画像表示装置(4)−表示品質規格 - MT Pro

画像表示装置
(4)
―表示品質規格
(橋本)
255
誌上講座
画像表示装置
(4)
−表示品質規格
株式会社ナナオ映像商品開発部 橋本憲幸
1.一般モニタの画像表示規格
モニタを対象とした法的・社会的要求に対する規格
は,下記に大別され国によって異なる.
て表示面で約300 lxが設定されている.
(1)
整列性
各行
(列)
の相互間の長さの差
(1)
安全規格…感電,火災,熱的危険,機械的危険,
安全注意・警告表示
各行
(列)
の長さ
≤0.02
(2)
EMC
(Electromagnetic Compatibility)
規格…無線放
射電磁界妨害,イミュニティ
(電磁妨害に対する耐
性)
,高調波歪み,静電気,電圧変動
(3)
エルゴノミクス
(人間工学)
規格…画質,騒音,操
作性,調整機能,構造
(4)
環境規格…省エネ,省資源,有害・汚染物質,リ
サイクル性
(5)
X線
(放射線)
規格…CRT固有
表示に関しては,
(3)
項のなかにビジュアルエルゴ
ノミクス規格がある.基本的には,オフィス作業を前
提としており文字やシンボルの判読性に重点がおかれ
ている.CRTモニタではISO 9241-3/7/8,LCDモニタ
(縦)
方向と直上・直下
(左・右)
との差
文字の横
文字幅
(文字高さ)
≤0.05
(Fig. 1)
(2)
直交性
(Fig. 2)
H1 − H2
0.5 ⋅ H1 + H2
≤ 0.02
,H1/H2:上辺/下辺
V1 − V2
0.5 ⋅ V1 + V2
≤ 0.02
,V1/V2:左辺/右辺
D1 − D2
0.5 ⋅ D1 + D2
V1 + V2
H1 + H2
,D1,D2:対角線
≤ 0.04 ⋅
(3)
表示輝度
(文字サイズの輝度)
ではISO 13406-2が該当する.これらの規格は単独で
35cd/m2以上
認証を受ける場合もあるが,TCO99・TUV/GS・
位置:中央と周辺 4 コーナ
(対角線上10%中心より
TUV/Ergonomieなどの総合規格として認証を受けてい
の点)
る場合もある.特にドイツ法令では,オフィス用途に
(4)
文字内および文字間の輝度コントラスト
(Fig. 3)
おいてはエルゴノミクス規格の適合は強制となってい
る.また,これらの規格適合性は第三者機関によって
C(
m Contrast modulation)
=
試験され認証を受けることが必要である.ここでは,
ISO 9241-3/7/8,ISO 13406-2およびsRGBという色空
LH − LL
≥ 0.5
LH + LL
または,CR
(Contrast ratio)
=
間の規格について簡単に説明する.省略あるいは簡略
LH
≥ 3 :1
LL
化している部分もあるので,測定条件など詳細は各規
文字:水平方向は
“m”
,垂直方向は
“e”
格の原文を参照されたい.また,前述の総合規格にお
位置:中央と周辺 4 コーナ
いてはさらに厳しい規格値となっている場合や追加さ
れている場合がある.
(5)
輝度均一性
・画面の中心と周辺 4 コーナの輝度比
1.7:1以内
1-1 ISO 9241-3:1992
1)
歪・輝度・コントラスト・ジッタなどの表示に関す
る一般要求事項で25項目ある.規格値は,視距離
(表
示画面と作業者の目の間隔)
によって規定されている
が,ここでは500mmとしモニタは21”とする(ISO
9241-7/8も同様)
.また,環境光による照度
(ES)
とし
2003 年 2 月
・文字内
(
“H”
の垂直方向と水平方向)
の輝度比
1.5:1以内
(Fig. 4)
位置:中央と周辺 4 コーナ
(6)
ジッタ
画素変動幅 ≤ 0.1mm
(at 0.5∼30Hz)
日本放射線技術学会雑誌
256
Fig. 2 直交性
Fig. 1 文字の整列性
1-2 ISO 9241-8:19972)
表示色に関する要求事項である.
(1)
コンバージェンス
2
2
+
(垂直ミスコン値)
≤0.49mm
(水平ミスコン値)
(推奨 0.33mm)
Fig. 3 輝度コントラスト(文字内)
(2)
色度均一性…基本16色に対する中央部対 4 コーナ
の色差
∆u’, v’= (u’1 –u’2 ) 2 + (v’1 –v’2 ) 2 ≤ 0.03
(3)
色差…基本16色間の画面中央部における各色差ベ
クトルの絶対値
∆E * uv = (L*1 – L* 2 ) 2 + (u *1 – u * 2 ) 2 + (v*1 – v* 2 ) 2 > 20
L* = 116 ⋅ (Y/Yn)1/3 – 16
u * = 13 ⋅ L* (u’–u’n ), v* = 13 ⋅ L* ( v’–v’n )
Fig. 4 輝度均一性(文字内)
1-3 ISO 9241-7:19983)
反射に関する要求事項である.使用環境を想定し,
環境光以外の直接入る窓からの光を大光源
(LREFEXT)
,
照明光を小光源
(LREFSML)
と規定して,これら反射を含
(1)
画像輝度比…拡散,鏡面反射を含む画面の表示画
めた画像の輝度比を測定する
(Fig. 5)
.ポジティブ表示
像と背景の輝度比
(背景が白)
とネガティブ表示
(背景が黒)
を行い,試験
ポジティブ表示
結果は各表示に対して使用光源の輝度によって 3 クラ
スに分けられる.クラス I が最も反射影響が小さい.
I :LREFEXT-I=200 and LREFSML-I=2000
II :LREFEXT-I=200
ネガティブ表示
or LREFSML-I=2000
III:LREFEXT-III=125 or LREFSML-III=200
LB + LD + LS
≥3
L F + LD + LS
(cd/m2)
L F + LD + LS
≥3
LB + LD + LS
第 59 卷 第 2 号
画像表示装置
(4)
―表示品質規格
(橋本)
257
L F:表示画像の発光輝度,LB:背景の発光輝度
L D:拡散反射輝度
(環境光E Sによる反射輝度)
LS:鏡面反射輝度
(大/小光源
(LREFEXT/LREFSML)
による
反射輝度)
(2)
鏡面反射輝度比…拡散,鏡面反射を含む画像の背
景輝度と鏡面反射を除いた輝度との比
ポジティブ表示
LB + LD + LS
≤ 1.25
LB + LD
Fig. 5 反射
ネガティブ表示
LB + LD + LS
LF + LD
≤ 1.2 +
LB + LD
15 ⋅ ( L B + L D )
(3)
コントラスト
1-4 ISO 13406-2:2001
4)
ISO 9241-3/7/8は主にCRTモニタを対象としていた
ため,FPD
(Flat Panel Display)
における光学的異方性
CR =
L HS + L D
≥ 1 + 10 ⋅ ( L LS + L D ) –0.55
L LS + L D
LLS:輝度が低い状態
を加味して,新たに集約し作成された規格である.
(4)
反射クラス…規格要求値は多少異なるが,基本は
ISO 9241-3/7/8からは,幾何学歪み・ジッタ・ミスコ
1.3項と同様であり 3 クラスに分類される.
ンなどの項目が削除されている.輝度・コントラス
ト・色・反射については視野角を考慮し,応答性・画
素欠点などの項目が追加され,29の要求項目で構成さ
れる.
・画像輝度比
L HS + L D + L S
≥ 1 + 10 ⋅ ( L LS + L D + L S ) –0.55
L LS + L D + L S
・鏡面反射輝度比
(2)
∼
(6)
項の視野角に関連する測定では,七つの試
験視方向
(n=1…7)
と三つの測定点によって行われる.
試験視方向
(Fig. 6)
はLCDのサイズと
(1)
項の視方向範
囲クラスによって決定される.測定点
(Fig. 7)
は11測
定点のなかから輝度を測定し,最大点
(HL)
と最小点
(LL)
および中央
(CL)
とする.
(1)
視方向範囲クラス…クラス I からクラスIVに分類
される.クラス I が最も広い視野角を要求してお
り,複数のユーザが利用しても性能が確保できる
クラスとなる.輝度・コントラスト・輝度均一
ポジティブ表示
L HS + L D + L S
≤ 1.25
L HS + L D
ネガティブ表示
L LS + L D + L S
L HS + L D
≤ 1.2 +
L LS + L D
15 ⋅ ( L LS + L D )
(5)
輝度均一性…視距離における各測定点間の角度に
よって規格化されている
(Table 1)
.
(6)
色度均一性…基本16色を全測定点にて測定し∆u’
, v’
を算出する.規格値は,1-2
(2)
項と同等である.
性,色度均一性についてクラス分類される.ただ
(7)
色差…1-2
(3)
項と同等である.
し,輝度・コントラストについてはクラスIVは認
(8)
画素欠点クラス…画素欠点を分類し,100万画素当
められない.
I:画面の法線からあらゆる方向に40˚までの視
方向から,全領域にて規格要求値を満たす.
II:スクリーン前方のいかなる位置からも全領
域にて規格要求値を満たす.
III:ある固定位置から全領域にて規格要求値を
満たす.
IV:ある固定位置から中央にて規格要求値を満
たす.
(2)
輝度
L HS + L D ≥ 20 cd/m 2
LHS:輝度が高い状態
2003 年 2 月
たりの最大数を規定している.その数にてクラス
分類される
(Table 2)
.
(9)
結像時間…画面中央にて,最大/最小輝度の相対値
が10%と90%になる時間を規定する.
T=ton(10%→90%)+toff(90%→10%)<55 ms
1-5 sRGB
マルチメディア機器に関する色空間を標準化し,メ
ーカや機器
(モニタ,プリンタ,スキャナ,デジタル
カメラなど)
に依存しない色再現性を統一する目的で
である.そし
作成された規格
(IEC 61966-2-1:19995))
てMicrosoft社が中心となり,さまざまなデバイスに対
しての現実的な許容差が定義され実運用されている.
日本放射線技術学会雑誌
258
19
11
12
33
44
55
66
77
88
99
91
例
Fig. 6 試験視方向例
Fig. 7 試験位置
Table 1 輝度均一性
各測定点間の角度
LL= 19 (170cd/m2)
CL= 55 (188cd/m2)
HL= 77 (196cd/m2)
Table 2 100 万画素あたりの画素欠点数
輝度比
項目
I
クラス
II
III
IV
内容
>7°
1.7
5°
−7°
1.6
Type1
0
2
5
50
最小輝度表示時に平均ピクセル輝度の75%以上のピクセル
4°
−5°
1.5
Type2
0
2
15
150
最大輝度表示時に平均ピクセル輝度の25%以下のピクセル
2°
−4°
1.4
1.1°
−2°
1.3
Type3
0
5
50
500
上記ピクセル以外およびサブピクセル異常のピクセル
Cluster
Type 1/2
0
0
0
5
5×5ピクセル内にType 1/2を含むピクセルが二つある
Cluster
Type 3
0
2
5
50
5×5ピクセル内にType 3のピクセルが二つある
表示の基本はCRTモニタであるが,デバイスによって
∆E94
(平均)≤ 10
(共通 7 色と表示色の色差)
は再現域が不足するため拡張バージョンが審議されて
∆E94
(最大)≤ 15
(共通 7 色と表示色の色差)
いる.
∆E 94:修正CIE LAB
(CIE94)
色差式
(1)
標準モニタ規格
ピーク輝度…80 cd/m2
2.診断用モニタの画像表示規格
白
(xy)
…x=0.3127,y=0.3290
(D65)
1 項の規格類は,企業が製品に反映させ認証を得る
赤
(xy)
…x=0.6400,y=0.3300
ことが前提である.使用者は製品がある水準であるこ
緑
(xy)
…x=0.3000,y=0.6000
とを知ることができ,購入の際の一つの目安となる.
青
(xy)
…x=0.1500,y=0.0600
これに対し診断用モニタの表示規格は購入以降の品質
Ͳ 値…2.2
維持管理に重点が置かれている.つまり,使用者が管
環境照度…64 lx,反射輝度…0.2 cd/m
2
光源
(xy)
…x=0.3457,y=0.3585
(D50)
6)
理すべき内容について規定されている.
通常の設備・計測器管理では,管理者が校正保守点
検計画書,校正保守点検表を作成し,使用前点検およ
(2)
CRTモニタの許容差
赤
(xy)
…∆x < +0.020/−0.035,∆y < +0.030/−0.020
び定期点検と校正を実施,記録しなければならない.
緑
(xy)
…∆x < +0.020/−0.035,∆y < +0.020/−0.020
使用前点検は使用者が,定期点検と校正は専門者が行
青
(xy)
…∆x < +0.015/−0.015,∆y < +0.030/−0.015
っている.診断用モニタに関する規格は,これらと同
白
(xy)
…|∆x|,|∆y| < 0.02 & |∆x−∆y| < 0.02
様な管理の実施を使用現場に求めている.規格はガイ
ピーク輝度…80+20/−10 cd/m
2
Ͳ 値…2.2+0.2/−0.2
置環境・使用目的など個々の状況によって管理内容を
(3)
LCDモニタの許容差7)
ピーク輝度 ≥ 75 cd/m
ドラインとしての位置付けであり,モニタの種類・設
決めていく必要がある.
2
∆E94
(平均)≤ 20
(IEC 61966-4の基本32色と表示色
の色差)
第 59 卷 第 2 号
画像表示装置
(4)
―表示品質規格
(橋本)
259
Fig. 9 輝度測定
Fig. 8 幾何学歪み
2-1 DICOM PS3.14:20008)
当講座の第 1 回目で説明したが,フィルム/モニタ
が備えるべき階調特性の規格である.ただし,要求さ
れる階調数や許容差は示されておらず,臨床的判断が
今後の課題である.
2-2 IEC 61223-2-5:1994 9)
モニタの不変性試験についての規格であり,既に所
々で解説されている.下記の基礎値とは初期不変性試
験時に最低 1 週間毎日行い平均した値である.
Fig. 10 幾何学歪み測定(AAPM TG-18)
(1)
幾何学的歪み
(Fig. 8)
最外周と中央軸の長さ…基礎値±5%以下
について記載されている.ドラフト版なので今後修正
(2)
観視条件
表示面輝度…基礎値Ȁ25%以内
される可能性はある.使用前の目視検査,定期検査
(毎月あるいは毎 4 半期)
と年 1 回の精密検査の実施を
(3)
輝度
(Fig. 9)
最小輝度…基礎値Ȁ25%以内
求めている.ここでは,受入試験の測定項目について
最大輝度…基礎値Ȁ20%以内
列記する.
(1)
幾何学的歪み
2-3 DIN V 6868-57:200110)
Fig. 10のように四つの正方形
(①∼④)
をそれぞれ縦
ドイツにおけるモニタの受入試験についての規格で
横に 4 分割した線
(1∼8)
の長さの偏差および全体正方
あり,法令で実施が義務付けられている.下記項目以
形⑤の長さの偏差が,2%以下であること.
外は,IEC 61223-2-5に準ずる.
(1)
コントラスト比
(Fig. 9)
Lmax/Lmin>100
(2)
反射…環境光の反射輝度と最小輝度の比
Lamb ≤ Lmin/4
(3)
輝度・コントラスト・階調特性
(2)
輝度均一性…画面の中央部と周辺 4 コーナ部との
・Lmax ≥ 170 cd/m2
輝度比率
・LR
(Luminance ratio)
=Lmax/Lmin ≥ 250
−30%以内
(CRT)
,Ȁ15%以内
(LCD)
・∆Lmax
(目標値との誤差)≤ 0.05
P
(入力値)
=50%
・∆L/L ≤ 0.1 of GSDF
(18ポイント)
(Fig. 11)
(4)
輝度ユニフォミティ…中央部と周辺 4 コーナ部と
2-4 AAPM TG-18:draft
11)
AAPM
(American Association of Physicists in Medicine)
で作成されているモニタの受入試験および不変性試験
の輝度比
L max − L min
2⋅
≤ 0.3, P=10/80%
L +L
max
についての規格である.GSDFの許容差,スポット径
2003 年 2 月
min
日本放射線技術学会雑誌
260
Fig. 11 GSDF 評価例
Fig. 12 CX スコア
(5)
解像度・スポット径…中央部・コーナ部にて確認
・GR
(Glare ratio)
=
・0 ≤ Cx ≤ 4 (Fig. 12)
LB + LN
≥ 400
L – LN
Cxスコア
(疑似的にフォーカス特性を段階的に
L B:外径200mm白色円の中心輝度
劣化させた画像)
との比較
L N:表示なし時の中心輝度
・RAR
(Resolution-Addressability ratio)
L :外径200mm/内径10mmのドーナツ状の白色
=50%スポット径/pixel size ≤ 0.9−1.1
・AR
(Astigmatism ratio)
=50%スポット径の長軸/短軸 ≤ 1.5
・∆L(垂直100%変調輝度対水平100%変調輝度)≤ 0.3
(6)
ノイズ
パターンの中心輝度
(8)
色度均一性…画面の中央部と周辺 4 コーナ部との
色差
2
2
D = ∆u’, v’= (u’1 –u’2 ) + (v’1 –v’2 ) ≤ 0.004, P=80%
サイズとレベルの違うオブジェクト
(Fig. 13)
を挿入
3.測定に関して
し中央部・コーナ部にて,サイズ 2×2 かつ入力値
評価に際して必要な測定器であるスケールおよび色
128+2
(8bit時)
のオブジェクト以外は判別できること.
彩輝度計の注意事項を説明する.
(7)
ベーリンググレア
・外径200mm/内径10mmのドーナツ状の白色パタ
3-1 寸法の測定
ーンの中心に直径 3mm,P=2 / 4 / 6 / 8 / 10
(8bit
管面上で画像の寸法を測定する場合は注意が必要で
時)
の円を挿入
(Fig. 14)
し,P= 6 の円が判別でき
ある.管面が丸くパネルガラスが厚いので,通常のス
ること.
ケールでは目線が決まらず読み取りが難しいからであ
第 59 卷 第 2 号
画像表示装置
(4)
―表示品質規格
(橋本)
261
Fig. 13 ノイズ確認用オブジェクト
Fig. 14 ベーリンググレア
る.正確には,透視スケール
(厚さ 8mm程度で
両側に目盛があり,長さは管面より長いもの)
を
管面と平行に当てて,スケールの表と裏の目盛が合う
ように目線を決めて数値を読む
(Fig. 15)
.
3-2 輝度・色度の測定
色彩輝度計の方式は刺激値直読式と分光式の二つの
タイプに分けられる.
(1)
刺激値直読式…CIE1931で規定された等色関数に
近似された分光応答度を持った三つのセンサの出
力を用いて輝度,色度を求める.
(2)
分光式…被測定光源の各波長ごとのエネルギー量
を求め,この量にCIE1931で規定された各等色関数
を各波長ごとに乗じる演算処理を行うことにより
輝度,色度を求める.各波長ごとのエネルギー量
は,被測定光源からの光を対物レンズを通して集
Fig. 15 歪みの測定
光し分光する.この分光された光を,ラインセン
サ上に投射し各素子
(数百個)
からの出力を得る.
通常測定器はCIE標準光源Aで校正されており,モ
の指標となる.現時点において医用画像に関する規格
ニタのような急峻な分光特性を持つ光源に対して刺激
は,モノクロCRTモニタが基本となっているので,
値直読式では測定誤差が大きくなる.真値を求める場
LCDモニタの場合あるいはカラー画像表示の場合につ
合は,同じ分光特性を持った光源で校正する必要があ
いて検討する必要がある.
る.一方,分光式は波長ごとに測定するので精度は高
い
(価格も高い)
が,測定速度が遅い.また,回折格子
5.最後に
を使用しているため偏光の影響を受ける.
モニタの一般的な構造・動作原理から画像表示に関
する規格の概略について解説してきたが,モニタの機
4.まとめ
能・性能は今も向上しており,種類も多くなってい
いろいろな規格の項目と数値を列記したので,少々
る.また,モニタを使用するうえでは,ビデオカー
分かりづらい点はあると思うが,モニタの特性に対す
ド・ビューワなどの性能や操作性についても重要な要
る要求としてどのような項目があるのか知っていただ
素である.モニタ診断における課題についてはいろい
きたい.文字内部のコントラスト,スポット径などの
ろな場面で議論されていると思うが,モニタの機種選
計測や各測定条件の設定について簡単に実施できない
定,評価,維持管理の際に当講座が多少なりとも役に
項目もあるが,規格の存在はその機器の特性における
立てば幸いである.
特徴やばらつきがあることを示しており,検討する際
2003 年 2 月
日本放射線技術学会雑誌
262
参考文献
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(VDTs)
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(2001)
2)ISO 9241-8:1997,Ergonomic requirements for office work
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with visual display terminals
(VDTs)
−Part 8: Requirements
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(DICOM)
−Part 14: Grayscale Standard
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Display Function
3)ISO 9241-7:1998,Ergonomic requirements for office work
9)IEC 61223-2-5:1994,Evaluation and routine testing in
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(VDTs)
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4)ISO 13406-2:2001,Ergonomic requirements for work with
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11)Samei E, Badano A, Chakraborty D, et al.: Assessment of
5)IEC 61966-2-1:1999,Multimedia systems and equipment
Display Performance for Medical Imaging Systems. Draft
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management−Default RGB colour space−sRGB
cine
(AAPM)
Task Group 18, Version 9.0,
(2002)
.
6)Microsoft Corporation and Sony Corporation:Windows Color
第 59 卷 第 2 号