遠赤外線効果を利用した霧除去ネットの性能実験 - 熊本大学 社会環境

遠赤外線効果を利用した霧除去ネットの性能実験
Experiment of the improvement of foggy visibility using the net coated the paint including far infrared effects
熊本大学工学部環境システム工学科
1. はじめに
中山 哲真
には水膜が多く見られ,逆に,塗料を塗布したネットは水
高速道路の路線上で,霧による通行止めの対策として,
膜がほとんど無かった.ネット下方から水滴として落とす
写真 1 のような防霧ネットが使用されている.本研究では,
ことで効率良く水分を排除していた.これは,塗料の性質
防霧ネットの改良として,冬季の橋梁上の路面凍結防止や
の一つである高い親水性によるものだと考えられる.これ
温泉入浴場の湯気防止に効果があったセラミックス入り
により,今まで網目が約 2mm×2mm 以下では,水膜ができ
断熱塗料と結露防止用塗料をネットに塗布し,霧除去を試
ていたのに対して,塗料を塗布することによって遮蔽率が
みた.使用するネットの網目サイズと塗料の関係を明らか
上がっても,水膜の発生を防ぐことに成功した.水膜の発
にし,防霧ネットシステムとして開発するものである.
生が,特に顕著に表れていたのは TN-2-N であった.
2. 室内実験の概要
PN-2-GK に関しては,水膜は見られなかったものの,網目
塗料は,遠赤外線効果を発揮できるセラミックス入りの
のサイズが小さくなり過ぎて,塗料で目が潰れた部分が多
断熱塗料 GAINA と,結露防止に特化したノン結露を使用
くなっていた.よって,TN-2-N,PN-2-GK は,通風性の
した.ネットの網目サイズを過去の報告書を参考にして
2mm×2mm~4mm×4mm とし,塗料を組み合わせた防霧ネ
ットを表 1 のように設定した.図 1 に示す高さ 2.5m 幅 2m
面で問題があり、実用化には向いていないと思われる.
3.2 ネット二枚による実験
一枚に比べて捕捉する霧の粒子は増えたものの,飛躍的
な効果がもたらされることはなかった.防霧ネットは大き
の架台にネットを取り付けた霧除去システムを製作し,こ
い粒子だけを捕捉して,小さい粒子は捕捉できないため二
れに図 2 に示すような霧発生装置から水細粒子を放射する. 枚目の効果は少ないものと考えられる.しかし,二枚にす
写真 2 は実験装置の全景である.一枚のネットのみならず, ることによって生じるネット上方下方から流れる水粒子
架台を二つ並べ,ネット間の距離を変更しながらも実験を
への影響,挙動は不明であるため屋外実験でさらに検証を
行なった.なお,水粒子の発生から通過状況などを視覚的
行う必要がある.
に評価するためビデオカメラで記録した.
4. おわりに
本研究では、セラミック入り断熱塗料を塗布したネット
3. 実験結果と考察
を用いた簡易に組み立て可能な霧除去システムで室内実
3.1 ネット一枚による実験
通常の塗布なしネットと塗料を塗布したネットを水膜
に関して比較すると明らかに差があった.塗布なしネット
験を実施し,その得られた結果を基に防霧ネットの改良を
検討した.
暗幕
ネットA
2m
ネットB
2m
2.5m
霧発生装置
L1
L2
ビデオカメラ
0.5m
写真 1 高速道路の防霧ネット
図 1 霧除去ネット
写真 2 実験装置の全景
図 2 霧除去実験装置
表 1 ネットの種類 単位(mm)
ネットタイプ
PN-2-N
PN-2-G
PN-2-GK
PN-4-N
PN-4-G
PN-4-GK
TN-2-N
網目(縦×横)
2.0×2.0
1.8×1.8
1.5×1.5
4.2×3.0
4.0×2.8
3.7×2.5
直径2.0 円形状
糸幅(縦×横)
1.0× 0.3
1.2× 0.5
1.5× 0.8
1.0×0.6
1.2×0.8
1.5×1.1
1.0×1.0
塗料有無
無
GAINA
GAINA+ノン結露
無
GAINA
GAINA+ノン結露
無
遮蔽率(%)
42.1
53.0
67.4
34.4
41.7
51.9
65.1
材質
ポリエチレン
ポリエチレン
ポリエチレン
ポリエチレン
ポリエチレン
ポリエチレン
高密度ポリエチレン
形状