第2編 技術概要 環境負担低減技術〈排煙処理・ガスクリーニング技術〉 5B1. SOx処理技術 技術概要 1.背景 硫黄酸化物SOx(主にSO2)の規制については、排出口の 性能化およびコスト低減が図られてきた。現在、 ほとんどの微 高さおよび地域毎の係数により許容量が定められるK値規 粉炭焚き火力発電所には、湿式石灰石-石膏法を用いた脱 制と地域全体の総排出量を定めた総量規制がある。このよ 硫装置が設置され、 さらには、排水処理を不要とする乾式脱 うな規制に対し、1973年、排煙脱硫装置が実用化され、高 硫法の開発が進められ、実用化しつつある。 2.技術 (1)湿式石灰石・石膏法 研究開発者 三菱重工業(株)、バブコック日立(株)、 する。総括反応は次のようになる。 石川島播磨重工業(株)、千代田化工建設(株)、 CaCO3+SO2+0.5H2O→CaSO3・0.5H2O+CO2 川崎重工業(株)、他 CaSO3・0.5H2O+0.5O2+1.5H2O→CaSO4・2H2O ●概要 吸収塔の方式には、図-1に示すようにCaSO3・0.5H2Oの酸 石灰石−石膏法においては、前流に集じん、HCl ・HFの除 化塔を別置にした方式と、一体化した内部酸化方式がある。 去および冷却を行う除じん塔(冷却塔) を配したスート分離 現在、 設備費、 運転費が低減できる内部酸化方式の比率が年々 方式と除じん塔を持たないスート混合方式がある。スート分 増加している。吸収塔部での循環吸収液とSO2を接触させる 離方式は、 ばいじんなどを含まない純度の高い石膏を要求す 方式には、吸収液を噴霧するスプレー方式、 グリッド状の充填 る場合に採用される。 しかし、現在、低温電気集じん装置の 物の表面に吸収液を流すグリッド方式、吸収液に排ガスを吹 ような高性能な集じん装置が開発され、 ばいじん濃度が低く き込むジェットバブリング方式、吸収塔内で吸収液を噴水状に なっており、設備費の安いスート混合型の採用が多くなって 流す水柱方式などがある。 いる。 また、発展途上国用としては、排ガス煙道や煙突下部に設置 一方、吸収塔では、水と混ぜた石灰石スラリーと排ガス中の できる簡易型も実用化されている。 SO2を反応させ、硫黄分を石膏(CaSO4・2H2O) として回収 図-1 石灰石-石膏法脱硫方式概要 85 Clean Coal Technologies in Japan (2)石炭灰利用乾式脱硫法 研究開発者 北海道電力(株)、 (株)日立製作所、バブコック日立(株) られ、 さらに集じんおよび脱硝能力もあり、脱硝率約20%、集 事業の種類 石油代替エネルギー関係技術実用化開発費補助金 じん率96%以上が得られている。2003年度時点においては、 1986∼1989年 北海道電力苫東厚真火力発電所1号機(35万kW)の排ガ 開発期間 スの半量に処理する設備として設置され、稼動している。 ●概要 石炭灰の有効利用の一環として開発された技術である。石 炭灰、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)および使用済みの吸 石 炭 灰 硝 石 灰 使用済 脱硫剤 収剤から新規に吸収剤を製造して、 この吸収剤を用 ボイラ 混練機 いて排ガス中のSOxを除去する方式である。図-2にそのプ コンベア 押出 成形機 乾燥器 熱空気 脱サ 硫イ 料ロ 混合機 ロセスの概要を示す。このプロセスは吸収剤の製造工程も 排ガス 水 コンベア 前 置 吸 収 塔 主 吸 収 塔 蒸気 含んでいる。脱硫反応としては、Ca(OH)2によりSO 2が除 ク リ ー ン ガ ス 脱硫ファン 計量器 計量器 スクリーン 蒸気養正装置 去される。温度条件は100∼200℃で脱硫率90%以上が得 使用済脱硫剤 破砕機 図-2 石灰石-石膏法脱硫方式概要 (3)スプレードライヤー法 研究開発者 電源開発(株)、三菱重工業(株)、北海道電力(株) (CaSO3・0.5H2O)の混合粒子となる。この粒子は後流の 事業の種類 自主、 グリーンエイドプラン 集塵機で回収される。この方式では良質の石膏は得られず、 さらに灰も混入するため、脱硫後の粒子は廃棄物として処 ●概要 半乾式法と呼ばれる方法で、生石灰(CaO)に水を加えて、 理される。電源開発は、 「グリーンエイドプラン」の一環として スラリーを作り、 スプレードライヤー内に 消石灰(Ca(OH)2) 中国青島の黄島発電所4号機(21万kW)に排ガス処理量 噴霧して、排ガス中のSO2とCa(OH)2を反応させて除去す 30万m3N/h:半量)のスプレードライヤー脱硫装置を設置し、 る方法である。 ドライヤー内では、脱硫反応と石灰の乾燥が 脱硫率70%の実証試験(1994∼1997) を行い、現在稼働 同時に生じ、石膏(CaSO 4 ・2H 2 O)や亜硫酸カルシウム 中である。 (4)炉内脱硫法 研究開発者 事業の種類 北海道電力(株)、九州電力(株)、電源開発(株)、 現在、電源開発(株)竹原火力発電所2号機常圧型流動 中国電力(株)、三菱重工業(株)、 床ボイラー、北海道電力(株)苫東厚真火力発電所・加圧 石川島播磨重工業(株)、川崎重工業(株) 流動床ボイラー、九州電力(株)新苅田火力発電所・加圧 自主 流動床ボイラーおよび中国電力(株)大崎火力発電所・加 ●概要 圧流動床ボイラーで採用されている。 流動床ボイラーに用いられる脱硫法である。脱硫用の石灰 また、加圧流動床ボイラーでは、CO2分圧が高いため、石灰 石は石炭と混合し、石炭と同時に供給され、以下の反応に 石はCaOに分解せず、以下の反応によりSO2が除去される。 より炉内温度760∼860℃で、SO2を除去する。 CaCO3+SO2→CaSO3 +CO2 CaCO3→CaO+CO2 CaO+SO2→CaSO3 ●参考文献 1)「入門講座火力発電所の環境保全技術・設備、 脱硫設備」火力電子力発電Vol.41 No.7,911, 1990 2)工藤他「石炭灰利用乾式脱硫装置の開発」火力電子力発電Vol.41 No.7,911, 1990 3)「石炭利用乾式排煙脱硫装置」パンフレット,北海道電力 4)火力発電総論電気学会,2002 86
© Copyright 2024 ExpyDoc