原子力損害賠償に関する国際条約の概要

原子力損害賠償に関する国際条約の概要
資料1-6
(1)国際条約の概要
○原子力損害賠償に関する国際条約には、以下の3つの系統がある。
・パリ条約
・ウィーン条約
・原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)
○3者とも、原子力損害の責任に関する最低基準・基本原則を設定しようとする点で概ね次
のような共通の内容を備える。
・原子力損害の賠償責任の無過失責任
・原子力事業者への責任集中
・責任額の制限の最低基準
・賠償措置のための資金的保証の義務
・専属裁判管轄の設定と判決の承認・執行の義務
①パリ条約
【採択機関】
○1960年にOECD/NEA(経済協力開発機構原子力機関)で採択
【発効・締約国の状況】
○1968年に発効、フランス・ドイツ・イタリア・イギリス等の欧州のOECD加盟国を中心
に15ヵ国が締約国
○なお、2004年改正条約は、旧条約15ヵ国+スイスが署名(未発効)
【特記事項】
○互いに隣接する旧西側先進諸国の地域的な利害関係が原動力。
○EU域内における原子力損害賠償制度の規整の調和を目指し、EU加盟国(13ヵ国がパ
リ条約締約国、9ヵ国がウィーン条約締約国、5ヵ国がパリ・ウィーンともに非締約国)の
全体で2004年改正条約の締約国となることが検討されている。
○2004年改正条約では、責任額が7億EURO。
○2004年改正条約では、原子力損害の定義に「環境汚染によって生じたのではない経済損
失」の規定がない。
②ウィーン条約
【採択機関】
○1963年にIAEA(国際原子力機関)で採択
【発効・締約国の状況】
○1977年に発効、中東欧・中南米等IAEA加盟国を中心に34ヵ国が締約国
○なお、1997年改正条約はアルゼンチン・ベラルーシ・モロッコ等の5ヵ国が締約国、2003
年に発効
【特記事項】
○原子力施設を有する国の広い参加を目指す。
○パリ条約より責任額(賠償措置額)が低い。1997年改正条約では、3億SDR。
③CSC
【採択機関】
○1997年にIAEA(国際原子力機関)で採択
【発効・締約国の状況】
○アルゼンチン・モロッコ・ルーマニア・アメリカの4ヵ国が締約国、アメリカは2008年5
月21日に批准
○未発効(発効要件:締約国が5ヵ国・原子炉熱出力の合計が4億kW)
【特記事項】
○パリ条約・ウィーン条約の締約国または両条約の非締約国であるかにかかわらず、国内法
における責任額(賠償措置額)を超える原子力損害が生じた場合に、CSC締約国の拠出に
よる補完的基金を損害賠償に充てることを可能とする。
○原子力損害の責任に関する内容は、概ね改正ウィーン条約と同様。
(2)国際条約の状況一覧
【IAEA】
原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)
締約国:アルゼンチン・
モロッコ・ルーマニア・アメリカ
の4ヵ国
1997年9月採択
未発効
【OECD/NEA】
【OECD/NEA】
【IAEA】
原子力の分野における第
三者責任に関するパリ条
約についてのブラッセル
補足条約(BSC)
原子力の分野におけ
る第三者責任に関す
るパリ条約(PC)
原子力損害の民事責
任に関するウィーン
条約(VC)
1960年7月採択
1968年4月発効
1963年5月採択
1977年11月発効
原子力の分野におけ
る第三者責任に関す
るパリ条約改正議定
書(2004PC)
締約国:中東欧・
中南米等IAEA加盟
国を中心に34ヵ国
原子力損害の民事責
任に関するウィーン
条約改正議定書
(1997VC)
2004年2月採択
未発効
2004年9月採択
未発効
署名国:PC締約国
及びスイス
署名国:PC締約国
及びスイス
責任額を超える損害につい
て、事故国の公的資金負
担、締約国の資金負担によ
り、補償を充実させる。
PC・VCそれぞれの締約国の条約上の
利益を他方の締約国に与え、被害者
救済措置の地理的範囲を拡大する。
締約国:PC・VCの
締約国のうち25ヵ
国
1997年9月採択
2003年10月発効
締約国:アルゼンチン・
ベラルーシ・ラトビア・モロッ
コ・ルーマニアの5ヵ国
【OECD/NEA】【IAEA】
ウィーン条約及びパリ条約の適
用に関する共同議定書(JP)
1988年5月採択
1992年4月発効
パ
リ
条
約
又
は
ウ
ィー
締約国:仏・独・
伊・英等OECD加盟
国を中心に15ヵ国
締約国:仏・独・
伊・英等OECD加盟
国を中心に12ヵ国
原子力の分野における第
三者責任に関するパリ条
約についてのブラッセル
補足条約・追加議定書
(2004BSC)
1963年5月採択
1977年11月発効
ン
条
約
の
非
締
約
国