一般社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS バイオメトリクス研究会資料 Proceedings of Biometrics Workshop BioX2013-P2(2013-05) 食事介助のためののみ込みセンサ開発の基礎的研究 西谷 光世† 折戸 亮輔† 金 主賢† 中島 一樹‡ †富山大学工学部 〒930-8555 富山市五福 3190 E-mail: ‡[email protected] あらまし 日本では介護度の高い介護施設利用者が年々増加している.先の研究では,介護施設職員が利用者に提供する介 護技術の中で「食事介助」が最も困難であるということが示された.本研究では,介護施設職員が食事介助する際の負担を軽減 するために,のみ込みセンサ開発の基礎的研究を行った.安静時とのみ込み時の顎二腹筋の筋電図を測定し,積分筋電図を算出 することでのみ込みを判定した.健常成人男性 7 名に,唾液,水 10mL,プリンをそれぞれのみ込んでもらった.のみ込み時の 積分筋電値は安静時よりも統計的に有意に大きかった. キーワード 食事介助,顎二腹筋,積分筋電図 Preliminary study on development of a swallowing sensor for meal assistance Kosei Nishitani† Ryosuke Orito† Juhyon Kim† and Kazuki Nakajima‡ †Faculty of Engineering, University of Toyama 3190 Gohuku, Toyama, 930-8555 Japan E-mail: ‡[email protected] Abstract In Japan, number of nursing facility users who require high nursing care level are increasing every year. The previous study was showed that “meal assistance” was the most difficult care technique for the nursing care staff. In this study, a preliminary study on development of a swallowing sensor was performed to reduce burden of nursing care staff for meal assistance. The electromyogram of the digastric was measured both at the resting and at the time of swallowing, and evaluated the time of swallowing by computing an integrated electromyogram. Seven healthy males swallowed his saliva, 10 mL of water, and a pudding, respectively. Integrated electromyogram values at the time of swallowing were significantly greater than those at the resting. Keyword meal assistance, digastric, integrated electromyogram プ リ ン グ 周 波 数 は 10kHz と し た .の み 込 み 時 に 連 動 す る 顎 二 腹 筋 に 電 極 (NM-512G,日 本 光 電 )を 貼 り 付 け た . 耳 朶 に は 電 極 (デ ィ ス ポ 電 極 F ビ ト ロ ー ド , 日 本 光 電 ) を 貼 り 付 け 基 準 電 位 と し た . 得 ら れ た 筋 電 図 か ら 0.1 秒 毎 に 0.4 秒 間 の 時 間 積 分 を 行 い , 積 分 筋 電 図 を 算 出 した. 1. は じ め に 超高齢社会の日本では,要介護度の高い介護施設利 用 者 が 年 々 増 加 し て い る [1-3]. 先 の 調 査 で は ,富 山 県 内の介護施設の職員が提供する介護技術の中で,どの よ う な 困 難 感 を 有 し て い る か を 調 査 し た [4-5].そ の 結 果,食事介助に対する困難感が最も強いことが明らか になった. 食事介助時の職員は,被介護者のペースで食事をし てもらいたいが他の業務もあること,健康維持のため に食事を全量摂取してほしいが被介護者の食欲がわか らないこと,死にも至る可能性がある肺炎の原因とな る誤嚥をしてほしくないことから,大きな心理的困難 感 を 有 し て い る .被 介 護 者 の の み 込 み が 明 瞭 と な れ ば , 食事介助の困難感が軽減されると考えられる . 本研究では食事介助のためののみ込みセンサの開 発 に 向 け て ,の み 込 み 時 の 顎 二 腹 筋 の 筋 活 動 に 着 目 し , 積分筋電図を用いることでのみ込みの判定を行った . 送信機 受信機 PC EMG(筋 電 図 )ア ン プ 図 1 筋電図測定システム ([6]よ り 引 用 , 一 部 改 編 ) 2.2 測定方法 健 常 成 人 男 性 7 名 が 被 験 者 と な っ た .唾 液 ,水 10ml, プ リ ン 10g(プ ッ チ ン プ リ ン ,グ リ コ )の 3 種 類 を そ れ ぞ れ 3 回ずつ合計 9 回のみ込んだ.測定はのみ込みの前 後 の 5 秒 間 ,つ ま り 合 計 10 秒 間 行 っ た .図 2 に 唾 液 の み込み時の筋電図と積分筋電図を示す .のみ込み前の 2. シ ス テ ム 構 成 2.1 筋 電 図 測 定 シ ス テ ム のみ込み時の筋電図の測定にはマルチテレメータ シ ス テ ム (WEB5500 , 日 本 光 電 )を 用 い た (図 1 ). サ ン -3- 0.6 秒 ~ 3.0 秒 ま で の 積 分 筋 電 値 の 平 均 値 を 安 静 時 と し た.被験者は,研究内容に関する十分な説明を受け研 究参加に同意した. 謝辞 4. 本 研 究 の 一 部 は 科 学 研 究 費 助 成 事 業 (25670992)の 補 助を得て実施した. の み 込 み (唾 液 ) 0.3 5. 0.01 [1] 内 閣 府 , 平 成 24 年 度 , 高 齢 社 会 白 書 , pp. 2-6. URL(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/ze nbun/pdf/1s1s_1.pdf) 0.1 0 -0.1 筋電値 積分筋電値 -0.2 -0.3 0 2 図 2 3. 6 4 8 積 分 筋 電 値 [Vs] 筋 電 値 [V] 0.2 0 Last check 2013.4.19 [2] 2-1.pdf) -0.01 Last check 2013.4.19 [3] -0.02 10 /dl/h22_gaiyou.pdf) Last check 2013.4.19 [4] 平 田 洋 介 ,中 林 美 奈 子 ,成 尾 明 子 ,中 島 一 樹 ,中 村真人,チャピゲンツィ,成瀬優和,ユーザビリティ を 考 慮 し た 介 護 機 器 の 開 発 に 関 わ る 研 究 (1), 第 71 回日 本 公 衆 衛 生 学 会 抄 録 集 , no.0709-76, p.406, 2012. [5] 中 林 美 奈 子 ,平 田 洋 介 ,成 尾 明 子 ,中 島 一 樹 ,中 村真人,チャピゲンツィ,岸美鈴,炭谷英信,成瀬優 和,ユーザビリティを考慮した介護機器の開発に関わ る 研 究 (2),第 71 回日 本 公 衆 衛 生 学 会 抄 録 集 ,no.0709-77, p.407, 2012. [6] 小 川 鼎 三 , 森 於 菟 , 森 富 , 解 剖 学 1, 金 原 出 版 , 第 10 版 , p.279, 1977. 図 3 に被験者 7 名の安静時とのみ込み時の顎二腹筋 の積分筋電値を示す.安静時とのみ込み時の積分筋電 値には 4 倍以上の差があり,統計的にものみ込み時が 有 意 に 大 き か っ た (p < 0.001, t-test).こ れ よ り の み 込 み に連動する顎二腹筋の活動は,積分筋電図により閾値 を設定することで判定できることが示唆された .今後 は,被験者ののみ込みが検出可能なセンサの開発をし ていく予定である.センサの形状,測定箇所, 測定シ ステムなどを検討していく必要がある . *** *** 積 分 筋 電 値 [Vs] 0.02 0.015 :SD n=7 0.01 安静時 0.005 のみ込み時 0 図 3 唾液 水 厚生労働省,介護保険事業報告 URL(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/10 筋電図と積分筋電図の比較 *** 厚生労働省,有料老人ホームについて URL(http://www.cao.go.jp/consumer/doc/100409_shiryou 結果および考察 0.025 参考文献 0.02 プリン 顎二腹筋の積分筋電図の平均の比較 -4-
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