2 構 成 本/mm 外 径 低圧絶縁体厚さ 導 体 DC 75 2 1.8 1.25 19/0.35 50/0.18 mm 1.75 1.5 mm 0.25 − 高圧絶縁体厚さ mm 4.3 遮 組 mm 0.15 シ ー ス 厚 さ mm 1.0 仕 上 が り 外 径 mm 17.0 概 算 質 量 kg/km 380 へ い 編 本 45 mm 0.8 外部絶縁体(ポリエチレン)厚さ mm 2.5 軟 鋼 テ ー プ 厚 さ mm 0.1 シ ー ス ( 難 燃 性 ビ ニ ル ) 厚 さ mm 3.5 仕 上 外 径 (約) mm 50 概 算 質 量 kg/km 2 640 Ω/km 内部,外部導体共 0.849 kV/10 分 DC 162 内部導体−外部導体間 耐 電 圧 電 外部導体−遮 蔽 間 kV/10 分 内部導体−外部導体間 MΩ・km 気 最小絶縁 抵抗 (20 ℃) 外部導体−遮 蔽 間 MΩ・km 特 シ ー ス 耐 電 圧 kV/1 分 (参考)標準静電容量 性 μF/km (内部導体∼外部導体間) (参考)イ ン ダ ク タ ン ス 表 5 ローノイズタイプ DC 75 kV X 線装置用ケーブルの 要求性能および評価結果 項 目 横 巻 本 数 素 線 径 最 大 導 体 抵 抗 (20 ℃) 2 要求性能 評価結果 DC 138 (計算値) mH/km AC 10 1 000 2 500 AC 2.0 0.18 0.38 プを使用した,ローノイズタイプも開発している。これら, 特色ある製品によりレントゲンケーブルの豊富な納入実績 を有している。 導 体 1.8 mm2 Ω/km 9.06 ∼ 10.0 9.8 核融合臨界プラズマ試験装置では 2 つの加熱装置(中性 低 圧 絶 縁 体 kV/分 AC 3.5/5 良 粒子入射装置と高周波加熱装置)に直流高圧ゴムケーブル 耐電圧試験 高 圧 絶 縁 体 kV/分 DC 120/10 良 高 圧 絶 縁 体 kV/分 AC 50/20 良 低 圧 絶 縁 体 MΩ・km 10 000 赤: 237 000 白: 237 000 高 圧 絶 縁 体 MΩ・km 5 000 17 500 静 電 容 量 μF/km 0.131 ∼ 0.159 0.145 ル kV/pC 42/10 以下 良 高 圧 絶 縁 体 破 壊 電 圧 値 kV − 60 要求より難燃性ビニルとした DC 138 kVFP-PEV ケーブル 低 圧 絶 縁 体 kV/分 AC 3.5/5 良 を納入している。これまで,通常の使用時に減衰振動波が 絶 縁 抵 抗 (20 ℃) A C コ ロ 屈 曲 試 験 *後 の耐電圧試験 ナ レ ベ を使用する。負荷電流は直流 138 kV の間歇電流であり, しばしば負荷側で生じる短絡によりケーブルに減衰振動電 圧が生じる。ケーブルは低インダクタンスにするため,同 軸ケーブルとし,絶縁体は端末部のモールド作業性および 繰り返しサージに有効な EP ゴムを採用し,シースは客先 高 圧 絶 縁 体 kV/分 AC 50/20 良 繰り返し課電される使用形態はケーブルではほとんど無 屈曲試験後のコロナレベル kV/pC 42/10 以下 良 く,減衰振動電圧に関する十分な試験を行い,使用に対し 屈曲試験後の長時間耐電圧試験 kV/時間 AC 50 kV/200 良 * 屈曲試験:曲げ半径 75 mm で 50 000 回屈曲 十分な性能を有する事を確認している。 航空保安施設の一つとして航空機の離発着に重要な働き 産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の現状と今後の展望 85 導 体 (錫めっき集合より線) 導 体 セパレータ 絶縁体 耐放射線性難燃性 EPゴム絶縁体 介 在 シース 抑え巻 耐放射線性 難燃性熱可塑性ポリウレタン シース 図 10 航空照明用 EP ゴム絶縁難燃クロロプレンシースケーブル断面図 表 7 航空照明用 EP ゴム絶縁難燃クロロプレンシースケーブル構造表 V 公 称 断 面 積 2 mm 構 成 本/mm 外 径 mm 絶 縁 体 厚 さ mm 2.5 4.0 シース材料に関しても,特殊なウレタンポリマーを使用す シ ー ス 厚 さ mm 1.7 1.8 る事により,難燃性を有し,かつ 10 MGy という高い放射 仕 上 り 外 径 mm 12.0 15.2 線に曝されても可とう性を有する高耐放射線性ケーブルを 概 算 質 量 kg/km 230 330 導 体 3 000 図 11 高耐放射線性ケーブル 電 圧 5 000 8 7/1.2 放射線防護剤を添加して耐放射線性を改良するとともに, 3.6 開発,納入している。 2.3 をしている航空照明システムがあり,照明配線にはゴムモ ールドトランスを用いた直列点灯方式が採用され,ゴムモ 難燃化及びエコ化 ケーブル要求特性の近年の大きな動きは難燃化およびエ コ化である。 難燃化 ールドトランス間の配線は特殊な 3 000 及び 5 000 V の EP 2.3.1 ゴム絶縁耐水性クロロプレンシースケーブルが使用され 難燃化は過去の火災事例を契機として図られてきた。現 る。この高圧回路は空港内の変電所より洞道部を経て滑走 在汎用化されている電線・ケーブルケーブルは,絶縁体や 路へと導かれており,洞道部については防災面から,ケー シース材料にポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを使用し ブルの難燃化が必要となった。開発にあたっては,構造寸 ている。これらの材料は何らかの原因で着火した場合,燃 法は現行とおなじで,シース材の高難燃化を図ることとし 焼時の発熱量が大きいため火災の燃料となり,電線・ケー た。従来のシース材料であるクロロプレンはある程度の難 ブルが延焼の媒体となる可能性がある。また,管路・トレ 燃性を有しており酸素指数は 30 程度である。絶縁体は高圧 イ・ラック・ダクト等に多条数がグループ化されて布設さ 用であるため,難燃材の入っていない EP ゴムを使用して れる事が多く,火災時は特に空気の対流や煙突効果により おり酸素指数は 20 程度であるが,絶縁体の難燃化は電気特 ケーブルが相互に影響し延焼していく場合がある。 性の低下を招き採用できない。そこでシース材料に高度な ケーブルの難燃化の手法は,金属シースやがい装を設け 難燃性を付与する必要がある。検討の結果,難燃剤として る方法,ガラス繊維を組み合わせる方法があるが,ケーブ は三酸化アンチモンおよび臭素系難燃剤を配合し垂直トレ ル構成材料,特にシースを難燃化すれば,ケーブル構造を イ燃焼試験に合格するケーブルを開発し納入した。 変えることなく難燃化できる。ゴム・プラスチックを難燃 原子力発電所等の原子力プラントでは,その優れた耐放 化するには以下の方法が考えられる。①酸化劣化に強く, 射線性によりゴム絶縁ケーブルが格納容器内等の高放射線 分解温度の高いポリマを採用する。②ポリマに無機充填剤 領域で使用されている。ところで,廃棄物処理施設を始め を添加し可燃性ポリマの比率を少なくする。③燃焼時に生 とする核燃料サイクル関連施設では高度な放射線場となる 成する活性化ラジカルを補足し,燃焼の連鎖反応を停止さ 領域が存在するため,使用されるケーブルについても更に せる。④不燃性ガスを発生させて酸素を遮断する⑤吸熱剤 高度な耐放射線が要求される。従来原子力発電所プラント を添加し,燃焼時の発熱を抑制する。具体的には,ビニル, で使用されている難燃ケーブルの耐放射線性は,吸収線量 クロロプレンゴム等の塩素含有材料の使用,ハロゲン系難 で 2 MGy(γ線)まで機能維持できるように設計されてお 燃剤を添加する方法が一般的である。ハロゲン系難燃剤は り,その使用材料は,EP ゴム(絶縁体),クロロプレン及 活性ラジカルのトラップ及び不燃性ガスの発生の効果があ びクロロスルフォン化ポリエチレン(シース)が主流とな り,比較的火源への断熱層となる炭化層も形成しやすい。 っているが,いずれも 2MGy 以上の放射線が吸収されると ビニルは燃焼時塩化水素ガスを発生するが,塩化水素ガ 劣化が著しく,使用に耐えなくなる。そこで,EP ゴムに スは腐食性が強く,極力発生量を抑える検討が行われてき 86 昭 和 電 線 レ ビ ュ ー Vol. 51, No. 1 (2001) た。低減には熱分解で生じた塩化水素を補足し,外部への 酸化物を多量に充填すると難燃性の指標である酸素指数は 放出を抑える塩化水素補足剤を添加することが行われてい 増加するが伸びは低下する傾向にあり,特性バランスのと る。塩化水素ガス補足剤で最も効果のあるものとして炭酸 れた添加量の決定が必要となる。また,金属水酸化物の粒 カルシウムが知られており,炭酸カルシウムは塩化水素と 径の違いによっても酸素指数は異なり,微粒子になる程酸 反応し塩化カルシウムの形で補足する。塩化水素補足剤を 素指数は向上する。金属水酸化物の添加量を減らして物性 添加しないビニルの塩化水素発生量が約 300 mg/g に対し, バランスをとる方法としてシリコーンガム,ホウ素化合物 塩化水素補足剤を使用し塩化水素発生量を 100 mg/g 以下 等の難燃助剤を併用もある。 にした低塩酸難燃ビニルも開発している。このようにして ノンハロゲン難燃化に対して,難燃剤の選択の他に,ポ 得られた難燃性ケーブルは,IEEEstd. 383 に規定される垂 リマーの選択も重要な要素で,無機水和物をある程度多量 直トレイ燃焼試験等厳しい試験にも十分合格する。 に添加しても機械的な物性を損なわないノンハロゲン系の 当社では,原子力発電所用にいち早く難燃性ケーブルを ポリマーを選択する事である。ポリマーの種類により酸素 開発し,その後各種の難燃性ケーブルを開発,納入してい 指数は異なり,ポリマー選択のポイントとなる。一般的に るが,これまでの難燃ケーブルは,ハロゲン系材料を使用 はエチレン・酢酸ビニル系等エチレン系コポリマー,エチ しており,火源に曝された部分及びその近傍は燃焼または レン・プロピレンゴム等が絶縁用材料として使用される。 熱分解により機器を腐食したり,人体に影響を及ぼす塩化 また,シース材としては,絶縁材料と同様な材料のほかに, 水素ガスや一酸化炭素ガスが発生するとともに,発煙量も 各種熱可塑性エラストマーも配合される。 多い。最近では超高層ビル,地下街等の人口密集地での火 このような方法により開発した垂直トレイ燃焼試験に耐 災と同時に起きる二次火災の大きな要因として燃焼ガス, えるノンハロゲン難燃ケーブルを 1984 年に開発し,NH シ 煙等があげられ,特に影響の及ぼす要因として CO ガス濃 リーズとして,1985 年初納入後,電力用,制御用他数多く 度の上昇,毒性ガス濃度の上昇,煙の発生,温度の上昇が の納入実績を有している。 考えられ,これらが複合して大きな影響を及ぼし,ノンハ ロゲン化の開発ニーズが高まった。 前述のとおり,原子力用ケーブルはいち早く難燃化対策 が施されているが,難燃化手法の基本はハロゲン系難燃剤 電線・ケーブルの被覆材料等固体の燃焼は,外部加熱に の使用である。原子力用ケーブルは,燃焼時に発生するハ よる可燃性ガスの生成に始まり,そのガスの燃焼熱により ロゲン化水素の低減化の対策はされているものの,一般産 燃焼が継続する。燃焼は 3 要素である可燃物質,熱,酸素 業界と同様な二次災害防止の観点から,原子力固有の耐環 を抑止することにより難燃化が達成される。従来のハロゲ 境性を有する原子力用ノンハロゲン難燃ケーブルの要求が ン難燃材料では,上述のとおり,特にハロゲンにより,− あり,絶縁体にノンハロゲン難燃性 EP ゴム,シースにノ OH ラジカルによる発熱反応を抑えたり,ハロゲン系の不 ンハロゲン難燃性架橋ポリエチレンを用いたケーブルを開 燃性ガスによる酸素供給遮断などで難燃性を付与してお 発し,1994 年に我国で初めて動力用及び計装用として実プ り,その点ハロゲン化合物は有効な難燃剤であった。これ ラントに納入している。 に対し,ノンハロゲンで難燃化するには,次のような手法 車両用電線は,絶縁性能が安定していること,経年劣化 が一般である。①金属水酸化物を多量に充填し,結晶水の が少ないこと,難燃性であること,可とう性がよいことが 放出による吸熱反応により可燃性物質の生成を抑える。② 要求事項として挙げられる。また,万一の火災時に発生す 分解温度の高い耐熱性ポリマーを使用することにより,可 る有毒ガスや煙の低減が必要である。開発した車両用ノン 燃性生成物の発生を抑制し難燃化を図る。一般に芳香族系 ハロゲン難燃性電線は従来の車両用架橋ポリエチレン絶縁 の官能基を有するポリマーは耐熱性に優れ,燃焼時の炭素 電線をグレードアップしたもので,難燃性(垂直トレイ燃 残渣量が大きく耐燃性であるが,その燃焼形態から煙の発 焼試験にも合格),塩化水素ガス,臭素ガスなどのハロゲ 生が多くなる傾向にあり,ポリエチレン系ポリマーに比べ ンガスを発生しない,煙の発生が少ない等の特長を有す地 ると,フレーミング状態での発煙量が多くなり,また概し 下鉄車両用として 1984 年に初納入している。 て高価格である。このように,ノンハロゲン難燃化の手法 近年,ビルの高層化,地下街の拡大がはかられている。 は数多く考えられるが,ポリエチレン系などの汎用材料に これら施設の電力,証明,空調などの設備に使用される, 金属水酸化物を多量に充填してなる方法が一般的である。 電線。ケーブル類は膨大な量となり,万一の火災に備え, 金属水酸化物は,結晶水放出温度がポリエチレンの混合・ ノンハロゲン難燃性分岐付ケーブルの要求が高まり,ケー 加工温度(最高約 180 ℃)以上でかつポリエチレンの分解 ブルに架橋ポリエチレン絶縁ノンハロゲン難燃ポリオレフ 温度(335 ∼ 450 ℃)以下が必要であり,このような条件 ィンシースを用い,分岐部にはノンハロゲン難燃材料を使 を満足するものとして一般に水酸化マグネシウム,水酸化 用し,インジェクションモールドによりケーブルと一体化 アルミニウムが使用される。ところで,金属水酸化物は, された製品を 1984 年に開発した。 従来のハロゲン系難燃剤の添加量に比べると,3 から 4 倍 地下街等の不特定多数の人が出入りする場所の防災措置 程度の量を添加しないと難燃性が付与されないが,金属水 として従来の耐火・耐熱電線の機能に加え,火災時に延焼 産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の現状と今後の展望 87 し難いことや,有毒ガス,煙の発生による消火,避難活動 の傷み(腐食)が問題になる場合がある。また燃焼時のダ の妨げとなる要因の低減が求められ,高難燃ノンハロゲン イオキシン発生も懸念される。さらに電線被覆材に使用さ 耐火ケーブルを開発し,耐火・耐熱認定業務委員会の認定 れている PVC の多くは熱安定剤として鉛化合物を有して を 1994 年に取得している。耐火性能は従来と同様に おり,焼却・埋め立て時の土壌汚染や水質汚濁が懸念され 840 ℃× 30 分間に耐え,垂直トレイ燃焼試験に合格し,絶 る。このような状況に鑑み,環境への影響を極力低減した 縁体,シース材は発煙濃度 150 以下(NBS 法),発生ガス エコ電線・ケーブルを開発した。開発のコンセプトは,次 の PH が 3.5 以上である。 のとおりとした。①ハロゲン化合物を使用しないこと,② エコ化 鉛など重金属化合物は使用せず,環境中に有害物質を溶出 2.3.2 近年,大量生産,大量消費型の社会から,貴重な資源の しないこと,③ PVC を用いた現行ケーブルと比較して同 回収再利用を促進する「循環型社会」への構築への強い要 等の以上の難燃性を有すること④構成材料を極力統合し, 求があり,電線・ケーブルについても,有害化学物質を使 将来のリサイクル容易性を実現することである。 用しない,有害廃棄物を出さない等環境に与える影響を極 エコ電線・ケーブルは,絶縁電線,低圧ケーブル,高圧 力低減した環境調和型製品(エコ電線・ケーブル)の開発 ケーブル,制御用ケーブル,消防用電線等の各品種につい が強く求められている。電線・ケーブル材料としては従来 て EM シリーズや先に記述した NH シリーズをラインアッ からポリ塩化ビニル(PVC)が最も多く使用されているが, プしている。 使用済み電線被覆材床材やサンダル,電線被覆材などのリ 3.バスダクトおよび機器電材品の現状 サイクル率は約 37 %であり,残りは埋めたてや単純焼却に より廃棄されている。ところで,PVC は分子構造中に塩素 3.1 を有しているため焼却時時に塩化水素が発生し,焼却設備 バスダクトの現状 バスダクトは 1930 年頃米国で開発された Bus way system と称される電線方式を指すもので,銅やアルミニウム を導体としてこれらを支持する難燃性の絶縁支持物を金属 表 8 環境調和型エコ電線・ケーブルの特長 主な使用材料 製品シリーズ エコ電線・ 絶 縁 シース (架橋) 難燃性 ケーブル ポリエチ ポリオレ (EM シリーズ) レン フィン 難燃性 JIS 傾斜 試験合格 ハロゲン 化ガス 発生なし エコ高難燃電 (架橋) 高難燃性 IEEE 垂直 線・ケーブル ポリオレ トレー試 発生なし フィン 験合格 ポリエチ (NH シリーズ) レン 架橋ポリエ 一般ケーブル チレンまた PVC は PVC * 製ダクトに収めたもので,ビルディング,工場などの電気 ECP としての機能 JIS 傾斜 試験合格 発生する 腐食性 発煙量* ガス 発煙濃度 150 以下 発煙濃度 150 以下 発煙濃度 200 ∼ 300 発生なし 発生なし 発生する 非鉛化 設備には不可欠の配線方式となっている。導体に矩形導体 を使用しているため熱放散が良く電流容量が非常に大で電 鉛を含ま ない 気的特性や機械的特性も良く,また外箱が金属ダクトにな っているため不燃性できわめて安全度が高い。バスダクト 鉛を含ま は,変圧器より低圧配電盤へ,配電盤から分電盤へ,また ない プラグインスイッチやケーブルタップボックスを経て末端 鉛を含有 負荷へと電力を送る幹線として使用され,その間での分岐 する や方向変換などの使用目的に応じて設計された種々のバス ダクトが用いられる。当社では,相非分割方式(高圧バス JCS 397 ダクト,高圧縮小形バスダクト,普通形バスダクト及び密 表 9 環境調和型エコ電線・ケーブル品種対応表 用 途 従来商品 EM シリーズ商品名 NH シリーズ商品名 6 kV CV 6 kV CVT 600 V CV 600 V CVD 600 V CVT 600 V VVR 600 V VVF 600 V IV 6 kV EM-CE 6 kV EM-CET 600 V EM-CE 600 V EM-CED 600 V EM-CET 600 V EM-EER 600 V EM-EEF 600 V EM-IE 6 kV NH-CE 6 kV NH-CET 600 V NH-CE 600 V NH-CED 600 V NH-CET 600 V NH-EER 600 V NH-EEF 600 V NH-IE 制 御 ・ 計 装 600 V CVV (s) KMPEV 600 V EM-CEE (s) EM-KMPEE 600 V NH-CEE (s) NH-KMPEE 弱電・電話・ 共 聴 な ど CPEV (s) 構内ケーブル 5C-2V など 5C-FB など EM-CPEE EM-構内ケーブル EM-5C-2E など EM-5C-FB など NH-CPEE NH-構内ケーブル NH-5C-2E など NH-5C-FB など 情 報 GECL 光ファイバ EM-GECL NH-GECL 例: EM-CT-□□-LAP 例: NH-CT-□□-LAP 非常・防災用 6 kV PFAK-HV 600 V PFAK-LV SFAK FA 6 kV EM-PFAK-HV 6 kV NH-PFAK-HV 600 V EM-PFAK-LV 600 V NH-PFAK-LV EM-SFAK NF-SFAK EM-FA 高 圧 動 力 低 圧 動 力 ・ 電 灯 な ど 着絶縁形バスダクト),相分割方式(相分離母線),外部へ の漏れ磁束を防止した相分離方式(相分割母線)をライン アップし納入している。なお,高圧縮小形バスダクトは, 表 10 バスダクトの外形,断面構造 方 式 形 状 製 品 名 断 面 形 状 相分離方式 相分割方式 相非分割方式 Isolated Phase Bus (I.P.B.) Segregated Phase Bus (S.P.B.) Non-Segregated Phase Bus (N.P.B.) 各相の導体をそれ ぞれ箱に収納し, 箱間に空間をおい て分離 相間に隔壁をおいて 各層の導体を分離 相分離母線 相分割母線 全ての相の導体を 1 つの箱に収納 高 圧 高圧縮小形 普通形 密着絶縁形 バスダクト バスダクト バスダクト バスダクト 昭 和 電 線 レ ビ ュ ー 88 Vol. 51, No. 1 (2001) 表 11 バスダクトの仕様概要,電圧範囲 相分離母線 相分割母線 高圧縮小形 バスダクト 高圧バスダクト 普通形 バスダクト 密着絶縁形 バスダクト JEM1425 JIS C 8364 IEC298 IEC439-1,2 規 格 ANSI C 37,20 定格電圧 (絶縁階級) ∼ 24 kV (∼ 20 B) ∼ 36 kV (∼ 30 B) ∼ 36 kV (∼ 30 B) ∼ 7.2 kV (∼ 6 A) ∼ AC 600 V ∼ DC 750 V 定格電流 (50/60 Hz) ∼ 36 000 A(風冷) ∼ 18 000 A(自冷) ∼ 5 000 A ∼ 5 000 A ∼ 3 000 A ∼ 5 000 A 導体 アルミ 箱 アルミ 材質 銅又はアルミ 鉄又はアルミ 接続部処理 絶縁支持材 主要用途 鉄又は 鉄とステンレスの 組み合わせ 鉄 ポリエステル プレミックス (導体絶縁) 銀メッキ又はスズメッキ 磁器碍子 エポキシ樹脂碍子 エポキシ樹脂碍子 発電所の主回路,所内回路 磁器碍子(特殊) 発電所の受変電路や製鉄所, 化学工場等の一般工場受変電路 ビル,工場内変電所の配電路 プラグイン器具 三層導体を一括で支持する磁気ホルダ使用により寸法,重 水平ティー 量の大幅な低減を図ったものである。これらの製品は電流 容量で最大 36 000 A,電圧で最高 36 kV までの仕様を取り 揃えている。 ところでバスダクトは従来交流用であったが,近年,鉄 水平フィーダ バスダクト 盤接続用バスダクト 端子ボックス エンドクローザ フランジ 鋼メーカにおける直流アーク炉の使用が増加し,しかも大 プラグイン器具 分電盤 型化が進んでおり,その電力供給用線路は最大電流で 垂直オフセット 100 kA のものが必要とされている。このような実例として ハンガー 国内鉄鋼メーカに電気室外 2 次導体として 92.6 kA 対応の 水平 オフセット 自然冷却アルミブスバー(120 t × 650 W),46.3 kA 対応の レジューサ 水平クロス エクスパンションバスダクト ターミナルヘッドおよび絶縁支持物,サポート類,水配管 垂直エルボ 設備,各種カバーなどの付属品を納入した。製作にあたっ エンドタップボックス 床支持 金具 水漏れ防止対策,強磁界にさらされる部分の材質選定,水 水平エルボ 壁貫通金具 圧強度などの十分か検討を行い,今後同様の大電流容量を 必要とする母線の設計データを収得している。 3.2 フィーダ バスダクト (屋内用) フィーダ バスダクト (屋内用) 特殊バスダクト 災工事材料などの機器電材品を紹介する。 ケーブル配線工事省力化機器として,ケーブル延線用 3 高圧バスダクト 垂直ティー 機器電材品の現状 ケーブル配線工事省力化機器,防水型照明システム,防 盤接続用バスダクト 振止支持金具 水冷銅管(φ 190 × 18 t),23.2 kA 用水冷四角筒柱状銅製 ては,全体の構造のプレハブ化,銅管接続部の溶接方法, プラグインバスダクト 変圧器 配電盤 第三種接地工事 または特別第三種接地工事 面ローラを開発している。これはケーブルを延線する際の ガイドローラとして使用されるもので,従来の 4 面ローラ 図 12 バスダクト総合図 を機能,構造,材質から見直し開発したものである。使用 性への配慮として回転抵抗が少ないドライベアリングをロ ーラとシャフト間に採用,ローラ 1 本は磁気吸引のワンタ 業部門大賞を受賞している。 ッチレバー開閉式でケーブルの着脱が容易。安全性の配慮 ビル,工場内の電気設備に使用されるケーブルの布設作 として軽量で運搬,取り付けが容易,最大保証荷重が 100 業は,現在なお人力やウインチなどを用いて行われている から 800 kgf で安全性が高い,材料は錆びの発生がなく耐 が,屋内ケーブルラック上の延線作業に適した小型,軽量 久性良好。生産性への配慮としてプラスチックローラは射 の電動ローラ KSR-50 を開発した。本電動ローラはケーブ 出成形,フレーム材はダイカスト製造法を採用し,安価の ルラック上に複数台を適正配置し,中継用として 3 面ロー 特長を有する。なお,本品は平成 2 年度グッドデザイン産 ラでケーブルをガイドしながらケーブルを送り出す装置 産業用電線・ケーブル,バスダクト及び機器電材品の現状と今後の展望 89 図 15 コンパクト形ショウルックス 図 13 3 面ローラの外観 で,押圧ローラ部の外径変動追従装置により,CVT ケー ブルのような外径変動が大きいケーブルでも常に安定した けん引力を確保できる。また,複数台の電動ローラを効率 的に使用するための延線操作システムも用意している。 トンネル内で使用する照明用器具は,高温,多湿,腐食 性の漏水など苛酷な条件にさらされため,損傷が多く,保 ▲耐炎フエルト 7.5mm に 0.1mm の ステンレス板を貼り合わせた物 ▲施行例 守点検が大きな負担となっている。当社では,永年の保守 業務経験を生かし,トンネル用として防水形蛍光灯ショウ 図 16 フレームシート SC ルックスを始めとした防水器具を開発している。これらは, JIS 規格の防水器具では行われない苛酷な水中試験に十分 レームシート SC を開発した。他の用途として,コンビナ 耐える独自の防水性能を有しており,システムとして連結 ート(石油,ガスなど)の配管の保護や溶接時の保護のス することにより防水システムを構成するほか,単体として パッタシートなどがある。構造はステンレス鋼板に難燃カ も使用いただける。ところで内径の小さい洞道などでは, ーボン繊維のフエルトを貼り付けたもので,JISA1302(建 布設,撤去,保守点検等において軽量,コンパクト化のニ 築物の不燃構造部分の防火試験)の 2 級加熱の炎にも耐え ーズがあり,また近年は 400 V 配電が採用されている。こ る抜群の防災性・断熱性,施工が容易およびノンハロゲン のような背景から,水没にも耐える 18 W コンパクト形防 性の特長を有し,客先の好評を得ている。 浸形蛍光灯を開発しており,従来の 20 W 形より重さ,長 接地工事には電力・通信・避雷設備用などがあるが,こ さともに約 30 %減の軽量で,配線方式も 100 V ∼ 400 V の れらの工事を行う際,接地抵抗の確保に苦慮する場合も多 対応が可能である。 く,接地抵抗低減剤は重要な機能を果たしている。これら 橋梁の下には保護管で保護された電力ケーブルや通信ケ の要求に対し,当社では接地抵抗低減剤ダウンアースを開 ーブル等様々なケーブルが敷設されている。これら保護管 発した。ダウンアースは,天然成分を使用しており無公害, 群を火災から保護するものとして,一括して管路に巻くフ 安価で取り扱いが容易,経年変化が少なく持続効果が抜群, 接地電極が腐食しないなどの特長を有する。 産業の発展と相まって,道路交通量は著しく増加し,そ れに伴って舗装の損耗も著しく,道路の維持管理の必要性 が高まっている。このような背景下,アスファルト乳剤を ベースとした,2 成分系の常温注入速硬性で,従来の補修 材にない特長,即ち,安全性,浸透性,硬化性,接着性, 耐寒性,施工性に優れた特性を有する,道路ひびわれ補修 材サムアスファを開発している。 4.今後の展望 産業用電線・ケーブル分野では,地球環境保全の推進よ り,ますますエコ電線・ケーブルの普及・促進が高まり, 多様な製品のエコ化が進むと考えられる。このような中, エコ電線・ケーブルのリサイクル推進に向け,リサイクル 図 14 電動ローラの外観 技術の実用化に向けた検討が必要である。 昭 和 電 線 レ ビ ュ ー 90 浸透深さ(mm) C D E 一方,高度情報化への対応として,コンピュータ等の OA 機器に適した低インピーダンス,大容量電力ケーブル 20 平 均 値 40 60 B A 0 Vol. 51, No. 1 (2001) や遮蔽付きケーブル等の使用が進むと考えられる。 また,レントゲンケーブルでは高電圧化,多芯化などが 範 囲 推進されると予想される。 バスダクトでは,更なる大容量化,縮小化,メンテナン 80 スフリー化および工事の簡略化が推進されると考える。 機器電材品では,分散型電源やインテリジェントデータ センターなどの新しい分野でのニーズの発掘および対応製 図 17 各種ひびわれシール材の浸透性 品の開発の推進が必要である。 1.0 6 4 0.5 2 0 A A' B C D E 0 8 6 4 2 0 〔−10℃〕 ア ス コ ン で 切 れ る 1.0 ア ス コ ン で 切 れ る ア ス コ ン で 切 れ る A A' B C D E 0.5 0 破断時の伸び(mm) 〔20℃〕 付着強さ(kgf/cm2) 8 破断時の伸び(mm) 付着強さ(kgf/cm2) 今後,これらの環境の変化,市場の動向をとらえ,これ までに培ってきた技術ノウハウを活用し,タイムリーに開 発,製品化に取り組んでいく所存である。 南 正樹(みなみ まさき) 電線事業部電線技術部 被覆線技術課課長 1974 年入社 産業用電線・ケーブルの開発設計に従事 凡 例 付着 強度 破断時の 伸び A':サムアスファM1 A':サムアスファK B':他社の2液性常温注入型材料 C':加熱注入型材料 D':同 上 E':同 上 図 18 各種ひびわれシール材のアスファルトコンクリートとの付着性 佐野 仁(さの ひとし) 電線事業部電線機器部 次長 1963 年入社 母線および機器電材品の開発設計に従事
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