抄 録 - 第52回日本消化器画像診断研究会

抄
録
1.
胆嚢 carcinosarcoma の 1 切除例
国立病院機構九州医療センター 肝臓病センター肝胆膵外科 1)、
同 病理 2)、同 臨床研究センター3)
和田 幸之 1)、高見 裕子 1)、桃﨑 征也 2)、村中 光 3)、
才津 秀樹 1)
症例は 68 才、男性。腹部外傷の精査で、偶然に胆嚢腫瘍を指摘され当科紹介。CT にて、
胆嚢壁は肥厚し胆嚢内腔に突出する腫瘍性病変を認め、さらに肝 S4 から S5/6 にかけて多
結節状に癒合する像を呈し、肝浸潤が疑われた。また、門脈前枝に欠損像を認め腫瘍塞栓
が疑われた。血管造影検査では、胆嚢動脈に栄養される tumor stain を認め、門脈造影に
て P5 欠損像を認め腫瘍塞栓あるいは門脈内血栓が疑われた。肝浸潤を伴った胆嚢癌の診断
にて肝拡大右葉+S4a 合併切除術、門脈腫瘍塞栓摘出術、D2 を施行した。病理組織診断で
は、肝転移が疑われた病変はすべて連続性があり肝浸潤と判断された。胆嚢壁内膜周辺に
adenocarcinoma component (AE1/AE3 陽性、vimentin 陰性)を認めるものの限局性であ
り、肝浸潤部のほとんどは紡錘細胞からなる sarcomatous component (AE1/AE3 散在性に
陽性部あり、vimentin 陽性)であり、両者には移行像が認められ、carcinosarcoma と診断
された。
2.
胆嚢炎様症状を呈した胆嚢粘液癌の一例
奈良県立医科大学 中央内視鏡・超音波部 1)、同 放射線科 2)、
同 病理診断 3)
丸上 永晃 1)、平井 都始子 1)、大石 元 1)、北野
悟 2)、
吉川 公彦 2)、榎本 泰典 3)、野々村 昭孝 3)
症例は 52 歳女性。1 ヶ月前より上腹部痛を自覚し痛みが改善しないため消化器内科紹介
となった。来院時現症では軽度の発熱と右上腹部に腫瘤を触知し腹膜刺激症状も伴ってい
た。血液検査所見では、WBC 7700, CRP が 8.1 と上昇。US では、胆嚢底部に内部不均一
な充実様エコーを示す 7cm 大の腫瘤を認め、胆嚢動脈から供血される異常血管の増生を
伴っていた。造影 US では辺縁に液体貯留腔と中心部に強い濃染を示す充実性成分を認め
た。造影 CT や MRI では、胆嚢底部に膿瘍を疑う液体貯留とその中心には RAS を疑う小
液体貯留と充実性成分を認めた。胆嚢癌を否定できないものの急性胆嚢炎の可能性を第一
に手術が施行された。胆嚢周囲には膿汁様液体貯留が貯留し周囲と強固に癒着。病理学的
に高分化型粘液癌と診断された。
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3
胆嚢管原発と考えられた粘液癌の 1 例
札幌医科大学 第 4 内科 1)、同 第 1 外科 2)、同 病理部 3)
吉田 真誠 1)、林
毅 1)、石渡 裕俊 1)、梅田 いく弥 1)、
木村 康利 2)、外岡 暁子 3)
症例は 58 歳女性。右季肋部痛を自覚し、当科受診。US では胆嚢内に腫瘤像は認めず、
胆嚢腫大と頚部に AS を伴うストロングエコーを認めた。胆嚢-胆嚢管内部は debris echo
が充満し、胆嚢管壁は肥厚していた。CT でも胆嚢内に腫瘤像は認めず、胆嚢頚部に造影効
果のない高吸収値内容物を認めた。ERC では胆嚢管は造影されたが、胆嚢内は粘液様物質
で充満していた。また、肝内胆管前区域枝内に透亮像と上部-中部胆管に圧排狭窄を認めた。
胆嚢管より生検し、粘液癌が疑われたため、胆嚢管原発粘液癌と診断した。ERC 所見より
肝内胆管前区域枝に穿破が疑われ、拡大肝右葉切除+胆嚢摘出術を施行した。病理学的には
胆嚢管の間質内を主座に粘液結節を形成する腺癌を認め、胆嚢頚部-体部にも進展してい
た。右肝管内に粘液の穿破は認めたが、癌の浸潤は認めなかった。
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胆嚢腫大を契機に発見された胆嚢管癌の 1 例
東京医科大学病院 消化器内科
栗原 俊夫、糸井 隆夫、祖父尼 淳、糸川 文英、辻 修二郎、
石井 健太郎、梅田 純子、森安 史典
【症例】70 歳代、男性。健診の腹部 US にて胆嚢腫大を指摘され精査目的にて受診。当科
の腹部 US:胆嚢腫大、debris を認めたが胆嚢頸部、胆管は描出不良であった。腹部 CT:
胆嚢管内に造影効果のある腫瘤を認めた。MRCP:胆嚢頸部から一部胆嚢管は信号が欠損
しており連続性が追えなかった。EUS:胆嚢管を中心に内部不均一な低エコー腫瘤を認め
た。ERC:胆嚢管は胆管中部より右方頭側に開口し、15mm 程度で途絶していた。胆嚢管
癌を疑い胆嚢、肝外胆管摘出術を施行した。
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5
自己免疫性膵炎か膵管癌の鑑別を要した膵尾部腫瘍の 1 切除例
三重大学 肝胆膵・移植外科 1)、同 消化器肝臓内科 2)、同 病理 3)
濱田 賢司 1)、種村 彰洋 1)、村田 泰洋 1)、信岡 祐 1)、
安積 良紀 1)、岸和田 昌之 1)、水野 修吾 1)、臼井 正信 1)、
櫻井 洋至 1)、田端 正己 1)、井上 宏之 2)、福留 寿生 3)、
伊佐地 秀司 1)
75 歳 男性。体重減少を主訴に近医受診し膵尾部腫瘍を指摘され精査加療目的にて当科紹
介。血液検査所見では軽度の貧血と CEA 高値(12.7ng/ml)を認めた。自己抗体は陰性で血清
IgG と IgG4 値は正常。単純 CT では膵尾部に 20mm の膵実質と同一な density の腫瘤を認
め、造影 CT では早期相で膵実質と同等、後期相では膵実質より強い造影効果を示した。MRI
で腫瘤は T1 低信号、T2 では低~等信号であった。MRCP では主膵管の拡張や狭窄は認め
なかったが、ERCP では膵尾部で主膵管の狭窄が指摘された(膵液細胞診: class I)。EUS で
は、膵尾部に 20mm の辺縁不整、境界不明瞭な hypoechoic な腫瘤が描出されたが、
EUS-FNAB では悪性は指摘されなかった。以上より、自己免疫性膵炎を強く疑ったが、膵
管癌も否定出来ず、腹腔鏡補助下脾合併膵体尾部切除術を施行した。組織学的には、血管周
囲の著明なリンパ球・形質細胞浸潤及び線維化を伴った腫瘤性病変に、一部周囲に浸潤する
異型細胞を認めたため、自己免疫性膵炎に伴う浸潤性膵管癌と最終診断した。
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嚢胞成分を伴った anaplastic carcinoma の一例
愛知県がんセンター中央病院 消化器内科 1)、同 内視鏡部 2)
小林 佑次 1)、原
和生 1)、水野 伸匡 1)、澤木 明 1)、
肱岡
範 1)、今村 秀道 1)、松本 和也 1)、佐伯 哲 1)、
赤羽 麻奈 1)、鈴木 晴久 1)、近藤 真也 1)、田近 正洋 2)、
河合 宏紀 2)、丹羽 康正 2)、山雄 健次 1)
症例は 75 歳、女性。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。上腹部痛と閉塞性黄疸にて
前医を受診。膵腫瘤を疑われたため、精査目的で当院紹介入院となった。CT にて膵頭部に
嚢胞成分と、造影効果に乏しい実質成分を有する 20mm 大の腫瘤性病変を認めた。EUS
では、境界明瞭で辺縁不整、内部エコーは不均一な低エコー腫瘤とその辺縁に内部エコー
均一低、辺縁不整な嚢胞が存在した。CT、EUS の所見からは、充実性腫瘍と二次的な嚢
胞性変化が疑われた。ERP にて膵頭部の主膵管のカニ爪様の途絶と尾側膵管の拡張を認め
た。同時に施行した膵管ブラシ細胞診では腺癌と診断された。術前診断は、嚢胞性変化を
有する膵管癌疑いにて膵頭十二指腸切除を行った。病理組織学的には破骨型多核巨細胞を
伴う紡錘形異型細胞の増殖を認め、最終診断は anaplastic carcinoma であった。
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腹痛と嘔吐にて発見された膵 Solid Pseudopapillay neoplasm(SPN)の
1例
熊本地域医療センター 消化器内科
堤
英治、中原 和之
症例は 23 歳女性。H21 年 1 月 9 日から腹痛、嘔吐出現し近医受診。症状は軽快したが、
入院中行われた腹部 CT にて、膵尾部に径 7cm の腫瘤を認めたため、1 月 22 日精査治療目
的に当院へ紹介入院となる。
腹部超音波検査、腹部造影 CT 検査、MRI 検査と超音波内視鏡検査にて、膵の出血を伴
う嚢胞性腫瘍であり、年齢と性別より膵 SPN と診断した。
治療は腹腔鏡補助下膵体尾部切除+脾臓合併切除を施行。病理組織では辺縁円型の好酸性
細胞が充実性に増殖しており、充実性部分の間質は毛細血管が豊富で腫瘍細胞が偽乳頭構
造を形成していた。免疫染色では vimentine、β-catenin、α1-antichymotrypsin が陽性
であった。
以上より最終的に膵 SPN pT3N0M0 stageⅢの診断となった。
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通常型膵管癌と膵内分泌腫瘍が合併した一例
東北大学 消化器内科
菅野
敦、佐藤 賢一、下瀬川 徹
症例は 64 歳 男性。2009 年度の人間ドックで膵頭部に血流豊富な腫瘤を指摘されたた
め、当科を紹介された。腹部 US では膵頭下部に約 10mm の境界明瞭辺縁整な低エコー腫
瘤を認めた他に、膵体部の上縁に約 15mm の境界比較的明瞭で辺縁不整な低エコー腫瘤も
認めた。EUS では腹部 US と同様、2 つの低エコー腫瘤を認めた。CT、MRI では膵頭下
部の腫瘤は血流が豊富であったが、膵体部の腫瘤は境界が不明瞭な乏血性の腫瘤であった。
MRCP では膵管胆管に異常を認めなかった。PET では両腫瘍とも SUVmax4 程度の集積
を認めた。ERP では主膵管に異常を指摘できなかった。膵体部の腫瘍から EUS-FNA を施
行したところ Class V adenocarcinoma の診断を得た。FNA の結果と各種画像検査から膵
体部癌と膵頭部の膵内分泌腫瘍疑いで当院肝胆膵外科にて膵体尾部切除並びに膵頭部腫瘍
の核出術を施行した。組織学的に膵体部の腫瘍は通常型膵管癌で膵頭部の腫瘍は非機能性
膵内分泌腫瘍であった。
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膵仮性嚢胞との鑑別が困難であった腺癌の 1 例
東邦大学医療センター大橋病院 消化器内科 1)、同 第 3 外科 2)、
同 病理診断部 3)
大牟田 繁文 1)、浮田 雄生 1)、南部 知子 1)、新後閑 弘章 1)、
前谷
容 1)、渡邉 学 2)、横内 幸 3)
症例は 62 歳・女性。急性膵炎の診断で当院に入院し、腹部 CT で膵尾部に径 7cm 大の
周囲に石灰化を伴った単房性の嚢胞性病変を認めた。単純 CT で嚢胞内部の一部に高吸収
域 が 認 め ら れ た 。 造 影 CT で は そ の 高 吸 収 域 の 一 部 に 造 影 効 果 を 認 め た も の の 、
MRI(T2W1)で内部は液体成分のみであった。ERCP で病変部と主膵管に交通が認められ、
膵仮性嚢胞の診断で経過観察していた。経過観察中、嚢胞内感染を繰り返し、CA19-9 が
上昇傾向にあり、画像上も嚢胞が脾内へ穿破している所見を呈した。膵体尾部脾合併切除
術を施行し、術後の病理所見にて膵尾部に嚢胞形成を伴った腺癌が認められた。腫瘍は脾
実質へ浸潤していた。組織型は膵管腫瘍由来の浸潤癌が最も考えられた。
10 膵管内に鋳型に発育し興味ある病理像を呈した膵管内腫瘍の 1 例
大阪医科大学 第二内科 1)、同 一般・消化器外科 2)、同 第一病理 3)
増田 大介 1)、有坂 好史 1)、小倉 健 1)、瀧井 道明 1)、
樋口 和秀 1)、谷川 允彦 2)、栗栖 義賢 3)、江頭 由太郎 3)、
芝山 雄老 3)
症例は 76 歳、男性。直腸癌術後経過観察の腹部 CT で膵に異常を指摘され当科へ入院と
なった。腹部 US で膵尾部に嚢胞性病変を疑う低エコー領域を認め、EUS では辺縁が低エ
コー、内部が高エコーの結節性腫瘤として描出された。MRCP では膵尾部主膵管が 20mm
と嚢胞状に拡張し内部に陰影欠損を認め、同部は MRI T1、T2 強調像で低信号、拡散強調
像で著明な高信号を呈し、MDCT でも淡い造影効果を認めた。ERP では膵管口の開大と粘
液の排泄があり、尾部主膵管内に不整な陰影欠損像を認め膵液細胞診で腺癌が検出された。
膵体尾部切除を行い病理組織では IPMN 様上皮、ITT 類似の膵管内結節、間質へ浸潤する
管状腺癌・粘液癌が混在する膵管内腫瘍由来の浸潤癌であった。
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11 嚢胞内に分化度の異なる癌腫成分を認めた IPMC の 1 例
広島大学大学院 分子病態制御内科学 1)、
同 病態制御医科学講座外科学 2)、広島大学病院 病理部 3)
芹川 正浩 1)、佐々木 民人 1)、藤本 佳史 1)、井上 基樹 1)、
斎
宏 1)、神垣 充宏 1)、南 智之 1)、岡崎 彰仁 1)、
行武 正伸 1)、石垣 尚志 1)、村上 義昭 2)、上村 健一郎 2)、
有廣 光司 3)、茶山 一彰 1)
症例は中咽頭癌の放射線化学療法後の 85 歳男性。経過観察中に施行された CT にて、膵
頭部に多房性嚢胞を指摘されていた。2009 年の CT にて嚢胞は増大し、嚢胞近傍に腫瘤性病
変を認めたため当科紹介となった。EUS では、膵頭部に 50mm 大の多房性嚢胞を認め、嚢
胞内には 8mm 高の壁在結節を認めた。また近傍には 35mm 大の内部エコーが均一な低エ
コー腫瘤を認め、嚢胞内に発育した腫瘤として描出された。開大した副乳頭からの造影では、
Santrini 管より交通する分枝膵管の嚢状拡張を認めた。IPMC を疑い膵頭十二指腸切除術を
施行した。病理組織学的には、拡張した分枝膵管内に大小の乳頭状に増生する腫瘍組織を認
め、一部間質に浸潤する高分化型腺癌を認めた。また近接する嚢胞は分化度の高い腫瘍細胞
に裏打ちされ、内部には大型、多角形の腫瘍細胞を有する低分化型腺癌を認めた。
12 IPMN に合併した通常型膵癌との鑑別が問題となった IPMN 浸潤癌の 1 例
東京大学 消化器内科 1)、同 人体病理部 2)
川久保 和道 1)、中井 陽介 1)、山本 恵介 1)、水野 卓 1)、
八木岡 浩 1)、木暮 宏史 1)、佐々木 隆 1)、笹平 直樹 1)、
平野 賢二 1)、伊佐山 浩通 1)、多田 稔 1)、田中 麻理子 2)、
小池 和彦 1)
症例は 62 歳女性、DM で近医通院中に US にて膵体部嚢胞性病変及び尾側膵管拡張を指
摘され、当科紹介受診。造影 CT では体部 13mm の多房性嚢胞及びその腹側に比較的境界
明瞭な低濃度腫瘤を認め、通常型膵癌は否定的であった。しかし EUS では体部嚢胞性病変
の乳頭側に 15mm 大の辺縁不整な低エコー腫瘤及び周囲分枝膵管の拡張を認め、嚢胞と腫
瘍の連続性は認めず、通常型膵癌合併の IPMN が疑われた。ERP では、膵体部での主膵管
途絶像と尾側に拡張した分枝膵管および嚢胞を認めた。以上より、通常型膵癌を合併した
IPMN を疑い体尾部切除術施行。肉眼的には境界がやや不明瞭な多房性腫瘍、組織学的に
は腺腫から腺癌までの細胞異型が混在する IPMN 浸潤癌。背側の嚢胞性病変は腺腫であり
浸潤癌との連続性はなかった。IPMN 浸潤癌だが嚢胞成分を EUS にて捉えづらく、術前診
断が困難であったと考えられた。
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13 異時性胆嚢転移をきたした肝細胞癌の 1 切除例
国立がんセンター東病院 上腹部外科 1)、同 病理部 2)
門田 一晃 1)、中郡 聡夫 1)、小嶋 基寛 2)、加藤 祐一郎 1)、
後藤田 直人 1)、高橋 進一郎 1)、小西
大 1)、木下 平 1)
症例は 66 歳、男性。2005 年より C 型慢性肝炎にて他院通院中、肝細胞癌を認めたため
内科的治療を受けていた。2008 年 7 月、肝 S5/8 に対し、重粒子線治療を施行。再発なく
経過していたが、2009 年 7 月、経過観察中に施行した CT にて胆嚢内に充実性腫瘤像を認
めたため、当科入院となった。画像所見では、萎縮肝の頭側に 45mm 大の境界明瞭、辺縁
円滑な腫瘤像を認めた。肝内に明らかな肝細胞癌の再発は認めなかった。胆嚢癌の診断に
て 2009 年 8 月胆嚢摘出術を施行した。摘出標本では内腔に突出する有茎性の腫瘤を認め
た。病理組織像では腫瘍細胞が索状や胞巣形成性に増生し、胆嚢漿膜下層に多数の静脈の
腫瘍栓を認め、肝細胞癌の血行性による胆嚢転移と診断した。今回、我々は、肝細胞癌治
療後に胆嚢腫瘍を認めて切除したところ、病理学組織的に肝細胞癌の胆嚢転移であった症
例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
14 肝嚢胞腺癌の一例
東京医科歯科大学 肝胆膵総合外科 1)、東京医科大学 消化器内科 2)
渡辺 雄一郎 1)、野口 典男 1)、小川 康介 1)、佐藤 公太 1)、
入江
工 1)、工藤 篤 1)、中村 典明 1)、田中 真二 1)、
山田 昌彦 2)、森安 史典 2)、有井 滋樹 1)
肝嚢胞腺癌は、原発性肝癌の中で 0.1~0.4%と少ない。今回我々は、特徴的な画像所見
を呈し、手術を施行した肝嚢胞腺癌を経験したので報告する。
【症例】68 歳男性
【主訴】腹部違和感
【現病歴】2009 年 7 月に腹部違和感を自覚し、近医受診。腹部超音波検査および腹部造影
CT にて肝 S1 亜区域に直径 6cm 大の嚢胞性病変を認めた。腫瘍マーカー正常値。
【画像検査】CTHA:肝 S1 区域内を占拠する直径 6cm 大の嚢胞性病変あり。内部に造影効
果を有する充実性成分を認める。PET にて hot spot として描出。ソナゾイド造影超音波に
て腫瘍血管様血流あり。肝嚢胞腺癌と診断する。
【入院後経過】2009 年 11 月、肝右葉切除術、尾状葉切除術を施行した。摘出標本の肉眼所
見では、嚢胞内をほぼ充満する腫瘍を認めた。
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15 肝原発巨大平滑筋肉腫の一例
東北大学病院 肝胆膵外科 1)、東北大学医学部 統合癌治療外科 2)、
東北大学病院 病理部 3)
中川
圭 1)、高野 成尚 1)、石田 和之 3)、大塚 英郎 1)、
乙供
茂 1)、林
洋毅 1)、森川 孝則 1)、小野川 徹 1)、
吉田
寛 1)、山本 久仁治 1)、赤田 昌紀 1)、元井 冬彦 1)、
力山 敏樹 1)、片寄 友 1,2)、江川 新一 1)、海野 倫明 1,2)
我々は術前診断が困難な巨大肝原発平滑筋肉腫の切除例を経験した。
症例は 44 際女性、CT では境界明瞭な長径 15cm の腫瘍で、辺縁が徐々に造影されるが
中央部は造影効果が乏しかった。MRI は造影効果が不均一で T1WI で低信号 T2WI で高信
号を呈し、一部に嚢胞状構造の集簇・出血を示唆する所見であった。PET-CT は全体に集
積が低かった。いずれの画像所見においても子宮筋腫を含め腹腔内に他の腫瘍性病変を認
めなかった。Labo data・画像所見ともに典型的な所見に乏しく間葉系過誤腫・血管系肉腫
等を疑い Hanging maneuver を用いた右葉切除を施行した。腫瘍割面は乳白色充実性で嚢
胞や mixoid な変化を認めた。組織学的に紡錘形細胞が錯綜配列を呈し増殖しており、高度
な 異 型 は 認 め な か っ た 。 免 疫 染 色 で vimentin(+) α-SMA(+) desmin(-) s-100(-)
NSE(±) c-kit(-) CD34(-)であった。平滑筋への分化を示し腫瘍が大型なこと、Ki-67 陽
性率 15%程度と比較的高い点等から平滑筋肉腫の low grade malignant potential 相当の
腫瘍と診断した。
16 破裂を来した肝原発 monotypic epithelioid angiomyolipoma の 1 例
天理よろづ相談所病院 消化器内科 1)、内視鏡センター2)
宮島 真治 1)、高山 政樹 1)、園山 浩紀 1)、菊池 志乃 1)、
山賀 雄一 1)、森澤 利之 1)、木田 肇 1)、岡野 明浩 1)、
大花 正也 2)、沖永 聡 1)、久須 美房子 1)、高鍬
博 1)
症例は 40 歳代女性。2006 年 4 月に右季肋部の激痛を認め受診、CT にて肝ドーム下に
腹腔内への破裂を伴う 6cm 大、高い造影効果を示す腫瘍を認め入院精査となった。
HbsAg(-)、HCVAb(-)、
AFP、PIVKA2 とも基準値内、腹部血管造影では A8 に著明な tumor
stain あり、腫瘍は CTAP で欠損像、CTHA 早期相で濃染、また早期に静脈への還流を認
めた。CTHA 後期相では腫瘍辺縁は ring 状濃染、内部は washout されるも線状高吸収域
残存あり。MRI では T1 強調で低信号、脂肪抑制 T2 強調で大部分は高信号、中心部に喫状
低信号帯の混在を認め、SPIO 投与後に局所の信号低下は認めず。これらの所見から確定診
断は困難であったが手術適応と判断、8 月肝 S8 部分切除術を施行した。病理学的検討では
腫瘍内に好酸性顆粒状の胞体に富む類上皮細胞の増殖を認め、特殊染色検査も併せ
monotypic epithelioid angiomyolipoma と 診 断 し た 。 肝 原 発 monotypic epithelioid
angiomyolipoma は極めて稀な腫瘍であり、文献的考察を加え報告する。
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17 肝内胆管拡張の 1 例
山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科
田場 久美子、岩野 博俊、良沢 昭銘、植木谷 俊之、吉田 加奈子、
仙譽
学、坂井田 功
症例は 61 歳女性。近医で受けた腹部 US で左肝内胆管の拡張と、血液検査で肝胆道系酵
素の上昇を指摘された。また MRCP で B2、B3 分岐部の狭窄とそれより末梢の胆管拡張、
下部胆管の総胆管結石を指摘され、精査加療目的に当院紹介。US、CT 上左肝内胆管の拡
張を認めるが、明らかな腫瘍性病変は指摘できなかった。ERCP では B2、B3 分岐部に狭
小化を認め、それより末梢の胆管の拡張を認めた。IDUS を施行したが明らかな腫瘤性病
変は指摘できなかった。経口胆道鏡では同部位に狭窄を認め、末梢への挿入は不可能であっ
たが、肝門部側には粘膜不整を認めなかった。総胆管結石については EST、排石を行い、
狭窄部より擦過細胞診と ENBD 留置を行い、胆汁細胞診を計 4 回提出した。うち 1 回は腺
癌疑いであり、ENBD より粘液様物質の流出も認めた。悪性病変も考えられたため、左葉
及び尾状葉切除術を施行した。上記症例を経験したため臨床画像と病理所見について報告
する。
18 術前診断が困難であった胆管未分化癌の一例
会津中央病院 1)、NPO 法人先端消化器画像研究センター2)、
弘前大学大学院医学研究科病理生命科学講座 3)
石野
淳 1)、野村 佳克 1)、宮田 英樹 1)、佐藤 一弘 2)、
岩尾 年康 2)、吉田 浩司 2)、牛尾 純 2)、長田 祐輝 2)、
森本 聖子 2)、多田 大和 2)、鬼島 宏 3)
症例は 70 歳女性。上腹部痛で受診した際の腹部エコーで肝門部付近に腫瘤を指摘され
た。肝胆道系酵素の上昇を認め、CA19-9 が 52.0U/ml であった。Dynamic CT では、上部
胆管付近に腫瘤を認め、動脈相でまだら状に強く造影され一部変性を疑わせる所見であっ
た。また、門脈相、遅延相でもまだら状に造影効果が残存した。MPR 像では腫瘤を中心に、
胆管壁の一部に造影不良と変位を認めた。EUS では上部胆管に立ち上がり急峻な腫瘤を認
め上皮性腫瘍を疑ったが、腫瘍成分は胆管壁外が中心であった。ERCP では立ち上がりな
だらかで表面も平滑な腫瘤であり、中心に delle 様の所見も認めた。以上から、上皮性腫瘍
と粘膜下腫瘍の特徴をもっておりカルチノイド腫瘍を疑って切除したが、病理診断は胆管
未分化癌であった。胆管未分化癌は稀であり、興味深い画像所見であったので報告する。
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19 早期下部胆管癌の 1 例
伊達赤十字病院 消化器科 1)、同 外科 2)、
札幌医科大学 第四内科 3)、同 病理部 4)
奥田 敏徳 1)、久居 弘幸 1)、田中 育太 1)、宮崎 悦 1)、
前田 喜晴 2)、佐藤 正文 2)、行部 洋 2)、中島 誠一郎 2)、
新田 健雄 2)、小野 薫 3)、長谷川 匡 4)
症例は 79 歳、女性。近医で肝機能障害を指摘され精査目的に当科紹介。CT では肝内胆
管・総胆管の拡張と下部胆管に低吸収値腫瘤を認めた。EUS では下部胆管の内側低エコー
層の壁肥厚と多発する低エコー腫瘤を認め、胆管壁の外側高エコー層は保たれていた。
MRCP、ERCP では胆管拡張と下部胆管に不均一な陰影欠損像を認めた。POCS では下部
胆管内を充満するイクラ状の粘膜を認めた。胆管生検、擦過細胞診では悪性所見は得られ
なかったが、深達度 ss 以浅の早期下部胆管癌と診断し、PpPD を施行。病理では腸上皮化
生を伴いながら異型度の低い異型上皮が下部胆管粘膜内を乳頭状に増殖しており、最終診
断は Pat Bi、m、s(-)、pap、med、INFα、ly0、v0、pn0、pHinf0、pGinf0、pPanc0、
pDu0、pPV0、pA0、pN0、pHM0、pDM0、pEM0、pT1、fStage I であった。
20 粘液産生胆管内乳頭状腺癌の 1 例
大阪赤十字病院 消化器科 1)、同 病理部 2)
松田 史博 1)、岡部 純弘 1)、津村 剛彦 1)、圓尾 隆典 1)、
大崎 往夫 1)、若狭 朋子 2)
症例は 66 歳女性。US で肝腫瘤を指摘され、当科に紹介された。CT で肝内側区域に径
6cm 大の境界明瞭、内部に造影効果を有する乳頭状隆起を伴った嚢胞性病変を認め、左葉
の肝内胆管が拡張していた。造影 US でも内部の乳頭状隆起が著明に染影された。ERC で
乳頭開口部は軽度開大し、上部胆管から左肝管起始部に陰影欠損像を認めた。IDUS では
病変内に丈の高い高エコー結節が描出された。以上から胆管内乳頭状腫瘍と診断し、拡大
肝左葉切除術を施行した。病理組織学的に、左肝管が著明に拡張し、その中に粘液と乳頭
状腫瘍が充満しており、粘液産生胆管内乳頭状腺癌と診断した。
22
21 ラ氏島の過形成を母地として発生した膵内分泌腫瘍の 1 例
愛媛大学 放射線科 1)、同 肝胆膵・移植外科 2)
兵頭 朋子 1)、津田 孝治 1)、武智恵 1)、田中 宏明 1)、望月 輝一 1)、
渡邉 常太 2)、羽田野 雅英 2)、高田 泰次 2)
症例は 60 歳男性。検診 CT にて膵尾部腫瘤を指摘され、当院に紹介受診。入院時、血中
グルカゴン高値、インスリン初期分泌能低下がみられた。皮膚病変は認めなかった。CT,
MRI にてびまん性の膵腫大があり、膵尾部に径 4cm、膵体部に径 1cm の富血性腫瘤を認
めた。画像上、他臓器に腫瘍は認めなかった。膵グルカゴノーマの診断で膵尾部切除、膵
体部腫瘍核出術を行った。病理所見は、正常ないし過形成を示すラ氏島と、グルカゴン陽
性の索状、充実性配列を示す島状の腫瘍胞巣が混在し、Well-differentiated endocrine
carcinoma と診断。腫瘍胞巣は切除断端までみられ、膵体部の追加切除を行った。再び断
端陽性であり、22 ヶ月後の現在、CT にて厳重 follow されているが再発はみられていない。
稀な多発グルカゴノーマの 1 例を経験したので報告する。
22 通常型膵癌との鑑別に苦慮した非機能性悪性膵内分泌腫瘍の 1 例
JA 尾道総合病院消化器内科 1)、同 放射線科 2)、同 外科 3)、同 病理 4)
花岡 理子 1)、花田 敬士 1)、飯星 知博 1)、平野 巨通 1)、
森
浩希 2)、目崎 一成 2)、伊藤 勝陽 2)、福田 勝敏 3)、
米原 修治 4)
症例は 60 歳代男性。既往歴は大腸癌、右腎癌にて手術。H13 年から B 型肝炎で治療中。
H21 年 2 月 の腹部 CT にて尾部の主膵管拡張を、MRCP では膵管の不正狭窄を認めた。
また EUS で同部に約 10mm の腫瘍性病変を認め、ERCP でも主膵管の途絶がみられたが
膵液細胞診では陰性のため本人の希望にて経過観察。7 月の MRCP では主膵管拡張がやや
顕著となり、ERCP での主膵管の途絶が再度認められ、通常型膵癌と診断。本人の同意を
得て膵体尾部切除術を施行。病理組織では Islet cell carcinoma と診断、腫瘍は主膵管内、
周囲脈管へ浸潤が著明で悪性と診断された。免疫組織染色では NSE、ChromograninA、
Synaptophysin が陽性であったが、膵ホルモンの染色性はみられず、非機能性と診断された。
23
23 術前に腫瘍を描出不能であった膵内分泌腫瘍の 1 例
東海大学付属病院 消化器内科 1)、同 消化器外科 2)、同 病理診断科 3)
小川 真実 1)、東
徹 1)、伊藤 裕幸 1)、川口 義明 1)、
峯
徹哉 1)、岡田 健一 2)、松山 正浩 2)、堂脇 昌一 2)、
飛田 浩輔 2)、平林 健一 3)
症例は 49 歳の男性。検診の腹部超音波検査にて主膵管の拡張を指摘され、精査目的にて
当院受診。当院での US, EUS にても膵体部で 20mm 程度の主膵管拡張を認めるが、明ら
かな腫瘍や主膵管内の腫瘍結節は認めなかった。腹部造影 CT や MRI にても同様で、主膵
管拡張は認めるが腫瘍は認めなかった。ERP で膵頭部の膵管は拡張を認めず、頭体移行部
でカニ爪状の途絶を呈した。膵液細胞診は classI であった。ERP 像より微小膵管癌を疑い、
外科切除を行った。病理組織検査にて 0.5cm の腫瘍を認め、免疫染色にて chromograninA,
synaptophysin, CD56, serotonin が陽性であり、well differentiated endocrine tumor の診
断となった。
24 術前診断が困難であった combined neoplasm(mixed acinar-endocrine
carcinoma)の一例
福島県立医科大学医学部 消化器・リウマチ膠原病内科学講座 1)、
同 附属病院内視鏡診療部 2)
鈴木
玲 1)、高木 忠之 1)、入澤 篤志 1)、引地 拓人 2)、
澁川 悟朗 1)、若槻 尊 1)、今村 秀道 1)、佐藤 愛 1)、
佐藤 匡記 1)、渡辺 晃 1)、中村 純 1)、小原 勝敏 2)、
大平 弘正 1)
症例は 73 歳男性。背部痛の精査のため腹部造影 CT が施行され、膵尾部に 12 ㎜大の腫
瘤性病変を認めた。病変は動脈相で膵実質と同程度に造影され、門脈相より後期相にかけ
実質よりも造影効果が高い病変として確認された。超音波内視鏡では 14mm 大の境界明
瞭・辺縁整な低エコー腫瘤が確認された。膵癌を疑い EUS-FNA を 2 回施行されたが、
ClassⅢであった。ERCP では膵尾部に途絶像が認められ、膵液細胞診は ClassⅡであった。
膵癌を強く疑い、後日膵体尾部切除術を施行され、病理の結果 acinar cell carcinoma, well
differentiated endocrine carcinoma, combined neoplasm と診断された。Acinar cell
carcinoma と endocrine carcinoma 合併例は文献上報告稀であり、稀少な症例と考えられ
報告した。
24
25 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別が困難であった膵管内管状腫瘍
(ITN)の 1 例
飯田市立病院消化器内科 1)、消化器外科 2)、放射線科 3)、臨床病理科 4)
岡庭 信司 1)、持塚 章芳 1)、金子 靖典 1)、中村 喜行 1)、
金子 源吾 2)、渡邊 智文 3)、伊藤 信夫 4)
症例は 70 代男性。6 年前より慢性膵炎として経過観察中であったが CT にて体尾部主膵
管の乳頭状腫瘍を指摘され紹介となった。
US では拡張した体尾部主膵管内に高エコーの乳頭状腫瘍を認めた。EUS にて乳頭状腫
瘍は主膵管内にとどまっており膵実質浸潤は認めなかった。MRI でも主膵管はび慢性に拡
張し体部に充実性腫瘍を認めた。内視鏡像では乳頭の開口部開大と粘液の排出があり、切
除範囲決定のために施行した IDUS では乳頭状腫瘍は SMV の左側にとどまっていた。
以上より浸潤を伴わない主膵管型 IPMN と診断し、膵体尾部脾摘出術を施行した。肉眼
的には主膵管内の広基性隆起性病変で、組織学的には腫瘍細胞が管腔構造を示しながら増
殖しており ITN と診断した。ITN は非粘液産生性の腫瘍細胞であることが多く膵管拡張も
限局性とされており、本例では IPMN との鑑別診断が困難であった。
26 10 年間の経過観察後に切除した膵粘液性嚢胞腺腫の 1 例
仙台市医療センター仙台オープン病院 消化器内科
山下 泰伸、伊藤
啓、野田
裕、小林
剛、尾花 貴志、
洞口
淳、越田 真介、加藤 雄平、菅野 良秀、小川 貴央、
藤田 直孝
症例は 40 歳女性。背部痛を主訴に受診。CT では、膵尾部に sludge 様物質を伴う 5cm
大の単房性嚢胞を認め、仮性嚢胞と診断し経過観察となった。8 年後に嚢胞径は 6cm に増
大し、cyst in cyst 様所見を伴い、膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)が疑われたが、外科的治療を
希望されなかった。10 年後の腹部超音波検査で膵尾部に 8cm 大の嚢胞を認め、超音波内視
鏡検査で内部に sludge、cyst in cyst 所見、壁の不整肥厚がみられ、悪性の MCN を疑い膵
体尾部切除術を行った。95×80×70mm 大の嚢胞で、固定標本割面は隔壁を伴う多房性病
変で、内部に膿汁、粘液の貯留を認めた。病理学的には異型度は低く、多房性嚢胞で、嚢
胞壁は粘液の豊富な円柱上皮で被覆され、間質には卵巣様間質を認め、膵粘液性嚢胞腺腫
と診断した。
25
27 Osteoclast like giant cell の発現がみられた若年者膵粘液性嚢胞腺癌の 1 例
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科 1)、
同 がん高度先進医療センター2)
東
勇気 1)、北川 裕久 1)、中川原 寿俊 1)、田島 秀浩 1)、
牧野
勇 1)、林
泰寛 1)、大西 一朗 1)、高村 博之 1)、
谷
卓 1)、萱原 正都 1)、太田 哲生 1)、大坪 公士郎 2)、
毛利 久継 2)
症例は 27 歳女性、腹部膨満感を主訴に前医を受診した。画像検査で膵体尾部に巨大嚢胞
性腫瘍をみとめたため、手術加療目的に当科紹介受診となった。CT では長径 12cm 大の境
界明瞭な多房性嚢胞性腫瘤をみとめた。嚢胞内腔に突出する充実性部分や腫瘍内部には出
血を疑う高吸収域、隔壁構造には石灰化をみとめた(画像 1、2)。MRI では腫瘍内部は多彩
な信号を示しており、T1 強調像では高信号の出血性部分も多く内在していた(画像 3)。以
上より画像所見上、solid pseudopapillary tumor と診断されたが、病理所見上、腺癌病変
や卵巣様間質(プロゲステロンレセプター陽性)、Osteoclast like giant cell などをみとめ
(画像 4)、膵粘液性嚢胞腺癌と診断された。
28 膵炎の経過観察中に膵癌の出現をみた 1 例
手稲渓仁会病院 消化器病センター1)、同 外科 2)、同 病理 3)
矢根
圭 1)、真口 宏介、栗田 亮、高橋 邦幸、
潟沼 朗生、小山内 学、金
俊文、階子 俊平、
金子 真紀、桜井 康雄、児玉 芳尚、福田 大記、
安保 義恭 2)、野路 武寛、中村 透、篠原 敏也 3)
74 歳男性。2007 年 7 月膵頭部の腫瘤形成性膵炎にて当センター紹介となる。その後、
定期的に CT にて経過観察を行っていたが、著変なく経過していた。2009 年 10 月の CT
にて膵体部に動脈相で低吸収、平衡相で遅延濃染を伴う 2cm 程度の腫瘤像がみられた。尾
側膵管の拡張の程度はこれまでと同等であった。造影 MRI では CT と同様の造影態度を示
し、DWI では軽度の拡散低下を認めた。EUS では径 23mm 大の内部不均一な低エコー腫
瘤像であり、辺縁は結節状で境界は比較的明瞭であった。以上より膵癌を疑い、EUS-FNA
を施行した。病理学的に腺癌と診断し、膵体尾部切除術を施行した。
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