室 蘭工業 大 学 教 授 に伺いました は実用化できないと思いました。仲間に話すと、 庫の利 用 効 率 としては非 常に悪い。私はこれで と残 り 半 分 しか農 作 物 を 貯 蔵でき ません。倉 れる必 要があることがわかりました。そう する 厄介物の雪を冷熱源として実用化した第一人者に、発想経緯や、 再生可能エネルギー普及に際し土木に求められる役割を伺いました。 究を提案したのがきっかけです。 雪利用の可能性は 広がっている 農 家 出 身の方がおられて、 農 業 倉 庫 というのは 年中満杯になっていることはなく、 満杯になる のは収 穫 直 後の 先 生は、北 海 道 内はもとより、東 北や北 陸 の多雪地帯においても、雪を利用した産業振興 として全 体の 分の が出 荷され、 残りの 分 ─ や地域振興に多大な貢献をされています。雪の の は春野菜として出荷される。そのため、 冬の つか教えてください。 月まで温度を保つには部屋の半分くらい雪を入 分の くらいしかふさがっていない 電 気の 氷 室は雪を入れておくだけですから、 ないところでも 年 中 運用できます。温 度が低 思いました。 というのです。それを聞いてすべて解決できると 終わりには 3 10 1 9 1 1 月、 月。その後は正 月 野 菜 しかし、 自 分の中には春 先の放 置された黒 ず んだ雪が哀れだという 思いが残っていました。そ 冷 熱を活用した施 設やシステムの事 例を、 いく ができるようになったときに、 雪の利用の研究を 媚山 の低 温に保っておき ま す。計 算 すると、 月、 〜 ℃くらい 最初にやったのは、 帯広郊外の幕別での 始めたのです。そのとき、 室蘭市では鉄鋼不況で 氷室です。150㎜の断熱材を入れた倉庫をつ ─ 新しい産 業をつくろうと、 ヒートパイプという 装 くり、 その中に雪を貯め、 年中 人 以 上 集 ま り、 いろいろな技 置の研 究 会を立ち上げていました。室蘭 市の中 小 企 業の方々が 4 9 3 く、 湿度が %以上という高い状態ですから、 野 1 2 46 土木学会誌 vol.97 no.4 April 2012 こ の 人 に 聞 く 媚山 政良 先 生は、雪 室を利 用した冷 熱エネルギーの 雪解けの切なさが 研究のきっかけに ─ 国 内 普 及における第一人 者ですが、雪をエネル ギーとして活用する発想に至った経緯について、 私は札幌生まれの札幌育ちですから、 お聞かせください。 ─ 媚山 雪がすぐそばにありました。 しかし、 春先、 雪が 解 け、 汚 く 泥 だらけになる。私 としてはそれが 見ていてとても 切 なかったので す。大 学でドク ターに進むときに、 熱関係のボイラーの研究をし ていましたが、 副業でもいいから雪を貯蔵する研 月、 月になったら解 ける。 究をやってみたいと指導の先生に話をしました。 そ うしたら、 雪は きたとしても、 石油に比べてエネルギー密度が低 く、 巨 大な施 設が必 要になると叱られました。 K OBIY A M A Ma s a y o s hi こで、 代 後 半で助 教 授になり、 研 究 室の運 営 それで、 そのままになってしまいました。 ん さ 88 長 持 ちさせられるよう なものではない。もしで 5 術開発をしていましたので、 そこで雪の利用の研 10 1 1946年生まれ。 北海道大学工学研究科博士課程修了後、 76年より室蘭工業大学文部技官、 83年より同大学工学部機 械システム工学科熱流体講座熱エネルギー研究室助教授、 2008年より教授。 専門分野は、 熱工学、 放射熱伝導、 雪工 学など。 利雪技術協会顧問、 全国明るい雪自治体連絡協議会顧問、 雪懇話会座長などを務める。 こびやま・まさよしさん プロフィール 1 4 30 3 90 30 す。長 イモの場 合、 冷 蔵 庫では ヶ月で重 さが 菜 も しなびることな く、新 鮮 な 状 態に保てま 機で空 気 を 循 環させるという ものです。 これに つくりました。それは別の部屋に雪を貯め、 送風 えています。 くり、 夏の冷 房や農 作 物の貯 蔵に使 うことを考 人工降雪機 (スノーガン) を開発し、 それで雪をつ 全国で200個 今では雪を利用した施設は、 所以上あります。 三陸の漁港では、 獲った魚を冷 再 生可 能エネルギーに注 目が集まる昨 今、 雪利用の施設開発や インフラ整備には 土木の力が欠かせない よって雪の利用の範囲が非常に広がりました。 す。 ジャガイモの場 合は、 冷やす と凍 結しないよ やすための製 氷 施 設が東日本 大 震 災で被 害 を %落 ちま す。しかし、 雪の場 合、 ヶ月で % うに自 分の中で糖 分をつくり 出します。そのた 受けましたが、 北 海 道で凍った雪を砕いて、 それ しか 減 り ません。 倍 長 期 貯 蔵 がで き るので め、 私も経 験しましたが、 さつまいもと間 違 える を漁 船に積んで沖で使ってもらうことを考 えて ─ がございましたら、 お聞かせください。 ─ たとえば、 都市部では道路の下に流雪 土 木 技 術 者に求められる役 割や期 待 すること ま た、 北 海 道の新 千 歳 空 港の滑 走 路の雪 を ターミナルビルの冷房に利用したり、 海外でも北 くらい甘くなります。 〜 います。 %に調 整 し、温 度 は 媚山 ただし、 米には適しません。米は水分が %で ないと市 場に出せないのです。水 分 を %にす るためには 湿 度 を 米の五大湖周辺の空港での利用のほか、 雪の少な 溝をつくり、 水で雪を下流に流し、 雪を集めるこ [photo]永田 まさお 5 15 ℃くらいにする必要があります。そこで湿 度 いユーラシア大 陸で水 道につな ぐ だけで使 える [writer]駒崎 文男 1 10 や温 度 を調 整できる 「 雪 冷 房 」という 仕 組みを とができれば、 夏のビルの冷熱として供給するこ とができます。また、 ダムの湖底の不易層の冷水 も 持ってくることができれば冷 房として利 用で き ま すし、 ダムの近 くに冷 熱 を 必 要 とするクラ ウドデータセンターなどの産 業 を 誘 致 すること ができます。そうしたインフラをつくるためには 土木の力が欠かせません。 北 海 道では春 先に農 業 用 水の そのほかにも、 不足に見舞われるため、 雪解けを 週間から半 月ほど遅らせるように雪を貯めておく「雪ダム」 の建設が期待されています。 それこそまさに土木 の領 域です。また、 雪の貯 蔵では使われなくなっ た採石場などの地下空間を利用すれば、 半永久 的に貯蔵できます。雪の利用には、 機械だけでな く、 農業、 土木、 建 築など多くの分野の知恵が必 要です。そういう意味では、 土木の方々にも積極 的に入ってきていただければと願っています。 土木学会誌 vol.97 no.4 April 2012 47 1 編集委員 佐藤 康晴 聞き手 2012年1月13日 (金) 土木学会役員会議室 5 70 15 10 5 7
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