2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 アジア太平洋LNG市場の現状と将来動向 アジアの石油・ガス問題に関する日中共同シンポジウム ー第2回 IEEJ/CNPC 研究成果発表会ー 平成20年12月5日 日本エネルギー経済研究所 戦略・産業ユニット・総括 研究理事 森田 浩仁 禁無断転載 1 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 目次 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 ―拡大するLNG利用とその特徴― 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの 変化 3. 将来の需給バランス展望 4. 結論 2 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.1 国別・地域別LNG輸入量の推移 ・アジアでは、2000年からの7年間で4000万トンも輸入拡大。 ・特に、2006年、2007年の2年間で2,000万トンを超える増加が。 ・わが国は、2000年代初頭には需要の伸びが低調であったが、2006年、2007年の 2年で800万トン+拡大し、2007年の輸入量は6690万トン、年度でみると6,830万トン に (通関統計) 日本 韓国 台湾 インド 中国 アジア 北米 欧州 世界計 2000 53.32 14.31 4.37 2001 54.99 16.12 4.75 2002 54.25 17.84 5.36 2003 58.51 19.41 5.59 2004 56.84 2005 58.11 2006 62.65 2007 66.90 22.29 22.49 25.48 26.00 6.89 1.97 7.19 4.60 72.00 5.08 24.74 101.81 75.86 5.51 25.28 106.65 77.45 5.30 30.19 112.94 83.51 11.31 30.37 125.19 87.99 13.49 29.74 131.22 92.39 13.38 35.97 141.74 7.79 6.18 0.75 102.86 12.92 43.16 158.94 8.20 8.40 3.00 112.50 18.90 41.20 172.60 (出所) Cedigaz 3 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.2 わが国におけるLNG輸入の拡大要因は ・都市ガス(特に工業用)需要の堅調な拡大 ・原子力発電所の不調;新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽発電所 (821万kW )の停止(2007年7月)等 原・燃料消費量の推移 年度 都市ガス 電力 2000 1,599 3,784 2001 1,508 3,818 2002 1,665 3,791 2003 1,763 3,906 2004 1,888 3,717 2005 2,054 3,464 単位:万トン 2006 2007 2,151 2,250 3,818 4,211 (出所)エネルギー・経済統計要覧 用途別ガス販売量の推移 40,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 家庭用 商業用 工業用 (出所)ガス事業便覧各年版 2005 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1985 1975 0 1965 ガス販売量 百万m3 35,000 その他 4 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.3 わが国の電力会社によるLNG受け入れ実績(2007年度) ・2007年度の電力会社によるLNG輸入量は前年比401万トン(10.2%)増の4,352万トン (経 済産業省) ・うち、東電は06年比で約300万トンの増。柏崎刈羽原子力発電所が地震の影響により2007年 7月以降、全基(821万kW)停止。 ・このため、東電は同年度、220万トン程度をスポット供給に依存した。 (出所) 経済産業省 ・わが国の電力会社6社が受入量は4,352万トンを記録したが(経済産業省) 、長期契約数量は 3,889万トンのみ(含むオプション) (三菱商事調べ)。 5 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.4 わが国の輸入相手国別LNG輸入量の推移 (100万トン) 70 60 オマーン カタール 50 オーストラリア 40 マレーシア 30 20 インドネシア アメリカ 10 UAE ブルネイ 2006 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 1976 1974 1972 1970 0 (出所)財務省、日本貿易月表 ・8カ国と長期契約を締結。 ・わが国の長期契約数量は6,158万トン(含むオプション) (三菱商事調べ) ・2007年度における輸入量は6,830万トン。 670万トンも長契量を上回る。 6 ・まず長契に定めるUQT(上限超過枠)で、それでも足りない場合にはスポット的な調達に依存。 ・ということで、スポット的な調達が急拡大中。昨今の特徴である。 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.5 世界のLNG取引に占めるスポット取引の割合 100万トン 25.0% 40 北米 35 欧州 インド 30 台湾 韓国 25 日本 20.0% 15.0% LNG取引全体に占めるスポット取引の割合 20 10.0% 15 10 5.0% 5 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 0 0.0% (出所) GIIGNL、Cedigaz ・スポット的なLNG調達は、2003年以降に急拡大中。 ・特に2006、2007年には、わが国、韓国、台湾で急拡大。 7 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 1.6 2008年1-6月輸入実績 ・北東アジアでは、わが国を含めて今年上半期735万トンのスポット調達を。全輸入量の13.2%に。 ・日本は、約340万トンのスポット輸入を記録。全輸入量の9.8%に相当。 ●全輸入量 数量(MT) 08/07(%) CIF単価(US$/MT) 08/07(%) 日本 34,675,603 6.17 574.54 56.68 中国 1,538,344 51.1 272.13 51.1 韓国 15,208,771 14.3 642.63 38.1 台湾 4,313,656 12.5 699.39 52.3 ●長期契約分のみ 数量(MT) 08/07(%) CIF単価US$/MT) 08/07(%) 日本 31,290,121 -1.54 553.51 51.62 中国 1,237,936 29.1 163.54 -0.5 韓国 13,002,778 4.8 634.50 35.2 台湾 2,853,124 -11.3 664.86 49.9 ●スポット分のみ 数量(MT) 日本 3,385,482 中国 300,408 韓国 台湾 08/07(%) CIF単価(US$/MT) 08/07(%) 743.79 769.00 32.6 406.7 719.60 65.3 2,205,993 146 690.59 67.8 1,460,532 136.7 766.84 41.8 (出所)T E X レポート ( 日刊エネルギー版) ・スポット価格は長契にくらべて割高(日本の場合は+34%) ・輸出ソースはT&T、アルジェリア、エジプト、赤道ギニア、ナイジェリア、そしてノルウェーの6カ国。 アフリカが多いこと、アルジェリアを除いて新興LNG供給国であるのが特徴。 8 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 目次 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 ―拡大するLNG利用とその特徴― 2. スポット取引拡大を可能とする供給サ イドの変化 3. 将来の需給バランス展望 4. 結論 9 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの変化 2.1 キーワードは「Equity LNG」と 「Branded LNG」 「Equity LNG」と 「Branded LNG」とは? • 近年、特に欧米市場向けに、 「Equity LNG」、あるいは「Branded LNG」 と呼ばれているLNGの供給が増加している。 • 「Equity LNG」とは、売主が自らLNGを引き取り、マーケティングを行う LNGをさし、 「Branded LNG」とは、 「Equity LNG」もしくは仕向け地規制が付随しな いLNGの保有者が自社のブランド名でマーケティングするLNGをいう。 • • 例えば、赤道ギニアのEGLNGで生産されるLNG(340万トン/年)はすべ てBGに販売される。仕向地に関する規制は存在しないため、BGは世界 の天然ガス市況をにらみ、LNGの転売先を選択できる。 • これら「Equity /Branded LNG」がスポット/短期のLNG取引を可能とし、 この流れは、わが国を含め、北東アジアにも広がりつつある。 10 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの変化 2.2 新規プロジェクトにみるEquity /Branded LNGの例 ・プロジェクト推進者と買主が同一である(Equity LNG)ケースが多い ・EG LNGはBGが全量を引き取り(Branded LNG)、市況により市場を決定 2005-2007年に稼動を開始したLNGプロジェクト一覧 プロジェクト名 液化能力 生産開始 (トレーン名) (100万トン/年) (年) Nigeria LNG ナイジェリア 8.2 2006 (Train 4,5) Nigeria LNG 4.1 2007 (Train 6) Damietta LNG エジプト 5.0 2005 (Train 1) Egyptian LNG 3.6 2005 (Train 1) Egyptian LNG 3.6 2005 (Train 2) EG LNG 赤道ギニア 3.4 2007年5月 (Train 1) Snohvit LNG ノルウェー 4.2 2007年10月 (Train 1) トリニダー Atlantic LNG 5.2 2005 ド (Train 4) 国名 オマーン カタール 豪州 Qalhat LNG (Train 3) RasGas Ⅱ (Train 4) RasGas Ⅱ (Train 5) Darwin LNG 合計 (出所) エネ研作成 3.7 推進体制(液化プラント) 買主 NNPC,Shell,Total ENI Gdf, Enel, GasNatural, Endesa, Iberdrola, ENI, Botas, Transgas, BG, Shell, Total NNPC,Shell,Total ENI Shell, Endesa, Total Union Fenosa Gas, Egas, EGPC BG, Petronas, EGAS, EGPC, GdF BG, Petronas, EGAS, EGPC Marathon, Sonagas, 三井物産, 丸紅 Statoil, Petro, Total, GdF, Amerada Hess, RWE BP, BG, Repsol-YFP, NGC オマーン政府, オマーン 2005 LNG, Union Fenosa,三菱 商事, 伊藤忠商事, 大阪 4.7 2005 QP, ExxonnMobil 4.7 2007年3月 QP, ExxonnMobil 3.5 53.9 Union Fenosa, BP, BG GdF BG BG Statoil, Iberdorola, GdF/Total GasNatural, Repsol-YFP, Suez, BP, Marathon, BG, NGC 三菱商事, 大阪ガス, Union Fenosa Gas KOGAS, Petronet, Endesa, ENI, Edison, Distrigas, CPC 同上 ConocoPhillips, ENI, 2006 Santos, Inpex, 東京電力, 東京電力, 東京ガス 東京ガス 11 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの変化 2.3 Equity /Branded LNGの仕組み(1) 米国向け既存LNG契約一覧(2006年現在) 輸出 国 プロジェクト 契 約期間(契約 年数) 1999~ 2018(19年) トリニダード・トバゴ Atlantic LNG 契約 数量 買主 (万トン) 106 Gas Natural Gas Natural Suez FOB アメリカ以 外の 輸入先 スペイン FOB スペイン 受渡 条件 2002~ 2023(21年) 1999~ 2018(19年) 65 163 2000~ 2020(20年) 2002~ 2021(19年) 34 80 2004~ 2020(16年) 220 BG 2005~2010(5年 ) 2006~ 2025(19年) 120 250 Marathon BP Ex-Ship Ex-Ship 2005~ 2026(21年) 2006~ 2026(20年) 150 58 BG NGC Ex-Ship Ex-Ship Suez BG FOB FOB アルジ ェリア Arzew Damietta LNG 1989~ 2009(20年) 2005~2010(5年 ) 320 170 Duke E nergy BG エ ジプト Egyptian LNG 2006~ 2023(17年) 2005~2010(5年 ) 360 72 BG Petronas 1999~ 2021(22年) 2002~ 2024(22年) 117 199 Gas Natural Gas Natural Ex-Ship Ex-Ship スペイン スペイン 2004~ 2023(19年) 2005~ 2026(21年) 250 20 BG Total Ex-Ship Ex-Ship 欧州 2005~ 2025(20年) 2006~ 2020 (14年) 154 Shell West Ex-Ship 80 三菱商 事 FOB ナイジェリア オマーン 合計 Nigeria LNG Qalhat LNG FOB FOB アジ ア 2,988 (出所) The LNG Industry、GIIGNL ・Equity /Branded LNGは、(欧)米向け契約の一部について仕向け地を変更することを基本と して成立。 ・米国向けのLNG契約数量は約3000万トン(2006年現在) 。 ・しかし、輸入量は2007年の1,560万トンがこれまでで最大。 ・残りは仕向け地を変更し、別の市場へ。 12 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの変化 2.4 Equity /Branded LNGの仕組み(2) LNG価格(CIF価格)の推移 (出所) Energy Prices & Taxes、IEA ・値決め方式の違いにより、市場ごとにLNGの入着価格は異なっている。 ・供給者はガス価格が異なる地域市場間で裁定取引を行い、保有ガス資源の 価値の最大化を図ろうとする傾向が顕著に。 ・米国との値差によりスポット玉は仕向け地を変える。 13 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 2. スポット取引拡大を可能とする供給サイドの変化 2.5 Equity /Branded LNGの仕組み(3) 米国のLNGとスポット輸入量の推移 (出所)米国 DOE,Office of Fossil Energy ・米国は2008年10月現在、8受入基地が稼動し、年間受入能力は1億5,000万トン。 ・2007年は約1,560万トンを受け入れたが、2008年は700万トン、2009年は900万トンに 減少するとの見通しが(米国DOE) ・米国は、国内生産量が大きく、地下貯蔵能力も大。従って、需要期・不需要期にかかわら ず大容量を受け入れることが可能で、逆に受け入れなくとも需給バランスを大きく崩すこと もない。 ・英国のグレイン島のLNG受入基地(受入能力330万トン/年)でも2006年で受入能力の 75%、2007年で16%、2008年9月時点で10%以下しか使用されていないとの報告が。 14 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 目次 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 ―拡大するLNG利用とその特徴― 2. スポット取引拡大を可能とする供給サ イドの変化 3. 将来の需給バランス展望 4. 結論 15 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.1 米国向け新規LNG契約 ・アフリカ諸国が多いこと、新興LNG供給国が多いことは既存のプロジェクトと同じ。 ・米国向け新規契約の買主はEquity/Branded LNG の担い手が勢ぞろい。 米国向け新規LNG契約一覧 契約数量 (万トン) Qatargas 3 契約期間 (契約年数) 2008~2028 (20年) 2007~2024 (17年) 2007~2027 (20年) 2007~2027 (20年) 2012~2032 (20年) 2012~2032 (20年) 2012~2032 (20年) 2009~2029 (20年) 2009~2029 (20年) 2008~2033 (25年) 2009~ 780 ConocoPhillips Qatargas 4 Snohvit 2010~ 2007~ 780 180 Shell Statoil 輸出 国 プロジェクト アルジェリア Sonatrach 赤道ギニア Alba LNG ナイジェリア イエメン Nigeria LNG Yemen LNG RasGas 3 カタール ノルウェー 合計 買主 受渡条件 アメリカ以外の 輸入先 200 Sempra 340 BG 90 Total Ex-Ship ベルギー 140 Shell Ex-Ship スペイン、 メキシコ 225 BG Ex-Ship 137.5 ENI 137.5 TOTAL 250 Suez LNG 150 Total 780 ExxonMobil FOB アメリカ、メキシコ 欧州 4,190 (注) ここでは、SPAおよびHOAを掲載しており、MOUやLOIは含まれない。 (出所) 各事業者ホームページ等より日本エネルギー経済研究所作成 16 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.2 アジア市場向けのLNG供給ポテンシャル ・欧米向けEquity/Branded LNGの契約量は、2010年には7,740万トンがつみあがるなど、アジ ア向け供給キャパシティに比しても十分に大きい (MMt) 既存、 SPA・HOA締結済 2007 2008 2009 2010 104.4 106.6 111.5 126.2 2011 2012 2013 2014 2015 2020 2025 2030 2035 2040 123.7 123.0 123.0 138.0 135.5 135.5 135.5 135.5 135.5 135.5 事業化検討中 5.5 12.9 58.4 61.4 61.4 98.0 98.0 98.0 98.0 98.0 ア ジア向け 供給キャパシティ 欧米向けEquity・ Branded LNG契約量 104.4 106.6 111.5 126.2 33.4 41.2 62.2 77.4 129.2 135.9 181.4 199.4 196.9 233.5 233.5 233.5 233.5 233.5 75.0 80.0 81.7 80.0 82.5 80.9 65.7 49.8 7.8 (出所) 各事業者ホームページ等より日本エネルギー経済研究所作成 17 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.3 世界の中長期LNG契約 ・Equity/Branded LNGは急増し、2010年以降は欧米向け伝統的契約量を凌駕 ・下図の「欧米向け」 Equity/Branded LNG契約量は、価格次第でアジア・市場に仕向け地を変える (注)1. 本図表の数値は、SPAおよびHOAの合計値であり、MOUやLOIの数値は含まれない。 2. 契約数量に幅がある場合、数量の下限値が計上されている。また、オプション数量は含まれない。 (出所)GIIGNL、各事業者プレスリリース等 18 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 禁無断転載 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 3. 将来の需給バランス展望 3.4 アジア地域のLNG需給バランス見通し と「潮目の到来」 ・長期的には、高需要ケースにおいても(既存、SPA・HOA締結済みプロジェクト+事業化検 討中プロジェクト)で需要をカバーすることが可能 ・ 2010年代央までは、欧米向けEquity/Branded LNGによる供給に依存することが必要 ・欧米向けEquity/Branded LNGの存在により、突発的な需要の急増にも対応可能。ただ し、価格は米国を上回ることが必須 ・しかし、下図は2008年3月末時点。その後「潮目」が。 (1 00 万 ト ン ) 3 50 欧 米 向 けEquity ・Branded L NG 契 約 量 事 業 化 検 討 中 プロ ジ ェ ク ト 既 存 、 SP A・H OA締 結 済 プロ ジェ ク ト 高 需 要 ケー ス 低 需 要 ケー ス 3 00 2 50 2 00 1 50 1 00 50 (出所) 日本エネルギー経済研究所 2030 2029 2028 2027 2026 2025 2024 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 0 19 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 浩仁 IEEJ: 2009年1月掲載 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.5 「潮目」とは? 売り手市場から買い手市場への転換 足元の状況 • 原油価格(含むLPG) は2008年7月以降、大暴落。145$をピークに9月中旬には100$割れ。 • アジア向けLNG価格は反応遅く、日本着価格は8月に比べて9月は1.15$/百万Btu程度上昇。 • 原油・LNG価格に逆転現象→電力にとって、原油(及びLPG)より高価な(スポット)LNGは不要。 • 夏場も猛暑続かず、電力需要の伸びは緩やかで在庫の積み増しが。 • 10月の大手都市ガス事業者(東京ガス、大阪ガス)によるガス販売量は対前年比減を記録(工 業用途も)。電力需要(10社計)は同▲2.1%。特定規模需要も▲2.1%。 • 8月には17ドル超(/百万Btu)と伝えられたスポット価格は、9月には13-14ドルとの伝聞が。直近 では、成立玉についての報道もほとんどない。 短・中期的観測 • 2008年から2010年にかけ複数のプロジェクトが稼動開始。特に欧米向けが多。 • 金融危機の米国経済への、エネルギー需要への影響の程度は。 • 状況、条件次第で大西洋向けのLNGはこれまで以上にアジアを目指す。 • わが国でも金融危機の影響は避けがたく、そして原子力発電所も順次、地震の後遺症から脱却。 • 需給が大きく緩む可能性が大。 中・長期的観測 • 総じて遅れ気味ではあるが、2011年以降も事業化検討中のLNGプロジェクトは多。 • 金融危機の影響はどこまで継続されるのか。 20 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.6 陸続と立ち上がる新規LNGプロジェクト • サハリンⅡからの東京電力の購入量は150 万㌧、東京ガスは110 万㌧。2007 年度における東電のス ポット調達量は約220 万㌧、東ガスは約76 万㌧との推測が。サハリンⅡの運開により、東電のスポット 需要は50 万㌧に縮小され、東ガスにあってはスポットが不要になる計算に。 •2008~10 年にかけて稼動を開始するプロジェクト一覧(1) 地 域 Country Australia ア ジ ア ・ 太 平 洋 Indonesia Russia 液化能力 (100万トン/ 年) 生産開始予定 NWS (Train 5) 4.4 2008年 第4四半期 Pluto (Train 1) 4.8 2010年 末 Project name( Train 名) Tangguh (Train 1, 2) Sakhalin II (Train 1, 2) 小 計 (出所) エネ研作成 7.6 9.6 2009年 2009年(2, 3月) 推進体制 ガス田 液化プラント Woodside, BHP Woods ide, BHP Billiton, BP, Billiton, BP, Chevron, Shell, Chevron, Shell, MIMI (1/6 each), MIMI (1/6 each) CNOOC Woodside(90)、東京ガス(5)、 関西電力(5) 買主(契約量:万トン/年 ):契約期間 NWS Train 1-4と一部共通の模様 東京ガス(1.5-1.75): 2010-2025 関西電力(1.75-2.0): 2010-2025 BP(37.16), MI Berau BV(16.3), CNOOC(16.96), 日石Berau(12.23) , KG Berau・KG Wiriagar(10), LNG Japan(7.35) POSCO(0.55): 2005-2025 K-Power(0.6):2006-2026 CNOOC(2.6): 2007-2032 Sempra(3.7): 2008-2028 東北電力(0.12): 2010-2025 Gazprom(50), Shell(27.5), 三井物産(12.5), 三菱 商事(10) 東京ガス(1.1): 2007-2031 東京電力 (1.5): 2007-2029 広島ガス(0.21): 2008-2028 九州電力(0.5): 2009-2031 東邦ガス(0.5): 2009-2033 東北電力(0.42): 2010-2030 西部ガス(0.0085): 2010-2028 中部電力(0.5): 2011-2025 大阪ガス(0.2): 2008-2028 KOGAS(1.5):2008-2028 Shell(1.6): 2008-2028 26.4 21 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 3. 将来の需給バランス展望 3.7 陸続と立ち上がる新規LNGプロジェクト • • 下記の新規プロジェクトの多くが、米、欧州を仕向地に。 しかし、米国発の金融危機が欧米の経済、エネルギー需要にどれほどの影響を及ぼすのか。 2008~10 年にかけて稼動を開始するプロジェクト一覧(2) 地 域 Country Proj ect nam e( Train 名) RasGas 3 液化能 力 ( 100万トン / 年) 生産開始予 定 ガ ス田 7.8 2008年末 N.A. 7.8 2009年末 N.A. Qatar Petroleum (70), ExxonMobil(30) 7.8 2008年末 N.A. Qatar Petroleum (70), ExxonMobil(30) 推進体制 (T rain 6) RasGas 3 ( Train 7) Qatargas II (T rain 1) Qatar Qatargas II 7.8 2009年 Qatargas 3 7.8 2009年 ( 2010年との 報道も) N.A. Qatargas 4 7.8 2009年 末 ( 2010年との 報道も) N.A. 6.9 2009年 H unt Oil(38.5), ExxonMobil(37), 第2四半 期 SK(24.5) Yemen LNG Yem en (T rain 1, 2) 小 計 中 南 米 N.A. (T rain 2) 中 東 Pe ru Peru LNG 小 計 (出所) エネ研作成 液化プラン ト Qatar Petroleum (70), ExxonMobil(30) 買主(契約量 :万トン/ 年) : 契約 期間 (主要仕向地 ) ExxonMobil(7.8): 2008(アメリ カ、欧州、アジア) ExxonMobil(7.8): 2009(アメリ カ、欧州、アジア) ExxonMobil(10.4): 2007-2032 Total(5.2): 2009-2034 Qatar (アメリ カ、欧州、アジア) Petroleum (65), ExxonMobil(18.3), Total(16.7) Qatar Petroleum (68.5), ConocoPhillips(7.8): 2009C onoc oPhilli ps(3 (アメリ カ、欧州、アジア) 0), 三井物産 (1.5) Qatar Petroleum (70), Shel l (30) Total(42.9), Yemen Gas(23.1), H unt Oil(18), SK(10), Shell(4.8): 2009PetroChina(3.0): 2009(アメリ カ、欧州、アジア) KOGAS(1.3): 2008-2028 Suez(2.5): 2009-2029 Total(1.5): 2009-2029 (アメ リ カ) 53.7 4.4 4.4 2010年 第2四半期 Hunt Oil(50), SK(20), Reps ol YPF(20), 丸紅(10) Repsol YPF(3.6): 2010(アメリ カ、欧州、メキ シコ他) 22 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 目次 1. アジア太平洋のLNG市場の現状 ―拡大するLNG利用とその特徴― 2. スポット取引拡大を可能とする供給サ イドの変化 3. 将来の需給バランス展望 4. 結論 23 2008年12月5日 (財)日本エネルギー経済研究所 森田 IEEJ: 2009年1月掲載 浩仁 禁無断転載 結論 • アジア太平洋ではLNG需要が急増。需給バランスの維持にスポット取引が急拡大 • • 「Equity LNG」と 「Branded LNG」の供給は今後も拡大 同地域のLNG需給バランスにポジティブな影響を。特に、突発的な需要の急拡大に 対応能力は大 複数の新規LNG・P/Jの立ち上がりまで、アジア・太平洋市場にとって貴重な供給 源に • • • • • • そして、アジア・太平洋の需給バランスに「潮目」が 2010年までに陸続と稼動開始する新規LNGプロジェクト 米国に端を発する金融危機のエネルギー、天然ガス(LNG)需要に及ぼす影響 中東、アフリカ発の欧米向けLNG船が需要を求めてアジア太平洋に向け方向転換 わが国においても金融危機の影響、原子力発電の回復等によりスポット需要は減 少 アジア太平洋市場では • 長期契約分は、JCCリンクの価格フォーミュラ採用のため、今後、急速に価格が下 がり 24 • ボリューム面でも、レス・リスクの時代が予見 お問い合わせ:[email protected]
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