ポリマーがい管の研究と開発 - 日本ガイシ

1
ポリマーがい管の研究と開発
Development of Polymeric Hollow-Core Insulators
NGK has succeeded in developing polymeric hollow-core insulators anticipating use of up to 500kV. This report describes
research results on their dielectric, mechanical and other characteristics as well as some items on proper precautions
which should be taken into consideration in their use in power apparatus. This understanding of the characteristics of
polymeric hollow-core insulators will help users in proper application.
1.まえがき
いるため如何に材料、構造、製造面でその信頼性を高め
るかが重要となる。
近年、有機絶縁材料を外被材に使用したがい管は複合
以下、研究を通して得られた知見およびポリマーがい
がい管、コンポジットがい管、ポリマーがい管などと呼
管の適用上の課題について報告する。
ばれ、軽量、耐衝撃性や外被の撥水性に優れる機器用が
い管が米国を中心に使用され始めている(以下、ポリ
2.基本構造の選定
マーがい管と呼ぶ)
。これらは、外被材であるシリコーン
2.1 がい管形状
ゴム、機械強度部材である FRP (Fiber Reinforced
がい管の形状には、ストレートタイプとテーパタイプ
Plastics )などの有機材(高分子材料)で構成されてい
の2 種類がある。ガス遮断器(GCB)などのガスブッシ
る。しかしながら、厳しい環境にある国内での使用実績
ングに使用されるような場合、テーパタイプの方が使用
が乏しく、高い信頼性の変電機器に使用するに当たって
ガス量の低減、軽量化、平均直径細径化による汚損耐電
は、実フィールドでの長期信頼性の検証が課題となって
圧向上からくる全長短尺化などに加え、既存磁器製がい
いる。現在、国内においては長期信頼性の検証、適用上
管との互換性確保の容易さなど機器側でのメリットを期
の課題を把握するため、各所での試験的な採用が試みら
待できる場合が多い。しかし、テーパタイプではFRPの
れている (1)(2 )。
製作、外被の成形など生産技術面で難度が高い。当社で
このような現状を踏まえ、電気学会等において、国内
は、ストレートタイプに加え、ユーザにメリットを提供
外での適用状況および研究内容についての現状調査が開
できるテーパタイプの両者について技術開発した。
始された。当社では、がいしの総合メーカとしてユーザ
のニーズに応えて行くべく、 1995年から500kV 級まで
2.2 外被成形方法の選定
の開発を進め技術的な見通しを得た。機器に装着された
ポリマーがい管ではFRPの外周に外被が成形され、両
ポリマーがい管が磁器製がい管同様、各種の環境・使用
者の境界は接着界面と呼ばれる。その面積は送電用ポリ
条件下で長期間電気的、機械的な信頼性を維持すること
マーがいしに比べ数十倍大きい。長期絶縁信頼性上重要
が必要な点に変わりはないが、磁器製がい管とは異なる
である接着界面の品質と、さらに、直径の大きなFRP筒
視点での検討すべき事項もある。特に、高分子材料を用
に外被を成形する生産性は成形方法と密接に関係するた
め、成形方法の選択が重要となる。現在、世界で実用化
中山 哲也:電力事業本部 ガイシ事業部 技術部
されている成形方法の特徴比較を第1表に示す。当社で
深見 幸輝:電力事業本部 ガイシ事業部 技術部
は、成形回数や外被・外被接着部のミニマム化、また製
桐井 政信:電力事業本部 ガイシ事業部 技術部
造管理面など総合的に評価し、金型を用いて一体成形す
内海 雄介:電力事業本部 ガイシ事業部 技術部
るブロック注型法を選定した。ブロック注型法による成
曽我 正成:電力事業本部 ガイシ事業部 技術部
形状況を第 1 図に示す。
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
2
第1表 外被成形方法の特徴比較
NGK
ユニット
テープ状
ユニット笠
ブロック注型
注 型
巻き付け
接 着
成形方法
項 目
最大 2m までの長さを
方法の概要
金型で FRP 上に 1 回
笠 1 ピッチ分を
FRP 上に連続し
笠 1 ピッチ分の帯状
成形された笠を
ゴムを FRP 上にスパ
FRP 上に接着
で成形
て成形
イラルに巻きつけ
生産面
段違笠
容易
困難
容易
容易
の形状
水切り笠
容易
困難
困難
容易
自由度
テーパ形状
容易
困難
容易
困難
ゴム・FRP
加圧下で加硫接着
大気圧下で加硫
大気圧下で加硫
大気圧下で接着
信頼性
接着方法
他方法に比べ良
接着
接着
材により接着
確 保
ゴム・ゴム
2m に 1 個所と最小限
笠 1 ピッチごと
スパイラル面すべて
笠 1 ピッチごと
接着界面の数
他方法に比べ良
に 1 個所と多い
と多い
に 1 個所と多い
RTV*
RTV
HTV**
HTV
ゴ ム 材 料
*RTV:室温硬化型の液状シリコーンゴム
**HTV:高温硬化型のミラブル状シリコーンゴム
上部フランジ金具
外被材
外被材と FRP 筒の
接着界面
第 1 図 ブロック注型による成形状況
2.3 構造
FRP 筒
ポリマーがい管の構造を第2 図に、各部の構成・特徴
について以下に示す。
(1)外被材
がい管のような比較的太径の円筒に、複雑な笠形状を
有する外被を成型するのに適したゴムとして RTV を採
用した。
フランジ金具と FRP
筒の接着界面
・長尺外被の成形
1回で成形できる外被の長さは約2000mmである。こ
の長さは、生産する品種や設備コストなど総合的な経済
性から決定されている。これ以上の長さの製品について
下部フランジ金具
は、成形を何回かに分けて行う。この場合、シリコーン
外被とシリコーン外被の継ぎ部分は成形硬化時点に化学
的に一体化される。
第 2 図 ポリマーがい管の構造
(テーパタイプ)
3
ポリマーがい管の研究と開発
・笠形状
(2)耐トラッキング・エロージョン特性
適切な形状(笠ピッチと笠出張)に設計された段違笠
ドライバンドアークへの耐性を評価する代表的方法と
を用いることで、重汚損用でも磁器がい管同等以上のが
(4)
して傾斜平板法(IEC 60587)
がある。
い管高さ当たりの表面漏れ距離を確保できる。
第 3 図に RTV-A と RTV-B の試験後の外観を示す。
(2)FRP 筒
使用電界の大きさ、製造コストの両方を検討した結
ATH が配合されていない RTV-A は印加電圧 4.5kV で
はトラッキングが25mm また侵食深さも5mmを上回り
果、フィラメントワインデイング製法FRP筒
(電気絶縁
不合格であるのに対し、RTV-B はトラッキングが殆ど
用ガラス繊維と酸無水物系のエポキシ樹脂で構成)
を採
なく、侵食深さも約1mmと浅く合格した。これはATH
用した。
の添加により耐トラッキング・エロージョン特性が向上
(3)フランジ金具
した事を示している。
FRPおよびシリコーン外被との接着性、軽量化などの
観点から、上部・下部フランジ金具ともアルミニューム
合金を採用した。
(4)FRP とシリコーン外被の接着
適切な温度・圧力での成形硬化時点で、FRP表面に塗
布したプライマーと呼ばれる結合材の作用で、FRPとゴ
ムは化学的に一体化される。
RTV-A
(5)フランジ金具と FRP の接着
両者の熱膨張係数の違いを考慮しながら、エポキシ系
の樹脂で気密・機械的に接着される。気密にOリングな
どのパッキング類を使用しない単純な構造となってい
る。
3.研究結果
RTV-B
研究は長期信頼性に関わる要因、機器使用上のメリッ
トを発現するためのコンパクト化などについて行った。
その概要を以下に示す。
(試験条件:AC 4.5kV × 6 時間)
第 3 図 耐トラッキング・エロージョン試験後の試料外観
3.1 外被の劣化特性
外被の長期信頼性評価で重要となる劣化特性調査結果
(3)耐コロナ特性
について述べる。ここでは、汎用グレードRTV-Aと当
コロナ放電が生じると大気中の湿気と反応して硝酸が
社が開発した ATH (Alumina Tri-hydrate )配合の
生成され、外被ゴムの劣化を引き起こす要因となる事を
RTV-B の 2 種について比較した。劣化特性についての
当社では解明してきた(5)。清浄な環境でのコロナ放電に
考え方などについて本号
“ポリマーがいし用外被ゴムの
対する耐性を評価する方法は未だ一般化されていない。
劣化特性”に記述されているので参照いただきたい。
そこで、清水霧を充満させた試験室中に試料
(長幹がい
しタイプ;表面漏れ距離 560mm)を配置し、長時間課
(1)耐候性
電(30kV)して外被の劣化進展具合を見る当社独自の
ASTM G53(3)に規定される蛍光紫外線照射法による
方法で評価した。 その結果、時間の経過と共にRTV-A、
試験の結果、 RTV-A、RTV-Bともに規格上の1000 時
RTV-Bともに撥水性の喪失から始まりエロ-ジョンの
間を超える 4000 時間後でも後退接触角は試験前と同等
発生など表面状態に変化が現れるが、エロージョン発生
の 90 度程度で撥水性が維持され、表面にクラックなど
までの時間を比較すると、後者ではおよそ2倍以上の時
の発生もなかった。また、RTV-A, RTV-Bとも伸びは
間を要した。
低下するが、3倍以上の伸びであり、十分な弾性が保持
されていた。従って、 ATH 添加による耐候性への影響
以上述べたように放電に対する劣化特性向上のために
はないと考える。
は、ATH の配合が必要である。
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
4
により求めた。計算値と実測値と概ね一致した。
3.2 外被、FRP の水分透過特性
磁器と異なり、高分子材料には材料中への水分拡散を
(3 )500kV 級がい管(ガス封入)での透過水分量推定
通じて内部空間へ水分を透過させる特性がある。この特
前述のSとDの実測値を用いて、外気の温度25℃、相
性はポリマーがい管の適用において十分注意すべきもの
対湿度 71% と仮定し、がい管(内径 650mm 、全長
である。ガス機器では適正量の水分吸着剤の使用が求め
5200mm、FRP 厚さ 15mm)内部への透過水分量を計
られる。油絶縁機器ではガス絶縁機器に比べ水分吸着対
算した。その結果、内部空間の初期湿度をゼロと仮定し
策が取りにくいため、水分透過の小さなFRPの選定、さ
た場合、がい管内部の水分量は約9年でガス機器の水分
らに適正な FRP 肉厚の設定が求められると共にガス機
管理値とされる150ppm に達することになる。機器側で
器に比べより慎重な対応が必要である。外被、FRPの水
の適切な対応が重要となってくる。なお、FRPの種類に
よってSとDの値が異なるので、推定にあたっては対象
分透過特性に関する調査結果を以下に示す。
(1)水分透過現象
FRP の実測値を用いる必要がある。
水分透過は水蒸気分子の固体内拡散現象であり、水分
の拡散具合は、溶解度係数が一様の物質内にあっては、
3.3 長期絶縁特性
Fick の法則とも呼ばれる(1)式で表される。
機器の一部として使用される場合、運転電圧や雷など
∂ c/ ∂ t = D ∇ 2c………………………(1)
のインパルス電圧などの軸方向の電界にさらされる。こ
ここで、 c:水蒸気分子の密度 =P WS
のため、シリコーン外被、FRP、シリコーン外被相互の
PW: 各部の水蒸気圧
S: 溶解度係数
継ぎ部分の界面、FRPとシリコーン外被との接着界面な
t:時間
D:拡散係数
ど各部の絶縁強度が屋外環境下で使用される電界に長期
FRP について求めた溶解度係数 S は 25℃において約
間耐えるレベルを有するか評価しておく必要がある。絶
1 × 10-3[kg/m3 /Pa]、拡散係数 D は約 7 × 10-14[m2 /s]
縁強度を左右する FRP、シリコーン外被と FRP の接着
であった。FRPに対し、シリコーンゴムの溶解度係数S
はほぼ1/2、拡散係数Dは数千倍と大きい。したがって、
界面についての調査結果を以下に示す。
(1 )FRP の絶縁破壊強度
ポリマーがい管の透過水分量は FRP とシリコーン外被
ボイドレス A、セミボイドレス B 、C および D(ボイ
の薄膜状接着界面の影響を含めても FRP で決定される
ドレベルはこの順に増加)についての破壊電圧(沿層方
と言える。
向、以下同じ)調査結果を第 5 図に示す。ボイドがより
S および D を(1)式に代入し、対象の寸法諸元を決
多く含有されるD では、A、B、C に比べ絶縁強度が低
めれば、水分透過量の時間的変化を求めることができ
下する。ポリマーがい管用に適用する場合には、その使
る。
(有限要素法のコンピュータプログラムを用いて計
用条件を踏まえ適切なボイドレベルで安定した絶縁強度
算する。
)
のものを使用する必要がある。
(2)透過水分量調査結果
FRP A
1.2
FRP筒の内部に乾燥した絶縁油を封入した試料を恒温
FRP B
FRP C
FRP D
恒湿槽内に置き、定期的に絶縁油を少量抽出し、その水
1
中の計算値は 60℃における S と D の値を用いて(1)式
油中水分濃度 c 〔ppm〕
200
外気条件
気 温
湿 度
FRP 寸法
厚 さ
表面積
油 量
150
100
:60℃
:80%
実測値
( 3点)
0
0.8
0.6
0.4
試料
0.2
:0.5cm
:240cm2
:600cm3
0
ボイドレス
計算値
小
大
ボイド量
試料形状
50
絶縁強度比
分量から求めた透過水分量測定結果を第4図に示す。図
第 5 図 絶縁強度比とボイド量との関係(沿層方向)
0
100
200
300
400
500
600
経過日数 t 〔日〕
第 4 図 透過水分量測定結果
700
800
(2 )吸湿の FRP 絶縁破壊強度への影響
屋外で使用されるため、FRPの吸湿が絶縁強度に及ぼ
す影響を評価し、設計に反映させる必要がある。供試試
5
ポリマーがい管の研究と開発
料 AとD の吸水率と加湿日数の関連を第6図に示す。あ
3.4 機械強度特性
る吸湿量に至る時間はDのほうが早い。また、絶縁破壊
機械強度については FRP と FRP・金具接着部につい
強度比と吸水率との関連を第7図に示す。 Aでは吸水率
て考える必要がある。FRPは弾性域と塑性域を有し、ま
が増加しても絶縁破壊強度の変化は見られないが、 Dで
た両者とも加える温度レベルと荷重印加時間により特性
は水分量の増加と共に低下傾向を示す。これらの点から
が変化する。磁器と異なるこれらの点を考慮した設計が
も(1)項同様の配慮が必要である。
必要である。
(1)静的強度特性
吸水率〔 wt%〕
0.2
(1-1 )FRP
a. がい管軸方向のヤング率
0.15
ロービング(ガラス繊維の束)と軸芯のなす巻き角度
(配向角)によりヤング率と強度が変化する。磁器の約
0.1
55000Mpaに対し、配向角20、40、55度品のヤング率
0.05
0
はそれぞれ約 26500、18500,14000 Mpa である。内
△:FRP A
□:FRP D
0
50
100
圧と曲げ荷重が加わる場合、円周と軸方向応力のバラン
150
加湿日数〔日〕
第 6 図 吸水率と加湿日数との関係
絶縁強度比
スから標準的には55度付近を選定するケースが多いが、
この場合は磁器のヤング率の 1/4 程度に小さくなる。
b. 荷重―ひずみ、残留ひずみ特性
1.2
FRPに荷重を加え増加させていくと、弾性域から塑性
1
開始域、微細なクラックの発生域、その拡大域を経て破
0.8
壊に至る。設計にあたっての想定荷重と応力の関係を決
0.6
める一つの考えとしてポリマーがい管の試験法(IEC
0.4
0
(6)
の方法がある。ここでは、第 2 表に示すよう
61462)
△:FRP A
□:FRP D
0.2
0
0.1
0.2
に、曲げおよび内圧の最大使用荷重のそれぞれ1.5倍およ
0.3
吸水率〔wt%〕
び2.0倍の荷重値が弾性域内にあること推奨している。ま
た、弾性域とはある荷重を加えたときのひずみをε1、荷
重を開放したときの残留ひずみをε 2 として、ε 2/ ε 1
第 7 図 絶縁強度比と吸水率との関係
を % で示した残留ひずみ率が± 5% 以下にとどまる領域
シリコーン外被とFRP接着界面の破壊までの時間
(3)
と規定している。しかし、残留ひずみは第9図に示すよう
特性(V-t 特性)
に荷重解放後の経過時間と共にその大きさが変化するた
FRP に比べ絶縁強度が低いシリコーン外被と FRP 接
め、計測までの時間の規定が必要である。また、第10図
着界面について、正常な接着品質の試料Aと接着を低下
に示すように配向角が小さいと残留ひずみ率の絶対値も
させた試料 B についての V-t 特性調査結果を第 8 図に示
小さくなり、5%に至らず破壊してしまうケースがあり、
す。接着品質を低下させると、絶縁強度のレベルは初期
残留ひずみ率±5%で一律規定する場合、対象を配向角
値と共に長時間域も低下した。接着品質は長期信頼性の
55 度に限定する必要がある。
面からも重要であり、実体品での検証が必要である。
絶縁強度比
10
第 2 表 IEC 61462 における弾性域の定義
□:試料 A
■:試料 B
8.4.1 内圧試験
a) ステージ 1:
MSP の2倍で試験
1
0.1
8.4.2 曲げ試験
b) ステージ 2:
MML の 1.5 倍で試験
10-1
101
10 3
時間〔 sec〕
第 8 図 V-t 特性
10 5
10 7
・弾性限度内であること
荷重負荷前後で歪みゲー
ジの指示値は最大歪値の
± 5%以内であること
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
6
残留歪量比
1.2
し 2.5 倍の安全率を見ている)を確保しても、MML で
1
はひずみが大幅に増加する。高温域で連続して曲げ荷重
0.8
が加わった状態で使用されるようなケースでは、荷重の
決定に当たって注意すべきである。
0.6
(2-2 )FRP と金具接着部
0.4
内圧荷重を想定したせん断応力と、曲げ荷重を想定し
0.2
た引っ張りを、それぞれ単独で加えたテストピースで破
0
懐までの時間を調査した結果を第13 図および第14 図に
10
5
0
15
20
経過時間〔分〕
それぞれ示す。いずれの強度も経過時間と共に低下して
行く。高温での長期間の連続使用を考える場合、初期強
第 9 図 残留ひずみと荷重解放後の経過時間の関係
(配向角 55 度の場合)
度に対し 50% 程度に低下する事を考慮しておく必要が
ある。
7
5
配向角
試験温度 90 ℃
4
4
3
40 度
2
1
0
5
55 度
IEC 規格不合格領域
歪み量比
残留歪み率〔%〕
6
1.5MML
2MML
3
2
1
20 度
MML
0
SML
曲げ応力
5
試験温度 90℃
4
歪み量比
ポリマーがい管が使用される-40℃程度から+ 90℃
下が生じる。このため、最高使用温度の設定にあたって
2
1
構造設計も関係するので、FRPと金具が接着された状態
0
で FRP と金具接着部分の強度評価を行う必要がある。
◇:1.5MML
□:MML
△:1/3MML
3
は、強度が安定域にあるよう選定する必要がある。また、
1
10-1
(2)長期強度特性(クリープ)
10
供試試料を+90℃の恒温槽内に設置し、いくつかの水
試験温度 90℃
て見ると、室温域でポリマーがい管の試験法( I E C
印加応力比
準で内圧および曲げ荷重を加え、ひずみの変化を調査し
61462)(6) でいう SIP (Specified Internal Pressure)
ずみの増加は小さく、実用上無視できる。しかし、曲げ
荷重については、SML(Specified Mechanical Load)
レベル(MML (Maximum Mechanical Load )に対
W
平板
接着面
1
レベル(MSP (Maximum Service Pressure)に対し
4倍の安全率を見ている)を確保した場合、MSP でのひ
104
103
102
時間〔 hour〕
10
第 12 図 FRP の曲げクリープ特性
(2-1)FRP
た結果を第11図および第12図に示す。内圧荷重につい
104
103
102
10
時間〔 hour〕
第 11 図 FRP の内圧クリープ特性
(1-2)FRP と金具接着部
る。接着剤の強度は100℃付近を超えると急激な強度低
1
10-1
第 10 図 残留ひずみ率と曲げ応力・配向角との関係
程度の温度域で、接着部には機械強度、気密性が求めら
□:2 MSP
◇:MSP
W
0.1 -1
10
1
10
102
103
10 4
時間〔hour 〕
第 13 図 FRP とフランジ金具接着部のクリープ特性
(テストピースによる内圧模擬)
7
ポリマーがい管の研究と開発
10
試験温度 90℃
W アルミ
等について述べる。
印加応力比
丸棒
接着面
1
(1)外被の撥水性
外被材であるシリコーンゴムの表面には撥水性があ
り、汚損物を均一に付着・乾燥させた後、湿潤させ電圧
を印加する定印霧中試験法による評価では、汚損層表面
0.1 -1
10
1
10
102
時間〔hour〕
103
10 4
第 14 図 FRP とフランジ金具接着部のクリープ特性
(テストピースによる曲げ模擬) まで、低分子シリコーンオイルがしみ出し、撥水性が有
効に作用する。このため、磁器製がい管に比べ高い耐電
圧が得られる。しかしながら、前処理により汚損物を直
接均一に付着させた直後、フラッシオーバするまで電圧
を上昇させる等価霧中試験法では、磁器製がい管と同等
(2-3)振動における減衰定数とたわみ
の耐電圧特性を示す。このように、表面の撥水性の作用
減衰定数測定結果の例を第3表に示す。ポリマーがい管
により結果が異なり、これが汚損耐電圧特性の評価を複
の減衰定数は FRPと金具が強固に接着される事から、磁
雑にしている。現実にフィールドで遭遇する急速汚損な
器と金具の間にセメントを充填して接合される磁器製がい
どの条件下では、撥水性の効果を発現できない場合もあ
管の約 3 から 5% に比べて(7)、0.7 から 1.7% と小さい。
り、漏れ電流の大きさが磁器がいしを上回る事例も確認
これは積載物などのある頂部応答が加振により増幅されや
されている(9)。現時点においては、撥水性が常時発現出
すく、曲げ荷重が大きくなる事を示しており、ポリマーが
来ない場合があることを考慮し、撥水性の効果は裕度と
い管そのものと機器側の強度について配慮する必要があ
見て、磁器製がい管と同等の表面漏れ距離を設定する考
る。また、具体的な設計の殆どのケースで碍管軸方向ヤン
え方が世界的に採用されている(10)。
グ率と断面2次モーメントを乗じた曲げ剛性が磁器の数分
ここでは、上記の背景を踏まえ、磁器製がい管で用い
の一と小さくなるため、より大きなたわみを生じ易い。汚
られる定印霧中法と等価霧中法の試験結果について紹介
損用でがい管全長が大きい場合、がい管頂部間の相間距離
やガスブッシングの内部絶縁距離の縮小や引き込みリード
する。
(2)定印霧中耐電圧試験結果
線との干渉などが発生したりする可能性がある。機器全体
汚損物の付着にあたっては、撥水性のある表面にも
としての設計にも配慮が必要である。
フィールドを模擬した均一な人工汚損層を形成すること
第 3 表 減衰定数測定結果
のできる当社が提案している方法で実施した(11)、JEC
0201 の定印霧中試験法に準じて求めた耐電圧試験結果
製品区分
減衰定数(%)
を第15 図に示す。ポリマーがい管の耐電圧は磁器製が
77 kV 級
1.5 ~ 1.7
い管に比べ 30%程度高くなった。また、塩分付着密度
154 kV 級
1.5 ~ 1.7
275 kV 級
1.1 ~ 1.5
500 kV 級
0.7 ~ 1.0
日本国内では、変電設備が汚損地区に設置されるケー
スが多いため、ポリマーがい管についても汚損特性につ
いて十分検討しておく必要がある。ポリマーがい管の汚
損試験については、現在IEC,CIGRE等の国際会議の場
で議論されているが、未だ統一された試験評価方法は確
様な傾向が見られた。
500
400
汚損耐電圧〔kV〕
3.5 汚損特性
(SDD)
が汚損耐電圧に及ぼす影響は磁器製がい管と同
300
200
100
立していない。現時点で各所で実施されている各種試験
方法の概要については文献(8 ) に報告されているので参
0
照頂きたい。ここでは、主にポリマーがい管の人工汚損
0.01
0.03
0.1
0.3
SDD〔mg/cm2〕
耐電圧特性の概要と汚損特性に優れた適正笠形状の選定
第 15 図 定印霧中耐電圧試験結果
1
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
8
400
がい管全長をコンパクト化するためには、がい管高さ
当たりの表面漏れ距離を大きく確保し、全長を短縮する
必要がある。ただし、むやみに漏れ距離を増加しても、汚
損耐電圧は向上しないため、汚損耐電圧特性に優れた適
正な笠形状を選定する必要がある。今回、定印霧中試験
法により各種笠形状の汚損耐電圧特性を調査した。50%
フラッシオーバ電圧と笠形状(笠1 枚当たりの漏れ距離
L と笠ピッチ P の比:L/P )との関係を第 16 図に示す。
フラッシオーバ電圧〔kV/m〕
(3)汚損耐電圧に及ぼす笠形状の影響
SDD:0.12mg/cm2
漏れ距離:5410mm
平均直径:290mm
350
300
250
200
150
100
不均一汚損(方法 A)
均一汚損(方法 B)
50
L/Pの増加に従い最大値を示し、その後低下する傾向を
0
示す。最大値を示す笠形状がその目安となる。海外では、
1
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
試験回数
単純に笠ピッチをつめて表面漏れ距離のみを確保する設
第 17 図 等価霧中フラッシオーバ電圧試験結果
計が見られるが、笠ピッチをつめすぎると漏れ距離を増
加しても汚損耐電圧が向上しないことから、注意が必要
である。
(5 )汚損物の付着特性
定印霧中法
段違笠
(SDD:0.03mg/cm2 )
250
200
累積汚損状態について磁器がいしと対比した結果を
第18 図に示す(12)。軽汚損域ではポリマーがい管の方が
磁器製がい管の数倍、重汚損域では同等レベルの傾向を
同径笠
( SDD:0.03mg/cm 2)
示している。フィールドでの不溶性物質および溶解性物
質の付着密度(NSDD 、ESDD)は累積汚損あるいは急
速汚損など環境条件で異なり、現在調査が行われている
150
100
が付着密度の違いなどを汚損設計にどのように反映する
段違笠
(SDD:0.5mg/cm2)
50
1.8 2.2 2.6 3.0 3.4 3.8 4.2 4.6 5.0 5.4 5.8
笠 1 枚当たりの表面漏れ距離と笠ピッチの比〔L/P〕
第 16 図 L/P と 50%フラッシオ-バ電圧の関係
(4)等価霧中試験結果
撥水性のあるポリマーがい管表面に単に汚損液を吹き
付けた場合(方法 A)と、上記の定印霧中試験法と同じ
前処理を施した試料に均一に汚損付着する方法で実施し
た場合(方法 B)の試験結果を第 17 図に示す。前者の
場合、電圧の印加回数が増すに従い、表面の撥水性は失
われフラッシオーバ電圧が急激に低下し、あるレベルに
収束する。後者の試験結果では最初からその収束値に近
のか今後検討が必要である。
ポリマーがいしの ESDD〔mg/cm2〕
50%フラッシオーバ電圧〔kV/m〕
300
0.1
0.01
0.001
0.0001
0.0001
0.001
0.01
0.1
磁器がいしの ESDD〔mg/cm2〕
第 18 図 汚損物の付着特性
い値で推移する。収束値は磁器製がい管の等価霧中試験
結果と同等である。
(6 )がい管形状の影響
平均直径がほぼ同等(約 310mm)のテーパおよびス
上記(2),(4)の試験方法・結果をどのように位置づ
トレート形状ポリマーがい管の定印霧中法による耐電圧
けるかは今後議論が必要であるが、初期の撥水性の効果
から電圧 1kV 当たりの漏れ距離を求め第 19 図に示す。
を考慮して表面漏れ距離を磁器製がい管に比べ短縮する
両者の値はほぼ同等の値を示した。また、平均直径150
事は避けるべきと考える。
から600mm程度のポリマーがい管について同様な方法
ポリマーがい管の研究と開発
で求めた値は、磁器製がい管と同様に平均直径に比例す
(13)
特有の現象であり、すでに、国内機器メーカでも検討が
のテーパとストレー
行われ研究の一部が報告されている(15)。このような現
ト形状ポリマーがい管においても、耐電圧は平均直径が
象と劣化発生は海外の超高圧の送電線でも経験されてお
130mm小さいテーパ形状の方が汚損耐電圧が15%程度
り、電界緩和に特に注意が払われている(16)。ポリマー
高く、この傾向に一致する。このように、平均直径を小
がい管においても、放電により生成される物質が外被の
さく出来るテーパ形状では同一の表面漏れ距離でも耐電
劣化を引き起こす事が懸念されるため、長期信頼性を確
圧が高くなり、さらに適切な笠径状の選定で漏れ距離効
保する上で、運転電圧でコロナ発生のないような電界緩
率をよくする事が出来るため、特に重汚損用のがい管全
和のための電極構造、碍管胴径の選定が必要と考える。
る傾向を示した
(14)
9
。また、文献
長のコンパクト化が可能となる。
耐電圧 1kV 当たりの漏れ距離〔mm/kV〕
3.7 外被と FRP の接着品質
外被と FRP の接着品質の評価にあたっては、生産直
50
テーパ
40
ストレート
供試試料: 154kV 級
ポリマーがい管
平均直径: 310mm
30
後に加え長期使用を想定した人工的なストレス印加後の
両方を考慮する必要がある。以下、この視点にたち調査
した実規模品での評価結果と界面の非破壊検査について
述べる。
20
(1)接着性評価方法の種類
a. 煮沸試験(ポリマーがい管の試験法(IEC61462(6))
10
のデザインテストの方法)
0
0.03
0.06
SDD〔mg/cm2〕
第 19 図 テーパとスレート形状の特性比較
小型(FRP 外径 100mm 以上、絶縁長 800 mm 以上)
のサンプルを 42 時間煮沸した後、電気絶縁特性の変化
を評価する方法である。この方法では、高温一定の条件
であるから、界面への機械的ストレスも一定であり、煮
3.6 水滴付着時のコロナ特性
沸による界面への水分供給による接着性の劣化度合いを
シリコーンゴム外被には撥水性があり、降雨下では外
評価している。
被表面に付着する雨滴が連続した水膜状にはならず、多
b. 冷熱試験
数の水滴が密集した状態になる。このため、ガスブッシ
この試験では、95℃程度の熱水側から5℃程度の冷水
ングなどに組みこまれた場合、水滴端部の電界集中によ
側へ、また冷水側から熱水側へと繰り返すもので、界面
り相当低い電圧でコロナ放電が生じることがある。コロ
には急激な機械的応力が繰り返し加わり、劣化を加速さ
ナ発生状況の例を第 20 図に示す。この現象はポリマー
せる事が出来る。この試験後に電気絶縁特性の変化を評
価する。この方法は煮沸試験同様その評価条件
(温度差、
300kV クラス
繰り返し回数など)
を実使用の条件と関連づけて定める
点に難しさがあるが、相対評価には有用である。
c. 引き剥がし試験
本試験は、初期あるいは煮沸・冷熱試験後にシリコー


(内部電極付近)

コロナ発生
ン外被の一部を引き剥がし、引き剥がした面の状態で品
箇所
質評価を行うものである。簡易的に行える割に有用な方
法である。引き剥がし方法の例を以下に示す。
・がい管の全長方向にシリコーン外被の上端から下端
まで幅 30mm 程度の切り込みを入れ、全体をその
幅で引き剥がす。この引き剥がしを円周の数箇所で
行う。
・がい管の全長方向の上、中、下部部分に約30mm四
方の範囲を定め、この範囲にさらに幅5mm四方の
格子状切り込みをいれ、それぞれを引き剥がす。こ
第 20 図 水滴付着時のコロナ発生状況
の引き剥がしを円周の数箇所で行う。
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
10
(2)実規模品での接着性評価結果
(3 )接着界面剥離の非破壊検査
内径50mmから製作限界に近い750mmまでの試料を
接着界面の剥離を非破壊で検査出来れば製品の信頼性
それぞれに適した条件で製作し a および c の方法で接着
向上に有益である。高温で成形された外被は室温付近で
性を調査した。小型の試料で良好な接着性が得られる条
は FRP を締め付け、剥離があっても空隙のない密着状
件でも、大型の試料では良好な接着性が得られない場合
態になっている。このことから、いくつかの方法を試み
が あ っ た 。こ の こ と は 、 ポ リ マ ー が い 管 の 試 験 法
たが、非破壊での検出はできなかった。それらの方法の
(IEC61462
(6)
)のデザインテストで扱う小型の試料で
中で、超音波で探傷しそのデータを画像処理する方法で
の接着性評価結果をもって大型の製品の評価を代替する
あれば、剥離し微少な空隙がある場合にはその検出が可
事が出来ない事を示している。
能であることを確認できた。試験のために厚さ0.1mm、
接着を低下させたサンプルの例では 42 時間煮沸後の
広さ 25mm2 の空隙を設けた試料についての検出結果の
課電試験で温度上昇(サーモグラフィーで調査:第21 図
一例を第23図に示す。この方法についてはすでに技術を
に示す。
)
を生じた。この試料をcの引き剥がし試験で調
確立している。現状、接着界面の品質確保には製造での
査したところ、第22 図に示すようにFRP 表面にゴムが
作り込み以外に方法がなく、その品質管理が重要である。
残らない界面剥離を生じた。なお、現時点では前述の煮
沸試験のみの結果で評価するのではなく、いくつかの方
周方向角度
プローブ
42.5mm
36°
軸方向距離
法を加え評価の信頼性を向上させる事が必要である。
42.5mm
フランジ金具
空 隙
最大温度上昇箇所
(白 色部分は温度
上昇を生じている)
第 23 図 剥離し微少な空隙がある場合の
空隙の検出結果の一例
笠部
3.8 複合荷重試験
胴部
ポリマーがい管がガス遮断器(GCB )
に使用される場
合、FRP および金具・FRP 接着部には、温度変化と内
圧変化が同時に加わる。このような複合ストレス下での
長期信頼性評価に関しては F R P の内圧試験方法
(NEMA SG4(17))にその評価方法の 1 例が規定されて
いる。この方法に準拠して行った試験結果を第4表に示
第 21 図 課電試験時の温度上昇例
(接着を低下させたサンプル・
42 時間煮沸後:最大温度上昇 30K)
界面剥離部分
す。長期信頼性確保の面から、このような試験に加え最
高・最低使用温度を想定した繰り返し温度試験なども必
要である。
第 4 表 複合荷重試験条件と試験結果
(154kV 級の試料 --NEMA SG4(17) による)
区 分
内 容
試 験
繰り返し回数:
最高使用温度・高温側:45000 回
最低使用温度・低温側:5000 回
内圧荷重値の範囲:0 MPa ⇔ MSP
条 件
試験温度:高温側:90℃、低温側:- 40 ℃
第 22 図 引き剥がし試験による接着性評価結果
(接着を低下させたサンプル・42 時間煮沸後)
試 験
結 果
気密性:ガス漏れ検出せず
高温での内圧破壊荷重:SIP 以上であった
ポリマーがい管の研究と開発
11
第 5 表 154kV ポリマーガスブッシング試験結果
No.
試 験 項 目
試 験 結 果
1
誘電正接
0.07%
2
部分放電
325kV-5pC 以下
3
短時間交流耐電圧
・注水 (10sec )
325kV- 乾燥(1min)
4
長時間交流耐電圧
140kV(1.5E)-30min,186kV(2E )-1min,140kV-30min
5
雷インパルス耐電圧
乾燥・注水 正負 750kV:各 5 回
6
温度上昇(通電)
定格電流 2000A でがい管内面 23.6K
7
曲げ耐荷重
3.6kN-30sec
8
外部コロナ
定格電圧× 1.1 177kV で 注水時 68dB
9
汚損耐電圧
SDD = 0.12mg/cm2 での耐電圧 260kV(定印霧中試験)
長期課電
200kV-1 日、 180kV-5 日、170kV-60 日間
10
・最高および最低使用温度を想定した繰り返し温度特性
3.9 ガスブッシング組み込み試験
154kV相当のポリマーがい管をガスブッシングに組み
込み、JEC-183 ブッシング(1984 )に準じて実施した
試験結果を第5表に示す。この試験ではすべての項目に
合格し、十分な品質を有していることを確認できた。
の評価。
5.フィールド試験
現在、ポリマーがい管の長期信頼性の検証、適用上で
の課題の把握を狙いに、実線路でのフィールド試験が東
4.ポリマーがい管の試験規格
京電力、関西電力、中部電力、東北電力殿などで行われて
現在、国内・海外いずれでも試験規格は制定されてい
いる。当社もこの計画に参加し、研究成果を反映した供
ないが、 IEC よりテクニカルレポート 61462
(6)
の形で
試試料を納入している。その例を第 24 図および第 25 図
報告が出されている。現時点では、この内容にユーザ・
にそれぞれ示す。今後の調査で有益な知見が得られる事
メーカ協議による独自の項目を加えて評価する事にな
を期待したい。
る。長期信頼性確保の面から考慮すべき課題事項を以下
これまでの適用事例において、周囲から飛散してきた
に示す。
苔の種子が GCB に使用されたポリマーがい管のシリ
コーンゴム外被表面全体で繁殖し、撥水性の低下に伴い
(1)デザインテスト
a. サンプル寸法
絶縁も低下した例が米国で報告されている(18 )。また、送
電用ポリマーがいしで同様な苔が繁殖した例や、鳥の食
適切な径方向寸法の選定。
b. 接着品質
他のいくつかの試験方法を組み合わせる等の信頼性の向上
c. Water Diffusion Test
実使用電界での評価。
(2)タイプテスト
a. 内圧、曲げ試験
・1.5MML,2.0MSP 印加後の気密性評価。
・成形前サンプルによる詳細観察。
・残留ひずみを計測するまでの時間の設定。
・複合荷重試験(NEMA SG4 等)の考慮。
・最高使用温度での内圧破壊荷重値の評価。
第 24 図 実線路での試験例/ 154kV GIS
NGKレビュー 第 58 号 平成 11 年 12 月
12
6.まとめ
ポリマーがい管に係わる研究で得られた知見・課題事項
などについて報告した。これまでの研究を通じて最大全長
8 メートルまでのがい管を完成した。それらを第 26 図に
示す。今後、ポリマーがい管の軽量、耐衝撃性の向上など
の特徴を活用していくには、長期信頼性、汚損特性など
の課題についての見極めが重要と考える。今後フィール
ド検証等での活動で有益な知見が得られることと考え
る。磁器、ポリマーそれぞれの特徴を生かした適用に向
けて検討が展開される事を期待したい。
参考文献
(1 ) 諸志,飯塚 「
: 300kV 複合碍管ガスブッシングの
初適用」
,平成 9 年電気学会全国大会 No.1643.
第 25 図 実線路での試験例/ 154kV GCB
(2 ) 江本,今川 「ポリマー碍管付
:
GCB のフィールド
試験結果報告(第1 報)
」
,平成 9 年電気学会電力・
害にあい笠部や胴部に欠損に至る損傷を受けた事が海外
で報告されている(19),(20)。このようなことから、使用
される周囲環境への配慮ならびに入念なメンテナンスが
エネルギー部門大会 No.436.
(3 ) ASTM G53 "Standard Practice for Operating
Light-and Water-Exposure Apparatus
(Fluorescent UV-Condensation Type)for Ex-
必要である。
posure of Nonmetallic Materials", 1988.
(4 ) IEC Pub 60587 "Test methods for evaluating re-
sistance to tracking and erosion of electrical insulating materials used under severe ambient
conditions",1984.
(5 ) 越野,梅田,石割:
「ポリマーがいし用シリコーン
ゴムのコロナ放電による劣化と充填剤の影響」
,電
気学会論文誌 Vol.18-A, pp.683-688, 1998.
(6 ) IEC 61462 Technical Report, "Composite insu-
lators-Hollow insulators for use in outdoor and
indoor electrical equipment-Definitions,test
methods,acceptance criteria and design recommendations",1998.
(7 ) 森田,篠田 「碍子の耐震設計」
:
, 碍子レビュー第
36 号 , 昭和 50 年 .
(8 ) CIGRE TF33.04.07, "Natural and Artificial Age-
ing and Pollution Testing of Polymeric Insulators", CIGRE Brochure No. 142, 1999.
(9 ) Y.Higashimori, Z.Nakao, S.Nishimura, J.X.Zhu,
Z.Iha, T.Tamaki, J.Kato, R.Kimata, T.Mugishima
and T.Kobayashi, "Studies on Salt Contaminaストレートタイプ
全長:1800mm
内径:490mm
重量:150kg
500kV 級テーパタイプ
全長:8000mm
内径:650mm
重量:1230kg
第 26 図 完成したポリマーがい管
tion and Leakage Current of Silicone Rubber Insulators", ICEE, pp.744-748, 1996.
(10 )例えば , J.N.Edger, J.Kuffel, J.D.Mintz, "Leak-
age Distance Requirements for Composite In-
ポリマーがい管の研究と開発
sulators Designed for Transmission Line", CEA
No. 280 T 621, 1993.
(11)K.Naito, K.Izumi, K.Takasu, R.Matsuoa, "Per-
formance of Composite Insulators under Polluted
Conditions", CIGRE Session Paper, No. 33-301,
1996.
(12)石原,荒川,石割,近藤 「ポリマーがいしの汚損
:
特性」
,NGK レビュー 第 57 号,平成 10 年 .
(13)R.Matsuoka, S.Ito, K.Tanaka, K.Kondo, "Con-
tamination Withstand Voltage Characteristics of
Polymer Insulators", 10th ISH, Vol. 3, pp. 8184 , 1997.
(14)鈴木,六戸,北東,遠藤,山極 「ポリマがい管適
:
用ガスブッシングの人工汚損耐電圧特性」
, 平成11
年電気学会全国大会 No.1680.
(15)鈴木,六戸,北東,遠藤,山極 「ポリマがい管適
:
用ガスブッシングの水滴コロナ特性」
,平成 11 年
電気学会全国大会 No.1681.
(16)A.J.Phillips, D.J.Childs, H.M.Schneider, "Wa-
ter Drop Corona Effects on Full-Scale 500kV
Non-Ceramic Insulators", IEEE WM Paper No.
PE-235-PWRD-0-01-1998.
(17)NEMA Standard Publication No. SG4 "Alter-
nating-Current High-Voltage Circuit Breakers",
pp.30, 1990.
(18)"Experience with Non-Ceramic Bushingus
at Florida Based Utility", Insulator News & Market Report, pp.30-35, November/December
1997.
(19)"Swedish University Tests Composite Insulators
in Tropical Environments", Insulator News &
Market Report, pp.56-61, November/December
1998.
(20)"Innovative Compact Line Design at Energie
Ouest Suisse", Insulator News & Market Report,
pp.20-28, March/April 1999.
13