イージ-スラブ橋工法 Easy Slab Bridge (H鋼桁埋込みRC床版橋) イージースラブ橋協会 ①工法の概要 孔あけ加工をしたH形鋼を並べ、ウエブに横繋鉄筋を貫通 させてコンクリートと一体化させたSRC構造の床版橋です。 ②工法の特徴 ・構造が簡単である ・低コスト・低桁高(経済性・利便性) ・施工が容易である ・支保工が不要である ・現場工期が短い ・ジョイントレス構造を採用している ・維持管理費が低減できる ・既設鋼桁が再利用できる ③現場施工手順 1.ゴム支承・防蝕アンカーを設置 2.H鋼桁を架設(トラッククレーン架設) 3.側部足場・桁下面型枠を設置 4.横繋ぎ鉄筋・桁上面鉄筋を配筋 5.橋体コンクリートを打設・養生 6.地覆型枠・コンクリートを打設・養生 7.橋面工(防水層・舗装・防護柵等)を施工 8.施工完了 ④工法の適応性 ・車道橋(AB活荷重)、歩道橋、農道橋等 ・適用支間長 20m程度まで可能 ・狭小箇所でも施工可能(住宅密集地区) ・分割施工が可能(仮橋や迂回路が省略可能) ・連続構造やラーメン構造に対応可能 ・地産地消型工法(地元産材を多く使用できる) 短支間橋梁の新設や架け替えに適し、 施工が容易で現場工期も短いため、地 元企業の施工に最適な工法です。 ⑤経済性比較(建設コスト) 検討条件:設計荷重 B活荷重、架設方法 橋台背面からのトラッククレーン架設 広幅員になると、イージースラブ橋と従来橋種(PC床版橋)との工 費差が少なくなります。幅員が4mの場合は、支間長が18m以下の 領域でイージースラブ橋が経済的となり、幅員が20mの場合は支間 長が15m以下の領域でイージースラブ橋が経済的になります。 ⑥ライフサイクルコスト 架橋地点条件:やや厳しい環境(海岸から0.7~20km) ライフサイクルコストは、従来橋種より約40%低減できます。 従来橋梁(PC床版橋) 再塗装工 維持管理費内訳(100年) = 0千円 伸縮装置取替 5,500千円×4回 = 22,000千円 イージースラブ橋 再塗装工 維持管理費内訳(100年) 1,800千円×1回 = 1,800千円 切削目地工 50千円×4回 = 200千円 舗装やり換え 1,400千円×4回 = 5,600千円 舗装やり換え 1,400千円×4回 = 5,600千円 高欄取替 3,400千円×1回 = 3,400千円 高欄取替 3,400千円×1回 = 3,400千円 合 計 31,000千円 合 計 11,000千円 ⑦桁高比較 設計荷重 B活荷重 凡 例 PC床版橋 イージースラブ橋 800 750 700 650 桁 高 600 550 ( mm )500 450 400 350 300 250 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 支 間 長 (m) 15.0 16.0 17.0 18.0 ⑧工法特有の構造メリット イージースラブ橋の構造的な特徴を生かすことで、 リ・ユース、上下部一体化構造・ジョイントレスなどに 容易に対応できます。 リ・ユース 上下部一体構造 ジョイントレス 鋼桁の再利用 耐震性の向上 既設橋主桁 仮設H鋼材など 中越地震などで証明 建設コスト縮減 コスト縮減 材料費軽減 環境負荷の低減 消費エネルギー削減 CO2削減 下部工サイズの縮小 基礎杭の本数減少 ジョイントや支承の省略 維持管理コスト縮減 ジョイントや支承の省略 騒音や振動の防止 走行性の改善 耐久性向上(無漏水) 建設コスト縮減 維持管理コスト縮減 ⑨桁下面型枠 桁下面型枠は、3種類の材 料を用いており、右表のよう な使い分けをしています。 1.杉板を用いた場合(残存させる場合に使用) 側面型枠(合板)設置状況 コンクリート打設直後、桁下面状況 桁上面鉄筋配筋後状況 コンクリート打設直後、桁下面型枠状況 2.合板を用いた場合(撤去する場合に使用) 桁下面型枠組み立て状況 桁下面型設置完了状況 桁下面型枠組み立て状況 桁下面型枠撤去後状況 ⑩ジョイントレス構造(パラペットレス) 従来構造例(ジョイント有り) 従来構造(パラペット有) 桁の伸縮は、伸縮装置で吸収される。 ジョイントレス構造例 ジョイントレス構造(パラペット無) 桁の伸縮は、背後地盤の地盤バネで吸収される。 伸縮吸収範囲 橋面舗装 伸縮継手工 伸縮吸収範囲 橋台パラペット 上層路盤 ゴム支承 橋面舗装 切削目地工 シール材充填 上層路盤 ゴム支承 下層路盤 下層路盤 2% 2% 2% 埋設型枠材 (発泡スチロール) 防蝕アンカー工 (変位制限装置) 橋台 埋設型枠材 発泡スチロール 防蝕アンカー工 (変位制限装置) 地盤ばね 橋台 従来構造では、桁の伸縮吸収は伸縮装置幅の狭い範囲で行われますが、ジョイン トレス構造の場合には、橋台背後地盤が伸縮吸収箇所となり広範囲となります。そ のため、アスファルトのような低弾性材でも損傷しにくくなります。乾燥収縮・クリープ・ 温度変化などのようなゆっくりとした伸縮には特に有効です。 活荷重が載荷した場合の桁上面の桁の回転による最大伸縮量は、コンクリート橋 の場合、一般的に桁高の1/300程度以下となります。 アスファルト舗装に生じるクラックの発生原因 長時間で生じるもの 1.温度変化・乾燥収縮・クリープなど、主として桁の伸縮によって生じるもの 2.橋台背面土の沈下によって生じるもの(主として締固めや圧密沈下による) 影響小 短時間で生じるもの 3.活荷重が載荷した場合の桁の回転によって生じるもの 4.橋台背面土の沈下によって生じるもの(主として舗装の弾性沈下による) 影響大 活荷重載荷による伸縮 温度変化による伸縮 伸縮量は、桁高にほぼ比例する ΔHF=桁高×1/300 伸縮量は、桁長に比例する 水平変位:ΔHM 水平変位:ΔHF 水平変位:ΔHM キックアップ量:ΔV キックアップ量:ΔV h U Y 中立軸 L Y 中立軸 固定端:F 可動端:M 固定端:F θF θM 可動端:M ・桁高が低い場合には、活荷重による桁の伸縮量が少なくなるため、クラックは発生しにくい。 ・橋台背面の路盤を一般舗装部より厚くすると弾性沈下量が小さくなり、クラックが発生しにくくなる。 ・活荷重が載荷した場合の伸縮量は、固定端側より可動端側の方が小さくなる。 踏掛版設置タイプ 踏掛版非設置タイプ 従来構造例(踏掛版あり) 従来構造例(踏掛版なし) 橋面As舗装 伸縮継手工 橋台パラペット ゴム支承 伸縮継手工 橋面As舗装 上層路盤 上層路盤 橋台パラペット 踏掛版 ゴム支承 下層路盤 下層路盤 2% 2% 背面土 防蝕アンカー (変位制限装置) 埋設型枠材 (発泡スチロール) 橋台 防蝕アンカー (変位制限装置) 背面土 短支間の橋梁は、桁の伸縮量が少ないためジョイントレス構造が採用できる。 走行性の向上・建設コストの縮減等などの利点がある。 上層路盤 ゴム支承 踏掛版設置面を橋座面より低くすることで橋座面への漏水が防止できる。 橋面As舗装 目地工 (シール材充鎮) 上層路盤 目地工 (シール材充鎮) 上層路盤 ゴム支承 下層路盤 下層路盤 下層路盤 2% 2% 2% 橋台 2% 踏掛版 背面土 防蝕アンカー (変位制限装置) 埋設型枠材 (発泡スチロール) ジョイントレス構造例(踏掛版あり) ジョイントレス構造例(踏掛版なし) 橋面As舗装 橋台 埋設型枠材 (発泡スチロール) 防蝕アンカー (変位制限装置) 埋設型枠材 (発泡スチロール) 橋台 背面土 防蝕アンカー (変位制限装置) ⑪H鋼桁下面の防錆対策 架橋地点条件:やや厳しい環境(海岸から0.7~20km:日本海沿岸部) 橋梁条件 :橋長15.00m、車道幅員10.00m(11.20m) H鋼桁下面の防錆対策は、下記3種類があります。架橋 地点の条件等によって適切に選定します。 1.溶融亜鉛メッキとした場合(アルミ亜鉛シリコン樹脂で再塗装) 耐久年数:60年、 再塗装費用 1,800 千円/回(60年毎) 2.アルミ亜鉛シリコン樹脂塗装とした場合(同材料で再塗装) 耐久年数:60年、 再塗装費用 1,800 千円/回(60年毎) 3.セラミック配合エポキシ樹脂系塗装とした場合(同材料で再塗装) 耐久年数:45年、 再塗装費用 1,500 千円/回(45年毎) ⑫死荷重増大の影響について 検討条件 橋長10.00m、車道幅員10.00m(11.20m)、逆T式橋台高5.00m 従来橋種(PC床版橋)の死荷重 イージースラブ橋の死荷重 上部工死荷重反力 上部工死荷重反力 = 815 KN 【1.00】 = 920 KN 【1.12】 下部工自重(橋台)= 4950 KN 下部工自重(橋台)= 4950 KN 死荷重合計 死荷重合計 = 5765 KN (1.00) = 5870 KN (1.02) 上部工死荷重反力は、従来橋種に比べイージースラブ橋 の方が12%増加するが、上部工反力に比べて下部工死荷 重の割合が大きく、全体として2%の増加にしかならないた め、下部工はほとんど同一形状となります。 したがって、下部工費は経済性にはほとんど影響しません。 ⑬安全性検証公開実験 1.荷重分配試験状況 金沢大学工学部土木建設工学科大型実験室にて(平成15年8月) 荷重分配試験状況 荷重分配試験状況 (中央載荷) (偏心載荷) 2.静的破壊試験・繰り返し荷重載荷試験状況 つくば市ショーボンド建設(株)補修工学研究所にて(平成16年8月) 静的破壊試験状況 繰り返し荷重載荷試験状況 (200万回) 3.静的破壊試験(その1) 荷重~たわみ曲線図 破壊試験(その1:静的載荷) 1000 900 コンクリート上面:圧壊 載荷荷重:Pu=913KN(計算値855KN) たわみ量:δu=56.78mm 800 載荷荷重(kN) 700 設計値 Pu=582KN H鋼桁下フランジ:降伏 載荷荷重:Py=700KN(計算値714KN) たわみ量:δy=24.86mm 600 count-1 count-2 count-3 本試験 設計値 Py=458KN 500 400 載荷荷重:P=259KN たわみ量:δ=8.11mm 300 200 残留たわみ量:δ=30.14mm 100 0 0 10 残留たわみ量:δ=1.16mm 20 30 40 支間中央たわみ量 (mm) 50 60 70 4.繰り返し荷重載荷試験(200万回) 荷重~たわみ曲線図 疲労試験(繰り返し荷重載荷) cycle-50 300 cycle-100 cycle-200 250 cycle-500 cycle-1000 cycle-2000 載荷荷重(kN) 200 cycle-5000 cycle-10000 150 cycle-20000 cycle-50000 200万回載荷後増 加たわみ量 δ=1.52mm 100 cycle-100000 cycle-200000 cycle-500000 50 cycle-1000000 cycle-1500000 cycle-2000000 0 0 2 4 6 支間中央たわみ量 (mm) 8 10 12 5.静的破壊試験(その2) 繰り返し荷重載荷試験後の実験桁を用いた静的破壊試験 荷重~たわみ曲線図 破壊試験(その2:疲労試験終了後静的載荷) 1000 900 800 コンクリート上面:圧壊 載荷荷重:P=917KN(計算値855KN) たわみ量:δ=61.62mm 700 載荷荷重(kN) 設計値 Pu=582KN 600 count-1 count-2 count-3 本試験 H鋼桁下フランジ(G2):降伏 載荷荷重:P=601KN(計算値714KN) たわみ量:δ=20.64mm 500 設計値 Py=458KN 400 載荷荷重:P=261.3KN たわみ量:δ=8.71mm 300 200 残留たわみ量:δ=32.57mm 100 0 0 10 20 30 40 支間中央たわみ量 (mm) 50 60 70
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