『聴覚障がい者の職場でのコミュニケーションに関する調査』 - 第一生命保険

2014年 8 月 22 日
聴覚障がい者と健聴者に聞いた
『聴覚障がい者の職場でのコミュニケーションに関する調査』
~聴覚障がい者の職場での希望を健聴者に伝えることについて~
第一生命保険株式会社(社長 渡邉 光一郎)のシンクタンク、株式会社第一生命経済研究所
(社長 矢島 良司)では、聴覚障がい者 123 名、および聴覚障がい者と一緒に働く健聴者 476
名に対し、職場でのコミュニケーションに関するアンケート調査を実施し、そのうち、聴覚障
がい者の職場でのコミュニケーション方法に関する希望とその伝達についての調査結果がこ
のほどまとまりましたのでご報告いたします。
ホームページ(URL: http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/ldn_index.html )にも掲
載しましたので、併せてご覧ください。
≪調査結果のポイント≫
1.聴覚障がい者調査の結果
聴覚障がい者の職場での希望とその伝達状況 (P.2)
● 聴覚障がい者は職場の健聴者に対し「筆談してほしい」(75%)をはじめコミュニケーション
方法に関してさまざまな希望を持っているが、必ずしもそれを伝えていない。
聴覚障がい者が職場での希望を伝えた手段・伝えた結果 (P.3)
● 健聴者に希望を伝えた聴覚障がい者の78%はコミュニケーションがしやすくなったと評価。
職場での希望を伝えることに対する聴覚障がい者の意識 (P.4)
● 聴覚障がい者の94%は希望を「伝えることは大切」と認識する一方、過半数は「伝え方が難
しい」「伝えても理解してもらえない」「伝えることには遠慮がある」とも思っている。
2.健聴者調査の結果
聴覚障がい者の職場での希望に関する健聴者の認知状況 (P.5)
● 一緒に働く聴覚障がい者のコミュニケーション方法に関する希望を本人から聞いていない
健聴者は過半数、知らない健聴者は35%。
聴覚障がい者の職場での希望に関する健聴者の認知希望 (P.6)
● 一緒に働く聴覚障がい者のコミュニケーション方法に関する希望をもっと知りたい健聴者は
34%。
聴覚障がい者の職場での希望を聞くことに対する健聴者の意識 (P.7)
● 一緒に働く聴覚障がい者に対し、コミュニケーション方法に関する希望を「遠慮なく言ってほ
しい」と思う健聴者は85%。一方、「聞きにくい」「聞く機会がない」と思う健聴者も半数近い。
<お問い合わせ先>
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当(津田・新井)
TEL.03-5221-4771
FAX.03-3212-4470
【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi
≪調査の実施背景≫
近年、企業で働く障がい者は増加しており、その就業環境を整えることの必要性は今後
さらに高まると予想されます。障がい者のうち聴覚障がい者は、音声の情報の入手が難し
いことなどから、職場でのコミュニケーションにさまざまな支障が生じていることがこれ
までにも指摘されてきました。
そこで、企業等で働く聴覚障がい者と健聴者に対するアンケート調査(以下ではそれぞ
れを「聴覚障がい者調査」
「健聴者調査」と表記)を実施し、その結果の一部を 2014 年4
月発行の News Release「聴覚障がい者が働く職場でのコミュニケーションの問題」に掲載
しました。今回は、職場でのコミュニケーションの問題を改善するためには、コミュニケ
ーションに関する聴覚障がい者の希望をともに働く健聴者に伝えることが重要であるとい
う観点から、それに関連する調査結果をご紹介します。
※本稿は、当研究所の季刊誌『Life Design Report』(Summer 2014.7)に掲載したレポート「聴覚障害者
の希望を職場で伝えることの重要性」をもとに作成したものです。当該レポートは、ホームページ(ht
tp://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/report/rp1407d.pdf)にて全文公開しております。
≪調査の実施概要≫
聴覚障がい者調査
健聴者調査
企業等で聴覚障がい者と一緒に働いたことが
調査対象 企業等で健聴者と一緒に働いている聴覚障がい者
ある健聴者
配布:聴覚障がい者の集まるサークル・イベント等
インターネット調査
調査方法
や個人を通じて手交
(株式会社クロス・マーケティングに回答者の抽出
および調査の実施を委託)
回収:手交または郵送
調査時期 2013 年 11 月中旬~12 月中旬
2013 年 12 月上旬
有効回収数 123 名
476 名
注:本稿では便宜上、身体障害者手帳を持たない難聴者も含めて「聴覚障がい者」、それ以外の人を「健聴者」と表記
≪回答者の特性≫
(単位:%)
聴
覚
障
が
い
者
調
査
〔属性〕
性 男性
女性
20代
30代
年代 40代
50代
60歳以上
正規の職員・従業員
雇用 非正規の職員・従業員
形態 その他
無回答
52.0
48.0
8.9
18.7
43.1
24.4
4.9
67.5
30.9
1.6
健
聴
者
調
査
〔属性〕
性 男性
女性
20代
30代
年代 40代
50代
60歳以上
雇用 役員
正規の職員・従業員
形態
非正規の職員・従業員
56.5
43.5
18.5
26.9
21.8
16.2
16.6
3.6
63.7
32.8
〔職場の状況〕
勤 企業
務 官公庁
その他
先
無回答
49人以下
従 50~99人
業 100~299人
員 300~999人
規 1000人以上
模 わからない
無回答
93.5
2.4
1.6
2.4
6.5
6.5
6.5
13.0
52.8
1.6
13.0
〔職場の状況〕
勤 企業
務 官公庁
先 その他
従 49人以下
業 50~99人
員 100~299人
300~999人
規
1000人以上
模
わからない
81.3
11.1
7.6
24.2
13.0
21.2
14.7
22.9
4.0
1
〔聞こえ等の状況〕
身体障害者 持っている
96.7
手帳の有無 持っていない
3.3
小学校に入る前から
聞こえにくい、または 89.4
聞こえない
小学校に入った後~
聞こえにくく
3.3
社会に出るまでの間
なった時期
に聞こえにくくなった
社会に出た後に
6.5
聞こえにくくなった
無回答
0.8
〔回答者と聴覚障がい者との関係〕
現在、一緒に
聴覚障がい者と 働いている
一緒に働いて 1か月~1年位前
いた時期
1~3年位前
3~5年位前
聴覚障がい者 同じ部署
隣の部署
の所属部署
それ以外の部署
50.6
13.9
18.1
17.4
73.3
16.0
10.7
聴覚障がい者の職場での希望とその伝達状況
聴覚障がい者は職場の健聴者に対し「筆談してほしい」(75%)をはじめ
コミュニケーション方法に関してさまざまな希望を持っているが、
必ずしもそれを伝えていない。
図表1 職場でのコミュニケーション方法に関する希望、およびその伝達状況<複数回答>
【聴覚障がい者調査】
0
20
40
60
筆談してほしい
74.8
58.5
メールなどの情報通信手段を活用してほしい
69.1
44.7
会合の前に資料を渡してほしい
65.9
31.7
口をはっきり動かして話してほしい
65.0
51.2
会合でプロジェクタやホワイトボードなどを使って
視覚的に情報を示してほしい
61.8
30.9
手話を覚えて使ってほしい
57.7
22.0
会合の参加者に要約筆記(話の内容を要約して
紙に書く、パソコンに入力するなど)してほしい
50.4
23.6
会合に手話通訳者を呼んでほしい
47.2
20.3
二人以上の人が同時に話さないでほしい
42.3
17.9
雑音が少ない静かな場所で話してほしい
19.5
会合の座席の配置を工夫してほしい
20.3
会合に要約筆記者を呼んでほしい
11.4
補聴システム(磁気ループ、FMマイクなど)を
使ってほしい
10.6
6.5
9.8
6.5
その他
特にない
80 (%)
0.8
7.3
34.1
伝達率
(b/a)
78.3%
64.7%
48.1%
78.8%
50.0%
38.0%
46.8%
43.1%
42.3%
57.1%
30.1
67.6%
29.3
38.9%
61.5%
してほしいこと(a)
してほしいと伝えたこと(b)
聴覚障がい者に対し、健聴者と仕事の話をする時や会合(打ち合わせ、会議、研修など)
に参加する時に、健聴者にどのようなことをしてほしいか、またそのうちどのようなこと
をしてほしいと伝えたか質問しました。図表1でその結果をみると、してほしいと希望す
る割合は、「筆談してほしい」
(74.8%)をはじめ7項目ではそれぞれ過半数を占めていま
す。一方、健聴者に伝えた割合は、「筆談してほしい」(58.5%)と「口をはっきり動かし
てほしい」
(51.2%)以外の項目では半数未満です。
それぞれを希望する人に占める、伝えた人の割合(伝達率=図表1の右)をみると、
「手
話を覚えて使ってほしい」
「会合に要約筆記者を呼んでほしい」では4割に達していません。
これらは聴覚障がい者が希望していても伝えにくい事項といえます。
2
聴覚障がい者が職場での希望を伝えた手段・伝えた結果
健聴者に希望を伝えた聴覚障がい者の 78%は
コミュニケーションがしやすくなったと評価。
図表2 職場でのコミュニケーション方法に関する希望を伝えた手段<複数回答>
【聴覚障がい者調査】
0
20
40
口頭で個別に話した
68.5
メールで伝えた
44.1
会議などの場で話した
26.1
自分が作った資料・マニュアルなどを渡した
他の人が作った資料・マニュアルなどを渡した
その他の方法で伝えた
(n=111)
80 (%)
60
21.6
8.1
5.4
注:何らかの希望を伝えた人が回答
図表3 職場でのコミュニケーション方法に関する希望を伝えた結果、
コミュニケーションがしやすくなったか【聴覚障がい者調査】
(n=111)
無回答 1.8%
しやすく
ならなかった
3.6%
あまり
しやすく
ならなかった
16.2%
しやすく
なった
21.6%
ややしやすく
なった 56.8%
注:図表2と同じ
前頁で述べたいずれかのことを健聴者にしてほしいと伝えた聴覚障がい者 111 人(「特
にない」と答えた人・無回答の人以外)に対し、どのような手段で伝えたか質問しました。
その結果、図表2の通り「口頭で個別に話した」(68.5%)が最も多く、次が「メールで
伝えた」(44.1%)となりました。
また、希望を伝えた結果、コミュニケーションがしやすくなったか質問しました。図表
3の通り「しやすくなった」(21.6%)と「ややしやすくなった」(56.8%)を合わせると
78.4%となります。希望を伝えた聴覚障がい者の多くは、その効果を感じていることがわ
かります。
なお、図表は省略しますが、希望を伝える時にどのような工夫をしたか、また、どのよ
うな伝え方が効果的だと思ったかを自由回答形式で質問した結果、口頭だけでなくメール
で伝える、具体的・継続的に伝える、採用面接時や配属時、あるいはトラブル発生時など
のタイミングで伝える、積極的に伝える、などの回答がありました。
3
職場での希望を伝えることに対する
聴覚障がい者の意識
聴覚障がい者の 94%は希望を「伝えることは大切」と認識する一方、
過半数は「伝え方が難しい」「伝えても理解してもらえない」
「伝えることには遠慮がある」とも思っている。
図表4 職場でのコミュニケーション方法に関する希望を伝えることに対する意識
【聴覚障がい者調査】
0
20
40
伝えることは大切である
29.3
伝え方が難しい
28.5
伝えることには遠慮がある
80
78.9
伝えなくても理解してほしい
伝えても理解してもらえない
60
30.9
66.7
42.3
22.8
30.9
31.7
そう思う
93.5
60.2
38.2
16.3
伝える機会がない 13.0
14.6
100 (%)
58.5
53.7
44.7
ややそう思う
聴覚障がい者全員に対し、職場でのコミュニケーション方法に関する希望を健聴者に伝
えることについてどう思うか質問しました。
その結果を図表4でみると、
「伝えることは大切である」と思う(「そう思う」+「やや
そう思う」
)人は 93.5%と大半を占めています。一方、
「伝えなくても理解してほしい」と
思う人も 60.2%います。
希望の伝達をめぐる問題としては「伝え方が難しい」(66.7%)と思う人が特に多く、
「伝えても理解してもらえない」(58.5%)、「伝えることに遠慮がある」(53.7%)と
思う人も半数を超えています。コミュニケーション方法に関する希望を伝えることの重要
性は十分認識している一方で、その難しさを感じている聴覚障がい者が多いといえます。
4
聴覚障がい者の職場での希望に関する
健聴者の認知状況
一緒に働く聴覚障がい者のコミュニケーション方法に関する希望を
本人から聞いていない健聴者は過半数、知らない健聴者は 35%。
図表5 聴覚障がい者の職場でのコミュニケーション方法に関する希望を知った方法<複数回答>
【健聴者調査】
0
10
20
30
40
その人本人から聞いた
50 (%)
46.2
一緒に働いている人(上司、同僚、部下など)から聞いた
22.5
人事担当者から聞いた
4.6
その他の人から聞いたり、その他の方法で情報を得たりした
-
話を聞いたり情報を得たりしたことは特にない(なかった)
34.9
図表6 聴覚障がい者の職場でのコミュニケーション方法に関する希望を知っている程度
【健聴者調査】
かなり
知っている
(知っていた)
15.8%
ほとんど
知らない
(知らなかった)
13.9%
あまり
知らない
(知らなかった)
20.8%
ある程度
知っている
(知っていた)
49.6%
続いて、健聴者調査(聴覚障がい者と一緒に働いたことがある健聴者対象の調査)の結
果をご紹介します。
健聴者に対しては、聴覚障がい者の職場での「コミュニケーション方法に関する希望」
について、誰かから話を聞いたり何かから情報を得たりしたことがあるか質問しました。
図表5の通り、
「その人本人から聞いた」割合は 46.2%です。裏を返せば、過半数の健聴者
は本人から聞いていません。
「一緒に働いている人から聞いた」割合は 22.5%、「人事担当
者から聞いた」割合はわずか 4.6%であり、
「話を聞いたり情報を得たりしたことは特にな
い(なかった)
」と答えた健聴者も 34.9%、すなわち3分の1を占めます。
また、聴覚障がい者の「コミュニケーション方法に関する希望」についてどの程度知っ
ている(知っていた)か質問したところ、図表6の通り「あまり知らない(知らなかった)」
「ほとんど知らない(知らなかった)」と答えた割合は合わせて34.7%でした。
5
聴覚障がい者の職場での希望に関する
健聴者の認知希望
一緒に働く聴覚障がい者のコミュニケーション方法に関する希望を
もっと知りたい健聴者は 34%。
図表7 聴覚障がい者の職場でのコミュニケーション方法に関する希望について知りたい割合
(全体、回答者の立場別)【健聴者調査】
0
10
20
30
全体(n=476)
40
33.6
その人(一緒に働く聴覚障がい者)を
管理・指導する立場(n=171)
回答者
(健聴者)
の立場
50 (%)
40.9
その人(一緒に働く聴覚障がい者)に
管理・指導される立場(n=67)
32.8
その他(n=238)
28.6
注:「その人を管理・指導する立場」は「その人の直属の上司」と「その人の直属の上司ではないがその人を管
理・指導する立場」、「その人に管理・指導される立場」は「その人の直属の部下」と「その人の直属の部
下ではないがその人に管理・指導される立場」、「その他」は「人事担当者」と「どれにも当てはまらない」
の合計
聴覚障がい者の職場での「コミュニケーション方法に関する希望」をもっと知りたい(知
りたかった)か健聴者に質問したところ、図表7の通り、知りたいと答えた割合は 33.6%
でした。回答者(健聴者)の立場別にみると、その人(一緒に働く聴覚障がい者)を管理・
指導する立場の健聴者がもっと知りたい(知りたかった)と答えた割合は 40.9%であり、
それ以外の健聴者に比べてかなり高いです。
なお図表は省略しますが、健聴者が具体的にもっと知りたい(知りたかった)ことを自
由回答形式で質問した結果の中では、一緒に働いている聴覚障がい者がどのような聞こえ
の状況なのかを知った上で適切なコミュニケーション方法を知りたいという回答が多かっ
たです。また、情報が確実に伝わったかどうか、どのようなことが理解されていないかを
知りたいという意見もありました。
6
聴覚障がい者の職場での希望を聞くことに対する
健聴者の意識
一緒に働く聴覚障がい者に対し、コミュニケーション方法に関する希望を
「遠慮なく言ってほしい」と思う健聴者は 85%。
一方、「聞きにくい」「聞く機会がない」と思う健聴者も半数近い。
図表8
聴覚障がい者の職場でのコミュニケーション方法に関する希望を聞くこと等に対する意識
【健聴者調査】
0
20
希望があれば遠慮なく言ってほしい
40
60
49.8
どのような希望があるのか
言われないとわからない
34.9
23.3
41.4
13.0
32.8
45.8
希望を聞く機会がない
13.4
31.3
44.7
25.6
一人の希望を
5.3
特別扱いすることはできない
22.3
希望の伝え方が一方的である 5.0
18.7
100 (%)
84.7
64.7
こちらからは希望を聞きにくい
希望通りにすることは難しい 5.9
80
31.5
27.5
23.7
そう思う
ややそう思う
4頁で述べたように、聴覚障がい者調査では、コミュニケーション方法に関する自身の
希望を健聴者に伝えることに対してどう思うか尋ねました。一方、健聴者調査では、聴覚
障がい者のコミュニケーション方法に関する希望を聞くことなどについてどう思うか質問
しました。
その結果を図表8でみると、思う(「そう思う」+「ややそう思う」)と答えた割合は「希
望があれば遠慮なく言ってほしい」(84.7%)が最も高く、「どのような希望があるのか言
われないとわからない」(64.7%)がこれに続きます。また、「こちらからは希望を聞きに
くい」(45.8%)、「希望を聞く機会がない」(44.7%)も半数近くなっています。希望を聞
く機会がなくこちらからは聞きづらいが、言われないとわからないという気持ちが、遠慮
なく言ってほしいという気持ちにつながっていると考えられます。一方、
「希望通りにする
ことは難しい」(31.5%)
、
「一人の希望を特別扱いすることはできない」(27.5%)、「希望
の伝え方が一方的である」
(23.7%)といった否定的な意見は比較的少ないです。
7
≪研究員のコメント≫
聴覚障がい者および健聴者を対象に実施したアンケート調査では、聴覚障がい者が職場
でのコミュニケーション方法に関する希望を周囲の健聴者に伝えることに対する意識など
を双方に尋ねました。その結果、聴覚障がい者の多くは、ともに働く健聴者に対してコミ
ュニケーション方法に関する希望を伝えることが大切であり、伝えたことによりコミュニ
ケーションがしやすくなったと評価しました。また、8割以上の健聴者は、聴覚障がい者
に希望を遠慮なく言ってほしいと答えました。聴覚障がい者側は自身の希望を伝える大切
さを実感し、健聴者側も伝えてほしいと思っていることがわかります。
ただし、半数程度の聴覚障がい者は健聴者へ希望を伝えることに遠慮があり、同じく半
数程度の健聴者は自分から聴覚障がい者に希望を聞きにくいと感じていました。また、希
望を伝える機会がないと思う聴覚障がい者、聞く機会がないと思う健聴者もそれぞれ半数
近くいました。お互いが希望を伝えること・聞くことに対して遠慮しすぎないことや、伝
える・聞く機会を設けることが、コミュニケーションを良くするためにはまず重要でしょ
う。
また、半数以上の聴覚障がい者は、希望の伝え方が難しい、伝えても理解してもらえな
いとも思っていました。聴覚障がい者が自身の希望を効果的に伝えられるよう、3頁の自
由回答であげられた事例などを参考に、伝える手段や内容、タイミングなどを工夫するこ
となども必要と考えられます。
(研究開発室 上席主任研究員 水野映子)
8