3 健康危機に対応した体制づくり - 熊本県

3
健康危機に対応した体制づくり
(個別施策)
(1)健康危機管理に関する体制
(2)国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症への対策
(3)医薬品等の安全対策
①医薬品等の適正使用と品質確保
②毒物劇物による危険防止
③シンナー・覚せい剤等薬物乱用防止対策
(4)食品の安全確保と衛生管理
(5)生活衛生対策
①安全で安定的な水の確保
②生活衛生関係営業施設等の衛生水準の確保
123
(1) 健康危機管理〔注1〕に関する体制
現状と課題
○健康被害に関する情報の収集及び提供の状況
・ 交通網の整備や交流の活発化、物資の広域流通などにより健康被害が広域
的に発生するおそれがあるため、他県における健康被害の発生についても情
報収集する必要があります。
・ 県民に対し、発生した健康被害に関する情報提供を行っていますが、今後
は他県における健康被害の発生なども積極的に情報提供する必要があります。
○健康被害の発生に備えた関係機関との連携状況
・ 消防、警察、医療機関などの関係機関の参加の下、総合的健康危機管理推
進会議(平成11年設置)を開催していますが、健康被害の発生に備え、今後
これらの関係機関との連携体制をより充実していく必要があります。
・ 広域的な健康被害の発生に備え、九州各県との連携体制を強化する必要が
あります。
○健康被害に対する対応
・ 健康被害発生時における対応手順を「健康危機管理マニュアル」(平成13年
策定)として定めていますが、発生時にはこれに基づき迅速かつ適切な対応
をとる必要があります。
・ 様々な健康被害に対応するため、今後とも職員の資質を向上させていく必
要があります。
・ 健康被害発生時には、初動時における疫学的調査や検査が重要です。この
ため、県では独自の組織として、熊本県実地疫学調査チーム(FEIT)〔注
2〕を設置していますが、この実地疫学調査チームや保健所、各検査機関、専
門家等との連携による原因究明が課題となっています。
○健康被害発生後における対応
・ 健康被害発生後は、健康被害による被害者及びその家族等に対して、その
被害への不安等に対するこころのケア〔注3〕などを含めた保健サービスが求
められています。
124
■健康危機管理体制
住民
必要に応じ現地対策本部設置
県庁関係課
情報
検体
連携
情報
調整会議
保健所
必要に応じ県対策本部設置
情
報
情報
保健環境科学研究所
保健環境科学研究所
地域単位関係機関
地域単位関係機関
連携
県単位関係機関
地域推進会議
総合的推進会議
施策の方向と内容
○健康被害に関する情報の収集及び提供の充実
・ 他の地域で発生した健康被害について、国や専門機関のホームページなどから情
報を収集し、収集した情報については適宜ホームページを通じ提供するなど、健康
被害に対する情報の収集及び提供の充実に努めます。
・ 健康被害の未然防止や健康被害発生時の混乱防止という側面から、必要に応じ住
民への説明会を開催するなど情報提供の充実に努めます。
○関係機関との連携の強化
・ 県内の関係機関との信頼関係の構築と健康危機発生時の役割分担の確認を目的と
した総合的健康危機管理推進会議を開催し、関係機関との連携の強化を図ります。
・ 健康被害の発生を想定した訓練を関係機関と協働で実施するなどにより、関係機
関との連携の強化を図ります。
・ 九州各県が参加する会議の開催や日ごろの業務の中で、健康被害に関する情報交
換などを推進し、九州各県との連携の強化を図ります。
・ 健康被害発生時には、これらの連携の下、想定される中毒物質や感染症について、
症状、診断や治療方法、解毒剤保管場所等の必要な情報の提供を行います。
○健康被害に対する対応や体制の充実
・ 県内部における健康危機管理に関する情報交換の推進及び健康危機発生時の役割
分担の調整を目的とした健康危機管理調整会議を開催し、健康被害に対する対応の
充実を図ります。
・ 職員が多種多様な健康被害に適切に対処できるよう、研修や訓練を実施し資質の
向上を図り、健康被害に対する対応の充実を図ります。
・ 熊本県実地疫学調査チーム(FEIT)を中心とした原因究明体制の強化を行い、
原因不明あるいは複雑な健康被害に対する体制の充実を図ります。
○健康被害発生後に対するこころのケア体制の整備
・ 健康被害発生後にこころのケアなどを行うため、保健所、県精神保健福祉センタ
ー、市町村や関係機関と連携し、こころのケア体制の整備を図ります。
125
評価指標
指 標 名
現 状
目標(H24年度)
目標設定の考え方
九州各県との 連絡 未開催
九州各県 との連 九州各県との連絡会議に参加し、
会議への参加
絡会議へ の参加 広域的な連携体制の強化を図る。
年1回
現在は、開催されていないが、九
州各県と共同で開催し、その会議
へ参加することを目標とする。
健康危機管理 に関 保健所の担当者 保健所の 全職員 現在は、保健所職員のうち希望す
す る研修会へ の職 等が本人の希望 が必要な 研修を る者が研修を受講しているが、今
員の参加者割合
により参加
受講
後は、計画的に研修を実施し、保
健所の全職員が必要な研修を受講
したことがある状態を目指す。
こころのケア 体制 未整備
整備
市町村、保健所、県精神保健福祉
の整備状況
センターの専門職員(医師、保健
師、心理士等)の状況に応じた職
員配置、あるいは派遣体制につい
て組織的に対応 できる状態に整
備。
〔注1〕健康危機管理
医薬品、化学物質、毒劇物、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じた
県民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、治療、拡大防
止に関する業務をいう。
〔注2〕熊本県実地疫学調査チーム(FEIT)
原因不明あるいは複雑な健康危機発生時において早急に原因を究明し、被害の拡大を防止
するために設置された医師、獣医師、薬剤師、臨床検査技師、保健師で構成された熊本県独
自の専門家チーム。
〔注3〕こころのケア
危機的出来事などに遭遇したために発生する様々なこころの問題を予防すること、あるい
はその回復を援助する活動をいう。
126
(2) 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症への対策
<国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症>
現状と課題
○国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の発生に対する懸念
・ 交通機関の発達や国際交流の進展などに伴う「人」、「動物」などの活発な
交流、往来などにより、エボラ出血熱など近年国内で発生したことのない重
篤な症状を呈する感染症(一類感染症〔注1〕 及び二類感染症〔注2〕をいいま
す。)が発生し、拡大する懸念が高まっています。
○国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の発生に備えた体制
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の患者に対する医療
体制としては、第一種感染症指定医療機関〔注3〕 として熊本市民病院を指定
し、第二種感染症指定医療機関 〔注4〕 として11の二次保健医療圏ごとにそれ
ぞれ医療機関を指定しています。
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の発生に備え、患者
搬送や感染の拡大防止対策などを迅速かつ的確にできるよう関係機関と連携
した体制が求められています。
○国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症に関する情報提供
・ 特に海外旅行を行う者等に対し、国内で発生したことのない重篤な症状を
呈する感染症の発生状況や予防対策等に関する情報提供が必要です。
・ 県内においては、国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の
診療経験が少ないため、感染症指定医療機関に対する診療情報の提供や感染
防止に関する周知が求められています。
【 感染症の医療体制 】
(1)第一種感染症指定医療機関:熊本市立熊本市民病院
(2)第二種感染症指定医療機関
二次保健医療圏名
熊本保健医療圏
宇城保健医療圏
有明保健医療圏
鹿本保健医療圏
菊池保健医療圏
阿蘇保健医療圏
上益城保健医療圏
八代保健医療圏
芦北保健医療圏
球磨保健医療圏
天草保健医療圏
第二種感染症指定医療機関名
熊本市立熊本市民病院
宇賀岳病院
荒尾市立荒尾市民病院
山鹿市立病院
菊池郡市医師会立病院
国民健康保険阿蘇中央病院
熊本市立熊本市民病院
健康保険八代総合病院
水俣市立総合医療センター
健康保険人吉総合病院
健康保険天草中央総合病院
127
施策の方向と内容
○当該感染症の発生に備えた医療提供体制の整備
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の患者の発生に備え、第一
種感染症指定医療機関として熊本市民病院を、第二種感染症指定医療機関として11
の二次保健医療圏ごとにそれぞれ医療機関を指定していますが、引き続きその運営
の支援を行います。
○当該感染症の発生に備えた医療提供体制以外の体制の整備
・ 保健所の職員、医療従事者等に対し国内で発生したことのない重篤な症状を呈す
る感染症に関する研修を行い、当該感染症の発生に備えた体制の強化を図ります。
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の発生を想定した訓練等を
実施し、当該感染症の発生に備えた体制の充実を図ります。
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症が県内に侵入する懸念が生
じた場合は、必要に応じ当該感染症に関する行動計画を作成し、当該感染症の発生
に備えた体制の充実を図ります。
○当該感染症に関する関係機関や県民への情報提供
・ 国内で発生したことのない重篤な症状を呈する感染症の世界的な発生動向を注視
し、感染症指定医療機関に対し収集した情報を提供します。
・ 海外旅行予定者からの相談に対し、渡航先に応じた的確な情報提供及び感染防止
対策についての助言指導を行います。
評価指標
指 標 名
現 状
関係機関とともに 1回
実 施した訓練 の実 (H18年度)
施回数(年間)
目標(H24年度)
11回
目標設定の考え方
関係機関とともに、国内で発生し
たことのない重篤な症状を呈する
感染症の患者の発生を想定した訓
練を実施する。二次保健医療圏ご
と1回実施することを目標とす
る。
〔注1〕一類感染症
感染力、り患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染
症をいう。エボラ出血熱ほか6疾患。
〔注2〕二類感染症
感染力、り患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症をい
う。急性灰白髄炎(ポリオ)ほか3疾患。
〔注3〕第一種感染症指定医療機関
一類感染症又は二類感染症の患者の入院を担当する医療機関として知事が指定した病院。
〔注4〕第二種感染症指定医療機関
二類感染症の患者の入院を担当する医療機関として知事が指定した病院。
128
<新型インフルエンザ>
現状と課題
○新型インフルエンザ〔注1〕の発生に対する懸念
・ 東南アジアを中心に、鳥インフルエンザ(H5N1)
〔注2〕患者が352人(う
ち死亡者数219人:平成20年1月23日現在)発生しており、これらの鳥インフ
ルエンザウイルスが変異して、人の間で大流行する新型インフルエンザが出
現するリスクが高まっています。
○新型インフルエンザの発生に備えた体制
・ 平成17年12月に「熊本県新型インフルエンザ対策行動計画」を策定し、対
策の枠組みを定めました。当計画に基づき抗インフルエンザウイルス薬を15
万4千人分備蓄しています。
・ 新型インフルエンザの患者が大量に発生する事態に備え、効率的な医療の
提供が行える体制を確立しておく必要があります。
・ 行政や医療機関のみならず、多くの関係機関と連携して対応する体制を確
立する必要があります。
○新型インフルエンザに関する情報提供の状況
・ 発生時の混乱を最小限に抑えるため、関係機関や県民の皆様に対し、正し
い知識の普及啓発や事前準備・発生時の対応について、研修会の実施や県広
報紙、ホームページ等を利用して情報提供を行っていますが、さらに強化し
て実施する必要があります。
熊本県 新型インフルエンザ対策行動計画の概要
段階
状 況
主な対策
新型インフルエンザウイルスは出現し ・
動物監視・
病原体の調査
ていないが、鳥インフルエンザウイルス ・
各種ガイドラインの作成
が確認されている
・
情報収集・
発信
鳥→鳥
フェーズ1
フェーズ2
鳥→人
フェーズ3
(現在の状況)
新型出現
フェーズ4
フェーズ5
新型大流行
新型インフルエンザウイルスは出現し ・
タミフルの備蓄
ていないが、鳥インフルエンザウイルス ・
フェーズごとの医療体制の検討
がまれに人に感染している
・
流行地への渡航者に対する注意喚起
・
患者への入院措置などの拡大防止
新型インフルエンザウイルスの出現が
確認されているが、感染の広がりが限
定的
・
サーベイランスの強化
・
患者への入院措置など感染拡大防止の強化
(
・ワクチンの研究、製造)
(
・フェーズ3の対策の継続)
新型インフルエンザが大流行している
・
通常インフルエンザと同様の医療提供 体制での患者治療
・
大規模集会・
不特定多数が集まる活動の自粛要請など
フェーズ6
出典:国立感染症研究所感染症情報
センター
129
施策の方向と内容
○新型インフルエンザの発生に備えた体制の整備及び充実
・
新型インフルエンザの発生に備え、医療体制をはじめ、必要な行動計画、対応指
針等を策定し、体制の整備につなげます。
・
新型インフルエンザは、同時多発的に発生することが予想されるため、二次保健
医療圏ごとに発生段階に応じた対応指針等を策定し、体制の充実を図ります。
・
・
大流行時に不足することが想定される治療薬の備蓄を行います。
行動計画、対応指針等の実効性を確認し、更なる体制の充実を行うことを目的と
して、訓練を実施します。
○関係機関や県民への新型インフルエンザに関する情報提供等
・ 新型インフルエンザに関する研修会等を実施し、関係機関や県民の皆様への情報
提供や専門知識の周知等を行います。
評価指標
指 標 名
訓練の実施回数
(年間)
現 状
1回
(H18年度)
関係機関、県民等 1,414人
を 対象とした 講演 (H18年度)
等への参加者数
目標(H24年度)
11回
1万人
(累計)
目標設定の考え方
二次保健医療圏ごとに策定した計
画等の実効性の確認と体制強化を
行う。二次保健医療圏ごと1回訓
練を実施することを目標とする。
新型インフルエンザに関する情報
の提供や知識の普及啓発を図るた
め、できる限り早く1万人の受講
者を達成することを目指す。
〔注1〕新型インフルエンザ
これまで人の間で流行したことのないタイプのインフルエンザをいう。現在、東南アジア
を中心にH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスの人への感染例が増えており、これらが
突然変異することで、容易に人から人へ感染する新しいインフルエンザウイルスが出現する
ことが懸念されている。
〔注2〕鳥インフルエンザ
本来、鳥の病気であり、人へ感染することはないと言われていたが、近年、感染した鳥と
濃厚に接触することなどにより、まれに人へ感染する事例が報告されている。これまで人の
間で流行したインフルエンザ(スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ)も鳥インフルエンザ
が変異して発生したものと言われている。
130
(3) 医薬品等の安全対策
① 医薬品等の適正使用と品質確保
現状と課題
○安全性情報の迅速な伝達
・ 医薬品の副作用や医療機器の不具合による回収事例の発生もあり、健康被
害防止の観点から、熊本県薬剤師会医薬情報センター〔注1〕が医療機関、薬
局等に医薬品等安全性情報及び適正使用情報を伝達していますが、継続して
いく必要があります。
○適正使用の普及啓発
・ 医薬品に起因する保健衛生上の危害防止の観点から、県民に対して医薬品
の適正使用を啓発することが重要です。
○監視指導の強化
・ 保健衛生上の観点から、医薬品等の品質、有効性、安全性を確保するため、
流通過程における販売管理体制や取扱いについて薬局等医薬品販売業者に対
して監視指導を実施することが重要です。また、販売業者が県民に対し、医
薬品等の安全性情報提供や適正使用を推進することが必要です。
○いわゆる「健康食品」による健康被害の未然防止
・ いわゆる「健康食品」の中には薬効を標ぼうするものや医薬品成分を含む
ものがあり、健康被害が発生した事件が起きており、対策が必要です。
○薬局情報の公開と管理の徹底
・ 薬事法の改正により、薬局機能情報公表制度が新設されたことから、県民
による医療の選択を支援する必要があります。また、薬局開設者は、「医薬品
安全使用業務指針」の策定が義務づけられ、医薬品の安全を確保するため、
自主管理の徹底が必要です。
○製造段階においての製品管理の徹底
・ 医薬品の副作用による健康被害及び医療機器の不具合による回収事例が発
生しており、製造販売業者等における製造管理・品質管理の徹底が重要です。
品質のよい安心して使用できる医薬品等が提供される体制の整備を図る必要
があります。
医 療 機 関 等 からのもの
医 薬 品 の 副 作 用 等 に関 する問 い 合 わ せ 件 数
消 費 者 からのもの
合計
件数
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
1900
1243
1510
1571
1060
1135
1296
1262
875
902
368
360
450
436
H14
H15
H 16
H17
出典:熊本県薬剤師会医薬情報センター
131
604
H18
施策の方向と内容
○医薬品等適正使用の推進
・ 熊本県薬剤師会の医薬品等副作用情報の収集・提供システムを活用します。
・ 県民からの医薬品に関する相談を受付し、副作用情報提供や適正使用を推進する
ため、熊本県薬剤師会の医薬情報センターの「消費者くすり相談窓口」を周知し活
用を図ります。また、「くすりの基礎知識」に関する講習会を開催するなど、医薬
品の適正使用を推進します。
○薬事監視指導の強化
・ 薬局及び医薬品等販売業者に対する立入調査を実施し、不良医薬品の排除など医
薬品等の品質、安全性、有効性を確保します。
○無承認無許可医薬品対策の強化
・ 健康食品に関する正しい知識の普及と違反品の取締り、指導を実施します。
○薬局機能情報公表制度等の整備
・ 電子県庁システムを活用し、熊本県薬剤師会との連携により県民が利用しやすい
公表制度の整備を図り、県民による適切な医療の選択を支援します。
○医薬品等製造販売業者への監視指導の強化
・ 市販後安全対策の充実と承認・許可制度の見直しを目的とした改正薬事法が施行
され、医薬品等の製造販売品質管理基準(GQP)〔注2〕及び製造販売後安全管理
基準(GVP)〔注3〕に基づき監視指導を実施します。
○医薬品等製造業者への監視指導の強化
・ 医薬品、医療機器等の製造管理及び品質管理基準(GMP、QMS)〔注4〕に基
づき医薬品等の製造の各段階における監視指導を実施し、品質の確保を図ります。
○医薬品等製造販売業者及び製造業者の育成
・ 講習会の開催により製造販売業者等の技術向上を図り、品質のよい医薬品等が提
供される体制を目指します。
【くすりの相談、情報提供等の体系図】
県
民
(相談受付)
熊本県薬剤師会
医薬情報センター
保健所
(啓発)
県薬務衛生課
(立入調査 ・講習)
薬局・医薬品販売業
(医薬品副作用等情報提供) 毒物劇物販売業・取扱者
医師会・医療機関
(医薬品副作用等情報提供)
132
(検査)
県保健環境科学研究所
評価指標
指 標 名
薬事監視指導 の実
施
薬局機能情報 の公
表
現 状
5,428件(H18)
(52.5%)
基本情報7項目
(H19年度)
医薬品等製造販売 112件(H18)
業者への監視指導 (109.8%)
目標(H24年度)
施設数の50%以
上を維持
法定公表項目及
び知事が 定める
項目
毎年100%
目標設定の考え方
立入調査を実施し医薬品の安全性
を確保。
法に定める全情報27項目に加えて
知事が定める項目(後発医薬品の
使用、服薬指導のコーナーなど)
の公表を検討。
医薬品等の品質確保及び有効性・
安全性確保を図るため、監視指導
を実施。
〔注1〕医薬情報センター
熊本県薬剤師会が設置しており、医薬品等の副作用情報を収集提供するとともに、「消費
者くすり相談窓口」として医療関係者や一般消費者からの相談問い合わせに応じている。
〔注2〕GQP(Good Quality Practice)
品質管理基準のことで、製造販売業者は、市場への出荷に対する責任があり、製造販売す
る製品について適切な品質を確保するため、品質管理を行わなくてはならない。
〔注3〕GVP(Good Vigilance Practice)
製造販売後安全管理基準のことで、製造販売業者は、出荷された製品に対する責任があり、
製造販売している製品について、安全性の確保を行わなくてはならない。
〔注4〕GMP(Good Manufacturing Practice)、QMS(Quality Management System)
医薬品などの製造管理及び品質管理基準のことで、医薬品などの製造にあたって規格どお
りに安定した高い品質の製品を作るため、原料の受入から製品の出荷に至るまでの製造工程
の全般にわたる管理を行わなくてはならない。
133
②
毒物劇物による危険防止
現状と課題
○毒物劇物による事件事故の発生の危険性は大きく、健康被害が危惧されます。
○毒物等による中毒事件発生時の初期対応において、検査機能の強化を図り、
迅速な情報提供を行う必要があります。
○薬物中毒発生時に、患者に対し緊急解毒用として調達困難な医薬品の整備が
必要です。
施策の方向と内容
○毒物劇物危害防止対策の推進
・ 毒物劇物営業者等に対して監視指導の実施や講習会を開催し、毒物劇物の適切な
保管・管理の徹底を図り、流出事故や盗難防止等の未然防止に努めます。
○毒物劇物検査用簡易キットの配備
・ 各保健所に簡易キットを配備していますが、適切に使用されるよう管理していき
ます。
○解毒用医薬品の備蓄
・ 災害用備蓄医薬品に併せて県内10ヶ所に備蓄していますが、適切に使用されるよ
う管理していきます。
評価指標
指 標 名
現 状
目標(H24年度)
目標設定の考え方
毒物劇物営業者等 559件(H18)
施設数の50%以上 毒物劇物販売業者及び毒物劇物取
に 対する監視指導 (55.3%)
を維持
の実施
扱者に対する監視指導を実施し危
害の未然防止を図る。
134
③ シンナー・覚せい剤等薬物乱用防止対策
現状と課題
○薬物乱用者の検挙状況は、依然として高水準にあり、これまでのシンナー、
覚せい剤に加え、大麻や錠剤型麻薬MDMAの乱用など乱用薬物が多様化す
るとともに、乱用が青少年に拡がるなど低年齢化しており、憂慮すべき状況
にあります。
○薬物乱用を許さない地域づくりを推進していくため、効果的な事業を展開し
ます。
○麻薬類似の有害性が疑われる指定薬物〔注1〕を含む違法ドラッグ〔注2〕(い
わゆる脱法ドラッグ)は、その有害性のみならず乱用の契機となることが危
惧されます。
覚せ い剤事犯 (熊本県)
g
人
1,000.0
250
800.0
200
600.0
150
400.0
100
200.0
50
0.0
押収量(g )
検挙人員
うち少 年
H14
161.6
199
11
H15
105.4
157
12
H16
335.3
144
7
H17
843.4
163
6
0
H18
602.4
173
3
出典:熊本県警察本部
シ ン ナ ー 等 検 挙 状 況 (熊 本 県 )
人
180
160
140
120
100
80
60
検 挙 ・補 導 人 員
うち 少 年
H14
124
102
H15
157
104
出典:熊本県警察本部
135
H16
149
106
H17
162
117
H18
117
87
136
評価指標
指 標 名
現 状
薬物乱用防止教室 501校(H18)
の開催
目標(H24年度)
全703校
(71.3%)
目標設定の考え方
(100%) 各小中高校が開催する薬物乱用防
止教室を支援。
地域対話集会等の 全保健所で3回 各保健所毎年1回 小学生、中学生、高校生及び保護
開催
開催(H18)
開催
者や関係機関団体が一堂に会し、
参加者全員で薬物乱用防止につい
て考える集会を保健所毎に開催。
〔注1〕指定薬物
幻覚や中枢神経系の興奮、抑制作用を有し、乱用されるおそれのある物質を薬事法に基づ
き厚生労働大臣が指定する。指定薬物は現在、麻薬類似化学物質、亜硝酸エステル類、幻覚
植物成分の33物質が指定されており、製造、輸入、販売が禁止されている。
〔注2〕違法ドラッグ
麻薬類似の有害性が疑われる物質で、インターネット等で販売されている。乱用による健
康被害、麻薬等の乱用へのゲートウェイドラッグ(入門薬)になるおそれがある。無承認無
許可医薬品として取締りを実施している。
137
(4) 食品の安全確保と衛生管理
現状と課題
○食品に対する消費者の不安
・ 牛海綿状脳症(BSE〔注1〕)や食品の偽装表示事件の発生後、食品に関す
る不安が増大しました。食肉検査や立入検査などの食品の安全確保対策の充
実などにより、その不安は減少してきましたが、平成19年1月に県が実施した
「県民アンケート」では、なお約60%の方が食品の安全性に不安を感じてい
ると回答しています。
・ 遺伝子組換え食品や動物用医薬品の安全性に関して、消費者の関心が高ま
っています。
○食品を取り巻く現状
・
海外からの輸入食品などが増加しており、食品衛生法に違反する輸入野菜
等が流通する危険性が高まっています。
・ 食中毒の原因施設は、以前は、集団給食施設であることが多かったのです
が、最近は、飲食店が原因であることが増えています。
・ 全国的にノロウィルスやカンピロバクターを原因とする食中毒が増加して
います。
・ 食生活の欧米化に伴い、食肉や食鳥肉の需要が増えるとともに、食肉等を
生で食べる人が増えており、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌を原因とす
る食中毒が発生しています。
○食品関係業者に対する要請
・
食品の安全を確保するため、食品営業者や食品製造業者等の食品関係業者
に対し、自主管理体制の確立が強く求められています。
県内における食中毒患者数(過去5年間)
県内における食中毒発生件数(
過去5年間)
20
16
16
︵
15
︶
6
5
0
14年
518
507
366
358
(
9
︶
件 10
600
500
400
人 300
200
100
0
14
15年
16年
17年
18年
215
14年
138
15年
16年
17年
18年
施策の方向と内容
○食品に対する消費者の不安解消
・
食品に関する意見交換や、消費者参加による1日食品衛生監視員事業〔注2〕、出
前講座などの情報発信を通して、食品表示や食品衛生に関する知識の普及啓発を行
い、食品に対する消費者の不安解消に努めます。
○食品による健康被害の未然防止
・
過去に食中毒を発生させた施設や表示義務に違反した食品、消費者から苦情が寄
せられた食品などに対し重点的に検査及び収去を実施することにより、食品による
健康被害の未然防止及び再発防止に努めます。なお、食品の検査については、精度
管理〔注3〕を行い、信頼性を確保します。
・ 熊本県食品衛生監視指導計画 〔注4〕 に基づき、食品による健康被害の発生状況
などを考慮した計画的かつ効果的な監視指導を行います。
・ と畜検査を実施することにより、食肉の安全確保に努めるとともに、食肉の汚染
防止対策の強化を図り、食肉による健康被害の未然防止に努めます。
・ 年間30万羽以上処理する大規模食鳥処理場において食鳥検査を実施することによ
り、食鳥肉の微生物汚染防止対策の強化を図り、食鳥肉による健康被害の未然防止
に努めます。
○食品関係業者における自主管理体制の確立の推進
・
食品営業者や食品製造業者等の食品関係業者に対する講習会などを通じ、衛生管
理に関する必要な知識の普及等を図り、食品関係業者自身による管理体制の確立を
推進します。
・ 食品製造業者に対して、HACCP(ハサップ)〔注5〕の考え方に基づく自主管
理の確立を支援します。
139
評価指標
指
標
名
現
状
1 日 食 品 衛 生 監 視 151人
目標(H24年度)
200人
目標設定の考え方
1日食品衛生監視員事業を実施
員 事 業 へ の 参 加 人 (H18年度)
し、消費者への適切な情報提供や
数(年間)
意見交換の場としている。参加者
は、現在おおよそ150人であるが、
200人を目標とする。
食 品 衛 生 監 視 指 導 8,584施設
46,580施設
食品衛生監視が必要な施設数は、
の実施施設数
(累計)
46,580施設(H18年度末現在)。
(H18年度)
H20年 度からH24年度までの5年間
にこれらの 施設に対し食品衛生監
視を行うことを目標とする。
食 品 衛 生 講 習 会 へ 18,103人
20,000人
自主管理体制の 確立を目的とし
の 食 品 営 業 者 等 の (H18年度)
て、食品営業者等を対象とした食
参加人数(年間)
品衛生講習会を 行う。 現状 では1
万8千人程度 だが、 1割 程 度 増や
すことを目標とする。
〔注1〕BSE( 牛海綿状脳症)
牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を引き起こす遅発性かつ悪
性の中枢神経系 の疾病。細胞タンパク のひとつであるプリオンの異常化が原因として有力視
されている 。
〔注2〕1日食品衛生監視員事業
「くまもと食の安全安心のための基本指針」に基づき、輸入食品等の重点監視期間を定め
て、(社)熊本県食品衛生協会との連携 のもと、消費者に1日食品衛生監視員を委嘱 するこ
とにより、県民とともに監視を強化し、かつ、食の安全に関する知識を深めることを目的と
した事業。
〔注3〕精度管理 (GLP: Good Laboratory Practice)
均一な検体から得られた複数の試材を繰り返し分析して得られる一連の測定値が、互いに
一致しているようにすることで、測定値間の誤差要因の解析と除去を目的としている。食品
検査については 、食品衛生検査業務管理(GLP)と呼ばれ、熊本県では、保健環境科学研
究所と保健所試験検査課及び食肉衛生検査所で導入している 。
〔注4〕熊本県食品衛生監視指導計画
「くまもと食の安全安心のための基本方針」及び「熊本県食の安全安心推進条例」の趣旨
を踏まえ、食品の安全性を確保することを目的に、食品衛生法に基づき毎年度策定している
監視計画。
〔注5〕HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点)
食品の安全性を高度に保証する衛生管理の手法の1つで、具体的には、食品の製造者が原
材料の受入から最終製品にいたる一連の工程の各段階で発生する危害を分析し、その危害の
発生を防止することができるポイント を重要管理点として定め、重点的に管理することによ
り、製造工程全般を通じて製品のより一層の安全性を確保するという手法。
140
(5) 生活衛生対策
① 安全で安定的な水の確保
現状と課題
○水道未普及地域では、地下水や湧水、表流水等が飲用に利用されていますが、
水質が悪化したり、あるいは今後悪化する可能性もあるため、水道を整備し、
安全な水を安定的に供給する必要があります。
【市町村別の水道普及率(平成17年度末現在)】
普及率
該当市町村
大津町
100.0
荒尾市
99.7
合志市
99.5
長洲町
99.4
湯前町
99.3
阿蘇市
98.1
熊本市
98.0
富合町
97.9
御船町
97.5
菊陽町
97.0
津奈木町
96.7
あ さ ぎ り町
96.4
人吉市
96.3
高森町
96.3
益城町
95.7
小国町
95.2
産山村
94.3
苓北町
94.0
上天草市
92.9
水俣市
92.3
天草市
92.2
西原村
91.8
多良木町
89.7
山江村
89.4
氷川町
88.2
南阿蘇村
87.4
甲佐町
85.7
南小国町
85.6
玉東町
85.5
相良村
84.3
水上村
83.6
錦町
82.7
宇土市
80.2
菊池市
76.3
玉名市
74.4
宇城市
73.7
60 % 以 上
70 % 未 満
山都町
68.0
芦北町
66.7
山鹿市
63.7
球磨村
62.9
美里町
62.5
40 % 以 上
50 % 未 満
八代市
49.2
五木村
42.2
植木町
38.0
城南町
29.2
和水町
13.3
南関町
6.9
嘉島町
0.0
90 % 以 上
80 % 以 上
90 % 未 満
70 % 以 上
80 % 未 満
40 % 未 満
県 全 体 の 普 及 率 :8 5 .2 %
出典:県水環境課
施策の方向と内容
○水道の普及促進
・
水道普及率が低い市町村に対して、水道整備の必要性を助言し、整備を促進しま
す。また、市町村等が行う未普及地域の水源開発に対して支援を行います。
水道整備の必要性を助言
市
未普及地域の水源開発へ支援
町
村
水道施設の整備
安全な水の安定供給
141
② 生活衛生関係営業施設等の衛生水準の確保
現状と課題
○ 衛生管理が十分でなく、適正な衛生水準を維持できない生活衛生関係営業施
設[注1]があります。
○ 景気回復が生活衛生関係営業にまで及んでいない中、経営状況の悪化が衛生
水準の低下を招いている生活衛生関係営業施設があります。
生活衛生関係営業施設数
平成14年度 平成15年度
興業場
82
80
映画館
37
30
スポーツ施設
4
3
その他
41
47
旅館業
1,827
1,806
ホテル
96
98
旅館
1,504
1,474
簡易宿所
218
225
下宿
9
9
公衆浴場
649
657
普通
103
96
個室付き
70
75
ヘルスセンター
118
121
サウナ風呂
46
49
その他
312
316
理容所
2,787
2,794
美容所
3,801
3,862
クリーニング業
2,561
2,564
一般
565
560
取次所
1,996
2,004
合計
11,707
11,763
(
各年度末:箇所)
平成16年度 平成17年度 平成18年度
96
104
103
49
57
57
8
3
3
39
44
43
1,777
1,758
1,778
100
99
99
1,428
1,409
1,407
240
245
267
9
5
5
673
694
704
109
87
87
73
86
76
119
124
127
51
44
50
321
353
364
2,788
2,775
2,751
3,890
3,933
3,930
2,493
2,402
2,355
562
561
552
1,931
1,841
1,803
11,717
11,666
11,621
出典:県薬務衛生課
施策の方向と内容
○生活衛生関係営業施設に対する監視指導の推進
・ 生活衛生営業施設に対する監視指導を効率的・効果的に実施し、衛生水準の維持
向上を図ります。特に、旅館の入浴施設、公衆浴場については、レジオネラ症発生
の原因であるレジオネラ属菌が検出される例が依然として発生しており、適切な管
理が行われるよう監視指導を強化します。
○生活衛生関係営業の振興に対する支援の推進
・ 零細的な事業者が多い生活衛生関係営業に対して、(財)生活衛生営業指導セン
142
ター[注2]に経営指導員を配置し、相談体制の充実を図るとともに、各生活衛生
同業組合[注3]が主体となり開催する、営業の活性化と振興のための研修会・講
習会等の実施を支援し、衛生水準の低下を防止します。
<関 係 図>
生 活 衛 生 関 係 営 業 施 設
技
術
講
習
会
等
の
実
施
経
営
相
談
・
助
言
衛
生
監
視
指
導
各生活衛生同業組合
(財) 生 活 衛 生 営 業 指 導 セ ン タ ー
補
助
各 保 健 所
評価指標
指 標
名
県 薬 務 衛 生 課
現
状
保健所への苦情相 16件
談件数
目標(H24年度)
8件
目標設定の考え方
生活衛生関係営業施設の衛生面で
(H18年度)
の不備に起因する苦情の発生件数
を現状の半減にする
[注1]生活衛生関係営業施設
県民の日常生活に必要不可欠なサービスを提供している施設。具体的には、理容業、美容
業、クリーニング業、興業場営業、旅館業、公衆浴場業、飲食店営業、食肉販売業等を行う
施設をいうが、そのサービス内容そのものが、生活水準の向上や公衆衛生に密接に関係して
いる。
[注2](財)生活衛生営業指導センター
生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律に基づき、知事が指定した財団法
人。各都道府県に1つに限って置かれている。
生活衛生関係営業に関する衛生施設の維持及び改善向上並びに経営の健全化について、相
談に応じるとともに指導を行っている。その他、生活衛生関係営業に関する講習会の開催や
情報又は資料を収集し、提供するなどの事業も行っている。
[注3]各生活衛生同業組合
上記生活衛生関係営業の業種毎に都道府県単位で設立される、法人格を有する非営利団体。
本県では、鮨商、社交飲食、料理、飲食、食肉、理容、美容、興業場、旅館、公衆浴場、ク
リーニングの11業種で組合が設立されている。
143