40 - 応用言語学・コーパス言語学・言語教育学

AJELC Newsletter No. 40
December 28, 2013
---目
巻
頭
言
会長の一言随感
第 41 回例会報告
遠藤 雪枝
奥津 文夫
拝田 清
次--1
2
3
第 42 回例会報告
大澤 美穂子
勝又 恵理子
上地 安貞
事務局だより
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6
7
8
「日英言語文化学会」――懐の深い学会
遠藤 雪枝
私が「日英言語文化学会」に抱くイメー
するためには、
「日英言語文化学会」でそれ
ジ――それは、様々な専門分野でご活躍さ
ぞれの方々が取り組んでいる研究に関して
れている先生方がいらっしゃる懐の深い学
交流し、より高めることは、非常に有益で
会であるということです。学会の会員の先
あると考えます。
生方、あるいは参加下さる先生方の専門が
本学会と私との出会いは、学会の前身で
多岐にわたり、視野を拡げることができ、
ある日英言語文化研究会に遡ります。会長
例会、大会に参加する度に、多くの刺激を
である奥津先生より「日英言語文化研究会
頂いております。また、懇親会が、常に学
というのを立ち上げたのでいらしてみては
問の枠を超えるような和気あいあいとした
どうですか」とお声をかけて頂きました。
交流の場となることも、本学会の特徴であ
そもそも奥津先生と初めてお会いしたのは、
るかと存じます。
私が初めて「日本英語表現学会」で発表を
「日英言語文化」――この言葉が含蓄す
した時でした。当時、私はまだ20代、非常
るものは無限大であると思われます。日本
勤講師を始めた年で、学会で発表するとい
の文化や思想を西洋に伝え、西洋の文化や
うことも初めての体験でした。完成度の低
思想を東洋に伝える存在になることを切望
い発表内容であったと思われますが、奥津
した新渡戸稲造博士は、
『武士道』を書き、
先生は「JACETにも入会するとよいです
日本人の心の有り様を外国人に理解しても
よ」とアドバイスをして下さり、「JACET
らおうと考えました。
『武士道』が書かれた
入会に必要な書類を送付します」とおっし
のは明治時代のことですが、時代が変わっ
ゃって下さいました。その時のやりとりは
ても、新渡戸博士の精神は受け継がれてい
鮮明に記憶されており、かつ、以後の私の
ることと思います。地球上のお互いを理解
仕事に対するスタンスに多大なる影響を与
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AJELC Newsletter No. 40
December 28, 2013
えてくれました。奥津先生が書類を送付し
に奥津先生の言葉を伺い、ハッとさせられ、
て下さるということを伺い、申し訳ないと
自身の仕事に対する態度を改めるきっかけ
思うと同時に、
「なぜお忙しいのに、書類送
となりました。まだまだ至らぬ点は多いの
付のようなこともして下さるのですか」と
ですが、それ以来、すぐにできることはで
無礼な質問をしてしまいましたが、先生は
きる限り迅速に処理することを心がけてお
「忙しいからこそ、すべきことをすぐにや
り、本学会でも前身の研究会への入会以来、
るのです」とおっしゃられました。私はそ
その気持ちで取り組んでおります。
れまで「忙しいからできない」とか「忙し
微力ではありますが、今後とも本学会の
いから後回しにする」等と理由をつけ、期
発展のためにお役に立てることができれば
限が先のことを迅速に処理せず、マイペー
と願っております。どうぞよろしくお願い
スで、時には締切り間際に徹夜をして間に
申し上げます。
合わせることもありました。そのような時
(清泉女子大学専任講師)
会長の一言随感 (No. 8)
日本人の「嘘」と英米人の‘lie’
――「食の偽装」の際限なき広がり
去る 10 月 22 日に阪神阪急ホテルズが運
とか“Don’t tell a lie.”などと言ったら、相手
営するホテルやレストランでメニュー表示
に対するひどい侮辱になってしまう。英語
と異なる食材を使用していたことが発覚し
の‘lie’という語は日本語の「嘘」よりもはる
たのを皮切りに、全国のホテルやデパート
かに強い非難や軽蔑の意味を含むからであ
のレストランや食品売り場にも次々と同様
る。現代でも日本人がよく言う「うそつけ」
なことが発覚し、「食品の偽装表示」(false
といった表現も英語なら“No kidding.” “You
labeling of food)が底なしの様相を呈してい
must be joking.” “Nonsense.”などとなる。昔
る。上記ホテルズの出崎社長は、これは偽
は lie とか liar と言われた場合には決闘を申
装ではなく「誤表示」であると強調し、原
し込むほどだったという。日本語の嘘とは
因は従業員の認識・知識不足であるなどと
異なり、英語の lie は「人を騙そうとする意
いう「見え透いた嘘」のような弁解を続け
図を持つもの」を言うので、今回の食品偽
ている。
装のような詐欺、まやかしなどはまさに‘lie’
日本人は時と場所によっては「嘘をつく」
であると言えよう。
ということに、それほど罪悪感を持たない
11 月 7 日の「天声人語」によると、民俗
民族であるように思われる。かつて若い女
学の柳田国男は「ウソという言葉をもっと
性が軽い驚きや相づち程度の受け答えとし
大切に保存しておきたい。ウソは“歴史の
て「うそ―!」という言葉を頻繁に使った
ある佳い言葉”だからだ。かつてウソには
ことがあったが、英語で“That must be a lie.”
笑いが伴った。戯れのような面があった。
」
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と言ったそうである。そして「天声人語」
招待された家での食事がまずいと思った
は「今回の食品偽装をウソつきとなじるの
時でも、日本人はふつう「美味しいお食事
は柳田流に言えばウソに失礼ということに
でした」と言うが、これは英米人からみれ
なる」と言う。
ば sincerity を欠く言葉である。しかし日本
日本には嘘についてのことわざは極めて
人にとっては consideration や kindness から
多くある。
「嘘と坊主の頭はいったことがな
出た necessary lie なのであり「嘘も方便」
「嘘
い」「嘘と牡丹餅はつくものではない」「嘘
は世の宝」となるのである。
も誠も話の手管」
「嘘も身の芸」「嘘も追従
元来日本では「嘘は人を笑わせて幸せに
も世渡り」などのように、嘘を一種の遊び
するための技術」であったとも言われる。
や世渡り術のように考えていたような感も
「嘘も方便」
「嘘でも三日は嬉しい」のよう
あり、
「嘘は日本の宝」とか「嘘をつかねば
なことわざもあるが、これは不都合なこと
仏になれぬ」のように嘘の必要性を説くも
を良いことに変える技巧として嘘が使われ
のすらある。
ることであり、
「嘘で丸める」のように、ぎ
欧米社会においては“truth”というものに
くしゃくとした事態を嘘で作為的に円滑化
大きな価値を置き、言葉を最も大切にする
することもあるのだ。
が、日本では言葉よりもその場の雰囲気や
しかし今回の「食品偽装」も、現在も後
人間関係に基づいた「察し」などを重視す
を絶たない「おれおれ詐欺」も、嘘がその
るので、相手にすぐ分かるような嘘や思い
根底にあるが、人を騙して傷つけたり、不
やりから出た嘘は許されるし、また必要に
幸にしたりするような嘘は許されるもので
なることもあるのだろう。英米人から見る
はない。日本人が最も大切にしてきた他人
と日本人はとても正直な国民ではあるが、
への思いやりや誠実さという美徳を絶対に
“verbal honesty”を持たないと言われるゆえ
失いたくないものである。
んである。
(奥津文夫)
第 41 回例会報告
2013 年 8 月 21 日(水)14:30-17:10
於:明治大学駿河台校舎 リバティータワー 1164 教室
講
演
外国語教育における文化知識の重要性
拝田
清
言語学とは,言葉を通して人間を見よう
った言葉です。その先生はまた,言語現象
とする学問なのです ― これは,私が初め
の詳細な記述は非常に大切な研究だが,そ
て言語学の手ほどきを受けた先生から教わ
れだけでなく,なぜそのような現象が存在
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するのかが知りたいともおっしゃっていま
でも紹介させていただいた人称代名詞の体
した。
系でした。具体的には三人称・単数の代名
私が記述研究を目的としてオーストラリ
詞に「性」の区別がないこと,単数・複数
アで先住民族と交流し,彼らのコミュニテ
に加えて「双数」があること,そして同じ
ィに参加して言葉を教わる際,彼らが繰り
「私たち」という一人称複数の代名詞でも,
返し言っていたのは「我々の言葉を学ぶ前
聞き手を含む場合と除外する場合とでは,
に,まずは我々の文化を学べ」ということ
別々の形がある,という特徴です。
でした。ここでの「文化」は,私たちが考
不思議なことに,先住民の生活や文化を
える広義の「文化」よりもさらに広く深い
近くで見ていると,これらの現象が存在す
概念です。先住民の言葉では「ロム(Rom)
」
ることは,極めて自然に思えてくるのです。
と呼ばれます。文字を持たなかった彼らに
彼らの社会では,管見する限り,男女の間
とって,
「ロム」は歌や踊り,そして絵画や
は平等です。両性ともに年を重ねれば「長
部族ごとの意匠デザインによって伝えられ
老」として周囲から尊敬を集めます。また,
る掟や法律であり,慣習や世間知,倫理や
彼らの伝統的な生活では家族を単位として
道徳なのです。この「ロム」をまず学び,
営まれ,大集団となることはありません。
その過程で言葉を身に付けるのが,彼らの
このあたりの生活形態や彼らの文化的行動
学びの在り方でもあるのです。
が,言語現象に表れているように思えてな
このような彼らの作法を受け入れ,彼ら
りません。
の「文化(=ロム)
」を学んでみますと,そ
このような体験から,言葉を学ぶ際には,
の世界観の豊かさにまずは圧倒され,次に,
文化知識も極めて重要であると考えるよう
自らが属する日本文化の古層にある世界観
になりました。音韻規則や語形成,そして
との類似性に魅了されます(この類似性に
統語法といった知識ももちろん大切です。
ついては,人類のオセアニア地域への拡散
しかし,文化知識を得ることによって,な
に関する人類史的な知見とも一致し,極め
ぜそのような言語現象が起こっているのか
て興味深いお話ですが,これはいずれ稿を
という理由に迫れるばかりでなく,その言
改めて報告させて頂きたいと思います)
。そ
葉を使う生身の人々に迫って行けるように
して何よりも,文化事象としての「ロム」
思うのです。それゆえに,人格形成と恒久
を学ぶ過程で,彼らの言語体系の少なから
平和をその理念とすべき日本の外国語教育
ぬ部分が説明できることが,すなわち「な
においても,文化知識を教えることが極め
ぜ」に答えることが可能であることが分っ
て重要であると考える次第です。
てきました。そのうちの一部が,講演の中
(四天王寺大学准教授)
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AJELC Newsletter No. 40
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第 42 回例会報告
2013 年 10 月 12 日(土)14:30-17:00
於:明治大学駿河台校舎 リバティータワー1075
教室
研 究 発 表
中学校英語教科書におけるアジアに関する題材Ⅱ
―過去 10 年間を中心に―
大澤
本発表の目的は、過去10年間の文部科学
美穂子
いた。なお、過去10年間、継続して教科書
省検定済中学校英語教科書(以下、教科書)
に登場している国はBhutan, Cambodia,
を対象にアジアに関する題材の扱われ方に
China, India, Korea, Mongolia, Singapore の7
ついて調査・分析することであった。なお、
ヵ国であった。
「アジア」を「東西は日本からパキスタン
そして、アジアに関する題材の中でも「文
まで、南北をモンゴルから東ティモールま
化」の扱いが約64%、
「言語」「人間」の扱
で」と定義した。
いはそれぞれ18%であった。さらにその3つ
まず、立脚点を2点述べた。1点目は我が
の領域において、各題材に関する記述を分
国の中学校教育において英語は「外国語」
析した。分析を行う上で、<表層>とは事
という教科の1つとして位置づけられてい
実や現象に関する記述が含まれているもの。
る。そのため「教科書は外国語の言語文化
<中間>とは記述の中に「~が好き、~し
への窓口になるべき(森住2013)」ことから、
てみたい」などの多少の精神面に関する記
英語圏以外の言語文化も扱う必要性がある
述が含まれているもの。<深層>とは人権
と述べた。2点目として、この種の題材は社
や民族の迫害など言語・文化・人間の根幹
会科や他教科などでも扱えるが、英語では
にかかわる記述が含まれているもの、とし
個人の考え方や判断の是非を扱える利点が
た。結果は、
「言語」では<表層>67%、<
あることにも言及した。そして、問題の所
中間>8%、<深層>25%、
「文化」では<表
在として、言語文化教育の偏りは差別的な
層>67%、<中間>28%、<深層>5%、
「人
偏見をもたらす危険性があることと、近隣
間」では<表層>92%、<中間>0%、<深
諸国との軋轢に関する報道を通して当該諸
層>8%となった。加えて、各領域の<表層
国に対して歪んだ見方をする恐れがあるこ
>で得られた記述から浮かび上がる言語文
とに触れた。
化観の特徴をキーワードでまとめてみた。
次に教科書の調査結果を報告した。過去
<言語>では自他の文化や言葉に関する理
10年間で題材の対象として扱われたアジア
解、<文化>では画一的で固定化された知
諸国の数は9~10か国であった。この数は欧
識、<人間>では当該国に対する貧困、危
州・北米・大洋州を合わせた数を上回って
険、庇護の連想の誘発、となった。考察と
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して次の2点を挙げた。1点目はアジア諸国
取り上げるべきである。2点目はアジアを扱
の文化を取り上げた題材は多いが、圧倒的
う場合、日本とアジア諸国との負の歴史に
に表層的な扱いである。2点目は国際協力に
関する事柄や事実にも触れる必要がある。
関する題材では対象となる国々に対して偏
今後の課題は、アジア出身の登場人物や
見を助長しやすい。
Koreaの扱いの内実を分析することである。
最後に結論を2点述べた。1点目は教科書
(相模原市立相模台中学校教諭)
では英語に限らず「言語」の領域をもっと
研 究 発 表
英語教育における異文化コミュニケーション能力の育成
-英語プレゼンテーション授業の実践―
勝又
恵理子
近年、グローバル化が進み、多くの日本
ゼンテーションの授業に異文化コミュニケ
企業が外国人労働者を採用し、社内の公用
ーションを取り入れることで、コース終了
語を英語に変えるなどコミュニケーション
時の学生のスピーチに対する自信に与える
能力の重要性が非常に増している。企業が
影響と、その具体的な要因を探るため、学
大学生に卒業するまでに身につけてもらい
生にアンケート調査を実施し、計量的分析
たいスキルのひとつが、英語プレゼンテー
を行った。
ション能力である。しかし、英語プレゼン
調査・分析の結果、受講する前と後では、
テーション能力の関心は高まっているが、
スピーチに対する自信が変化し、上昇して
英語で人前で話すことを苦手と感じる日本
いることが確認された。自信に影響を与え
の大学生は多い。多くの大学生が自分のス
る要因として、
「スピーチ準備」
「非言語コ
ピーチに対して、聞き手からネガティブな
ミュニケーション」
「言語コミュニケーショ
評価をもらうことを恐れている。
ン」
「講師からのコメント」が統計的に有意
英語で人前で話すことに対する苦手意識
であった。また、スピーチに対する自信と
の克服と、筋道立てて分かりやすく伝える
の関係で相関関係が高かった項目について
ことを目的とする英語プレゼンテーション
注目し、以下のように考察した。1)スピ
の授業は、学生のスピーチに対する自信の
ーチに対する認識が変化したことで聞き手
醸成に効果的であることが、これまでの研
に話しかけるように喋れるようになり、自
究から明らかになっている。しかし、授業
信が高まったと考えられる、2)振り返り
のどういう側面がスピーチに対する自信に
を重点的に行った非言語コミュニケーショ
繋がったのか、授業内容と自信との関係は、
ン分野でのスキル(速度、姿勢、目線)の
過去あまり検証されてこなかった。本研究
向上がみられ、自信が上昇している、3)
では、大学2年生の必修科目である英語プレ
学生は筋道を立てて話すことに強い苦手意
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識を持っており、スピーチの構成が出来る
め、経験の少なさから苦手意識が高いこと
ようになれば自信に結びつく、4)自らの
が明らかになった。スピーチの準備期間を
気付きによってスピーチ能力向上を図る自
十分に与え、人前でスピーチをする経験を
己発見型授業だが、学生は講師からのフィ
増やすことにより、学生のスピーチに対す
ードバックも重視しており、講師のコメン
る認識の変化が考えられることが証明され
トを有益と感じる学生はスピーチに対して
た。
自信をつけている。
これらの研究結果は、今後、より効果的
また、中学1年生から大学2年生までの7
な授業を運営していく上で、大いなる示唆
年間に、英語でスピーチをした回数が1~2
を与えるものとなった。
回が23.3%、3~9回が51.2%と、英語のスピ
(明治大学非常勤講師)
ーチ経験が9回以下という学生が75%を占
講
演
ことば・異言語教育・文化研究
― 雑感 ―
上地
安貞
1.英語の背景にある言語概念・言語観・言
リスト教、およびギリシャ思想にさかのぼ
語使用感覚
ることができるのではないかという仮説を
40数年にわたる英語の教育・研究に関
立ててみた。そこで浮かび上がってきたの
わってきて思うことは少なくない。本講演
が dabar と logos という二つの鍵語(概念)
ではそのごく一端を共有できれば幸いであ
である。前者は旧約聖書の創世記に頻出し、
る。準備していたことを時間内に十分に言
「背後にあるものを前へ駆り立てる」
、後者
及出来なかったことと、本稿では紙幅の都
は「集めて整える」がそれぞれ原意である
合で内容の大部分と参考資料一覧を省略せ
が、徐々に意味範囲が拡大・深化していき
ざるを得ないことをあらかじめお断りし、
「ことば」という意味で両者は合流する。
お詫び申し上げる。
そしてさらに dabar は「行為と直結するこ
初めに、英語文化圏、ヨーロッパ文化圏
とば」
、logos は「理性」という核概念へと
等のコミュニケーション・スタイルに共通
収斂していき、さらに logos の思想はギリ
して見られる「事挙げ」をよしとする言語
シャ哲学に受け継がれていった。命題を立
的態度について考えてみたい。自己を表現
て、ディアローグ(dialogue)を通して真理を
し、主張し、議論を戦わせ、異見を排除せ
探ろうとする「求知志向性(哲学)」の伝統
ず(むしろ歓迎し)
、必要とあれば対立をも
として確立していく。論理学・思想・学問・
いとわない,といったものだ。こうした精
研究分野などにもその影響が色濃く残って
神性の源流をたどって行くとユダヤ教、キ
いることは周知の通りである。また logos
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December 28, 2013
の思想はさらに新約聖書にも影響を及ぼし、
ほぼすべてにおいて日本文化(日本人)の
logos incarnate(受肉した言)というキリ
「ことばの伝統」と対極をなしている。
スト教の核概念の一つを形成するようにな
2.変わらないわが国の「異言語」教育政
る。
策
こうした三つの思想的底流に加えて、ユ
問題の根源の一つは国の指導者や国民一
ダヤ教、キリスト教(イスラームも含む)
般に見られることばの力に対する無知・鈍
には「truth-claiming religion(真理は我に
感さ・甘さであり、そこから起因する本気
あり)
」という共通性がある。いずれも徹頭
度の欠如ではないか。そこで提案したいこ
徹尾ことばを駆使し、真理を主張する「こ
とは(1)
「武器としての言語」という価値
とばの宗教」と呼ばれるゆえんである。
観を育成する言語教育、
(2)長期的展望に
上述した伝統に加えて「言挙げする文化」
立った異言語教育政策の確立と異次元の国
を醸成してきたその他の要因にも目を向け
家予算を投入した抜本的な改革(人材育成)、
なければならない。それは「異質性
(3)公の英語教育を補完・支援するシス
(heterogeneity)」という共通項だ。人種、
テム創り、などをとりあえず挙げておく。
民族構成、言語、文化、価値観の多様性、
地球規模の頭脳(人材)の大循環時代に対
および地政学的な要因などが挙げられる。
応する英(異言)語教育をいかに有効、かつ迅
これらの諸要素が複雑に入り組めば高コン
速に確立するかはわが国の未来を左右しか
テクスト(言語コミュニケーションへの依
ねない喫緊の課題といえる。総じて舌足ら
存度が高い)文化にならざるを得ない。と
ずになったことを重ねてお詫びしたい。
りわけ地続きで隣国と国境を接している
(琉球大学名誉教授)
国々や、異質の民族集団が共存・共生する
複合社会では生存のためにことばを尽くし
て意思の疎通を図る必要がある。これらは
事 務
局
だ
1.会費納入について(重要)
------------------------------------------------------会費納入についてご案内申し上げます。
会費は次の通りです。
一般会員 4,000 円
よ
り
利用いただくことも可能です。
(2013 年度
より振込口座が下記に変更となりました
ので,ご注意ください。
)
学生会員 2,000 円
銀行口座:三菱東京 UFJ 銀行
賛助会員 8,000 円
国分寺支店
(2012 年度より金額が変更となりました。
)
普通 0132870
口座名:
日英言語文化学会事務局 馬場千秋
この他に,銀行への振込,郵便振替をご
8
AJELC Newsletter No. 40
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郵便振替:00190-2-418526
集いたします。詳細は次の通りです。
加入者名:日英言語文化学会
会費納入が 2 年間ない方については,
「日英言語文化学会」第 10 回年次大会
日時:2014 年 6 月 14 日(土)
会員資格を失いますので,ご注意ください。
13 時より 17 時 30 分
場所:明治大学駿河台校舎
2.名簿記載情報の変更等について(重要)
------------------------------------------------------名簿記載事項に変更がある方は,事務局
リバティータワー
発表時間:発表 20 分 質疑応答 10 分
までお知らせください。特に E-mail が変
わられている場合は,すぐにお知らせくだ
応募要項:
さい。事務局から例会のお知らせや
内容:日英語の比較と背景文化に関係する
こと,ならびに英語教育に関するこ
Newsletter をお送りするたびに,アドレ
と。
スが変わっているために戻ってきてしま
要旨:Microsoft Word にて A4 版 1 枚(40
うメールが多数ございます。ご本人からお
字×36 行)にタイトル・所属・氏
申し出がない限り,新しいアドレスにお送
名と概要を記述し,事務局まで添付
りすることができません。どうぞご協力の
ファイルにて送付すること。
*発表時に当学会員である必要がありま
ほどよろしくお願い申し上げます。
す。
応募締切:2014 年 2 月 28 日(金)
3. 第 44 回例会・第 45 回例会
------------------------------------------------------第 44 回例会は,2014 年 2 月 8 日(土)
要旨送付先・問合せ先:
日英言語文化学会事務局
(帝京科学大学馬場千秋研究室)
に帝京科学大学千住キャンパスにて開催
Tel: 0554-63-6942
いたします。講演者は石川慎一郎氏(神戸
Fax:0554-63-4431
大学教授)です。この他,研究発表を 2
E-mail: [email protected]
件予定しております。
あるいは [email protected]
第 45 回例会は,2014 年 4 月 12 日(土)
に明治大学駿河台校舎リバティータワー
5.例会での発表者募集
------------------------------------------------------2014 年度の例会の発表者を募集いたし
で開催いたします。2 つの講演を予定して
おります。
ます。自薦他薦は問いません。ぜひ発表し
例会の詳細については,後日,ML にて
てみたいという方は事務局までお知らせ
お知らせいたします。
ください。発表は会員の方に限ります。
4.第 10 回年次大会研究発表公募
------------------------------------------------------例年通り,年次大会での研究発表者を募
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AJELC Newsletter No. 40
December 28, 2013
編集後記
今回は、突然の「打順変更」により編集の仕事をさせていただくことになった。これまで、原稿の依頼をする際
に、急なお願いにも快く対応してくださった先生方のことが頭に浮かび、引き受けることにした。
師走の忙しさも然ることながら、近年の大学は「学校化」しているとの指摘があるとおり、学級活動のような授
業や、学生との複数回にわたる個人面談や保護者面談まである。同時に、学習指導要録のようなものまで作成する
必要があり、やっていることが高校とあまり変わらない。加えて、入試形態の多様化による学力低下に対応するた
め、リメディアル教育を行うためのプレースメント・テストの作成・実施からクラス分けまで、英語の教員は人一
倍働いているように見える。
そのような愚痴をこぼしたくなった時には、好きな研究をして癒されたいものである。今回のニューズレターに
も、バラエティーに富んだ内容の原稿が集まった。今年一年を振り返り、新年に向けての新たな一歩を踏み出すた
めに、何かの参考にしていただければ幸いである。
(S.H.)
AJELC Newsletter 第40号
2013年12月28日 発行
発行人:奥津文夫
編集:日英言語文化学会(AJELC)事務局・広報通信委員会: 馬場千秋・伊藤満里・小川貴宏・長谷川修治
発行所:日英言語文化学会
(〒409-0193 山梨県上野原市八ツ沢2525 馬場千秋研究室内)
連絡先:Tel/Fax: 0554-63-6942 E-mail: [email protected]
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