潮 流 発 見 福祉機器開発 [その④] オフィスオオイ「ほっとする∼」 カナヤママシナリー 「楽歩」 タケオカ自動車工芸/この6月から発売した「フレンドリー・ エコ」。21年目にして電動化した。 オフィスオオイ/ユニットバスとセットになった「ほっと する∼」。障害の重い方にお風呂の楽しみを取り戻した。 カナヤママシナリー/一人ひとりの障害の度合いに合わ せられるモジュラーシステムを採用した「楽歩」。 タケオカ自動車工芸 「フレンドリー・エコ」 福祉機器の開発。高齢者や障害を持っておられる方々 は、安全で、使いやすく、より安い機器を望むところ だが、これは介護する側も求めるところ。ところが、 多くの福祉機器が出されているにもかかわらず、 “安 くなったけど、使い勝手がもうひとつ”という機器も 少なくない。 今回ここに紹介する3社は、いずれも社長自身が高 齢者や障害者本人と接し、彼らや介護者が持つ福祉 機器に対する要望を商品開発に生かしている。 「必要 は発明の母」とはよくいったものだが、ひと工夫され、 好評を博している製品を紹介しよう。 三輪バイクの後ろに車イスを載せて、バイクの修 理を依頼してきた障害者に武岡栄一氏(タケオカ自 動車工芸社長)が会ったのは21年前のこと。修理で きる状況でないことがわかると、その障害者は「車イ スのまま乗れる自動車があったら……」とつぶやいた。 そこで武岡氏が考案したのが、2台のスクーターを鉄 骨でつなぎ、車イスのまま乗り込めて運転ができる ミニカー。片方のエンジンを外して50ccとして、原 付き免許で運転ができるようにしたもので、通常の 座席を搭載したものはミニカーブームの先鞭をつけ る形となった。 ところが免許制度の改定によりミニカーは普通免 許に格上げされ、ブームは瞬く間に終焉。11社あっ たメーカーも今では2、3社を残すばかり。同社でも ミニカー撤退が検討されたこともあったようだが、 「使 障 害 者 の よ り 良 い 生 活 を デ ザ イ ン 楽しみが取り戻せるばかりでなく、介護者の負担を 大幅に軽減してしまう。 「天井裏の梁に負荷がかかるようにしますから、後 づけで住宅につけることもできます。お風呂の扉は 天井までの高さにしました」 (オフィスオオイ・大井 行衛社長) 北海道のバスメーカー、石川県の機械メーカーと の共同開発で、平成12年の発売以来の設置事例は四 百数十件。バリアフリー対策としてユニットバスと レールを最初から組み込んだ新築マンションも出始 めるようで、このようなマンションではリフトのみ 後づけすればいいわけである。 最後に紹介するのは、アルミの加工・溶接では定 評のあるカナヤママシナリーが開発した車イス「楽 歩(らっぽ)」。リクライニングとチルティング(座面 の角度調節)の機能を持たせ、合わせて縦横の調整ベ ルトで座位保持姿勢を調節。車軸の位置をスライド できるようにしたことで、車イスに乗っている人の 重心がより車にかかるようになり、軽い力で押せる。 「車イスを押すのに力が要るから、車重を軽くする といわれていますが、重心を調節するために車軸を スライドできるようにしましたら、片手で楽に押せる。 力学がわかれば解決できる問題です」 (カナヤママシ ナリー・金山宏明社長) 取材に当たった編集子も試乗させてもらった。量 産品に比べ格段に乗り心地がいい。チルティング、シ っている人の身になってみろ」の社長の一言で今日 ーティングも障害者の負担を軽くしようという発想 まで続け、北陸電力と共同で車イスのまま乗れる電 からでたもので、今までにないひと工夫が好評を博 気自動車「フレンドリー・エコ」を開発した。 して福祉施設に採用されるばかりでなく、福祉機器 オフィスオオイの天井走行リフト「ほっとする∼」 のレンタル業者からの商品供給の引き合いも多いと も優れ物である。システムは至って簡単。天井に設置 いう。 したレールに電動リフトをセットし、移動が困難な 3人の社長に共通したことは、開発に当たっての商 障害者を乗せて、その移動を助けようというもの。専 品デザインより先に、高齢者や障害者の生活をデザ 用のユニットバスと連動すると、リフトに乗ったま インしている点。 “この不便を解決してあげたい”と ま入浴できるので、移動が困難な障害者にお風呂の いうパッションが製品に見事に花が咲いていた。 TONIO NEWS 3
© Copyright 2024 ExpyDoc