粒状ベントナイトの膨潤圧・吸水特性に及ぼす最大粒径の影響 ~最大粒

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D - 04
第 47 回地盤工学研究発表会
(八戸) 2012 年 7 月
粒状ベントナイトの膨潤圧・吸水特性に及ぼす最大粒径の影響
~最大粒径 2mm と粉砕試料の比較~
ベントナイト 吸水特性 膨潤
茨城大学大学院 学生会員 ○小山田 拓郎
茨城大学 国際会員 小峯 秀雄 村上 哲
戸田建設 正会員 関口 高志 関根 一郎
1. はじめに
地層処分および余裕深度処分におけるベントナイト系緩衝材には,現場施工する場合
の材料として粒状ベントナイトが期待されている.緩衝材には処分施設の再冠水に伴う
表 1 ベントナイト GX の基本的性質 3), 4)
地下水の浸入が想定されるため,人工バリアの性能を評価する上で,吸水特性と膨潤圧
ベントナイト
GX
(最大粒径 2mm)
の発生挙動を把握することは重要と考えられる 1).既往の研究では,試料の最大粒径によ
タイプ
Na 型
って,膨潤圧の発生挙動が異なることが報告されている .膨潤圧の発生挙動が異なるメ
土粒子の密度(Mg/m3)
2.654)
カニズムとして吸水特性の違いが推察されているものの,その実験的な調査には至って
液性限界(%)
355.1
いない.そこで本研究では,膨潤圧・吸水特性に及ぼす最大粒径の影響を実験的に調査
塑性限界(%)
22.8
することを目的として,最大粒径 2mm に粒度調整した試料および最大粒径 0.18mm に粉
塑性指数
332.3
モンモリロナイト
含有率(%)
47.1
2)
砕した試料の 2 種類を用いて,膨潤圧発生に伴う吸水量測定試験を実施した.
2. 使用した試料および供試体作製方法
本研究では,粒状ベントナイトであるベントナイト GX(クニミネ工業製・クニゲル GX)
の最大粒径を 2mm に粒度調整した試料を使用した.表 1 に最大粒径を 2mm に調整した
モンモリロナイト含有率は,純モンモリロナイ
トのメチレンブルー吸着量 140(mmol/100g)を基
準に算出された値である.
ベントナイト GX の基本的性質を示す 3), 4).また,粒状ベントナイトの膨潤圧・吸水特性
に及ぼす最大粒径の影響を調査するために,最大粒径 2mm の試料(以下,粒状試料と記
ビュレット管 最大容量:25mL, 最小目盛り:0.1mL
す)とともに,最大粒径を 0.18mm に粉砕した試料(以下,粉砕試料と記す)の 2 種類
ベロフラム
シリンダー
を実験に用いた.粉砕は,メノウ乳鉢を用い,試料が全て 180μm ふるいを通過するまで
ピストン固定用
クランプノブ
ロードセル
最大容量:10kN
最小目盛り:0.025
繰り返した.試料の含水比は,粒状試料と粉砕試料でそれぞれ,5.0~5.8%,4.6~6.9%で
変位計
あった.供試体は直径 28mm の円柱形とし,高さ 10mm を目標に,油圧ジャッキを用い
最大容量:25mm
最小目盛り:0.002
5)
た上下方向からの静的締固め により作製した.
供試体
3. 膨潤圧発生に伴う吸水量測定試験の概要
直径:28mm
高さ:10mm
本試験は,供試体の膨潤変形を抑制した状態において,供試体への水の供給量と膨潤
圧を経過時間ごとに同時に測定するものである.図 1 に膨潤に伴う吸水量測定試験装置
の概略図を示す.最大容量 25mL,最小目盛り 0.1mL のビュレット管から供試体へ給水
ポーラスメタル
および ろ紙
し,ビュレット管内の水の体積変化を目視により測定する.試験は膨潤圧がほぼ定常状
図 1 膨潤圧発生に伴う
吸水量測定試験装置の概略図
態に達するまで行った.試験期間はおおよそ 17~19 日間(24300~27240min)であった.ま
た,供試体の体積変化を完全に抑制することは困難であるため,鉛直方向の微小な変位
量を測定し,乾燥密度の補正を行った.
4.膨潤圧発生挙動に及ぼす最大粒径の影響
2000
粉体状ベントナイト
(ベントナイトA,ρd=1.62Mg/m3,wo=8.6%)
図 2 に,乾燥密度約 1.6Mg/m3 における粒状試料および粉砕試料の膨潤圧
と経過時間の関係を示す.図 2 には,比較対象として,粉体状のベントナイ
膨潤圧の発生挙動も示した.図 2 において,粒状試料は試験開始から経過時
間 1000 分程度まで膨潤圧が急激に増加した後,その増加が緩やかとなり最
大膨潤圧に至る.一方,粉砕試料および粉体状のベントナイト A では膨潤
圧の増加過程において,経時変化にピークが確認できる.これらはいずれも,
ピーク
1500
膨潤圧 Ps(kPa)
ト A(クニミネ工業製・クニゲル V1,モンモリロナイト含有率:57%5))の
粉砕試料
(最大粒径 0.18mm,ベントナイトGX
ρd=1.62Mg/m3,wo=6.9%)
1000
粒状試料
(最大粒径 2mm,ベントナイトGX,
ρd=1.61Mg/m3,wo=5.7%)
500
経過時間 1000 分程度まで膨潤圧が急激に上昇した後,一度低下し,再度膨
潤圧が上昇し定常化する.同様な傾向は,既往の研究 2)でも確認されている.
本研究では粉砕試料について,乾燥密度 1.52~1.80Mg/m3 の範囲における 9
ケースの膨潤圧を測定しているが,乾燥密度 1.52~1.69Mg/m3 の 7 ケースの
ρd乾燥密度(Mg/m3),wo:初期含水比(%)
0
0
5000
10000 15000 20000
経過時間 t(min)
25000
図 2 膨潤圧の発生挙動の比較
うち,5 ケースでこのような傾向が得られた.
Influence of maximum grain size on swelling pressure and
water absorption property on granular bentonite Comparison of granular bentonite and milled bentonite -
881
Oyamada, T., Komine, H., Murakami, S. Ibaraki University
Sekine, I., Sekiguchi, T. Toda Corporation
5. 吸水特性に及ぼす最大粒径の影響
5.0
ベントナイトGX
粉砕試料
(最大粒径 0.18mm,ρd0=1.52Mg/m3)
図 3 に吸水量と経過時間の関係を示す.試験において測定したビュレット管内の水
の減少量には,ポーラスメタルへの流入量も含まれる.図 3 では,ポーラスメタルへ
粒状試料
(最大粒径 2mm,
ρd0=1.51Mg/m3)
4.0
試験開始後最初の測定値である 1 分経過後の測定値を除いた値を吸水量とした.初期
3
3
乾燥密度が約 1.5 Mg/m および約 1.7Mg/m の場合を比較すると,経過時間が約 9000
分以降の吸水量は,それぞれの初期乾燥密度において,試料によらず同様に増加して
吸水量(mL)
の流入量による影響を小さくするために,測定したビュレット管内の水の減少量から,
3.0
粉砕試料
(最大粒径 0.18mm,
ρd0=1.74Mg/m3)
2.0
いることがわかる.一方,試験開始時から経過時間 9000 分程度までの吸水量の増加傾
粒状試料
(最大粒径 2mm,ρd0=1.72Mg/m3)
1.0
向には,試料によってわずかに差が生じている.
既往の研究より,吸水初期のベントナイトの吸水量は,経過時間の平方根の一次関
0.0
数として表されることがわかっている 4).そこで,ビュレット管内の水の減少量を経
6.0
吸水量(mL/
min ), b は試験開始時のポーラスメタルへの流入量(mL)である.図 4
では図 3 に示したものと同じ試験ケースについて吸水挙動を比較した.図 4 より,初
期乾燥密度が約 1.5 Mg/m3 および約 1.7Mg/m3 の場合における単位時間 t あたりの吸
水量は,粒状試料でそれぞれ 0.035,0.027 (mL/
はそれぞれ,0.039,0.031(mL/
min )であるのに対し,粉砕試料で
min )であった.以上より,同程度の乾燥密度におけ
る単位時間 t あたりの吸水量は,粒状試料に比べ,粉砕試料の方が大きい値を示す
ビュレット管内の水の減少量(mL)
によって近似した初期の吸水量である.
ここで,Q はビュレット管内の水の減少量(mL),a は単位時間 t あたりの供試体の
6000
ベントナイトGX
粉砕試料
(最大粒径 0.18mm,ρ d0=1.52Mg/m 3)
y=0.039x+2.69
4.0
粉砕試料
(最大粒径 0.18mm,
ρd0=1.74Mg/m 3)
y=0.031x+2.42
3.0
ρdo:初期乾燥密度(Mg/m 3)
y:近似直線
0
25
粒状試料と粉砕試料について,単位時間 t あたりの吸水量と初期乾燥密度の関係を
0.05
間 t あたりの吸水量は,粒状試料に比べ,粉砕試料の方が約 1.1 倍大きい値を示して
いる.以上より,粒状ベントナイトの吸水特性には,試料の最大粒径が影響を及ぼす
と考えられる.参考文献 7)によると,ベントナイト GX の原鉱の粒状体としての乾燥
密度は 1.701 Mg/m3 と報告されている.したがって,粒状試料を用いた供試体は,相対
75
100
ベントナイトGX
粒状試料(最大粒径 2mm)
粉砕試料(最大粒径 0.18mm)
単位時間(√min)あたりの
吸水量 a(mL/√min)
とがわかる.全体的な傾向として,初期乾燥密度が約 1.5~1.8 Mg/m3 における単位時
50
図 4 ビュレット管内の水の減少量と
経過時間の平方根の関係
比較した.図 5 に単位時間 t あたりの吸水量と初期乾燥密度の関係を示す.図 5 よ
近においてばらつきがみられるものの,粉砕試料の方が大きい値を示す傾向があるこ
粒状試料
(最大粒径 2mm,
ρd0=1.72Mg/m 3)
y=0.027x+2.65
経過時間の平方根(√min)
があると考えられる.そこで,吸水特性に及ぼす最大粒径の影響を把握するために,
り,粒状試料と粉砕試料を比較すると,初期乾燥密度 1.52 Mg/m 付近と 1.62 Mg/m 付
24000
(最大粒径 2mm,
ρd0=1.51Mg/m 3)
y=0.035x+2.59
単位時間 t あたりの吸水量は小さい値を示す傾向があることから,両者には相関性
3
18000
5.0 粒状試料
2.0
傾向があることがわかる.また,いずれの試料においても,初期乾燥密度が高いほど,
3
12000
図 3 吸水量と経過時間の関係
少量と経過時間の平方根の関係を示す.図 4 において,y で表される式は,以下の式(1)
・・・(1)
0
経過時間(min)
過時間の平方根で整理し,吸水挙動の比較を行った.図 4 にビュレット管内の水の減
Q = a t +b
ρdo:初期乾燥密度(Mg/m3)
的に乾燥密度が高い状態の粒状体を含有していると考えられる.また図 4 より,粉砕
試料を使用した比較的均一な供試体においても,初期乾燥密度の増加に伴い,単位時
間 t あたりの吸水量は低下する傾向があることがわかる.以上から,粒状試料を用
いた供試体は,図 6 に示すように相対的に乾燥密度が高い粒状体を多く含有すること
によって,単位時間 t あたりの吸水量が比較的小さい値を示したものと推察される.
6. まとめ
0.04
0.03
0.02
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
初期乾燥密度 ρ d0(Mg/m3)
図 5 単位時間 t あたりの吸水量と
初期乾燥密度の関係
:モンモリロナイト
:非膨潤性鉱物
供試体
ベントナイト GX について,最大粒径 2mm に粒度調整した試料と最大粒径を 0.18mm に
粉砕した試料を比較すると,膨潤圧の発生挙動は,粒状試料では試験開始から経過時間 1000
分程度まで膨潤圧が急激に増加した後,その増加が緩やかとなり最大膨潤圧に至ったのに
対し,粉砕試料では膨潤圧の増加過程において,経時変化にピークが確認された.一方,
吸水特性については,初期乾燥密度が約 1.5~1.8 Mg/m3 において,単位時間 t あたりの供
試体の吸水量(mL/
min )は,粉砕試料の方が 1.1 倍程度大きい値を示した.以上より,粒
状ベントナイトの吸水・膨潤圧特性には試料の最大粒径が影響を及ぼすと考えられる.
-参考文献-
最大粒径2mm以下の粒状体
相対的に乾燥密度が高い
単位時間あたりの吸水量が小さい
図 6 試料の最大粒径が吸水特性に
及ぼす影響の模式図
1)原子力発電環境整備機構:地層処分事業の安全確保(2010 年度版)-確かな技術による安全な地層処分の実現のために-, NUMO-TR-11-01, 2011. 2)杉浦航, 小峯秀雄, 安原一哉, 村
上哲, 関口高志:ベントナイト原鉱石の膨潤特性および膨潤挙動メカニズムの考察, 土木学会第64 回年次学術講演会, CS5-050, 2009. 3)小峯秀雄:余裕深度処分のための粒状ベン
トナイトの膨潤圧特性に関する基礎的研究~最大粒径10mm と2mm の粒状ベントナイトの膨潤圧特性の比較~, 第46 回地盤工学研究発表会, D-05, pp.2087-2088, 2011. 4)伊藤弘
志, 千々松正和, 村上利一:ベントナイト層の現場施工材料の開発, 土木学会第 62 回年次学術講演会, CS5-001, 2007. 5) 直井優, 小峯秀雄, 安原一哉, 村上哲, 百瀬和夫, 坂上武
晴:各種ベントナイト系緩衝材の膨潤特性に及ぼす人工海水の影響, 土木学会論文集, No.785/III-70, pp.39-49, 2005. 6)長谷川琢磨:ベントナイトの透水・浸潤特性への海水影響, 電
力中央研究所報告, N04005, 2004. 7)財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター:平成16 年度地層処分技術調査等遠隔操作技術高度化調査報告書(2/2), pp.3-572 – 3-583, 2005.
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