16th International Congress of Endocrinology & The Endocrine Society’s 96th Annual Meeting(ICE/ENDO2014)にて研究発表を行いました(2014/6/21-24) 場所:McCormick Place (Chicago, Illinois, USA) 災害産婦人科学分野の研究の一つである「Intratumoral Concentration of Stress Hormone, Cortisol in Endometrial Carcinoma」を発表しました(災害産婦人科学分野 三木康宏 講師) 。 今年は世界最大規模である国際内分泌学会と米国内分泌学会の合同開催で、期間中に 10,000 人 を超す参加者と 3,200 の演題が発表されました。当分野の研究テーマの一つであるストレスと 婦人科疾患に関する発表を行い、世界各国のトップレベルの研究者とディスカッションを行うこ とができました。以下に発表内容を紹介します。 生体はストレスを受けると副腎皮質からコルチゾールを分泌しますが、長期にわたるストレス によって生体はコルチゾール過剰状態となり、種々臓器に悪影響をおよぼすことが知られていま す。本研究ではコルチゾールを分解してその作用を減弱させる 11β水酸化ステロイド脱水素酵 素2型(11βHSD2)の子宮内膜癌での発現を検討しました(図1) 。正常の子宮では 11βHSD2 が強く発現しており、過剰なコルチゾールの分解を担っていると考えられました。つまり過剰コ ルチゾールからの保護作用を示していると考えられます。この現象は悪性度の低い子宮内膜癌に おいても確認されましたが、悪性度の高い癌では 11βHSD2 の発現が著しく低下していました。 一方、分解したコルチゾールから再度、コルチゾールへと変換する酵素である 11βHS1 は、悪 性度の高い子宮内膜癌で非常に高く、低悪性度の癌および正常の子宮では発現が低いことが明ら かとなりました(図1) 。以上のことからストレスホルモ ンは子宮組織で不活性化され、その不活化機構が破綻す ることによって、癌と悪性度に関わっていることが示唆 されました。 図1(上):子宮内膜癌組織における 11βHSD1お よび2の発現 ・11βHSD1および2のタンパク発現を免疫組織化 学*にて検出した。 ・正常子宮(Normal)および悪性度の低い子宮内膜癌 (G1)では、11βHSD2の発現が高く、11βHSD 1の発現は低い。 ・悪性度の高い子宮内膜癌(G3)では、11βHSD 2の発現が低く、11βHSD1の発現は高い。 * 免疫組織化学は、抗原抗体反応を応用し、目的のタン パクを組織標本上で可視化する方法。いずれも茶色 の部分が目的のタンパクが発現しているところを示 している。正常子宮では内膜細胞が陽性を示し、癌 では癌細胞そのものが陽性を示している。 図 2(下):学会の様子(シンポジウム会場) 文責:三木康宏(災害医学研究部門)
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