Second Earth Online - タテ書き小説ネット

Second Earth Online
桐生 セイジ
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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Online
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Earth
︻小説タイトル︼
Second
︻Nコード︼
N6674BD
︻作者名︼
桐生 セイジ
︻あらすじ︼
セカンドアースには現実には存在しないものが数多くある。
その代表例は魔法であるが、この場では多くは語るまい。
プレイヤー諸君が体験し、解き明かして欲しい。
この世界は神秘と不思議に満ち溢れている。
そして、プレイヤーを遮るものは何も無いのだから。
※現在大規模な改定中です。
1
2
プロローグ︵前書き︶
書いてしまった
後悔はしていない
反省はしている
3
プロローグ
多くのゲームでは特定のシナリオをクリアしてスキルを習得すると
いうものが多い。
しかし、このゲームでは初期状態で全てのスキルが解放されている。
つまり、プレイヤーは初めてすぐに全てのスキルを使う事が出来る
のだ。
Earth
Onlineではその点にもきちんと配慮され
これだけだとバランス崩壊を心配する人もいるだろうが、Seco
nd
ている。
例えば指を鳴らすというスキルがあったとしよう。
今まで指を鳴らしたことが無い人がが突然使って成功するだろうか?
たまたま、上手くな鳴る事もあるだろうが、上手く鳴らないのが大
半だろう。
だが、何度も繰り返していると段々と上手く指が鳴らせるようにな
るのではないだろうか?
それを再現する為に、このゲームでは熟練度システムが実装されて
いる。
熟練度が低いうちは、すくるが不発だったり発動しても威力が低か
ったりする。
4
また、各スキルはそれぞれスキルツリーに組み込まれており、下位
スキルの熟練度を上げる事で上位スキルにプラスの補正がある。
剣がきちんと使えるのであれば、同然剣を使ったスキルもそれなり
に使えるという事だ。
Earth
Onlineには現実に存在
逆に言えば、基礎を固めなければなかなか次のステップへと進めな
いという事でもある。
そして、Second
しないものも数多くある。
例えば、魔法であり、モンスターである。
だが、この場では多くは語るまい。
プレイヤー諸君が体感し、解き明かして欲しい。
このせかいは神秘と不思議、希望に満ち溢れている。
Earth
Online 公式サイトより
そして、この世界にはプレイヤーを遮るものなど何もないのだから。
Second
5
第1話︵前書き︶
2012/4/18 加筆修正
6
第1話
Second
Earth
Online
最近、巷で話題となっているVRMMORPGだ。
﹃ゲームの世界で第二の人生を楽しもう﹄をコンセプトに開発され
たネットゲームであり、最近リリースされたばかりであるが、国内
ユーザー数が500万を超える勢いらしい。
VRMMO自体は結構前から話題になってはいたのだが、VR機自
体が低価格化して普及してくると、今まで2Dや3Dだった既存の
ゲームが移植されたり、海外産のゲームが入ってきたりと一時期は
色々なタイトルが乱立していた。
だが、VR機用のソフトのラインナップが充実してくると、開発費
Earth
On
の負担の増大やら設備投資の限界やらで多くの会社が撤退していっ
た。
そんな時にリリースされたのが、Second
lineだった。
寝ている間にプレイ出来て、しかも自由に生きられる。
ストレス社会に生きる人間にはこれ以上魅力的な事は無かっただろ
う。
しかも、VR機も大分安くなり、普通のパソコンよりちょっと高い
程度で買えるようになった。
7
VR機として使わなくても普通のパソコンとして使えるというのも
あり、瞬く間にVR機は普及していった。
そんな中、私はVR機も買わずに日々を過ごしていた。
買わなかったのは特に必要性を感じなかったからだ。
まぁ、流行に乗ってもつまらないと思っていた部分がある事は認め
る。
そんなある日、年に一度の私の誕生日、悪友数人が共同でVR機と
ソフトをプレゼントしてくれる事となった。
常日頃から﹁忙しくてゲームをする時間が無いから﹂と、遊びの誘
いをずっと断り続けていたのだが、寝ている間にプレイする事がで
き、しかもその間にも十分に睡眠が取れる。さらに、必要ならゲー
ム内でも事務処理くらいの仕事は出来ると説得され、今回の誘いは
断りきれなかったのだ。
悪友が言うには﹁日頃忙しくて遊べないんだから、ゲームでくらい
は一緒に遊ぼうぜ﹂とのありがたいお言葉を頂いた。
わざわざ、VR機を送ってくれるという事でもあるし、悪友と遊び
たくない訳ではなかったので、ありがたくVR機を頂きプレイする
事とした。
でも、寝てる間にまで仕事はしたくないな・・・
8
それはとある日曜日の昼下がりの事であった。
場所は私の自宅の玄関である。
そこには、緑の服で黒い猫が書いてある上着を着た配達員と部屋着
を着た俺がいた。
﹁こちらに印鑑かサインをお願いします。﹂
目の前に受け取り表が差し出される。
俺はその差し出された受け取りにさらさらっとサインをする。
﹁はい、ではこちらの・・・あーちょっと大きいですがどちらに置
きます?﹂
配達員がトラックから降ろしてきたきた荷物は確かに大きい・・・
届いたのは1m×1m×50cm位の段ボールである。
﹁そうですね・・・とりあえずそこに置いておいて下さい﹂
玄関の端を示してそこに置いてもらうように伝える。
そして、配達員がトラックに乗ってトラックが走りだしたのを見送
った。
とりあえず荷物を玄関から居間に移動する。
とりあえず、荷物を開けてさっさと開けてセットアップしてしまう
事にした・・・だって置いておくと邪魔なんだもの。
9
そんなこんなで届いた箱を開けてみる。
中身はタワー型パソコンのようなもの︵特別な端子以外は恐らく普
通のパソコン︶と専用のヘッドセット︵見た目はヘルメット︶とコ
ード類が入っていた。
しかし、モニターは?
内容物の説明書きを読むと・・・このセットではどうやらモニター
は別売りらしい。
奴ら地味にケチりやがったな。
気を取り直して作業を続ける事にしよう。
そして、まずは本体の説明書を読む事にする︵紙の説明書って良い
よね。だってモニターが無くても読めるもの︶
何をするにしても、まずは説明書を読む。
Onl
説明書には大抵の場合、重要な事や便利な事、気を付けなければい
けない事が書かれている。
Earth
まずは説明書を読む、これが意外と大切な事なのだ。
その説明書によると、どうやらSecond
ineのソフトは初期インストール済みで回線を繋げばそのまま使
えるらしい。
10
なおかつ、初回起動時に自動的にVR機に使用する体格データの読
み込みを行い、プレイ中に不具合が起きないように自動調整してく
れる機能も付いているようだ。
いやはや、なんとも便利なものだな。
こんな事なら、もっと前にVR機を買っておくんだった。
そんな事を考えていると
﹃丸い緑の山手線真ん中通るは中央s・・・ピッ﹄
おや、電話が来たようだ・・・誰だろう?特に電話してくる人に心
当たりは無いのだが・・・
とりあえず電話に出て見よう。
﹁はい、もしもし﹂
﹁うっす、VR機届いたって?﹂
電話をして来たのは悪友の1人、土屋恭介通称つっちーである。
なぜ届いた事がわかるんだろう・・・ストーカーなの?エスパーな
の?
﹁おいおい、さっき届いたばかりだぜ?なんで届いたってわかるん
だ?﹂
﹁そんなもん、荷物追跡サービスを使えばわかるだろうが。で、今
11
夜早速やるんだろ?どうせなら他の2人に声を掛けとくから皆で会
おうぜ。﹂
あぁなるほど、そういえば荷物が届いたらメールで知らせてくれる
サービスとかあったなぁ。
﹁おーけーおーけー、で、どうやって合流するよ?﹂
﹁あー・・・とりあえず後でメールで連絡するわ。とりあえずゲー
ム内でもメールが見れるように連動設定しとけよ。﹂
連動設定かぁ・・・あれ面倒なんだよなぁ・・・まぁ、しゃーないか
﹁わかった、んじゃ後でメールくれや。﹂
﹁うぃうぃ、じゃーな﹂
さて、そうと決まればさっさと準備してしまおう。
とりあえず、届いた本体︵パソコンの事︶をベットの横に置き回線
を繋ぐ。
この回線は無線でも良いと説明書に書いてあったが、あえて光ケー
ブルを直接引っ張ってきて接続した。
通信速度を考えるとそこまでやる必要は無いのだが・・・なんとな
く自己満足の為だから気にしないでくれ。
12
メール設定をしようとおもったら・・・モニターが無い。とりあえ
ずテレビに繋げないかな?
パソコンを確認すると、なんとS端子があるではないか。
早速テレビにつないでメール設定・・・ついでに電話とWED閲覧
に関しても設定しておくか。
それらの設定をものの10分程で準備を終えてしまう。
全ての準備を終えると丁度サザエさんの始まる時間・・・やる事も
無いし、ちょっと早いけど夕食を食べてやってみるか。
そう考え夕食を買う為に外出の準備をするのであった。
そして、夕食を終え明日の朝食の用意を終える。
ついに、VRMMO初プレイである。
プレイと言ってもヘッドギアを付けてベットで寝るだけであるのだ
が・・・
では、おやすみなさい
そして寝たはずなのに良く分からない白い空間にいた。
上下左右を見渡すが何も無い
13
﹃ようこそ何も無い場所へ﹄
どこからともなく声が聞こえてきた。
周囲を見回すが流石ヴァーチャルリアリティって所か
﹃貴方のお名前は?﹄
﹁もり・・・﹂
目の前に入力パネルが現れる・・・うわ、はずっ
名前と言われて反射的に本名を答えそうになった私は悪くないはず。
うん悪くない。
とりあえず、気を取り直して入力しよう。
入力パネルは空中にキーボードが浮いているのをイメージして貰え
ばわかりやすいと思う。
私は1文字づつ読み上げながら慎重に入力していく。
﹁S・e・r・r・eっと﹂
読み上げる必要は無いのだろうが、なぜかキーボードで打つ文字を
読み上げてしまう・・・
これはもう癖だな。
14
セール
﹃Serreさん・・・ですね、次は貴方の・・﹄
﹁あーっと、ここからはランダムで﹂
ここからは、特性と初期パラメーターの設定のはずだ。
特性というのは戦闘・魔法・製造等々それぞれのスキルの成長率・・
・つまり得意不得意を設定するらしい。
SEOにおいては、プレイを始めた当初から全てのスキルを使う事
が出来る。
しかし、スキルにはそれぞれ熟練度と得意不得意が設定されており、
熟練度による成功補正と得意不得意による成功補正、更にキャラク
ターのステータスによって使用したスキルがどのような効果を発生
させたのかが決まる。
例えば、剣がが得意で熟練度がマックスのキャラが居たとしても、
力が無ければそもそも、剣を持ちあげる事が自体が出来ない・・・
つまりは剣を振る事が出来ない。
逆に力はあるが、剣が不得意で熟練度が0だった場合、剣で殴りつ
ける事しか出来ない。
また、不得意だからと言って使えない訳では無く、使い続ければ熟
練度があがり一流と呼ばれる程度にはなるらしい。
ただし、得意不得意の補正は大きく不得意だと通常状態の1/5倍、
得意だと通常状態の5倍のボーナスが掛る。
15
低レベルのうちは特に問題は無いと思いがちだが、MMO特有の後
半の経験値テーブルを考えると馬鹿にする事は出来ない。
何せ得意なスキルの成長は不得意なスキルの25倍にもなるのだ。
しかも、製造ボーナスやダメージボーナスにも影響を及ぼす。
例えばMP消費10で100ダメージを与える魔法があるならば、
同じダメージを出すのに得意であれば2、不得意だと50のMPを
消費する事になる。
そして、熟練度を1上げるのに10回使う必要があるとすると、得
意な場合は20、不得意な場合は500のMPを消費する。
しかも、熟練度は上がれば上がる程に術の効率化やダメージ補正、
成功率に補正がある。
つまり、最も得意な場合と最も不得意な場合の育成時間には最低で
も25×25倍の差があるのだ。
このように結構︵いや、かなりか?︶重要な要素ではあるのだが、
今回はあえてそれをランダムにしてみた。
ランダムだと、ある程度特典があるらしいし︵通常よりも多いポイ
ントが振られるらしい︶なにより悪友共がランダムで振ったと教え
た時のリアクションが面白そうだからだ。
﹃これでよろしいですか?﹄
﹁OKOKそれで良いよ﹂
16
なにやら、完成したものを表示されたが確認せずに確定してしまう。
Onlineへ貴女に幸の
見てしまったら楽しみが無くなるとはいえ、後ほどこの事をとても
Earth
後悔する事になるのである。
﹃ようこそSecond
あらん事を﹄
17
第2話︵前書き︶
2012/4/18 加筆修正
2012/5/18 性別の明確化の為に加筆
18
第2話
キャラ作成を終えると、初期スタート地点に転送された。
MMORPGというと初期スタート地点は良く露天や臨時パーティ
ーを募集する場となるが、このゲームもその点は他のゲーム同じだ
ったらしい。
初期スタート地点は煉瓦造りの広場なのだと思うが、人が多くてど
のくらいの広さかを確認する事すら出来ない。
それほどまでにプレイヤーが多いのだ・・・いや、プレイヤー以外
のNPCも結構混じっているのか時折名前表示の色が違うキャラク
ターが居るな。
間違いなく言える事はそれなりの広さがあるという事だ。
それはさておき、とりあえずは悪友から連絡が来るまでにチュート
リアルでも済ませておこう。
露店をのぞいてみるにしろ、街の外に出て狩りに行くにしろ最低限
の先立つものは必要だからな。
チュートリアルを終えればある程度の装備や回復剤が貰えるか、少
なくても最低限の準備する為の多少のお金くらいは貰えるだろう。
そう考え、チュートリアルを開始するNPCを探そうとしたとき・・
・
19
﹁やぁ、このゲームは初めてかい?﹂
トッププレイヤーとまでは言わないが、恐らく中堅位にはなるのだ
ろう。
それなりの装備をしたプレイヤーと思しき人が声を掛けてきた。
初対面の人間から突然声を掛けられ戸惑いと訝しみが半々の顔をす
ると、それを読み取ったのか
﹁いや、このゲームではチュートリアルはプレイヤーに対してギル
ドからの依頼という形で一部任されていてね。NPCのチュートリ
アルもあるが良かったら私の報酬の為にチュートリアルを受けて貰
えないかな?﹂
と釈明してくる。
なるほど、初心者に対してはある程度の人脈作りも兼ねてプレイヤ
ーがチュートリアルを行うのかなどと感心していると・・・
﹁それでチュートリアルを受けるかい?﹂
受けるべきかを悩んでいると思ったのか答えを催促されてしまった。
﹁あ、はいお願いします。﹂
いけないいけない・・・考え事に夢中で返事を忘れていたようだ気
をつけないと。
﹁えーっと、それじゃあまずはステータスの確認からやってみよう
20
か。﹃ステータスを見たい﹄と念じながら﹃ステータス﹄と唱えて
見て﹂
﹁ステータス﹂
言われた通りにやってみると、どこかのRPGで見たようなステー
タス画面が目の前に出てくる。
﹁このステータス画面はそれぞれのプレーヤーが﹃これがステータ
1、Int
30、
ス画面だ﹄と思った形で表示されるらしい。さて、君のステータス
15、Vit
10か随分とステータスが高い・・・ラン
20、Agi
20、Luk
は・・・Str
Dex
ダムで振ったね?﹂
そういって苦笑している。
﹁やっぱりランダムって珍しいですかね?﹂
﹁そうだね、大体の人が目指す職を決めてステータスを振っている
からランダムは滅多にいないね。まぁ、このステータスなら最低限
とはいえ、戦闘職でも生産職でも行けるから・・・リアルラックで
引き当てたんだね﹂
説明からすると、やっぱりステータスをランダムで振る人は少ない
んだなぁと実感させられた。
だって、最低限ですよ・・・まぁ、ランダムにしたのは自分だから
仕方ないけどさ。
ん?性別欄が女性になってる・・・あぁ、ランダムにすると性別も
21
ランダムだったりするのか・・・
まぁ、ゲームだしそれも良いかな、胸も小さいから動く分にも問題
無いし・・・ね?
あ、なんかちょっと悲しくなってきた・・・
﹁ステータスの次は特性確認かな、とりあえずステータスを表示し
た時と同じように、﹃特性を見よう﹄と念じながら唱えて見て。﹂
﹁・・・特性﹂
すると先ほどと同じように目の前に画面が表示される。
﹁まぁ、アイテムボックスやスキルツリーもやり方は同じだから後
で確認してみてね。しかし、投擲特性と錬金特性が100というの
は・・・ランダムなのはわかるがあまりにも・・・﹂
特性の表示されている画面を見るなり眉間にしわを寄せて渋い顔を
してしまった。
﹁やっぱり、外れですか?﹂
表情から判断しそう聞いてみる。
﹁正直に言わせてもらえば・・・うん、この2つは外れだね。特性
は行動によって変化していくとはいえ、出来るならば作り直しをお
勧めするよ。﹂
やはり、地雷だったようだ。
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﹁うーん・・・まぁ、折角なので出来る所までやってみますよ。﹂
﹁そうか、なら頑張ってみると良いよ。じゃあ、次はNPCの武器
屋、防具屋、道具屋を案内しておこうか。あ、その前にマップの使
い方かな開き方自体はステータスや、特性と同じなんだけど、特別
な機能があってね。行きたい所を念じながら﹃案内﹄と唱えるとそ
の場所までの案内表示が出るんだよ。これも表示のされ方は人によ
って違うらしいが・・・とりあえず武器屋に行ってみようか。﹂
﹁案内﹂
唱えると視覚上に案内がカーナビのように表示された。なるほど、
これは便利だ。
案内によって表示されたマップによると、現在居るのが中央広場で
中央広場からは東西南北へ大通りが伸びている。
武器屋はどうやら中央広場から西に伸びる通りの中央広場よりにあ
るらしい。さっさと行ってしまおう。
そして、武器屋と防具屋と道具屋を回る。
防具屋は武器屋の向かいにあり、道具屋は中央広場の北東にあった。
それぞれの店で初心者向けの装備が貰えるという事だが、どの職に
成るかを決めていないので、とりあえず初期装備を買えるだけの現
金を貰う事にした。
23
ゴールド
ちなみに、この世界の通貨単位はGである。
金貨、銀貨、銅貨があって、金貨は銀貨の100倍、銀貨は銅貨の
100倍、金貨は銅貨の1万倍という比率らしい。
それぞれに10枚分の価値がある大硬貨、1枚分の価値がある中硬
貨、金貨と銀貨だけではあるが一つ下のランクの硬貨50枚分の価
値の小硬貨が存在する。
ちなみに通常、プレイヤーはアイテム欄の1種である通貨欄へ仕舞
っておいて金額で指定して使うとの事だ。
また、それぞれの貨幣の供給量によって交換比率は変わるらしいが、
今まで大きく変動した事は無いらしい。
あ、ただし、両替には金額の1%の手数料が掛るとの事。
まぁ、この辺は実際に使う事が無いというから雑学的に教えてくれ
たようだ。
チュートリアルを行ってくれている人の話によると、南側には大規
模な市場があり市場では競売が行われており、その市場の周囲の通
りは露天が立ち並ぶ商店街のようになっているらしい。
基本的に市場では高価な物やそれなりに纏まった数を売ったり買っ
たりする場所で、周囲の露店は小売を行うという住み分けになって
いるらしい。
そのうち用事が出来たら行ってみよう。
24
また、この世界ではNPCといえども生産活動を行っているという
説明があった。
よくあるRPGだとNPCは在庫無制限だったり、在庫の数が設定
されていたとしても定期的に一定量在庫が回復したりする。
だが、この世界ではNPCが生産した物︵+プレイヤーがNPCに
売った者︶がNPCの店で売られているという事だ。
また、それと同時にNPCも消費活動を行っており、食料や消耗品
が無いと街からNPCが居なくなっていくそうだ。︵移住したり餓
死して死亡するという事らしい︶
さらに言えば、NPCに収入が無い場合も食料が買えず居なくなる
らしい・・・なんとリアルなことだろう!
﹁さて、最後に戦い方と生産スキルの使い方について説明しようか﹂
そして、街の南にある平原に連れて行かれた。
﹁ここは、初心者向けの狩り場でね。とりあえず慣れるまではここ
で狩ってみようか。まぁ、戦い方といっても、現実と同じように動
くだけだからあまり説明はいらないと思うけどね。君の場合は・・・
そうだなその辺に落ちてる石を拾って投げてみようか。﹂
とりあえず言われた通りに足元に落ちていた手頃な大きさの石を拾
い、その石を投げてスライムを狩る。
スライムは全体として動きが遅く、3~4メートルの距離を取って
25
石を投げつければスライムがこちらへ攻撃する事無く倒す事が出来
た。
拾って投げる、拾って投げるそれを繰り返す事数十回スライムを1
0体程倒す事が出来た。
しかし、いくら狩っているのがスライムと言えども、低レベルであ
れば10体も狩れば十分レベルが上がるものである。
現に私も狩っているうちにレベルが幾つか上がった。
そして狩りを続ける事10分。
﹁よし、ドロップアイテムもある程度集まったしスライムのドロッ
プで錬金のスキルを試してみようか。生産系は専用画面を開いて作
れる物を選択した上で﹃作成﹄と唱えるだけ。まぁ、聞くよりはや
ってみた方が早いと思うけどね﹂
﹁そうですね。ウインドウオープン﹂
このゲームは意外といい加減な所もあって、意思と呪文がかみ合え
ば大体のものが発動出来る。
例えば、魔法の﹁ファイヤーボール﹂を使おうとするならば、発動
する意思と﹁撃て﹂﹁燃えろ﹂などそれらしい言葉を言えば発動す
る。
なので、何かしらの画面を開く場合も﹁展開﹂﹁ウィンドウオープ
ン﹂﹁画面表示﹂など色々な言葉が使われる。まぁ、どれを使うか
は趣味の領域だな!
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慣れれば、意思か言葉だけでも発動出来るらしいが、大半の人は言
葉も併用しているようだ。
言葉だけでは日常的に発動してしまうし、意思だけでも似たような
事が起きる。
ある程度融通が効くようになった弊害というやつだろう。
それはさておき、開いた画面には錬金スキルで作る事の出来るもの
がずらっと並んでいる。
とりあえず、スライムがドロップした薬草で初心者向けのポーショ
ンを作ってみよう。
﹁作成﹂
唱えると体が光に包まれる・・・しかし、特に変化があったように
は感じられないんだが?
﹁スキルを使って作成された物はアイテム欄にあるはずだから確認
してみて。﹂
言われて、アイテム欄を確認すると・・・おお、あった
﹁さて、これでチュートリアルは終了かな、お疲れ様。あ、折角だ
しフレンド登録しておこうか。﹂
﹁あ、はいお願いします﹂
27
そうしてフレンド登録を行う。
KIRISIMAね・・・
﹁S・e・r・r・eか・・・これはセッレって読むの?﹂
﹁あ、その綴りでセールです。えっと・・・よろしくお願いします
KIRISIMAさん﹂
﹁こちらこそよろしく・・・おっと、ごめんフレから呼ばれたから
行くね。じゃあ、また今度﹂
こうしてチュートリアルは終わった。
でも、待ち合わせの連絡はまだ来ないな・・・狩りでもしながらス
キルを試してみるか
チュートリアルが終わって暇になったから街の南で狩りながら何処
へ行くべきかを検討してみる。
あ、SEOにおいては第2の地球というだけあって実在の地名が使
われている。
先程まで居た街が東京である。しかし、初期スタート地に設定され
ているからある程度の規模があるといっても、現代の基準で言えば
精々が村かどう甘く見ても町の規模しかない。
また、サービスがリリースされてからそれほど時間が経っていない
ゲームだからだろうが、いまだに開拓の最前線は関東平野にとどま
っている。
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wikiによれば、現在は大阪へ向けの探索が強化されており東海
道・中山道を西進する形で探索が進められているという事だが、裏
を返せば現実では食糧生産が豊富である東北への探索が進んでいな
いという事を意味する。
この世界では、出てくるモンスターや動物にもそのマップでの生息
数が設定されており、狩られれば狩られるだけ、遭遇率は低くなっ
ていく。
つまり、レベル上げを目指すのであれば人が入っていない地域へ行
くのが最も効率が良い。
そう考えると北へ向かうのがベストなのだろうが、現在のLvを考
えると東北へ向かう事はそのまま死を意味する。
そんな事を考えながらマップをスクロールしていると・・・ふと閃
いた
水戸街道を北進して水戸・日立辺りまでなら関東平野だからソロで
も行けるんじゃないだろうか?
さらにいえば、戦国時代には常陸では食料生産は十分にあったはず・
・・つまり、近くて豊か︵かもしれない︶な土地!
﹁よし、行ってみるか﹂
そうと決まれば準備をしなければいけない。とりあえず東京の街へ
戻る事にした。
29
﹁・・・え?無い?﹂
東京へ戻ってまず行ったのはNPCの道具屋。消耗品の回復剤を補
充しようと思って行ったのだが・・・どうやら在庫が無いらしい。
﹁ごめんなさいねぇ、今日も朝一で完売しちゃって・・・薬草すら
もう在庫が無いのよ。﹂
話を聞くと、どうやら西進組が買い込んでいったらしい。仕方ない
ので市場周辺の露天まで足を延ばして見るが・・・
﹁店売り価格の10倍は軽くするのか・・・仕方ない、休憩を取り
ながらゆっくり行こう﹂
高くて消耗品が買えなかったので補充せずに向かう事にした。行く
ぜ水戸!
そして、街道を北進しつくばへと到着した。
モンスターや動物はそこそこ出るが、全て遠距離からの投擲で倒せ
ている。しかも、投擲で使う石はその辺で拾えるし・・・なんと費
用対効果が良いんだろう。
今までの所、手に入れたドロップアイテムは薬草に動物の皮と肉、
それと良くわからない鉱石が少々・・・
しかし、初めて東京以外の街に来たが意外とプレイヤーが居ないの
で、少々驚いている。
まぁ、確かに主流から外れた場所だから人が居ないのもわかるのだ
30
が・・・
そして、消耗品を補充できないかと道具屋を探すのだが・・・うん、
まさか無いとは思わなかった。
どうやらある程度の規模がある街じゃないと施設が無い事があるら
しい。
仕方ない、とりあえず当初の目的地の水戸まで行ってみよう。
31
第3話
街道沿いに現れるモンスターに石を投げ倒しつつ歩く事しばらく。
なんとか無事に水戸へとたどり着く事が出来た。しかし・・・
﹁何もねぇな・・・﹂
そう、水戸には家が数件しか建っていなかった。
これは、もう少し北へ行ってみるしかないか?
その前に情報収集をしておくべきか。
とりあえず、NPCを探してっと・・・お、いたいた
﹁すまない、ちょっとお聞きしたいのだが、北へ向かう道の状況は
どうなっている?﹂
NPCの男へ尋ねる。
恐らくこの男は農民なのだろう。木製の鍬を持っている。
﹁北への道?今はでかいモンスターが出てて通れないはず・・・あ
んたは冒険者かい?﹂
NPC男にそう尋ねられる。
冒険者だと何かあるのだろうか?
32
﹁いや、ただの旅人だ﹂
質問の意図がわからなかったのでとりあえずそう答える。
するとNPCの男は少し考えた後
﹁ちょっと待っててくれ﹂
と言って村で一番大きな建物へと入って行った。
・・・待ってるのも良いが暇だな・・・とりあえず、スキルの確認
でもしていよう。
とりあえず、スキル画面を開きどのくらい成長したのかを見てみる。
投擲が25、錬金が3・・・
投擲は使うが錬金は使わないからなぁ・・・
ついでに、上位スキルを見ていくと・・・指弾なるスキルを発見し
た。
効果:石などの物体を指で弾く事で相手を攻撃する。投擲・射撃ス
キル
これは・・・あれか某漫画のレールガンみたいなあれか?
これは使いこなせればそれなりに便利そうだな・・・というか投げ
なくて良いんだから速射効くんじゃないか?
33
よし、使ってみよう。石を手に持って・・・あれ、石が出てきた。
もしかしてアイテム枠に入れてると石だけに意思だけで出せるの?
うお、なんか急に寒くなってきた。
まぁ、気をとりなおして手に握って・・・親指で弾く。
弾いた石はまっすぐ飛んで行き村の家の壁に食い込んだ。
とりあえず上手く出来た。
壁に穴が開いたのは見なかった事にしよう。
これは便利そうだからモンスター相手に使ってみるべきだな。
そんなこんなで他に使えそうなスキルも見ていると家から誰か出て
きた・・・
穴を開けた事に文句を言いに来たか?
いや、あれはさっきのNPC男だな。
﹁すまないが、ちょっと来てもらえないか?﹂
・・・やはり穴の件だろうか?
﹁何か問題でもありましたか?﹂
34
とりあえず確認しておこう
﹁いや、特に問題は無いが、この村に外部から人が来る事が少なく
てね。まぁ、それでちょっとした依頼があるんだよ。詳細に関して
は村長から聞いてくれ。﹂
どうやら穴の事では無いらしい。
しかし、人があまり来ない村か・・・これはもしや稼ぐチャンス?
某香辛料でロレンスが手つかずの村は儲けるチャンスと言ってたし
な・・・ゴクリ
とりあえず、村長に依頼の内容を聞いてみる事にした。
村長の話は長かったから割愛するが、依頼の内容は簡単﹃この村を
発展させて欲しい﹄という事だ。
報酬は、家やら畑やら色々貰えるらしい。
とりあえず、家は欲しいし頑張ってみようか。
しかし、村を発展させるかぁ・・・
とりあえず、元手が無い事にはなんともならないしどうしたものか。
そんな風に悩んでいる時
﹃めーるが きてるよーISDNで当たりま・う・す﹄
35
どうやらメールが届いたようだ。
受信音は完全に趣味だ、異論は認める。
内容は連絡がついたから集合場所を指定してくれという内容・・・
とりあえず、水戸で待つ神田と返信しておこう。
さて、ここは海が近いはずだし、暇つぶしに海沿いに狩りにでも行
ってみようか。きっと見たこともないようなのが沢山いるだろう。
結果的に言えば、今まで見たことない様な水系のモンスターが沢山
いた。
カニに、貝に・・・ヒトデ?他にもヤドカリ等々・・・まぁ、モン
スターにも名前があるんだろうが調べるのも面倒だしな。
よし狩るぜー、マジ狩るぜ︱
初めて実践に投入した指弾も十分に威力を発揮した。
しかしだ・・・
﹁指が痛い・・・﹂
そう、普通の小石を打ち出したせいで指の皮が剥けて痛い事痛い事
そして、拾った小石を半分も使った時ふと思いました。
36
錬金で砂を固めて砂岩の球にすればマシになるんじゃないかと。
試しに砂を採取して錬金をしようとすると・・・あれ?砂からガラ
スが作れる。
そう、このゲームにおいてはまだあまり出回っていない︵今までど
こでも硝子を使っているのを見た事が無いだけで実はあるのかもし
れないが︶ガラスを精製出来る事に気付いたのです。
気付いたからには早速実践してみよう。
MPが尽きるまでひたすら錬金で砂をガラスに加工してみました。
失敗
失敗
失敗
成功
ポーン 錬金スキルが5へ上がりました。
やはりガラスは要求レベルが高く成功率は1割を切るか切らないか
というレベル
しかし、砂は浜辺に無尽蔵にあり、MPはモンスターに石を投げつ
けている間に自然回復
そんな事を繰り返すうちに、それなりの数のガラスを作成する事が
出来ました。
その数なんと252枚
37
作成に失敗した廃棄物は・・・適当にモンスターにでも投げつけよ
う。
そんなこんなで、悪友との待ち合わせ時間
さっさと水戸の村に戻る事にしましょう。
村に戻って見ると村の入り口に悪友らしき3人がいた・・・ん?メ
ールが来てるなどれどれ
﹃HIJIRIが俺のキャラだから見つけたら声を掛けてくれ﹄か・
・・
よし、ちょっと悪戯をしてやろう。
﹁ひじりさーん﹂
ちょっと高い声で呼びかけ、思いっきり手を振りながら駆け寄る。
そして、そのまま奴の胸にダーイブ
そして受け止めきれずに倒れ
﹃ガゴン﹄
・・・なんか、凄い音がした・・・スタンしてるが気にしないでお
こう。
あとの二人は突然の事でポカーンとしている。
38
﹁あ、はじめまして。私はセッレと申します。﹂
﹁あ・・・えっと・・・はじめまして?俺はヒロだ・・・で、こっ
ちが﹂
﹁クルツだ・・・しかし、君とヒジリとの関係は一体・・・﹂
声を掛けると再起動したようだ。
しかし、まだ気付いてないのか?
いや、どうやら気付いてて乗ってきたようだな。流石悪友だ目がキ
ラキラしている。
﹁えーっと・・・特別な関係です。﹂
お、頷いてる頷いてる。
2人はおもむろにヒジリに近づき・・・思いっきり蹴ったよあいつ
ら・・・
いまの一撃でHPを半分は持って行ったぞ。
ヒジリは飛び起きて何やら2人に文句を言って・・・こちらを指差
した?
﹁で、君は何なんだ一体﹂
まぁ、普通そうなるわな
39
﹁ひどい、私の事を忘れちゃったの?﹂
セッレはなきまねをする。こうかはばつぐんだ!
﹁いや、忘れるも何もそもそも会った事も無いだろ!?﹂
ヒジリは混乱している。
﹁おい、お前何泣かせてるんだよ﹂﹁恥ずかしいのはわかるが正直
に認めちまえよ﹂
2人は追い打ちを掛けた
ヒジリは陥落した。
﹁申し訳ありません・・・本当に知らないんです・・・﹂
土下座しちゃったよ・・・ちょっとやり過ぎたか。
﹁つっちー俺だよ俺﹂
﹁ん?・・・俺・・・もしかして・・・﹂
﹁あぁ、VR機はありがたく頂いた!﹂
﹁なんだお前かよ、紛らわしい事しやがって﹂
うお・・・殴られるのは良いがHPが8割持って行かれたぞ・・・
40
﹁ちょ、お前やり過ぎ・・・今のでHPが8割減ったぞ﹂
﹁え、すまん。そこまで柔らかいとは思わなかった﹂
手を合わせて謝ってくる。
﹁まぁ、今のは俺が悪かったから良いが・・・少しは加減しろよ。
こっちは始めたばかりなんだぜ?﹂
﹁あぁ、悪かった。で、最近そっちはどうなのよ﹂
悪友3人と久々に会い︵ゲーム内だが︶世間話に花が咲いた。
まぁ、その辺は割愛しておこう。第三者が聞いてもあまり面白い話
じゃないしな。
久々に悪友と会うのはとても楽しかった。
そして、ゲームを始める前の事前調査が足りなかった事も判明・・・
メールが遅いと思っていが、実際はゲーム内の1日はゲーム外での
1時間
さらに1月は24時間、1年は28日間となっており。
また、各季節はゲーム内時間で7ヵ月づつとなっている。
さらに、冬には農作物が育たないとか、その間は食料が高騰すると
か・・・
41
他にも、NPCから物を買う時は同じ価値のアイテムでも買えると
か細々とした裏技的なのも教えて貰った。
品薄なものは現金化するよりも物々交換の方がお得らしい⋮
これって土地を買うときに使えんかな?
後で村長に聞いてみよう。
うん、悪友と会えたのはとても有意義だったな。
とりあえず、友人と別れ村長の元へ向かう。
﹁すみません村長。少々よろしいですか?﹂
﹁おや、旅人さんかい?本日はどうされたかな?﹂
﹁実は土地を買いたいのですが、ガラスで買えませんか?﹂
﹁ふむ、ガラスかぁ⋮﹂
そう言って村長は黙り込んでしまう。
やはり、無理だったか?
﹁・・・ガラスは相場がわからんからのう・・・土地1単位でガラ
ス50枚でどうだ?﹂
ガラス50枚か・・・相場はわからないが、砂から錬金でいくらで
42
も作れるし、買ってしまうか。
﹁わかりました、ではそれで買います。ちなみに、人を雇う場合は
どうすれば?﹂
﹁誰か雇いたい個人がいるなら個別に交渉して決めてくれ。誰でも
良いなら、わしに言えば村人で忙しくない奴を派遣してやる。まぁ、
畑仕事とか簡単な事しか出来んがな。﹂﹁ちなみに費用はどのくら
いになります?﹂
﹁個別のはわからんが、まぁ、安くても3000G∼4000G位
はするだろうな。わしに斡旋を頼む場合は1000で良いよ﹂
最低3000Gはするのか・・・畑だけなら1000Gで村長に頼
んだ方が良いか。
﹁ちなみに斡旋を頼むのはガラスでも良いですか?﹂
﹁あぁ、ガラスなら2枚で良いよ。﹂
﹁では、それでお願いします。﹂
﹁はいはい、それで何を育てるかね?﹂
あー、育てる物を選べるのか。
それなら、食料と薬草を半々にしておくか⋮
﹁食料と薬草を半々で、詳細はお任せします。﹂
﹁わかった。それで、ガラスは今持ってるかね?﹂
43
﹁あ、はい﹂
そして持っていたガラスを64枚引き渡す。
土地代50枚、雇用費2×7ヶ月︵1シーズン︶分252枚−64
枚=188枚
もう少し土地を買っておくべきか?
しかし、雇用で1000G掛かるのが、ガラス2枚か
ガラスが1枚500Gとか、マジぼろ儲けだな。
ガラスが1枚で500とわかったのでゲーム内時間で3日程、延々
とガラスを錬金で量産している。
そのおかげで錬金スキルも20の大台を超え22になった。
量産とはいえ、MPを自然回復に頼っている時点でそれほど効率は
良くない。
しかし、3日という時間はそれなりに大きく1320枚のガラスを
生産する事が出来た。
これで所持しているガラスは1508枚となり、約75万Gの資産
となる。
それと、このゲームでは食料や薬草などは毎日収穫する事が出来る。
44
村長の元へ行って確認したら3日で薬草150本に小麦が1.5k
gの収穫だったようだ。
今回、薬草は土地の半分を使って栽培したので全面を使って栽培す
れば3日で300本は収穫出来るだろう。
つまり1日で100本の薬草が収穫出来る訳だが、薬草のNPCの
店売り価格は1本5G、1日の雇用費が1000Gだと1日あたり
500Gの赤字になってしまう・・・これはどういう事だろうか?
もう少し雇用に掛かる費用が下がらないだろうか・・・ちょっと聞
いてみるか。
﹁村長、雇用費って少し高くありませんか?﹂
﹁・・・あぁ、大体1人で10単位くらい耕せるものだが、1単位
しか持っておらんのか・・・ガラスを持っておるなら温室を作るか
土地をもっと買うしかないのう。﹂
ん?温室なんか作れるのか?
﹁温室なんて作れるんですか?﹂
﹁作れるよ。まぁ、ガラスが100枚程必要だが、収穫量が2倍に
なって冬でも収穫出来るようになるがのう。﹂
生産量が2倍か・・・2倍になると1000Gだから費用と同等か・
・・これはとりあえず土地を9単位買った方がよさそうだな。
45
﹁それでは、土地を9単位買います。支払いはガラスで・・・﹂
﹁うむ。ガラスだと・・・45枚になるの﹂
あれ・・・この間は1単位で50枚だったのに。
﹁この間商人がこの村に来ての。高値でガラスを買って行きおった
わ。まぁ、それでガラスの相場が変わったという事だの。﹂
土地1単位当たり5枚って・・・ガラス1枚で5000Gかよ。
あ、という事はこの間のは思いっきり損したのか・・・まぁ、元手
が只だから良いけど。
﹁じゃあ、おまけでガラス1000枚を出すので全部温室にして下
さいよ。﹂
まぁ、ダメ元でこの程度の要求はしてみよう。
﹁ふむ、お安いご用じゃ。おまけで、収穫物を入れる倉庫も作って
やろうかの。﹂
そして、1045枚のガラスを引き渡す。
﹁また来るのじゃぞ﹂
畜生、あの爺さん余程儲かったのかものすごく機嫌がいいじゃねぇ
か。
悔しいから今度東京にガラスを売りに行くか。
46
そして起きる時間となり、また新しい1日が始まった。
朝7時に起床し夜22時に寝る。
これはゲームをやっている間は十分に睡眠時間が取れて健康的かも
しれんな。
あ、事務処理だけだったら寝てる間に出来てしかも1時間が24時
間なら・・・とても効率が良いんじゃないか?
そんな仕事人間的な事を考えながら眠りへと落ちて行った。
そしてゲーム内、開始地点は昨日落ちた水戸村である。
村自体には大きな変化は見られない・・・変化があるとすれば小道
具の位置くらいだろう。
とりあえず、倉庫を確認すると・・・薬草が15000本に小麦が
150kgとかなりの量が倉庫に増えていた。
一々支払うのも面倒だから小麦で支払うようにして倉庫から持って
行って貰うようにするか。
そう、思い立ったら吉日とばかりに村長の所へ向かって交渉する。
そして月に小麦20kgで雇用契約を結んだ。
これで、いちいち戻ってきて払う必要が無いから心おきなくあちこ
ちを旅する事が出来るようになった。
47
そして、水戸に来る時は補充出来なかった消耗品を心行くまで補充
し︵倉庫にあった薬草を全てアイテム枠に突っ込んだだけだが︶、
昨日考えていた東京行きを実行へと移した。
そして、道中で見つけたモンスターや動物を狩りながら移動する事
数時間東京へと辿りついた。
心なしか人が減ったような気がするが気のせいだろうか?
それはともかく、アイテムの売買の中心である市場へと向かう。
市場はいうなれば競売場のようなものである。
わかりにくければ、常時朝の築地市場のようなセリが行われている
と考えて貰えれば良いだろう。
そして市場の周りにはレアドロップやユニーク装備やプレイヤーが
生産した装備をうる露店が多く並んでいる。
とりあえず、薬草とガラス、それと小麦の時価を確認しないと・・・
・・・
そう考えて市場へと価格を見に向かう。
え?これマジ?
48
表示されていた価格は薬草50G、小麦が150G、ガラスが5万
Gでった。
薬草が50Gなのは店売りの10倍だから露天に置いてあった価格
と同じくらいだから良いだろう。
小麦も水戸村で1000Gの報酬に対して小麦20kg・・・つま
りNPCが小麦を50G換算していた訳だからまだわかる。
しかし、ガラスが1枚で5万Gというのは一体・・・
まぁ、儲かるから構わないと言えば構わないのだが一気に金持ちに
なるなぁ
とりあえず、ガラスを200枚ばかり売却して・・・纏まった枚数
だったからかセリが過熱し1500万の値段が付いた。
ハハハ・・・なんかもう・・・ねぇ?
ガラスを売って儲かったお金で水戸村の土地を全て買い占める事に
した。
そして買占めを実行・・・そして無事全ての土地を買う事が出来ま
した。
かかった費用が総額1000万G、そして得た称号が﹃水戸村領主﹄
である。
49
wikiや他の攻略サイト等を確認してみたものの、領主に関する
情報は全く出ていなかった。
隠しとまでは言わないが、水戸村の規模ですら1000万Gも掛か
った事から、恐らく攻略経路にある村などは高すぎる事や複数人で
の所有権争いで条件を満たせないのだろう。
そしてNPCの村長に確認した所、街道や村の拡張、税金の徴収、
代官の任命など領主に成らないと出来ない事もあるらしい。
とりあえず、NPC村長をそのまま代官へ任命し、村人を雇用し所
有する全ての畑で耕作を行う事と余剰人員で新規開拓を行う事を指
示しておく。
雇用費等の経費に関しては赤字に成らない程度に村長に任せておこ
う。
新規に購入したものも合わせると土地が100単位、内訳は家屋1
0棟、温室10棟、倉庫5棟、畑75単位。
折角だから畑を全部温室にしてしまおうか。
そんな事を考えいつも通りに浜へと向かうのであった。
ガラスを生産する為の砂を採取しに来たのだが、その時ちょっとし
た発見をした。
いくつかの条件があるが、採取する意思さえあれば採取する﹃行動﹄
が必要ない様だ。
50
気付いたきっかけは砂に手をついて収納したら、まるで掃除機に吸
いこまれるように消えていった事。
そこで、もしかしたら体の一部が接触していればアイテム欄へと収
納出来るのではないかと考え試してみた。
そしたら出来ましたよ・・・靴やグローブを装備していても関係な
く収納する事が・・・
それに気付いてからというもの砂浜を歩きまわるだけで砂が集まる。
何このヌルゲー?
まぁ、便利と言えば便利だけど・・・仕様だと思って諦めよう。
その仕様を全力で活用しつつ、指弾でカニ︵モンスター︶を倒して
行く。
このあたりのモンスターはド○クエでいうとス○イムレベルのモン
スターだから倒しても経験値は入らないが片手間に採取が出来るか
ら暇つぶしに狩り続ける事にしたのだ。
大体12時間くらい狩り続けただろうか?
カニがなにやら装備をドロップした。
<装備品 指輪>海のしずく
効果 モンスターへの攻撃1回につきMPを5回復する
51
え、何この装備とても美味しいです。
今は指弾で打ち出す物は拾った小石を使っている。
しかし、この指輪があれば砂↓砂岩︵小︶の錬金を行い、出来た砂
岩を指弾で打ち出す事が出来る。
そして、砂は足元で採取し放題
しかも錬金に使用するMPは2だから5回に2回攻撃を当てればM
Pは回復していくばかり
更にモンスターは波打ち際だけあって貝、カニ、亀など豊富にいる。
なおかつ、倒すことが条件じゃなくて当てる事が条件である。
つまりは、固くて避けていた貝を滅多打ちにすれば・・・ごくり
早速やってみる事にしよう
試しに﹃海のしずく﹄を装備して指弾で貝のモンスターを撃ちまく
る。
すると面白いようにMPが回復して行くではないか。
1秒間に両手を使えば指弾を20回撃ちこめる。
そうするとMPは1回につき5回復して、打ち出す球を錬金で作る
のに1発当たり2のMPを消費するから差し引きすると1回あたり
3回復する事になる。
52
20回撃ちこんだ場合毎秒60MPが回復する事になるのだ。
これだけMPが回復するなら、何か速度向上系の魔法が使えるので
はないかと思い確認して2つほど使えそうなスキルを見つけた。
﹃速度向上1﹄速度を1.5倍にする 使用時に毎秒50のMPを
消費する
﹃神速1﹄速度を2倍、攻撃力を0.1倍にする。 使用時に毎秒
100のMPを消費する
これよりも上位のスキルは結構あるのだが、そちらのスキルはMP
消費が厳しくてそもそも使えないレベルになってしまうのだ。
そもそも、この2つのスキルだって本来なら現時点で使えるような
代物ではないが・・・
計算してみると速度向上1で1.5倍で30回攻撃だから90回復
して消費が50だから毎秒40回復、
神速1もあわせると60回攻撃となり180回復して150消費す
るから毎秒30の回復となる。
wikiに載っていた情報によると、魔法系は習熟度が上がると消
費MPの減少し、さらには使い続けているうちに特性上昇するとい
う事らしい。
MMORPGというのは基本的に狩っている時間に比例して強くな
っていくものである。
53
しかし、人が作るゲームなので意外と穴がある場合が多い。
例えるならば、特定のスキルの組み合わせによって通常ではありえ
ない威力を発揮したりするような事だ。
時にそれは公式チートと呼ばれ、修正が入る。
しかし、時にはそれが放置される場合もあるのだ。
恐らく、この指弾の組み合わせもそういった類のものなのだろう、
そう思っていた。
なぜなら、このSEOではどんなにレベル差があっても50%の確
立で1のダメージが通る仕様になっている。
つまり、防御が固いモンスターに対しても毎秒30のダメージは必
ず通るのだ。
wikiに載っていた情報によると、攻撃速度は早くても前衛の短
剣職で3秒に2回、前衛剣士で5秒に1回というレベルらしい。
ただし、これは補正無しの状態だから実際はもっと早いらしいが・・
・指弾がどれだけチートかおわかり頂けただろうか?
しかも、武器に耐久度が無い為長時間戦い続けられ、現地で拾った
物を消費している為に残弾数に制限が無い、手数の影響で無制限に
回復するMPなどもうチート以外の何物でもない。
・・・このチート仕様のうちにボスを狩りに行くべきか?
54
しかし、指弾で撃つ速度を上げると小石と違って打ち出す時に指が
傷つかないとは言え、流石に摩擦によってダメージが入るようにな
る。
初めのうちは無視していたのだが長時間になるとHPの5割6割と
減って行く為に無視する事も出来なくなってきたのだ。
まぁ、半日狩り続けてHPが半分であれば回復アイテムを使えば良
いのであるが・・・あえて、ここで特性が無い回復魔法を使ってみ
ようと思ったのだ。
確かに、効率が悪いとはいえMPは装備のお陰で無尽蔵に回復する
と言っても良い状態である。
ならば、そのMPを無駄にするくらいなら消費してしまった方が良
いだろう。
と、言っても実際はわざわざ消耗品を使うのがもったいないという
貧乏根性だったりするが・・・
それはともかく、回復魔法を使ってみる。
﹁ヒール﹂
体全体が光に包まれてHPが回復してゆく・・・おお指の痛みが消
えた。
これって慣れれば攻撃中にも使えるのだろうか?
55
いや、攻撃中に使うよりも常時発動型のやつを使いっ放しにした方
が良いかな?
この世界では基本的に複数の魔法を同時に使用する事は出来ない。
なぜなら、発動時の意思表示が難しいからである。
しかし、攻撃しながら補助魔法を使う時など、どちらかの動作を無
意識のうちに行う事が出来るようになると複数発動が可能となる。
つまり、慣れ次第で複数の魔法を使う事が出来るのだ。
ただし、例外として常駐型魔法がある。
常駐型の魔法は基本的に発動時と終了時にのみ発動の意思が必要で
ある。
つまり、他の意思表示と別のタイミングで行えばMPの許す限りい
くらでも同時起動する事が出来る。
ただし、デメリットもあり常駐型魔法は使えば使う程に武器や防具
の耐久度が加速度的に減っていくのだ。
そして、基本的に常駐型魔法のMP消費量は大きい。
そして、常駐系魔法にはデメリットがある事が多い。
例えば、速度全般を2倍にする﹃神速度1﹄は攻撃力が0.1倍に
なる。速度2倍になった事を合わせても与えるダメージは0.2倍
になるのだ。
56
他には攻撃力を上げる﹃火力向上1﹄では防御力と速度が0.5倍
になるし、完全に防御出来る﹃バリア﹄は全く移動出来なくなる上
に、バリアを攻撃される度にMPが減少する。
そして全てに共通するのがMPが自然回復しなくなるという事だ。
MPが自然回復しないという事は大した事が無いデメリットである。
そして、MPを回復する為のアイテムさえあれば全く問題は無い。
しかし、現状ではMPはおろかHPを回復する為のアイテムさえ不
足している状態である。
その為、MPが自然回復しなくなるというのは、狩りの効率に結構
な影響を及ぼすのだ。
だが、海のしずくの効果、﹃攻撃1回につきMP5回復﹄がそのデ
メリットを完全に打ち消してくれる。
いや、打ち消すどころか圧倒的な手数でインフレを起こしているっ
実は、初めのうちはこの回復するMPを利用して錬金を行いガラス
を作っていたのだ。
しかし、砂の採取量が錬金での生産能力を下回った事によりMPが
余り始め、今はMPを使わずに垂れ流している状態なのである。
そのうち、何か錬金で生産するものを探さないとな・・・
57
とりあえず、こんな事を考えている間にもモンスターを掃討︵もう
狩りってレベルじゃない!︶し続けている。
そして、ヒトデのモンスターを倒したとき・・・何か装備品をドロ
ップした事に気付いた。
ヒトデが装備をドロップしたのは初めてだから恐らくレア装備だろ
うと思って詳細を見ると、案の定レアでした。
そりゃ、延々と狩り続けて次々と落とさないならまずレアだよね・・
・
<星のしずく>攻撃1回につきHP5回復する
・・・普通の人なら、﹁なんだ、ゴミ装備か﹂と言うでしょう。
だが、私の攻撃速度は秒速60回っ・・・なんと毎秒300もHP
が回復する素晴らしい装備を手に入れたのです。
こんな装備品を装備しない理由が無い!!
という訳で装備してみます。
さて、駆逐︵狩り︶を再開しようか・・・
そう思った時でした。
ピコーン
突然音が成り、何やら画面が開きました。
58
なんだろう?
そう思い画面を見るのは自然な事だと思います。
しずくシリーズ特典解放﹄
そして、画面に書いてあったのが
﹃装備品
・・・なんの事だかわからなかったので、とりあえずwikiで調
べてみた。
wikiによると、特定のシリーズの装備やある一定の条件を満た
したセット装備をするとボーナスで特典が付くという事らしい。
wikiに載っていたのは魔術師セット︵魔法発動体・魔道書・ロ
ーブ、セット効果魔法攻撃力1.1倍︶や、剣士セット︵剣・盾・
鎧、セット効果攻撃・防御1.1倍︶といったセットものに関して
だけであった。
しかし、他にもあるという事で未確認情報に﹃森のしずく﹄が載っ
ていたから、恐らくしずくシリーズは未確認なのだろう。
ちなみに、森のしずくは防御力が上がるらしい・・・しかし、ゴミ
装備と書かれているから条件が結構酷いものだったのだろう。
・・・っとwikiを調べるのに夢中でわすれていたが、しずくシ
リーズの特典効果を見てみよう。
﹃各しずくの効果が2倍﹄
59
えっと・・・この特典は確かに一般的には地味な効果かな。
なにせ普通は攻撃回数が2∼5秒に1回で攻撃1回に対して10の
MPとHPが回復するという事だ。
無いよりはマシだろうが、それならば防御力が上がる装備や攻撃力
が上がる装備で受けるダメージを減らしたり、殲滅力を上げて戦闘
を短くし被ダメージ回数自体を減らした方が有効だろう。
だが、私は1秒間に60回攻撃出来るのだ。
60×5で300回復していたのが、2倍になって600回復する
もはや驚愕の領域である。
この装備って、もしかして剣士などの一般職のキャラが全部揃えた
時に﹃強い﹄ってレベルの装備なのではないだろうか・・・
そうだ、きっと森のしずくを装備してみればきっとわかるはず。
私はとりあえず狩りを切り上げ、森のしずくを買う為に東京へ向か
う事にした。
・・・ゴミ装備っていうくらいだからきっと棄て値で売ってるよね?
思い立ったが吉日とばかりに東京へ向かう事とした。
毎度の事ながら、特に何事も無く東京へ到着した。
東京に来る度に人が減っているのは・・・気のせいじゃないよな?
60
ともかく、市場へ行ってみよう。
東門から市場へと向かうが、露店の数自体が減っているな・・・
そして、売っている物も高い。
あと、全体的に品薄な感じだ。
とりあえず、森のしずくを探すか。
探してみると、森のしずくは以外と数が出回っているみたいだ。
・・・とりあえず、人気の無い露店で買うか。
﹁これいくら?﹂
隅の方にある人気の無い露店で聞いてみる。
﹁えー・・・1M、いや600kくらいでどうかな?﹂
どうかなと言われても困るが・・・60万か。
とりあえず2つばかり買っておこうか。
﹁じゃあ、とりあえず2つ買うよ﹂
﹁・・・本当に買うの?﹂
いや、本当に買うのって売り出してるのはそっちだろうに・・・
61
﹁当然買うよ・・・ほら、これで良いでしょ?﹂
面倒なので1.2Mを渡してしまう。
そうすると、何やら驚いた様子で・・・
﹁いや、相場よりだいぶ吹っ掛けたんだけど・・・実はお金持ち?﹂
あぁ、なるほど。ぼったくり価格を提示してたのか。
﹁まぁ、多少ぼったくられた所で問題は無いさ﹂
﹁一度はそんな事を言ってみたいもんだねぇ・・・最近は、大手ギ
ルドに入ってるか特殊技能が無いと全く稼げやしない・・・﹂
大手ギルドに入って無いと?特殊技能が無いと稼げないというのは
まだわかるが、大手ギルドに入って無いと儲からないというのはど
ういう事だろう・・・
﹁特殊技能が無いと儲からないというのはわかるが、大手ギルドに
入って無いと儲からないというのはどういう事だい?特にこの街で
商売している分には税金も掛からないだろう?﹂
﹁あぁ、そうか商売していない人にはあまり関係ない話だね。近頃、
硬貨が不足して来ていてね・・・これはどうやら大手ギルドが集め
ているかららしいんだが、それで不足している硬貨に代わってギル
ドが発行する紙幣が流通しているんだよ。しかし、この紙幣を取り
扱って商売をするなら上納金を払えとかなんとか・・・﹂
62
なるほど、税金として集められないから﹃紙幣を取り扱う対価﹄と
して上納金を要求しているのか・・・
ん・・・そういえば歴史的に見れば時の権力者って通貨を発行して
たよな。まぁ、自らの権力を現すものだから乱立しすぎて大変な事
になってた時代もあるみたいだが・・・
もしかしてこのゲームでも領主権限で通貨の発行とか出来るんじゃ
ないか?
とりあえずダメ元で試してみるか?
あ、元になる金属が無いと発行が出来ないよな・・・これは錬金で
なんとかなる・・・かな?
錬金でなんとかするにしろ、まずは鉱石を調達しないといけな・・・
あ、丁度良く目の前に商人が居るじゃないか。
こいつに頼んでしまうか
﹁なぁ、注文したら買い付けとか引き受けてくれるか?﹂
﹁物によっては時間が掛かるかもしれないけど引き受けるよ。それ
を聞くという事は何か欲しい物があるのかな?お姉さん頑張っちゃ
うよー﹂
お姉さんって・・・女だったのか気付かなかった。
それはともかく、注文出来るみたいだから頼んでしまおう。
63
﹁とりあえず、鉱石と砂を買えるだけ・・・あ、対価は物でも良い
かな?﹂
現金で払うよりは大量生産したガラスと交換という形にした方が手
間が省けるからね。
あ、森のしずくもその方法を使えば良かった・・・
﹁別に物でも良いけど・・・それなりの物じゃないと引き受けない
よ?﹂
﹁ふむ、ではとりあえずガラスでどうだろうか?﹂
64
第4話
とりあえず、ガラスは貴重品のはずだから問題は無いだろうと思っ
たのだが・・・
﹁ガラス・・・ねぇ・・・枚数は?﹂
﹁とりあえず、初めは1000枚くらいで良いかな﹂
﹁・・・はぁ?ガラス1000枚なんて一度には扱えないよ・・・
私と専属契約する気は無い?﹂
問題は無かったが量が多すぎたようです。
しかし、専属契約か・・・結んでも良いがそこまでメリットがある
ものなのかねぇ・・・
﹁専属契約をすると何かメリットがあるの?﹂
﹁何かを買う時にいちいち探す手間が省けるよ。それと特典で専属
契約を結ぶと相互にアイテムを送れるようにな。﹂
確かに便利だけど、どうするべきかなぁ・・・
特に不利益もなさそうだから契約しておくか・・・?
そう悩んでいると、その商人が更なる条件を持ち出した。
﹁契約してくれるなら、この袋をあげようじゃないか。この袋はな
65
んと倉庫と繋がっていて、所持しておくと自由に倉庫からアイテム
を取りだせるという優れものでね・・・﹂
錬金で加工する為の原材料を調達出来て、同時に加工品を売る手段
を手に入れ、更に余ったものは倉庫に仕舞えると・・・
うん、これは多少デメリットがあったとしても契約しておいて損は
無いか。
﹁わかった、条件はアイテムを入手する時にそちらを通して購入す
る事で良いのか?﹂
﹁アイテムを売る場合もうちを通して貰いたいんだけど・・・﹂
﹁わかった、それで良い。これからよろしく頼む﹂
そう言い、手を差し出す。
﹁こちらこそよろしく﹂
差し出した手を握り返される。
﹁私の名前は光、貴女は?﹂
﹁私はセールです。とりあえずガラスは渡しておくので、砂と鉱石
はお願いしますね。﹂
契約要請があった事が通知され目の前にディスプレイが開く。
承認すると、画面が切り替わりステータス画面となった・・・右下
66
の方に契約﹃専属契約:光︵商人︶﹄と記載が追加されているのを
確認する。
﹁アイテム欄でアイテムを指定するとアイテムが送れるから確認し
ておいてね。それと、袋を送ったよ。﹂
言われて、あわててアイテム欄を確認する。
確かに袋が増えていた。
<袋>
効果:持っているとアイテム欄と倉庫が繋がる
これは、便利なものだ・・・よし、とりあえずガラス1000枚を
送ってしまおう。
といっても方法は簡単
1.ガラスを1000枚以上用意します。
2.ガラスを1000枚、光に送りたいと念じます。
3.送っても良いかを確認されるので﹃YES﹄を選択します。
ただこれだけでアイテムが送れます。
専属契約って結構・・・いやかなり便利なのかもしれない
・・・
﹁では、そゆことでよろしく﹂
67
﹁はいはい、またきてねー﹂
とりあえず目的の﹃森のしずく﹄も手に入れたし、おまけで良いア
イテムにアイテムの入手経路も手に入れられたし、今回は本当に来
てよかったな。
さて、村に戻りがてら﹃森のしずく﹄の効果の検証をしましょう。
まずは、今までのしずくシリーズと同じで指輪形状であると。
装備してみると・・・うんやっぱり、装備特典が増えているね
装備特典
しずくシリーズ
シリーズ装備特典 効果3倍
<星のしずく>攻撃1回につきHP5回復する
<海のしずく>攻撃1回につきMPを5回復する
<森のしずく>防御+15 速度0.5倍
うん、森のしずくは確かにシリーズ特典が無ければ速度が半分にな
って防御が少し上がるゴミ装備だね。
しかし、特典の効果3倍によって防御+45 速度1.5倍まで効
果が上昇する・・・あ、森のしずくだけじゃ無くて星のしずくと海
のしずくも効果が上昇するのか・・・
68
計算してみると
速度が1.5×1.5×2で4.5倍
攻撃回数が初期で毎秒20回だから毎秒90回攻撃
HPの回復量が90×15で1350
MPの回復量が90×15の1350で消費量が50+100+9
0×2で330だからトータルで毎秒1020回復っと・・・
うわ、何これ完全に回復量がチート級じゃないか。
参考までにあげると、初級攻撃魔法のファイヤーボールで5︵特性
補正で1∼25︶上級回復魔法のリザレクションで200︵特性補
正で40∼1000︶上級殲滅魔法のファイヤーストームで500
︵特性補正で100∼2500︶程度である。
現在のMP回復量だとリザレクションを毎秒1回、ファイヤースト
ームを5秒に2回発動出来るのだ。︵実際には詠唱時間があるので、
回復量を気にせず撃ち続ける事が出来る︶
とりあえず、この回復量がチート級のうちにボスに挑むべきだろう。
どこのボスに挑むのが良いか・・・そう考えた時前にボスがどこか
にいる情報を聞いた事を思い出した。
﹁そういえば・・・北に向かう道にボスが居て通れないとか村で言
ってたな﹂
69
そう、それは確かボスが居て鉱山に行けないとかそんな話だったは
ず・・・鉱山?!
鉱山があるのか、出来れば所有しておきたいな・・・
よし、北のボスを倒しに行こう。
とりあえず、1人で行くのもちょっと不安だから悪友連中にも付き
合って貰う事にしよう。
そう考え、つっちーへ連絡を取る。
﹁はろーはろー﹂
﹁あ、俺俺、俺だけど﹂
﹁あぁ、お前か・・・で何の用よ?﹂
﹁ボス狩りに行きたいからよろしく。明日水戸で待つ﹂
﹁・・・いきなりだな。まぁ、しゃーない今回だけ付き合ってやる
よ。じゃあ明日な﹂
相変わらずノリの良い奴で助かった・・・
とりあえず、後は明日の準備だけして明日に備えて休息を取る事に
しよう。
そして翌日の事
70
水戸では相変わらず薬草が量産されている為、それを使う事にし友
人が来るのを待つ。
その間に村の周辺で雑魚狩りをしてMPを回復しつつ錬金を行うが・
・・森のしずくを装備した効果だろうか?
MPの回復量が消費量を圧倒的に上回っている。
この溢れだすMPを何かに使えないだろうか?
そんな事を考えつつ狩りを続けていると・・・どうやら来たようだ。
﹁よぉ、元気にしてたか?﹂
まず、先陣を切って挨拶をしてしたのはヒロだ。
﹁あぁ、まぁ、そこそこにな﹂
しかし、この3人は恐らく西方を拠点にしてるんだろうが・・・
ちょっと装備が貧弱すぎないか?
鎧が皮で、剣が銅で・・・鉄の剣ならそれほど高くは無いだろうに。
それはともかく、その装備も一応レアドロップかユーザー生産品で
はあるようだ。
﹁お前はまだ初期装備を使ってるのか・・・﹂
クルツが俺の装備を見てため息をつく。
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まぁ、初期装備は性能が最低限しかないからため息をつきたくなる
のはわかるがな。
﹁いや、一応装備を手に入れたぜ﹂
そう言って指にはめたしずくシリーズを見せる。
﹁お前、それって森のしずくじゃないか・・・ちゃんと効果を見て
装備したか?﹂
何やら3人の反応が芳しくない・・・
いや、むしろ何かかわいそうなものを見たような雰囲気が・・・
あぁ、こいつらはしずくシリーズの特典補正について知らないのか。
とりあえず教え・・・いや、今教えるよりもボス戦の最中に教えた
方が反応が面白そうだな。
とりあえず、今は秘密にしておこう。
﹁あぁ、効果は見たぜ。とりあえず多少なりとも防御が上がれば良
いと思ってな﹂
なんか、呆れられてる・・・?
まぁ、良いとりあえずはボス狩りだ。
﹁で、狩りに行くボスについてなんだが・・・詳細は一切わからん﹂
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今の俺の発言で場の空気が凍ったぞおい・・・
﹁お前って奴は・・・﹂
うん、ちょっと今のは反省しないとな。
3人共完全に呆れている。
﹁一応、今のところある情報は、鉱山がある事、ボスが居て通行出
来ない事の2点だ。それとwikiに載ってないから恐らく俺らが
初チャレンジそんな所だな﹂
﹁初チャレンジね・・・まぁ、それなら仕方ない。元々死に戻り前
提だったから今回だけは付き合ってやるよ・・・次からはちゃんと
下調べしろよ﹂
どうやら、今回は観光に行きたいって事だと思われたみたいだな・・
・
﹁とりあえず行こうぜ、準備はもうして来たんだろう?﹂
﹁あぁ、勿論だとも﹂
3人が3人とも準備自体はきちんとしてきているらしい。
構成は
HIJIRI 職業 僧兵
ヒロ 職業 騎士
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クルツ 職業 弓兵
Serre 職業 無職
である。
・・・あれ?俺だけ無職?
もしかして、だから反応が悪かったのか?
水戸村を出発し、4人で北へと向かう。
その道中、出現するモンスターや動物を狩りながら進んでいる。
俺はいつもの如く指弾でモンスターを駆逐していた。
そんな中、ヒロが口を開いた。
﹁なぁ・・・Serreってレベルどのくらいあるんだ?﹂
そこにクルツも乗っかってくる。
﹁それは俺も思った。さっきからモンスターを狩るの早すぎだろ・・
・俺ら出る幕無いじゃん﹂
確かにずっと俺が先頭で進んで、モンスターの射程に入る前に倒し
切ってるな・・・
﹁レベルはまだ40だぜ?お前らでもこのくらい出来るんじゃない
の?﹂
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そう言った途端場の空気が変わった・・・あれ、何かヤバイ事言っ
たか俺?
その時、HIJIRIが言った。
﹁トッププレイヤーで大体レベル50に成るか成らないか・・・中
堅だと大体30代・・・お前のレベルの上がり方は明らかに異常だ﹂
﹁え・・・それマジ?﹂
あっけに取られる俺それに追い打ちを掛けるように後の2人うなづ
いている。
﹁確かにお前が言うように殲滅自体は出来るかもしれない・・・し
かしそれはそれなりの装備を揃えた上でパーティーで陣形を整えて
という条件付きでな﹂
﹁間違っても初期装備で、しかもソロで出来る事じゃないのは確か
なんだよ﹂
ここまで言われると、やはり今までのあれは完全にチートクラスだ
ったんだなぁと実感する。
基本的にどんな敵でもフルボッコだったからね。
﹁ステータスはどうなってる?﹂
あぁ、ステータスか
とりあえず、現状のステータス画面を開いて見せる。
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﹁おいおい・・・ボーナスポイント振ってないのにさっきの殲滅力
かよ・・・﹂
﹁え、なにそれ怖い﹂
﹁マジチート・・・﹂
3人が愕然としている・・・
﹁え、何俺が悪いの?そもそもボーナスポイントって何さ﹂
﹁え・・・お前マジで言ってるのそれ﹂
3人は呆れとも諦めともつかない微妙な表情をしている・・・
そして、その場を包むのは圧倒的な沈黙
最初に口を開いたのはHIJIRIだった。
﹁ほら、MMOとかRPGだとレベルアップするとステータスに振
れるポイントがあるじゃん﹂
﹁あぁ、そんなのもあったねぇ﹂
うん、確かにRPGでレベルアップするとステータスが振れるのが
あるよね・・・あれ、それってもしかして
﹁このゲームにもそのシステムがあってねぇ・・・つまりお前は完
全に初期ステータスと初期装備だけでレベル40まで上げた訳だ﹂
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なるほど、そりゃ呆れもするか。
例えるなら、某有名RPGで最初の村周辺でレベル40まで上げた
ようなものだもんな。
﹁この後ボスに挑むんだし、さっさと振ってしまったらどうだ?今
振ればボス戦の前に多少様子見もできるぞ﹂
確かに、どっちにしろステータスを振るならボス戦の前に振ってお
いた方が良いだろうな。
﹁しかし、Serreってどんなキャラを目指してるんだ?それだ
けの火力があるからやっぱりスイーパー?﹂
SEOにおいて殲滅力がある職はスイーパーまたは掃除屋と呼ばれ
る事が多い。
MMORPGをやった事がある人にはわかると思うが、ボスには取
り巻きと呼ばれる下級MOBが付随している場合があり、そういっ
たMOBを一掃する役割を担うのがスイーパーである。
一掃するのがまるで掃除をするようだという事からそう呼ばれるよ
うになったらしい。
また、スイーパーとは一般的には広域火力を持つ魔法職を指す場合
が多いが、正確にはパーティーを組んだ場合のポジションである。
ついでにパーティーについて簡単に説明しておこう。
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SEOにおいてはパーティーに人数制限は無い。
人数制限は無いが、人数が多ければバットステータスが追加される
などのデメリットがある。
現実世界で言うのであれば、朝の通勤ラッシュを思い浮かべて頂き
たい。
人数が多ければ多いほど移動速度が遅くなるという経験はないだろ
うか?
運営の公式発表によれば人が多くなった時のデメリットをバットス
テータスという形で表現しているという事らしい。
また、現在はあまり使われていないが、複数のパーティーを束ねて
軍団とするシステムも存在する。
恐らく、これは今後ギルド同士で攻城戦を行う際に使用するものだ
と思われるが、今の所は特に意味が無いものとなっている。
パーティーについてに話を戻すが、基本構成は前衛でモンスターを
支える壁役が2人、ダメージを与える火力が2人、回復等を行う支
援が2人という6人構成か、火力と支援を1人にした4人構成が主
流になっている。
6人構成は上級狩り場やボス戦、4人構成は通常の狩り場でよく用
いられるが、ボス戦においては人数を増やして10人構成で挑む場
合もあるらしい。
そこで、現在組んでいるパーティーの構成を見てみると・・・
78
騎士と弓兵と僧兵と無職
職から判断すると騎士が壁、弓兵が火力、僧兵が支援になるだろう。
そうすると俺は壁か火力に回るのが今回の構成ではベストなのだろ
う。
だが、しかしとりあえずは・・・
﹁スイーパーになる気は無いよ・・・とりあえず錬金術師にでも成
りたいな﹂
﹁よりによって錬金術師か・・・まぁ、無職でそこまで戦えれば問
題無いとは思うが・・・﹂
ヒロがそう言うが何か歯切れが悪い・・・という事は何か問題があ
るんだろうな。
79
第4話︵後書き︶
今後ログアウト不可の流れにするかどうかについて検討中です。
読んでくださってる方はどっちが好みなんでしょうか?
感想で一言頂けるとありがたいです。
80
第5話
﹁錬金術師に何かあるのか?﹂
恐らく何かしらの問題がある事は予測出来るが、とりあえず聞いて
みた。
﹁他と比べての話だが、火力が無い、運用コストが高い、防御が薄
いの3点が主なものだな﹂
運用コストが高いのは何となく理解出来た。
錬金術は、基本的に上位変換、下位変換、物質転換の3種類に分類
される。
上位変換は元となるものより上位の物へと変換を行い、下位変換は
下位の物へと変換を行う。
ただし、この2つは金属なら金属、植物なら植物と同じ系統の中で
しか変換する事が出来ない。
木材から鉄を作ったりはこの2つのスキルだけでは出来ないのだ。
そこで出てくるのが物質転換。
このスキルを使うと系統外の物へと変換する事が出来る。
そして、錬金術の最大の特徴は﹃錬金を行う際は常に3つのスキル
を同時使用する必要がある﹄という事だ。
81
発動自体は錬金を行う時に自動的に処理される為に問題とならない
のだが、スキル3つ分のMPを消費する為非常にMP効率が悪い。
例えば、薬草からポーションを作る場合、製薬スキルを使用すると
MPの消費は5である。
しかし、錬金で作成をした場合80のMPを消費するのだ。
つまり16倍のMPを消費してポーション1本。
しかも、使用する原材料は同じであるから不人気なのも頷ける。
勿論、錬金術であるから薬草以外からポーションを作る事も出来る
が、その場合は180ものMPを消費する。
実に36倍ものMPを消費するのだ・・・
ちなみに、炭︵炭素︶を鉛筆の芯にするなど、﹃形を変えるだけ﹄
の場合は消費MPは非常に少なくなる。
MPを自然回復とアイテムに頼っているのであれば錬金術師は完全
な外れ職だろう。
火力が無い、防御が薄いというのは非戦闘職の特色であるから、既
に覚悟している為特に問題は無い。
﹁まぁ、どっちみち転職はボス戦後だからそれまでに考えておくさ・
・・それはともかくステータスをさっさと振ってしまおうぜ﹂
82
・・・そう言えば話があっちこっち飛んでいたが、ステータスを振
る話だったな。
錬金術師は製造職だからDexに全振りで良いかな・・・
SEOではLvが1上がるとステータスポイントが3貰える。
つまり今のレベルが40なので117ポイント振れる事になる。
そのポイントを全てDexへと振り分け、めでたくDexが137
となった。
﹁よし、振ったぞ﹂
﹁・・・何に振った?﹂
﹁Dexに全振り﹂
﹁やると思ったよ!﹂
・・・なんだそのリアクションは
そんな事を話しているうちに、恐らくボス戦があると思われる広場
らしきものが見えてきた。
恐らく鉱山で採掘時に出た不要な鉱石や岩石を廃棄する為に使われ
ていた場所だったのだろう。
そこだけは植物がほとんど生えておらず、点々を草が生えているだ
けだ。
83
さらにいえば、奥の山に続くレールが広場の向こう側に見えている。
俺を含むパーティーの4人は広場へと踏み込む前に装備やアイテム
類の状態と作戦を確認する為に小休止する事にした。
﹁装備、アイテムに特に問題は無しと・・・後は作戦だけだな﹂
﹁とりあえずSerreが火力でとりまき制圧は確定でヒロを壁に
して後は後衛で良いんじゃないか?・・・そもそも、初見のMOB
相手に事前に作戦をたてるのは無理があるだろう﹂
そう、この面子だと職業的にも性能的にも役割はほぼ固定に成って
しまう。
さらに、事前情報が無い為に弱点や動きの癖、どのような攻撃をし
てくるかなどは戦いながら判断するしかない為事前に作戦のたてよ
うがないのだ。
強いてたてるとするなら・・・﹃いのちだいじに﹄くらいだろうか?
﹁だよなぁ・・・とりあえず俺はHP管理があるから全体の戦局管
理はクルツに任せるわ。﹂
﹁おーけー、まぁ気楽にいきましょうや﹂
そんな会話をしながら広場に入って行く。
すると案の定地響きが聞こえてきた。
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ゴゴゴゴゴ・・・
一応、周囲を警戒するが・・・この手のって大体中央に現れるお約
束がある訳で・・・
広場の中央に地中からゴーレムが出現した。
見た目的には石で出来ているように見えるが・・・
それはさておき、取り巻きの出現に備えねば・・・と思ったがあれ?
取り巻きが出現しない?
そして、俺が取り巻き出現に備えている間に、ヒロが前に出てゴー
レムを攻撃している。
﹁取り巻きに備えつつボスに火力を集中!﹂
後方のクルツから指示が飛ぶ。
とりあえず、指示通りにボスのゴーレムを指弾で撃ち始める。
ゴーレムは動きが遅い為に全ての攻撃を回避しダメージは皆無であ
る。
さらに、取り巻きも出現していないので乱戦になる事も無く順調に
ボスのHPを削り続けている。
この間にも俺はこっそりと大量に回復するHPとMPを使用し攻撃
に色々な特殊効果を付与し続けていた。
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詠唱阻害、ディレイ、スキル無効化等々
それらを付与した弾を延々と撃ち込み続けたのだ。
この1時間後、何事も無くボスを倒してしまい呆然としている4人
組が居た事だけはここに記しておこう。
思っていた以上にボスがあっさりと倒せてしまった。
﹁感覚的には最前線のボスと同じくらいの強さだったと思うんだけ
どな・・・﹂
誰かがそんな事を呟いた。
﹁そう、俺ら3人は普通の構成だったはず・・・Serre、お前
何かしただろ?﹂
常に後衛で全体を見ていたクルツが俺に問いかける。
﹁いや、回復する分のMPとHPを消費する為の付与くらいしかし
てないはずだが・・・﹂
﹁あー、やっぱりしてたんだ﹂
﹁そうだよな、それしか考えられないよな・・・﹂
なにやらその説明だけで全員が納得してしまったようだ。
﹁しかし、1人で付与してMPを切らさないってどういう事よ?出
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来ない事も無いけど完全にアイテム浪費コースなはずじゃないか﹂
まぁ、そうなりますよねー。
とりあえず、ここでおもむろにしずくシリーズの効果の話をしてや
ろう。
﹁ほら、こいつのおかげだよ﹂
指に装備しているしずくシリーズを見せる。
﹁いや、だってそれゴミ装備だろ?﹂
﹁ふふふ・・・甘い、甘いぞ!チョコパンなんかより﹂
ゴスッ・・・
後ろから突っ込みをくらってそのまま地面に倒れてしまう。
﹁で、冗談は良いから本当の事をさっさと話せ﹂
地面に伏せたまま泣き真似をする。
﹁ひどい・・ひどいよぉ・・・本当の事を言ったのに殴るなんて・・
・﹂
だが、悪友3人に躊躇など無かった。
﹁さっさと言わないと踏むぞ?﹂
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ここで引かないと殺られるっ
そう直感した俺に躊躇なんて無かった。
﹁この装備のシリーズ特典効果ですはい・・・﹂
3人は顔を見合わせている。
﹁シリーズ特典効果は恐らく装備している個数に応じて効果を倍増
するという代物・・・﹂
ようやく3人は納得したのだろう。
俺を2人で左右から持ち上げ立たせてくれる。
絵的には連れ去られた宇宙人のような感じだ・・・
﹁なるほど、ゴミだと思われていた森のしずくは速度増加効果があ
るシリーズ装備だったのか・・・﹂
﹁使えない装備だと思ったらそんな効果があったのか﹂
﹁そんな装備をどこで手に入れたのか・・・教えてくれるよね?﹂
どこで手に入れたか・・・か
﹁確か、モンスターがドロップしたんだよ・・・場所は水戸周辺の
どこか﹂
﹁水戸周辺ねぇ・・・で、どんなモンスターがドロップしたん?﹂
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﹁確かカニかヒトデだったと思うんだが・・・はっきり覚えてない
わ﹂
﹁ふーん・・・まぁ、レアドロップなんだろ?﹂
その言葉に対して首を縦に振る。
﹁確かにそれだけの補正だしな・・・ところで、ボスを倒してどこ
が解放された?﹂
言われてログを見ると、福島と新潟の辺りが解放されたようだ。
﹁おもに福島・新潟周辺が解放されたみたいだな、まぁ今日の所は
ボスも倒せたし解散で良いか?﹂
﹁そうだな・・・勝てると思ってなかったから準備なんてしてない
し﹂
という訳でその場で解散となりました。
解散後帰る3人を見送り早速移動を開始します。
当初は鉱山に向かう予定でしたが、ボスを倒す事で新潟が解放され
て・・・つまり佐渡が解放されているはず!!
佐渡は世界有数の金鉱山として栄えていた。
現在は閉山になっているが、このゲーム内では所有者無しの空白地
になっているはずだ。
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と、言う訳でとっとと移動しましょう。
移動中には新しく解放された地区だけあってモンスターや動物が沢
山いたが、私の敵では無かった。
指弾で敵を駆逐しつつ進む。
何時間たっただろう、ひたすら歩き続けて日本海側へと到着した。
ルートは郡山から会津を抜け新潟へと抜ける道を使った。
到着した新潟は完全に漁村である。
とりあえず漁師と交渉して佐渡まで船を出して貰う事にした。
・・・ついでに新潟の土地も買い占めておいた。
誰も来ていないからか土地がとてもお安かったのは余談である。
船を出して貰い佐渡に渡ると小さな村があった。
家が3件しかない小さな村だ。
ひとまず情報収集をしようと考え、そのうちの1件の扉を叩く。
90
﹁すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが・・・﹂
﹁おや、珍しい・・・旅人さんかい?どうされたかね﹂
尋ねてくる人が少なかったのだろう、人が来た事自体にちょっと驚
いているようだ。
﹁この辺の地域の状況と、土地の買い方をお聞きしたいのですが・・
・﹂
﹁土地の状況ねぇ・・・この島にダンジョンがあるとかそういう話
かい?土地の方はこの村の人間からなら誰からでも買えるよ﹂
え?何か今聞き捨てならない一言があったような。
﹁この島にダンジョンがあるんですか?﹂
﹁あるよ、言い伝えによれば神々が作ったダンジョンらしいが・・・
﹂
﹁どこにあるんですか?﹂
﹁この島のあっちこっちにあるよ・・・だからどこと言われてもち
ょっと困るね﹂
なるほど・・・とりあえず、様子見で行ってみようかな?
91
第6話
結果から言えば、ダンジョンはとてもわかりやすかった。
なぜなら、ダンジョン周辺は整備されていたからだ。
恐らく、大規模パーティーで探索を行う想定の元に作られたのだろ
うが・・・現時点においては特に意味らしい意味は無い。
早速ダンジョンの中へと入って行く。
佐渡ダンジョンは恐らく鉱山をモチーフとしたものなのだろう。
壁と床はむき出しの岩である。
そして歩く事暫く、モンスターとエンカウント!
出会ったモンスターはゴーレムであった。
モンスターの名前を見ると、﹃小ゴーレム﹄・・・中とか大も居る
のだろうか?
とりあえず、いつもの如く指弾で撃って見る。
どうやら、防御が硬いのかなかなかダメージが通らない。
しかし、命中はしているからHPとMPはどんどん回復してゆく。
撃ち続ける事数分、無事に小ゴーレムを倒す事が出来た。
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ドロップは石と・・・銅貨?
銅貨は普通にお金だった。
モンスターがドロップするのは素材だけだと思っていたのでちょっ
と驚きである。
その後も探索を続ける事数時間
出てきたモンスターは中ゴーレム、大ゴーレム、アイアンゴーレム
である。
ドロップはそれぞれ銀貨、金貨、鉄塊だった。
恐らくではあるが、現実で佐渡に金鉱山があった事から、モンスタ
ーのドロップが鉱石系だろうとは思っていたが、硬貨をドロップす
るとは・・・予想の斜め上を行ってくれた。
そして、ゴーレムの鉄壁防御のお陰でHPとMPが順調に回復する。
ここで狩り続けるとお金も手に入り、なおかつ生産も捗る。
暫くここで色々と生産してみよう。
幸いにも物質転換で何にでも変えられるし、MPとHPはそれこそ
無尽蔵だからな!
そしてゴーレムを狩り続ける事数時間。
93
厖大なMPを消費して、砂から鉄、銅などのインゴットを作ってい
た。
砂からインゴットを作成する際の手順は、砂をインゴット小に転換
し、インゴット小が集まったらインゴット中へ、中が集まったら大
へとサイズ変更を行うだけである。
インゴット小というのがサイズ的には1円玉程度の大きさで、中に
変えるのに小が100個必要となる。
中を大に変えるのに必要な個数が中が10個であるから、大は小1
000個分に相当する。
小を1個転換で作るのに100のMPを消費する為、大を作る為に
は最低でも10万のMPを消費するのだ。
ゴーレムを狩る事で安定的にMPが回復するとはいえ、1個作るの
に2分掛るのだから他の職で作成しようとした場合どれほどの時間
と費用が掛るのだろうか・・・
ダンジョンの探索を続けるがゴーレムを狩りながらの為、進行速度
はそれほど速くない。
しかし、それなりの時間を掛けて広場らしき場所を発見した。
広場は円形で、四方に通路が伸びている。
そしてその通路の奥には魔法陣があるのが見え、その魔法陣周辺に
ゴーレムがいる事から恐らくその魔法陣でゴーレムを召喚している
のだろう。
94
つまり、魔法陣でゴーレムが沸くからこの辺で狩り続けるといつま
でも狩り続けられるという訳だ。
とりあえず、今来た道の広場入口からちょっと引っ込んだ当たりに
陣取り広場にいるゴーレムに攻撃する。
ゴーレムは、リンクモンスターらしく1体に攻撃すると全てのゴー
レムがこちらに寄ってくる。
さらに、通路に引き込む事でゴーレムを一直線に並べ指弾の射程圏
内に引きづり込む。
また、前方からしかモンスターが来ない状態を作る事でただひたす
ら撃ち続けるヌルゲーと化すのだ。
まぁ、MPとHPの回復量は大きいからアイテムの整理をしつつ生
産でもしていくとしましょう。
そして、狩り続ける事数時間、ゴーレムは色々なアイテムをドロッ
プした。
金貨、銀貨、銅貨、鉄鉱石、鉄、石、岩、大地のしずく・・・
そう、しずくシリーズの4つ目をドロップしたのだ。
ドロップしてたのに気付いた時は驚いたね。
まぁ、ともかく効果を見る事にしましょう。
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<大地のしずく> 効果 防御力0.3倍 MP消費10%低減
MP消費40%減・・・?
これは・・・セット効果が確かしずくシリーズの個数×1倍だから・
・・4×1で4倍
つまり、防御力1.2倍
なにそのチート怖い。
今まで330のMPを消費していたから40%減だと198になる
と・・・
これは生産にも適応されるのだろうから今までの1.6~1.7倍
の生産が出来るという事か・・・
とりあえず、装備してみる。
うん、効果は4倍になったね・・・あれ、何やら特別効果が付いて
るぞ・・・
しずくシリーズ4つ装備時、状態異常無効、装備によるマイナス効
果無効、スキルによるマイナス効果無効・・・
え、これマジ?
結構なチート性能・・・でもその割には手に入れやすい気がするけ
ど・・・
あれ、でもこの情報がwikiに載ってないと言う事はそもそも出
96
回ってないのか?
うーん・・・
まぁ、考えても仕方ないし、とりあえずゴーレムを狩るとしようか。
その時、公式掲示板に通知されていた情報が全てを物語っていた
﹃︻運営からのお知らせ︼一部の上級装備が手違いにより容易に手
に入れられる状態となっておりました。その為、配置転換、ドロッ
プ品の修正を行いました。また、現時点までにドロップされた個数
が非常に少ない為回収は行いません。﹄
現在順調にゴーレムを狩り続けている。
変わった事と言えば、攻撃に貫通性能を付与する魔法を使い始めた
程度だ。
しかし、その魔法の効果を馬鹿にする事は出来ない。
これは、弓職のカテゴリに入っていたのだが、暇つぶしにスキル一
覧を見ている時に発見した。
元々は弓に付与して使うようだが、全ての攻撃で使えるようだ。
と、言っても貫通して他の目標に当てる事が出来るだけで、1体に
与えるダメージは増えないようだ。
しかし、攻撃の射程内であれば全ての敵に同時にダメージを与える
事が出来るようになるから、数倍から数十倍の効果を見込む事が出
97
来る。
特に、﹃当てる﹄だけで良い場合は・・・
現在狩っている場所は一直線の通路で、さらに言えば敵はそこを一
直線に近づいてくる訳で・・・
最初は一直線に並べて動きを制限し、先頭を攻撃して動きを止めて
撃ち続けるだけのつもりだったのだが、予想以上の効果を生み出し
ているようだ。
通路に並んでいるゴーレムは20~40体程
指弾で毎秒90回攻撃でそれが20体に多段ヒットした場合、18
00回ヒットした事になる。
そして、しずくの効果による回復量は1回当たり20・・・
つまり、毎秒36000のMPが回復していくのだ。
全力で生産していてもMPが余る。
生産系は詠唱時間とディレイが短いとはいえ、回復するMPの絶対
量が大きすぎるのだ。
このMP余りは幾つかの波及効果を及ぼしている。
1つ目は、生産に回すMPが多すぎて生産される物のレア化と高品
質化。
98
具体的には、タダで幾らでも手に入る砂が最上級のオリハルコンや、
ダイヤ・ルビー等の宝石、各種上級ポーション等へ変化していく。
当然それにはかなりのMPが必要となるのだが、1回の錬金で消費
するMP量は精々1万程度。
錬金はMPの消費開始から終了まで約0.5秒のラグがある為にラ
グの間だけで消費MPが回復してしまうのだ・・・
2つ目は、ゴーレム召喚速度の加速である。
wikiに書いてあった事であるが、ダンジョンにある魔法陣は時
間か一定の魔力を注ぐ事でモンスターが召喚されるらしい。
また、一定範囲内で放出された魔力は魔法陣への影響を及ぼす。
現在狩りをしている場所は広場のを挟んで反対側にある魔法陣は目
視で確認出来る位置であるから、当然範囲内に入るだろう。
さらに、回復したものの消費しきれず、MP容量を超えてしまった
MPは魔力として放出される。
つまり、魔法陣に魔力を常に注ぎ込んでいる状態となっているのだ。
その為か、先程からゴーレムの数が増えている気がする・・・
あっ、これってもしかして雪だるま式に回復量が増えて行くんじゃ・
・・・・
いつもの如くゴーレムを指弾で乱打していた。
99
魔法陣から召喚されるゴーレムも増え、現在400体前後のゴーレ
ムを乱打している。
初めの頃は最小単位で錬金を行っていたのが、今では数十~数百単
位で行うのがデフォルトに成りつつある。
また、ゴーレムを倒す事でレベルも順調に上がり、現在レベル80
となっている。
掲示板を確認した限りだと、回復剤の不足で西進していたトップギ
ルドの足が止まっているようだ。
その為、最高レベルが50代と段々と伸び率が悪くなっている。
つまり、私が確実にランキング上位に食い込んでいる事は間違いな
いだろう。
だが、私は開拓の最前線に行く気も無ければ、どこかのギルドに入
る気も無い。
私は平和が好きなのだ。
prrrrrrr・・・
おや、珍しい誰かから連絡が来たようだ。
﹁はいはい、どういった御用件でしょうか?﹂
﹁あ、いや、専属契約もしたし最近どうかなと思って・・・﹂
100
つまり、営業ですね。
何かを注文しろという・・・
﹁んー・・・とりあえずは順調過ぎるくらい順調かな。回復剤の量
も足りてるし・・・﹂
﹁へー、最近回復剤が高騰してるのに良く手に入ったねー﹂
﹁うん、まぁ、生産出来るからね﹂
﹁・・・それ売ってもらえないかな?﹂
﹁回復剤ってそんなに品薄なの?﹂
﹁品薄なんてもんじゃないよ・・・トップギルドが見境なく買いあ
さってるから高騰するし、購入する為の金策の影響で採取された資
源は底値の状態だし・・・﹂
資源が底値・・・ね。
﹁わかった、ならこっちで生産したのを送るよ﹂
﹁ありがとう、所で数なんだけど・・・﹂
﹁とりあえず、上級のHPとMPをそれぞれ1万本づつ送っておく
から﹂
﹁1万・・・﹂
101
絶句しているようだ、ちょっと少なかっただろうか?
﹁あー・・・じゃあ2万本づつで﹂
﹁いやいやいや、なんでそんなに持ってるの?上級なんてランカー
がやっと作り始めたばかりなのに・・・﹂
あ、そうなんだ・・・
無尽蔵のMPを背景に強引に生産してるからコスト意識皆無だもん
なぁ・・・
﹁まぁ、作れるものは作れるんだからしょうがないよ﹂
﹁だからって・・・﹂
﹁とりあえず、代金は適当に資源を量送ってくれれば良いから・・・
﹂
﹁はぁ・・・貴女を相手にしてると驚く事ばかりでいちいち驚いて
られないわね・・・とりあえず、資源は何でも良いんでしょ?﹂
﹁うん、量さえ確保出来れば良いよ﹂
﹁わかりました・・・回復剤だけは早めに送っておいてね・・・そ
れじゃ﹂
そこで通話が切られた。
102
これはあれだね、きっと回復剤を各5万づつ送れば良いんだ。
103
第7話
ポーションを送った所で起きる時間が来たようだ。
安全地帯に入りログアウト処理を行う。
そして、いつもの朝がやって来た。
仕事を終え、家に帰る。
食事をし、風呂へ入り、寝る。
そこからまたゲームの始まりである。
ゲームへログインすると、運営からのお知らせが届いていた・
一部スキルのバランスが悪く、著しくゲーム性を損なう為修正を行
いました。
変更が行われたのは以下のスキルです。
貫通:制限無し↓貫通は1度に4回まで、掛けなおし可
採取:一定のディレイ↓採取物に応じたディレイ
全体化:全体化スキルに設定されたMPの消費↓全体化したスキル
のMP消費×2
つまり、ゴーレムを狩り過ぎたから貫通は性能が落ちたのか・・・
104
それと、全体化スキルが意外と使えるんじゃないか?
まぁ、試してみないと何とも言えないが・・・
とにかく試してみるか。
そう考え、今朝の続きのゴーレム狩りへと戻る。
ゴーレムの数はざっと見た限り500~600体・・・増えてるな。
だがしかし、通路に引き込んで先頭のゴーレムの動きさえ止めてし
まえば数なんて怖くない。
指弾で撃つ事で先頭のゴーレムの動きを止めつつ何か使えそうなス
キルが無いか一覧を探してみる。
・・・なかなか使えるスキルというものは無いようだ。
それはそうだよな、そんなにほいほい見つかるようなら誰も苦労し
ないか。
うーん・・・リフレクトを向かい合わせに2枚張って、その間で光
線系の魔法を維持出来ないか試してみるか?
あー・・・むしろ普通に光線系の魔法を使えば多段ヒットもするか
ら良いんじゃ・・・
なんで気付かなかったのだろう。
とりあえず、試せば良いんだよな?
105
﹁受けて見て・・・これが私の全力全壊﹂
ここで指弾を撃つのを止めチャージに入る。
ゴーレムは接近してくるが・・・大丈夫、ゴーレムの攻撃圏内に入
るより、こっちの魔法発動の方が早い。
﹁スターライト・・・・﹂
あ、杖が無い・・・仕方ないか
とりあえずゴーレムを指差しておく
﹁ブレイカーーーー﹂
その瞬間に指先から光線が照射される。
眩しくて思わず目をつぶってしまった。
つかった魔法は﹃破壊光線?﹄
消費MPが毎秒5000という上級魔法である。
3だけあって消費MPが大きいが2と1もちゃんとあり、そちらの
消費MPは2が毎秒500で1が毎秒50・・・常識的な範囲内だ
ろう。
そして、用途的には恐らく雑魚を一掃するのに使い、照射し続ける
事は想定していないだろう。
106
だが、あえて照射し続ける。
撃ち続けながらMPを確認すると、ゲージがじりじりと増えて行く。
そして、照射を続ける事数秒、MPが急激に減り始めた。
あわてて照射を止める。
どうやら、500体は居たゴーレムを一掃してしまったようだ。
10秒にも満たない時間でゴーレムを駆逐してしまった後、とりあ
えずドロップアイテムを回収しようとする。
その時、何やら広場の奥の通路が光っているのに気付いた。
まさか、これは・・・
ここで思い出してみよう。
広場の奥の通路にはゴーレムを召喚する為の魔法陣が存在する。
そして、ゴーレムが召喚される条件は一定時間の経過、又は一定範
囲内に魔力がまき散らされる事だ。
私が行った行動を考えてみよう。
1.上級魔法を使う
2.魔法生物の撃破
107
主にこの2点だ。
魔法を使うのは問答無用で魔力が周辺にまき散らされる。
また、魔法生物を撃破した場合、その生物が内包していた魔力が解
放される。
つまり、ゴーレムを1体倒すとゴーレムが1体召喚されるのだ。
恐らく、狩り場が混んできた時に即時にモンスターを供給するとい
う思想の元に設定されたのだろう。
それ自体は特に問題は無い。
だが、今この狩り場には1人しか居ないのだ。
そして、通路の奥が光っている事に気づいて数秒通路の奥からゴー
レムが出てきた。
その数は少なくても数十体はいるだろう。
あわてて、先ほどまでゴーレムを狩っていた通路に戻ろうとする。
しかし、ここでお約束とばかりに転倒してしまう。
いくらゴーレムの動きが遅いとはいえ、このタイムロスは致命的だ
った。
ゆっくりとゴーレムの手が近づいてくる。
108
そして、目の前が真っ暗になり・・・
気付いた時には何やら教会の礼拝堂にいた。
辺りを見回すと、死に戻ったであろうプレイヤーが椅子に座って休
憩していたりどこかと連絡を取ったりしている。
とりあえず、空いてる椅子を見つけて座り、今後どう行動するかを
考える。
このゲームでは死亡するとデスペナルティーが発生し、復帰ポイン
トへと戻される。
ペナルティの内容は、復帰時の金銭ペナルティ、経験値ペナルティ、
ステータスペナルティの3種類である。
金銭ペナルティは、公式の説明によると復帰の儀式に関わる費用と
いう事になっている。
これは、魔法やアイテムを使って復活させた場合には掛らない。
経験値ペナルティは、稼いだ経験値の一定割合を失うというもので、
レベルによって1~10%の経験値が失われる。
パーセンテージはレベルが上がれば上がるほど低くなっていく。
理由は簡単、レベルが高ければ高いほどレベルを上げる為に必要な
経験値が増えるからだ。
109
分母が大きければ分子が増えてもパーセンテージは低くなっていく、
それだけの話である。
ステータスペナルティーは復帰後約1時間程ステータスが2割程弱
体化するものである。
公式説明によれば﹃病み上がりだから﹄と言う事らしい。
さて、死に戻りした訳だがどうしようか・・・
wikiによると、死に戻った場合はステータスペナルティーが解
消するまでの1時間は時間を潰すのが主流らしい。
しかし、ギルドに入ってる訳でもなく、知り合いも少ないので特に
やる事も無い。
うーん・・・狩りに行こうかな?
適正レベルより低い場所なら低下したステータスでも普通に狩れる
はず・・・
あ、どうせなら知り合いも増やしたいし臨時パーティーに参加して
みようか。
確か、レベル帯によって臨時を募集している地点が違うんだよな?
初心者は中央の広場で、それ以外が西側だったはず。
よし、行ってみよう。
110
そして、西門へやってきた。
臨時パーティーの募集は・・・してるな。
行き先は・・・相模原に小田原、箱根、伊豆、下田、甲府、富士か
一応、最前線行きのがある辺り上級者も有る程度いるようだ。
とりあえず、参加出来るか交渉してみよう。
﹁え、参加したい?うーん・・・中央広場の募集の方に行った方が
良いんじゃない?﹂
﹁はぁ?もっとレベルを上げてから来いや﹂
﹁その装備じゃちょっと・・・﹂
どこのパーティーにも入れて貰えませんでした。
理由は簡単に言えば、初期装備で転職していないから。
つまり、足手まといの初心者と思われたんだな、うん。
とりあえず、中央広場に行ってみよう。
23、
しかし、初心者と組んでも仕方ない気もするんだよなぁ・・・
28、Agi
現在、中央広場に到着しステータスを眺めている。
HP12500、MP58600、Str
111
Vit
9、Int
38、Dex
145、Luk
これはもう・・・ため息しか出ないな。
18
HPとMPはしずくの効果で回復し続けた結果、容量が増え凄い事
になっている。
まぁ、ゴーレムを乱打した時の回復量は運営が翌日には修正するく
らいのチートだしな・・・
あきらかにあの貫通スキルの修正は狙い撃ちだった。
それはさておき、現在のレベルは82・・つまり前回ステータスを
振ってから42もレベルが上がっている。
とりあえずDex全振りだな。
ボーナスポイントをDexに振り271となった。
これで錬金の成功率も上がったかな。
まぁ、上げる前でも熟練度とDexは高目だったから全くと言って
いいほど失敗はしてなかったけど・・・
そして、ステータスを見ている時に何を思ったのだろう、声を掛け
てきた人物が居た。
﹁なぁ、良かったらアンタもうちのパーティーに参加しないか?﹂
突然声を掛けられて辺りを見回す。
112
﹁こっちだ、こっち﹂
右側から声が聞こえたので右を見ると、初心者・・・いや、中級者
かな?
明らかに始めたばかりのプレイヤーが2人とその引率だと思われる
プレイヤーが居た。
﹁今からレベル上げに行くんだが、良かったら一緒にどうだい?﹂
﹁えーっと・・・﹂
レベル上げ・・・ねぇ
始めたばかりのプレイヤーは元より、間違いなく引率のあんたより
もレベルは高いんだが・・・
そんな事を考えていると、何を勘違いしたのか引率プレイヤーが喋
り出す。
﹁いやなに、たとえレベルが低かったとしても足手纏いとか考えな
くても大丈夫だよ。初めは皆初心者だしだからね﹂
﹁確かにそうなんですけどね・・・﹂
なんと断るべきだろう?
悩む所はそこに尽きる。
113
﹁一緒に行きましょうよ﹂
﹁そうですよ!皆で狩れば楽しいですよ!﹂
うーん・・・そういう問題では無いんだが・・・
仕方ない、どうせ暇だし一緒に狩りに行くか。
﹁そうですね、そこまで言うならお世話になります﹂
﹁OK、パーティー投げるね﹂
パーティーの加入申請が飛んできた。
・・・なんで飛んできたって表現するんだろうね?
それはさておき、加入申請を受諾する。
﹁よし、とりあえず狩り場に移動しよう。移動時間はそれなりに掛
るから自己紹介はその間にだな﹂
﹁行き先はどこですか?﹂
﹁南平原の予定だったが・・・変更した方が良いか?﹂
南平原と言うと最初のスライムを狩ったあのマップか・・・
間違いなく、問題無いどころか普通に無双出来るな。
﹁いえ、問題はありません﹂
114
﹁よし、それでは行くか﹂
そして平原へ移動しつつ自己紹介である。
まずは引率の中級者が話始める。
﹁俺はライナだ。職業は聖騎士・・・一応騎士の上級職だな﹂
中級者だと思ったら上級職・・・だと?
その後は初心者2人の自己紹介が続く。
といっても、初心者で転職もしていないのでほとんど名前を言うだ
けであるが。
先に自己紹介をしたのが芙蓉、前衛を目指している為装備は剣だ。
後に自己紹介したのが楓、こちらは後衛の支援職を目指しているよ
うだ。
というかだ
絶対この2人はペアだよな?
どう考えても名前が狙っているとしか思えない・・・
自己紹介も終わり、他愛もない事を話していると狩り場に到着する。
﹁そういえば、武器は何を使うんだ?﹂
115
そういえば、今まで武器を使ってなかったな・・・
アイテムボックスの中に何か良い装備が無かっただろうか?
そう思って確認すると・・・ひのきのぼう?
なぜか倉庫に某RPGの武器で出てくるあのひのきのぼうがあった。
攻撃力が5で、命中補正が1割、速度補正が+5というなかなかの
微妙なステータス
まぁ、これでいいんじゃね?
ひのきのぼうを取りだし、これを使う事を伝える。
﹁OK、なら前衛後衛に分かれて雑魚を狩っていってくれ。無理そ
うなら支援する﹂
そう言われ、とりあえず敵を探し始める。
しかし、スライムなどは俺が手を出す間も無く発見次第殲滅されて
ゆく。
流石にスライム相手だと初心者でもてこずらないようだ。
余裕を見て狩りながら進んでいくと、ときおり狼やはぐれゴブリン
などの少々強いモンスターも出てきた。
しかし、それも初心者2人︵+トップランカー1名︶の前では風の
116
前の塵に同じ、かなりの速度で粉砕されていく。
回復の為に休憩をした時の事である。
﹁そういえば、お二方はレベルはどのくらいなんですか?﹂
ネタコンビの片割れ、楓の一言である。
そういえば、レベルを教えてなかったなぁ・・・
さて、隠すべきか言うべきか・・・面倒だし言ってしまうか
﹁俺は45だな﹂
ライナが聖騎士で45か、ランク的には中の上から上の下くらいか?
まぁ、初心者から見れば雲の上の存在ではあるか。
﹁俺のレベルは83だ﹂
言い終わった後3人が笑い始めた。
恐らく冗談だと思ったのだろう。
冗談じゃないんだがな。
﹁とりあえず、そういう事にしておこうか。この先だが、敵が一段
と強くなるので十分に警戒してくれ﹂
そこで休憩を切り上げ、再度前進を始める。
117
さらに2時間程狩りながら進んだだろうか?
そろそろ平原の端の森が見え始めた。
﹁この先に進むと敵の強さが段違いになるから、あそこの端まで行
ったら一度戻ろう﹂
ライナがそう言いきった時である。
森の中からパラパラとプレイヤーが走り出して来た。
そして、数名のプレイヤーは我々の横を通って平原の方へと全速力
で逃げて行く。
初心者2名は全く状況が把握出来ておらず、ポカンとしている。
それに対して、ライナは森に向かって3人の壁になるような場所に
位置し警戒している。
しかし、甘いな。
先ほど逃げて行ったのは装備から見るとするならば、明らかに上位
ランカークラスであったはず。
それが複数人全力でにげていくとなれば・・・
その時森から大きな音が響いて来た。
それと同時に木が倒れて行く。
118
出てきたのは・・・大きなドラゴンだった。
木を折りながら大きなドラゴンが森から出てくる。
そして、バラバラと恐らく先ほど逃げて行ったプレイヤーと一緒に
ドラゴン狩りに来たと思われるプレイヤーがドラゴンと戦っている。
当初はドラゴンに対抗出来る人数がいたのだとは思う。
しかし、現状ではドラゴンの足止めすら出来ない数のプレイヤーし
かいなかった。
いや、見た感じ足止めにすらなっていないな。
ただし、一応ドラゴンのタゲ取りをしており、現状においては周り
へは被害が及んでいない。
だが、それもそんなに長く持たないだろう。
辺りを見回すと初心者と思しきプレイヤーが組んでいるパーティー
が幾つか・・・状況を見守っている。
さて、どうすべきだろうか?
ここで戦っても良いが、戦うメリットがどれだけあるか・・・
そんな事を悩んでいると、足止めをしているプレイヤーが良い一撃
を入れた。
119
余程痛かったのだろう、ドラゴンが叫ぶように吼える。
吼えた後に大きく息を吸い込んでいる・・・追撃をしようとしてい
るのだろう。
プレイヤーはもちろん回避を・・・しない?
なぜ・・・あ、もしかしてスタンしてるのか?
ドラゴンがブレスを吐く・・・え、こっちに来るだと・・・
あわてて対魔法シールドを張る。
シールドが間に合い、何とかパーティーの面子は守る事が出来た。
・・・しかし、平原が一面焼け野原とかどんな火力だよ。
足止めしてた連中は・・・全滅したのか全員消えている。
初心者は気にするだけ無駄だな、上級者が耐えられないものに耐え
られるはずがない。
倒せるかわからないし、とりあえずパーティーの面子を逃がしてか
ら・・・ちっ、スタンしてやがる。
あの威力だと守りに徹してもどうせ死ぬだけだし、やれるだけやっ
てみるか。
そう考えドラゴンへと向き直る。
120
丁度、ブレスの控除く時間が過ぎたのかドラゴンが辺りを見回して
いる。
失敗したな、どうせなら硬直時間中に攻撃しておけば良かった。
しかし、そんな後悔をした所でとっくにドラゴンは動き出している。
とりあえずはいつも通りの指弾でドラゴンを撃ち牽制する。
だが、流石ドラゴンと言うべきだろうか、この程度の攻撃ではダメ
ージはほとんど通っていない。
ダメージが通らないと言う事は硬直時間も無い訳で・・・
ドラゴンが羽を広げた・・・飛ぶ気だな。
阻止すべく指弾で攻撃しつつ全速力で森へ向かって走る。
幸いにも現在はタゲを持つ事が出来ているが、流れ弾でもスタンし
ているパーティーの面子には大打撃が与えられるだろう。
それを防ぐために、また遮蔽物を求めて全速力で走るのだ。
ドラゴンは地上に降り、ゆっくりとこっちへ迫ってくる。
指弾でドラゴンを攻撃し、タゲを確保しつつ森へと全力で走る。
ドラゴンはファイヤーボールを撃ちこんでくるが、物理的に避けた
りバリアで防いだり弾いたりする事でなんとか凌いでいる。
121
しかし、張ったバリアもファイヤーボール2∼3発で破壊されてい
るから、直撃したら恐ろしい事になるだろう。
だが、なぜドラゴンはブレスを使ったり、接近して物理攻撃をしな
いのだろうか?
ブレスはともかく、物理攻撃をされたらすぐに撃破される事になる
のは間違いないのに・・・
いや待て、そもそもドラゴンはなぜ地上に降りた?
飛行したままなら既にこちらに追い付いていたはずだ。
牽制の為に攻撃を加えながらドラゴンを観察する。
うーん・・・駄目ださっぱりわからん。
飛行しないという事は先ほどの攻撃で羽が傷ついたのかとも思った
が特に穴は開いておらず、傷が付いた様子もない。
遮蔽物を求めて森へと走りつつ考える、ドラゴンはなぜ地上に降り
たのか・・・と
ドラゴンに対しては牽制の為という意味もあり全くと良いほどダメ
ージを与えられていないだろう。
ならば、ダメージを受けた事で飛べなくなったとは考えにくい。
だとすれば何か飛びたくない理由があったという事だろうか?
122
仮にあったとするならばそれはなんだろうか?
羽に攻撃が当たるのが嫌だった?
可能性としてはあり得るが、それならば森から出てくる時に飛んで
居なかったのはなぜ・・・
まぁ、良いともかく森へ逃げ込むのが先だ
この間1分少々、なんとか森へとたどり着く事が出来た。
森に入るが・・・外から見た感じと違って意外と障害物と成るもの
が少なく走りやすい。
とりあえず、木の裏に隠れようと思ったがドラゴンが出現した時を
思い出し森の奥へと走る。
ドラゴンは木を折りながら森から出て来たじゃないか・・・
最低でも岩の裏か洞窟の中に隠れないとダメだろう。
そして、パーティーのメンバーが逃げる時間くらいは稼がないとな。
だがしかし、そうそう都合よく岩や洞窟等は見つかる訳もなく、森
の中の広場らしき所へと出てしまった。
そこにあるのは、モンスターのレアドロップ装備や落とした為に割
れているポーションなど戦闘が行われた後があった・・・
きっと、森から出てきたプレイヤーはここでドラゴンと戦っていた
123
のだろう。
それはともかく、遮蔽物を求めてさらに奥へと行こうとした時だ。
目の前にテロップが表示された。
﹃未開放地区につき侵入出来ません﹄
なるほど、あのドラゴンはやっぱりボスなのな・・・
後ろからドラゴンが迫ってくる音が響いて来た。
どうやら・・・ここで戦うしかないようだな。
124
第8話
ドラゴンを迎え撃つ覚悟を決め、準備を整える。
準備と言っても、広場の障害物の状況を確認する程度しか時間は無
い。
なにせ、後ろからドラゴンが追ってくるのだ。
最初はぽつぽつとアイテムや装備が落ちているように見えたが、広
場の中央部分を中心として円を描くように落ちているのが多い事に
気付いた。
前のプレイヤーは恐らく中央部分にドラゴンを釘付けにして戦って
いたのだろう。
しかし、人数が居るならその戦法でも良いが、1人で戦うとなると・
・・
仕方ない、引っ張りながら少しづつ削っていくしかないか。
よし、どうせなら貫通も入れて遮蔽物の向こうから先制攻撃してや
ろう。
そう考え、ドラゴンが来るのを今か、今かと待ちかまえる。
﹁・・・見えたっ﹂
木の奥に歩いているドラゴンの姿が見えたその瞬間、迷う事無く指
125
弾で貫通を付与した弾を撃ち込む。
撃った弾が木に当たり木片を散らす。
﹁∼∼∼∼﹂
驚きか驚愕かはわからないが、木立の奥からドラゴンの咆哮が聞こ
えてくる。
MPゲージを確認すると、少しづつではあるが回復をしている。
つまり当たってはいる訳だから、全く効果がなかった訳ではないだ
ろう、そう考えとにかく弾を撃ち続けた。
もちろん、その間にも足を止める事無く回避行動を取り続けている。
右へ、左へと移動しながら撃ち続けるとファイヤーボールが飛んで
くる。
木立の向こうからの攻撃で狙いが甘く難なく避けられるが、この状
態で持久戦に持ち込めるか・・・?
その時、ドラゴンの咆哮が聞こえ動きが止まってしまう。
畜生、スタンかっ・・・
動きが取れない間にドラゴンは動いているようだ。
しかし、なぜ攻撃が来ない?
126
ここは普通追いうちとか来るんじゃないのか?
だが、攻撃が来なかったのだからとりあえず、その場から動き状況
を確認する。
ドラゴンが居る辺りに何か怪しいオーラらしきものが見える。
恐らくバーサークモードとか呼ばれるものだろう。
HPが減ると強くなったりするアレである。
普通に戦ったにしてはHPを削るのが早いが、恐らく前に戦ってい
たプレイヤーが削ったのだろう。
とりあえず、ドラゴンから距離を取り攻撃を再開しようとした時・・
・
﹁かはっ・・・﹂
後ろから強い衝撃を受け吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた勢いのまま木立へ突っ込み木を2∼3本へし折った
所でやっと止まった。
今まで、ノーダメージだったのが今ので4割くらい減った。
まず頭をよぎったのは”なぜ吹き飛ばされたのか”であった。
・・・愚問だな、敵に攻撃されたに決まっている。
127
何故、敵が後ろから攻撃出来たのか?
そんな事はどうでも良い。
重要なのはその敵がまだ居る事だ。
考えるのは後で良い、とりあえず起き上がって敵を確認しないと・・
・
その瞬間、空へと舞い上げられた。
目に入ったのは、青い空と・・・
空を背景に飛ぶ禍々しいまでに赤い目をしたドラゴンであった。
ドラゴンを見ながらとりあえずポーションを叩く。
あ、叩くというのはポーションを使う時に飲む・掛ける・ぶつける
の3種類があって、その中のぶつけるを自分に行うと叩いてるよう
に見える事からそう呼ばれるようになった俗称だ。
しかし・・・攻撃して来ないのか?
各モンスターにはある一定の行動パターンがある。
恐らく、攻撃して来ないのも何らかのパターンに入ったからだとは
思うが・・・
しかし、そのままドラゴンの攻撃は来る事がなく地面に叩きつけら
れる。
128
﹁かはっ・・・﹂
叩きつけられた事でHPが7割持って行かれる。
ポーションを叩いておいて良かった・・・
そして、また減ったHPを回復する為にポーションを叩く。
ポーションを量産してなきゃ確実にアウトだったな。
HPが完全回復した所でドラゴンへ指弾で攻撃を加える。
だが、滞空している為命中率は・・・あれ、それほど悪くないぞ?
流石にゴーレムを攻撃していた時よりは命中率は下がるが、それで
も7∼8割が命中している。
打ちだした弾が命中する度にポロポロとドラゴンから鱗が落ちてい
る。
つまり、攻撃はある程度のダメージが入っているのだ。
だが、ドラゴンも一方的に攻撃を受けるだけではない。
ファイヤーボールを撃ちこんで来たり、かまいたちを起こしたり、
風を起こして吹きとばしたり・・・
先ほど宙を舞ったのは吹き飛ばしの直撃を受けたせいだったようだ。
129
しかし、当たらなければどうという事はない!
吹き飛ばしが縦に、かまいたちが横に命中判定が伸びている。
その為、落ち付いて判断すれば避ける事はそれほど難しくない。
しかし、これがパーティーとか集団で来たのなら大変だ。
なにせ、縦方向の命中判定は後衛も避けるか防ぐか・・・油断して
いたら間違いなく当たって崩壊フラグが成立するだろう。
ドラゴンの動きに注意しながら攻撃を続ける。
・・・ここらで仕掛けて見るか。
使うのは当然﹁破壊光線?﹂
倒せればよし、倒せなくても撃ち落とすくらいは出来るだろう。
タイミングは、吹き飛ばしかかまいたち直後、ドラゴンがモーショ
ンに入ると同時に詠唱を始める。
そして、攻撃を避け無防備なドラゴンに一撃を叩きこむのだ。
ドラゴンが攻撃モーションに入った
よし、今だ
﹁ガイエスハーケン照準・・・﹂
130
ドラゴンの攻撃は・・・吹き飛ばし
横に避けドラゴンを撃つ体制を整える。
そして・・・
﹁てーーーっ﹂
白い光線が照射されドラゴンを包み込む。
5、4、3、2、1
MPの消費も考え照射時間は5秒に押さえる。
そして、ドラゴンが空から落ち大きな地響きを立てる・・・かと思
ったら森に落ちたようで木をへし折る音が聞こえる。
状況を確認する為に、警戒しながら落下地点へと近づいてゆく。
落下時点にあったもの、それは大木に串刺しにされたドラゴンの亡
骸だった。
131
第9話
ドラゴンの亡骸を発見したが・・・何か違和感を感じる。
何と言えば良いのだろう。そこにあるのは正しいが何かが正しくな
い。
そして、何かが正しくないのはわかるが、それが何だかわからない。
ここにあるのは、木とドラゴンの亡骸と・・・亡骸?
まてまて、今まで倒したモンスターで亡骸が残ったモンスターって
いたか・・・?
いや、モンスターは倒すとドロップ品だけが残って消えていたはず。
そうするとこのドラゴンはまだ・・・死んでない?
いやいや、ありえない。この状態で生きているはずはない・・・
・・・とりあえず攻撃してみるか。
ドラゴンの亡骸に対し指弾で攻撃を加える。
攻撃に対する反応は無い・・・それとMPも回復してないな。
しずくのMPとHPの回復効果は物に攻撃した時には発動しない。
プレイヤーに攻撃した場合に発動するかはわからないが、モンスタ
132
ーか物かを判別するのに使える。地味に便利だ。
つまり、ドラゴンの亡骸︵?︶は少なくてもモンスターでは無いと
いう事は確認出来た。
と、言う事は何かのイベントのトリガーの可能性が高い。
まぁ・・・行くしかないだろうな。
そして、恐る恐るドラゴンの亡骸に近づいて行く・・・
だが、予想に反して近づいても何も反応しない。
ドラゴンの亡骸に触るが・・・何も起きない。
﹃・・・・・﹄
ん?なんだ・・・?
﹃・・・反応してくれー﹄
あ、そう言えばパーティー組んでたんだっけ・・・
﹃はいはい、何かありましたかー?﹄
﹃何かありましたか?じゃなくて今の状況はどうなってる?今は2
人を連れて街へ戻る途中なんだが、光線が見えて・・・ヤバイよう
なら2人だけで帰して、俺も足止めに向かうが﹄
あー・・・破壊光線が見えたのか。
133
とりあえず誤魔化しておこう。
﹃ドラゴンの最後のあがきがありましたが、なんとか倒せましたよ・
・・それと、出来ればこの事は秘密にしておいて欲しいんですが﹄
﹃そうか・・・わかった、2人には俺から言っておく。それと、そ
っちに討伐隊らしき連中が向かったから気を付けろよ﹄
﹃あぁ、ありがとう﹄
さて、討伐隊が来る前にここを離れたいが・・・
仕方ない、ここに居ても何も起きないようだしさっさとここを離れ
るか。
そう決め、東京へ戻ろうと振りかえり歩きだした・・・はずだった。
そこに有ったのは圧倒的な闇である。
そこに何かがあるなど考えておらず完全に虚を突かれた。
無理矢理足を止めても闇の中へと転倒するだけだ・・・そう判断し
闇の中へとそのまま歩を進めるのだった。
・・・闇に飲まれた次の瞬間、なぜかビル街に立っていた。
そう、それは丸の内や西新宿のような立派なビル街・・・
そんなビル街が何十年・・・いや何百年放置されればこうなるだろ
134
うと言うような感じの場所だった。
恐らくイベントマップだろう、そう当たりを付けまずは探索を行う
事にした。
探索と言っても、ビルは崩壊寸前のものや崩壊したものが結構あり、
それらに挟まれた路地を覗く程度であるが・・・
片側4車線くらいあるだろう太い道を探索しながら歩く。
もちろん、警戒はしているが一切物音がせず歩く足音だけが響く。
あても無く歩き続けるがモンスターに出会う事も無い。
しかし、いい加減歩くのに疲れた頃、近くにあるビルで明りが点滅
してい事に気付いた。
目的も無いので、確認の為にそのビルへと足を向けた。
最初は勘違いかもしれないと思った、次に太陽が反射しているのだ
と思った、しかし段々と近づいて確実に何かがある事を確信した。
なぜなら、一定の間隔で点滅しているからだ。
辿り付いてみれば確かに点滅はしていたが、それは電線がショート
して火花を散らしているだけ・・・
え?電気が通っている?
何かがある事を期待している訳ではないが建物の中に入ってみる。
135
入った先はエントランスホールに成っていた。
エントランスに足を踏み入れる・・・
﹁ここに人が来るなんて何年ぶりでしょう・・・﹂
辺りを見回すが誰も居ない。
﹁こっちです﹂
エントランスホールの吹き抜けの2階部分にその人は居た。
﹁貴方は・・・誰ですか?この街は一体・・・﹂
﹁私は・・・この都市の管理者です。そしてここは廃棄都市、遥か
昔に捨てられた街・・・そして資格あるもののみが入れる場所﹂
資格ねぇ・・・やっぱり、ドラゴン討伐かな?
﹁さて、ここまで来た貴女にはこれをあげましょう﹂
そう言うなり2階から何かが放り投げられた。
・・・指輪?
﹁では、またいつか会いましょう﹂
﹁待って・・・貴方の名前は?﹂
136
﹁いつもニコニコ貴方の隣に這い寄る混沌・・・って、そんなキャ
ラじゃないわね。名前が知りたきゃまた来なさい・・・じゃあね﹂
そう言って奥へと行ってしまった。
その後階段を探したが、崩れてきた瓦礫で埋まっていたり、階段室
の中が何も無い吹き抜けのように成っていたり・・・
2階へと登る事の出来る経路を見つける事が出来なかった。
仕方なく帰る事にしたが・・・さっき受け取った指輪を確認してみ
ないとな。
<装備品 指輪>龍の加護
効果 プレイヤーの全ステータスを2倍にする。
え、何このチート装備・・・
137
第10話
手に入れたから早速装備してみた・・・
感覚的に特に違いは感じられないが・・・とりあえず、ステータス
を見てみるときちんと各ステータスの数値が2倍になっていた。
色々と試してみたが、2倍になっていたのは数値化されている基本
パラメーターだけであって、特性などには影響が無いようだ。
ただ、戦闘を行っていないので受けるダメージ量の変化や、与える
ダメージ量の変化はわからない。
とにかく、ここにずっと居ても仕方ないので東京へと戻る事にした。
ただし、龍の加護は装備したままで・・・
東京へ向かって歩き続ける。
時折出てくるモンスターを倒しながらひたすら歩く。
最初は気のせいかと思っていた。
しかし、移動と狩りを続けるうちに確信へと変わった。
歩いてる間に、モンスターを狩ってる間にずっと微量のダメージを
受け続けている。
それは本当に微量であり人によっては気付かない量だろう。
138
普通戦闘を行えばダメージを受けるし、受けたダメージを回復する。
そのダメージを厳密に管理していれば気付くだろう。
しかし、そこまでHPを厳密に管理している人はなかなか居ない。
そして、今回何故気付いたのか?
それは元々戦闘でダメージを受ける事が無いからだ。
いつも闘いは遠距離から一方的に攻撃するだけで終わる。
なのでHPが減る事が無い。
だが、HPが減っていた。
だから気付いた。
それだけの話である。
しかし、なぜHPが減るのだろう?
特に毒を受けている訳でもなく、気候も問題は無い。
さらに、気力や空腹度も問題無い。
ダメージを受けるようになったのは・・・
龍の加護を装備した後から・・・かな?
139
少なくても装備前にはこのような現象は確認していない。
確認の為装備を外し、先ほどと同じ様に東京へ向けて移動する。
すると案の定、HPが減る事は無い。
この装備が原因か・・・しかし、なぜ?
考えても答えは出ない・・・とりあえず、龍の加護は封印して保管
しておこう。
その後もモンスターを狩りつつ東京へ移動する。
出現するモンスターも初心者向けの弱いものが多い事もあり、無事
に東京へと着く事が出来た。
知り合いに装備の鑑定が出来る人って居たかな?
悪友はバリバリの戦闘職だし・・・光の所に顔を出すついでに、誰
か居ないか聞いてみるか。
多分、市場の近くで露店を出してるだろうし、行ってみるか。
市場周辺へ到着し、光の出している露店を探すが・・・
通りを2度ほど往復したが見つからなかった。
今日は出していないのかと思い帰ろうかと思った時に気付いた、本
人に連絡して聞けば良いんじゃないかと。
140
早速連絡してみると、どうやら店を買ったとの事。
場所を聞き行ってみる事にした。
場所は初期広場から西門へ続く大通り沿いにあった。
結構、人通りがあって良い場所である。
人が出たり入ったりしているので、そこそこ繁盛しているようでも
ある。
とりあえず、入って挨拶をしておこう。
扉を開けて中に入る、光を探すが・・・いた
カウンターの奥の方で何か作業をしている。
﹁こんにちは﹂
﹁ん?買い取りはこっちじゃ・・・あぁ、こんにちは、良く来てく
れたね歓迎するよ﹂
そう言って、作業を中断してカウンターから出てくる。
﹁景気の方はどうです?﹂
﹁んー、最悪やな。物は無いし、金は無いし・・・うちは売る物が
あるだけまだマシかな﹂
141
﹁何で物が無いんですか?結構、売りに来てる人とか居ますよね?﹂
そう、さっきから店に出たり入ったりしている人が多いのはアイテ
ムを売りに来る人が多いからだ。
これだけ、売りに来ている人が多いのに物が無いというのはどうい
う事だろう?
﹁あぁ、今買い取ってるのの大半は頼まれてるアイテムだよ。砂や
ら鉱石やら・・・足りてないのは食糧に薬類、あとは木材もかな?﹂
なるほど、一部のアイテムの需給バランスが崩れているという事か。
﹁しかも最近、トップギルドが何やら動いてるらしくてな。いくつ
かのギルドが買い占めをしてて値段は上がる一方で・・・更に手形
なんかで買い付けをしていくものだから、現金も無くなる一方さ。
まぁ、ゲームのシステムで強制的に回収出来るから損はしないんだ
が・・・カツカツだよ﹂
手形か・・・手元に現金は・・・流石に佐渡でゴーレムを狩りまく
ったから結構あるな。
その後も愚痴を言い続ける光、それを遮って一つの提案をする。
﹁良かったら、その手形を売って貰えませんか?﹂
﹁手形を?別に構わないけど・・・それなりの額だよ?﹂
﹁問題ありません、それに・・・足りなければアイテムで渡しても
良いんでしょう?﹂
142
そう、恐らくこの店で一番大きな支払いは錬金で量産したアイテム
への支払いのはず、その問題が解消されるとなれば、運営はかなり
楽になるだろう。
そして、集めた手形は・・・今後への布石となる。
﹁うん、じゃあお願いしようかな。とりあえずはこのくらいで・・・
﹂
提示された額はそれなりの額だが・・・うん、なんとか払える額だ。
とりあえず、支払いを行い手形を受け取る。
あ、そうだ・・・そう言えば装備の鑑定をお願いするんだっけ?
﹁ところで、装備の鑑定ってお願い出来る?﹂
﹁鑑定か・・・うちではやって無いけど代行ならやるよ?﹂
代行か、面倒だし任せてしまおう。
﹁じゃあ、お願いするよ﹂
そして、龍の加護を渡す。
﹁はいはい、じゃあ鑑定出来たら連絡するな﹂
そして、全ての用事が終わったのでとりあえず店を出る。
143
ここで、また次の日の朝がやってきてログアウトする事となった。
そして、一日の仕事を終え家に帰り、ゲームへとログインする。
ログイン時に大規模なアップデートがあった事が運営からのお知ら
せとして表示された。
詳細は公式サイトを見ろとの事らしい。
なので、ログインしたばかりであるが公式サイトを確認してみた。
・・・かなり大きく変更が来ているようだ。
まずは、スタミナと精神力が新しく設定された。
これはHPやMPとは別物で、何か行動を行う毎に減って行くもの
らしい。
減っていると獲得経験値や、行動速度に影響が出るとの事だ。
まぁ、実際に試してみないとなんとも言えないが。
そして、休憩する事で回復し、鍛える事も可能。
また、昨日までのHP・MP量に応じて初期設定が行われていると・
・・
早速ステータスを見てみると、
HP12500、スタミナ1250、MP58600、精神力58
144
23、Vit
18
28、Agi
145、Luk
60、Str
Dex
9、Int
38、
うん、多分これだけ高ければそれ程問題に成らないだろう。
そして、装備の効果等も変更されたようなので装備しているしずく
を確認してみると、案の定変更があったようで効果が変わっていた。
海のしずく モンスターへの攻撃1回につきMPを5回復する↓モ
ンスターへの攻撃1回につきMPを2、精神力を1回復する
星のしずく 攻撃1回につきHP5回復する↓攻撃1回につきHP
2、スタミナ1回復する
森のしずく 防御+15 速度0.5倍↓防御+10 速度0.3
倍 スタミナ、精神力消費50%減
MP消費1割減
土のしずく 防御力0.3倍 MP消費10%低減↓防御力0.3
倍
全体的に装備の効果が低くなった。
そしてセット効果も少々変更され、装備している種類に応じての補
正倍率に変更は無いものの、4つセット時の効果が﹃状態異常無効、
装備によるマイナス効果無効、スキルによるマイナス効果無効﹄か
ら﹃状態異常無効、地形補正無効﹄という効果に変更された。
流石に地形補正無効は使えるのか使えないのか微妙な所だ・・・だ
が、狩りが安定するというのは間違いないな。
サイトに載っていた変更点一覧を確認するが、それ以外の変更点で
関わりがあるのは・・・
145
あぁ、村の支配システムが実装されたというのも関係あるのかな?
村の規模が大きくなると他の村を従属するものとして支配出来ると
いうものだ。
これは、どうやら中心となる村から全ての村を一括管理するシステ
ムらしい。
条件が両方の村の領主の地位にある事だからそのうちお世話になる
かもしれないな。
さて、とりあえず確認は終わったし・・・何をしよう?
戦闘力的には結構弱体化したが、それでも十分に戦える程度は残っ
てるし・・・
とりあえず、水戸へでも行ってみようか?
最後に言ったのがリアル時間で一昨日だから、ゲーム内だと3カ月
くらいになるのかな?
まぁ、それほど変わっても居ないと思うが、一応拠点だし行ってみ
るとしよう。
そして、東京から水戸へと向かう。
その道中にいつもの如くモンスターを狩って行くが、それほど問題
は無い。
と言うよりも戦闘そのものにはほとんど影響が無いと言っても良い
146
だろう。
手数は確かに減ったが元々がオーバースペックだっただけで、弱体
化した現在でも毎秒72回の攻撃回数なので雑魚相手には全く問題
に成らない。
そして弱体化に伴ってHPとMPの回復量も減っているが、土のし
ずくのMP消費減の効果と特性・熟練度の影響で普通に錬金を行う
程度であれば全く問題は無い。
そして、実際に戦闘を行い感覚を確認しつつも水戸へと近づいてい
くが・・・
道が石畳の立派な道になっている。
そしてその道はずっと一直線に続いている。
そして歩く事十数分
﹁なんじゃこりゃーーー﹂
水戸村があったはずの場所には大きな街が出来ていた。
そして、街を取り囲むようにガラス張りの温室がずらりと並んでい
る。
とりあえず、村長へあってどうしてこうなったのかを確認しないと・
・・
街の中央へ向かうと、見覚えのある倉庫があった。
147
村長の家は確か倉庫の近くにあったはず。
そして探す事数分、村長の家は石造りの立派な家へと成っていた。
とりあえず、中へ入ると・・・いた、村長だ。
﹁村長・・・この街は一体どういう事ですか?﹂
﹁おお、領主様よくいらっしゃいました。どういう事とは一体なん
の事でしょう?﹂
﹁村が発展してるじゃないですか・・・なぜこんな事になったんで
す?﹂
﹁おぉ、その事ですか。領主様の御指示通りに収入を開拓に回しま
したら、他の街からの移住者で人口が増えましてね。特に御指示が
無いので生産に必要な経費以外は開拓に回した結果が御覧のありさ
まです。﹂
あー・・・つまり、延々と再投資し続けて資産が増えたのか。
﹁とりあえず街を防壁で囲むようにしてくれ・・・予算配分は任せ
る。﹂
﹁承知致しました。それと、余剰物資の販売と資材買い入れの為に
直営の商会の設立許可を頂きたいのですが、いかがでしょうか?﹂
商会か・・・面倒だし全部投げよう。
148
﹁わかった、許可する。それと資金に余裕が有ったら、用途は一任
するから適当に投資してくれ﹂
﹁承知いたしました。他には何かございますでしょうか?﹂
﹁いや、特にない・・・じゃあ後は任せた﹂
そして村長の家を出る。
さて、狩りにでも行こうかな?
いや、待てよそう言えばボスだったドラゴンを狩ったからどこかが
解放されてるんじゃないか?
とりあえず、そっちに行ってみるべきだろう。
まずは、どこが解放されたのかを確認してみる。
マップによると琵琶湖の東側まで解放されているようだ。
という事誰かがもう1かいボスを倒せば京都まで行けるのか。
掲示板とwikiも確認してみるが、どうやら大手ギルドは西進し
ているが消耗品の不足で進み方が遅くなっているらしい。
そして、大規模ギルドは色々な所から金を借りまくっているようだ。
システム的に返済の問題は無いとはいえ、それで回るのかどうか・・
・まぁ、それはおいておこう。
149
とりあえず、新規に解放されたマップでは今まで居なかったモンス
ターが出てきたり、モンスターの数が多いらしい。
人が多いのも怖いし、行くなら日本海側だな。
敵を倒して小遣い稼ぎをしつつ生産していこうか。
あ、そう言えば貨幣が足りないらしいから、佐渡ダンジョンにでも
引きこもるべきだろうか?
何もしてないのも無駄だし、佐渡ダンジョンでモンスターでも狩り
ながら考えるか。
あ、そういえば歩くのも面倒だし、テレポートスキルってないのか
な?
確認した結果、テレポートスキルは有りました。
MPを1000消費して行った事がある場所へ移動する事が出来る。
という事で、テレポートを使い佐渡へ移動しゴーレムを狩る。
弱体化したと言っても、そこそこ狩る事が出来る。
前にやったように通路に構え、一列になったゴーレムへ攻撃し続け
る。
MPの回復量が落ちて、生産効率が下がったが・・・まぁ、許容範
囲内だろう。
150
そういえば、ここのダンジョンにももっと奥があるんだよな?
魔法陣でゴーレムが召喚されている広場より奥へは行っていないが、
普通に考えれば間違いなくボスがいるだろう。
それはともかくだ、今後どうすべきか・・・
とりあえず、需要がある回復剤は生産するとして、後は各種原材料
類を生産しておくか。
あっと、そうだ、すっかり忘れてたが転職もしないとな。
でも、無職でレベルをカンストさせるとボーナスが入るはず・・・
説明したかはわからないが、このゲームでは職業でレベルをカンス
トまで上げるとカンストボーナスを得る事が出来る。
そして、転職してレベル1から再スタートする際に初期よりも高い
ステータスで始められるのだ。
なので、目指す人は多いが、その分挫折する人も多い。
とりあえず・・・しばし無心で狩り続ける事にしよう・・・
狩り続ける事数時間、取得したアイテムを倉庫に入れる時に倉庫に
入れてあったアイテムが減っている事に気が付いた。
減っているのは、食料にガラスに石、更に木材もだ。
恐らく、村︵というか、もう都市レベルの大きさだが︶の開発に使
151
われてるんだろうが、消費量がやたら多いな。
やる事も無いし、しばらくは資材を集める事を目標にしよう。
そうと決まれば、まずは市場からの購入だな。
ついでに、日々増えて行く在庫の食糧を売却してしまおう。
急ぎじゃないし、この程度ならわざわざ通話じゃなくてメールで良
いな。
題名と用件を書いてメールを送る・・・よし、後は反応を待つだけ
だ。
次は、自分で調達するか・・・
これは、ダンジョンでゴーレムを狩ってれば良いかな。
ドロップするのは硬貨と石だし、最終的には錬金術で作ってしまお
う。
しかし、こうやって考えるとやっぱり延々と作業ゲーなんだよなぁ・
・・
まぁ、MMORPGの宿命だしこの点は諦めるしかないんだろうけ
どさ。
そしてゴーレムをまた狩り続けるのであった。
ゴーレムを何時間狩っただろうか?
152
時間感覚がマヒしてランナーズハイに陥っていた。
それに気付いたのは運が良かった・・・というか気付かない方がお
かしいか。
後方から大きな爆発音が聞こえた。
恐らく他のプレイヤーが来たのだろう。
過疎マップで、今まで人が来た事が無かったが・・・ランカーが気
まぐれで来たのだろう。
まぁ、だからと言って狩り場を移る気も無いから特に意味は無いの
だが。
しかし、ドッカンドッカンやってるなぁ。
前衛がゴーレムを足止めして魔法職が削ってるという所だろうか?
段々と近づいているのだろう。
爆発音に金属がぶつかるような音も混じり始めた。
そして、移動中の鎧の金属がカチャカチャ鳴るのも聞こえてきた。
恐らく向こうもここで戦闘をしているのに気付いているだろう。
﹁お、人が居る﹂
153
近くに居ると思ったらもう目視出来る位置に来たらしく声が聞こえ
た。
金属鎧を着た重騎士が2人と、魔法使い、それに聖職者か。
パーティーの構成としてはいたって普通だな。
﹁ちょっと良いか?﹂
パーティーリーダーなのだろう騎士が声を掛けてくる。
﹁何かな?﹂
ゴーレムを攻撃する手を緩めずに答える。
﹁一人で来たのか?﹂
﹁見てわかるだろ?一人だよ。﹂
まったく・・・相手するのも面倒で仕方ない。
154
第11話
﹁いやなに、この辺はうちのギルドの領地だからちょっと挨拶をと
思ってね﹂
領地って・・・
﹁左様ですか。﹂
とりあえず、無難な返答をしておく。
﹁うん、そこでここら辺に来る人には整備に協力して貰っていてね・
・・﹂
ふーん・・・つまり、金を巻き上げようって訳か。
そもそも、領地というので有れば、その辺一帯の土地を購入してい
る必要がある。
そして、ダンジョンがある佐渡の集落は、何故か新潟の衛星村とし
て扱われている。
つまり、領地とするのであれば、私が買い占めている土地を譲り受
けるか、所有区分に応じての共同統治としなければいけない。
だが、共同統治に関しては交渉を受けた事実も無いし、ましてや土
地を売っても居ない。
つまりは権利が無いにも関わらず領有していると騙っている状態な
155
訳だ。
そして、それに対する答は・・・
﹁もちろん、お断りします。﹂
その答えを聞いて、一瞬何を言われたのかがわからなかったようだ
が、後ろのメンバーが臨戦態勢を整えている。
﹁なぜか・・・聞いても良いかい?﹂
体制が整うまでの時間稼ぎか・・・
とりあえず、この隙に万が一PKされた時にアイテムを落とさない
ように全部倉庫に移動しておこう。
こっそりとしずくも外し倉庫へと移す。
戦力はガタ落ちするけど、どっちにしろ負け戦だし、ドロップする
リスクを犯す必要も無いよね。
﹁だって、この辺を領地にしてるって・・・嘘でしょう?﹂
﹁本当なんだが・・・どうしてもかい?﹂
﹁どうしても・・・ですね﹂
﹁なら大人しく他の狩り場に行ってくれないかな・・・じゃないと、
排除しないといけなくなるから・・・﹂
156
﹁お断りします。﹂
﹁なら・・・強制的に排除するまでっ﹂
そういって、飛びかかってくる。
さて、どうするか今後の展開的にはあっさりと殺された方が面白い
予感がするが・・・
よし、一切抵抗せずに一方的に殴られて見るか。
しかし、動きが遅いし、なおかつ・・・当たっても軽いな。
そして、殴られている間にも延々とゴーレムへの攻撃は続けている
為にHPは回復している。
しかし、何だこいつら・・・かなり弱いぞ?
お、後ろで詠唱してるが、あれは駄目だな。
あの速度だと今支えてるゴーレムに突っ込まれて終わるだけ・・・
まぁ、あの魔法が直撃すると同時に飛んで、ゴーレムを擦り付ける
か。
とりあえず、適当にあしらっておくか。
指弾は使わずに初級魔法であるファイヤーボールを叩き混む。
おいおい、前衛の騎士が避けたぞ・・・
157
壁役が避けてどうするんだか。
敵ながら雑魚だなぁ・・・
﹁ふん、どうした、さっさとさっきの発言を撤回した方が良いんじ
ゃないか?﹂
んー、これまた見え透いた挑発だなぁ。
﹁いえいえ、前衛なのに攻撃を避けちゃう騎士さんにそう言われる
と嬉しくなりますね﹂
それを聞いた騎士が突っ込んでくる。
むきになって突っ込んでくる当たりまだまだだな。
ショルダータックルのような形で当たると同時にバックステッポ
そのままゴーレムに向かって飛ぶ。
そして着地と同時に先頭のゴーレムの股をくぐり奥へとダッシュ。
後ろから逃げるなとかプライドは無いのかとか騒いでいるのが聞こ
えるが・・・
恥は一時、志は一生、わざわざ狂犬の相手をしてPKの記録の残す
のも馬鹿らしいし、なおかつ、ここでPKしても付け狙われるだけ
だろう。
158
こんな時は逃げるに限る。
さっきまで戦ってたゴーレムをなすった形になるが・・・まぁ、そ
れは仕方ないな。
とりあえず、PKされる事に備えて倉庫に入れていた装備を取りだ
して装備する。
折角だからこのままダンジョンの奥へ向かってみよう。
そして、奥へと向けて歩きだした。
通路は十字路があったりY字路に成っていたりするが、良くイメー
ジされる鉱山のようにレールが敷いてある為に比較的歩きやすい。
そして時折モンスターも出てくるが、特に問題無く倒す事が出来て
いる。
ただ、強いて言うのであれば、コウモリは倒しにくいかな。
小さい上に素早く、しかも飛び回るから。
そして、通路は続く。
かれこれ3時間くらい歩いただろうか?
入口からだと4時間くらい歩いた当たりに、鉱員用なのだろうか?
休憩施設があった。
159
そこにあったのは転送陣と、仮眠室・・・そう、転送陣だ。
どこに繋がっているのかはわからないが、鉱山として使われていた
と言う設定上、ここは転送陣は移動用の通路代わりに使われていた
のだろう。
と言う事は、恐らくこの転送陣で移動するとどこか地上へ行く事が
出来るのだろう。
このままダンジョンの奥に行きたいという誘惑もあったが、この転
送陣がどこに繋がっているのかをまず確認する事にした。
もしこれが、街からここに直通で来る事が出来るものであればとて
も楽になるだろう。
なので、転送陣に入りどこに移動するのか、とりあえず転送されて
みる事にした。
飛んでみると、そこは建物の中だった。
木造の建物で、中は埃は溜まっているが建物自体はそれほど痛んで
も居ない。
とにかくまずは建物から出よう。
待ち伏せなどは無いと思うが念のために攻撃体制を取りつつ扉を開
ける。
当然ながら待ち伏せがあるはずも無く・・・
160
外に出るとそこは佐渡の小さな集落であった。
こんな所へ繋がってるのか・・・
いや、むしろ人だけを移動させるなら村に繋がっていても不思議じ
ゃないのか?
まぁ、それはともかく外へ出てきたなら一度新潟に行って代理の設
定とかしてこよう。
新潟なら、テレポートを使ってすぐに行けるからな。
そして、新潟へ移動し水戸の時と同じ要領で中央部にある大きい家
へ行く。
そこで、町長と会い土地の購入と生産の管理を一任しようとしたが、
生産の管理を断られてしまった。
生産の管理の方はどうやら水戸で全て管理されているらしい。
むしろ、水戸の方が規模が大きい都市となっている為、新潟は水戸
に隷属する形となっているようだ。
あと、隷属都市周辺の土地は中央で買えるとの事で・・・
つまり、新潟に来たのは無駄だった訳か。
まぁ、この話を聞けただけでも良しとしよう。
新潟に居ても仕方ないので、そのままテレポートで水戸へと向かう。
161
水戸へ到着すると、都市を囲む防壁が2割くらい出来ていた。
作業の進み方は遅いのか早いのか・・・恐らく早いんだろうな。
倉庫にある資源がずっと減り続けている。
しかも、補充速度よりも消費速度の方が圧倒的に早いから、倉庫の
資源が尽きたら作業が滞るのは間違いない。
とりあえず、街の中心の村長の家に向かう。
・・・そろそろ村長から称号を変えた方が良いな。
村長と会い称号の話をする。
現在やってる事も考えると、領主の代官と商会の運営をやっている
から今後は代官と呼ぶ事にした。
とりあえず、代官と運営の事について話す。
話を聞いて驚いたのが、運営について一任していたためあっちこっ
ちに土地を買っていたらしい。
そして、直営の商会で生産物を売って更に開発と土地の買い占めを
進める・・・どうやらそれを延々と繰り返していたらしい。
中心となっている街が水戸で、白川・郡山・新潟を隷属都市として、
その周辺の村も隷下に収めたとかなんとか・・・
162
随分と資産家になったなぁ、などと検討違いの事を考えていると・・
・
今後、商会を各都市に設置し、生産物の販売経路を構築したいと提
案を受けた。
とりあえず、その提案を却下し、隷属都市にのみ商会を展開するよ
うに指示しておいた。
まぁ、販売と物資の調達に関しては全部光に投げよう・・・
さて、そういえば転職までもう少しだったな。
錬金術師になるつもりだったけど、一通り他の職も調べて見るか。
まずは前衛で
騎士
防御と攻撃が高い反面速度にちょっと不安あり。
重装備の場合が多く、装備を揃えて維持するのにお金が掛る。
盗賊
速度は高いが火力と防御が不安
軽装備で、装備は汎用の物を使っている場合が多いようだ。
侍
火力と速度があるけど防御が・・・
刀は高いがそれ以外の装備は安い。
僧兵
163
火力と防御に優れ、退魔・回復系の魔法が使える。
ただし、他の職と比べるとどれも中途半端。
後衛職は
狩人
弓メインのタイプと罠メインのタイプで結構プレイスタイルが分か
れる職
弓も罠も消耗品︵矢・罠︶を使うので散財職とも呼ばれる。
弓タイプは単体火力はそこそこあるけど数に弱い。
弓は安いのから高いのまであるが、攻撃力が弓依存の為極めようと
すると難しい。
罠タイプは単体にも集団にも強いが、いかんせん罠が高い。
特に必要な装備は無いが、潤沢な資金が無いと活動出来ない職
魔法使い
防御と攻撃が不安な変わりに魔法攻撃力がずば抜けている。
装備は特殊な固有装備が多く、掛る維持費は全ての職でトップ
神官
防御と攻撃に不安あり。
ただし、性能は退魔・回復に特化しておりパーティーに1人は欲し
い職。
装備は汎用のものと固有装備があるが、運用コストは低め。
生産職は
農民
戦闘能力は皆無
収穫時にボーナス
サブ設定可︵他の職業と兼業出来る職らしい︶
164
鉱夫
Strにプラス補正
採掘時にボーナス
サブ設定可
鍛冶士
生産時にプラス補正
他職業の固有装備以外全て使え、戦闘・採掘も一通りこなせる。
ただし、大半の戦闘スキルが使えない
調剤士
製薬時にプラス補正
作った薬の回復量が通常の物よりも大きくなる。
ただし、攻撃と防御に不安があり戦闘には向かない。
錬金術士
錬金時にプラス補正
全てのアイテムを生産出来る︵ただし、アクセサリ以外の装備品、
ユニークアイテムを覗く︶
MPの消費量が全職中最大であり、攻撃・防御は全職中最弱である。
基本的な職業はこんな感じだろう。
育てて行くと、騎士から聖騎士にジョブチェンジしたり、重騎士に
なったり、盗賊ならアサシンになるなど、更に上位職も用意されて
いるようだ。
しかし、最終的に何になるにしても、騎士から盗賊に転職したり出
来るようなので、育てる気力さえあれば何に転職するかはその時の
165
気分で決めても良いだろう。
まぁ、ざっと見た感じ錬金術士が筆頭候補なんだけどね。
ひとまず佐渡ダンジョンのいつもの固定狩場へ戻ってゴーレムを狩
ろう。
あそこで狩るのは、ゴーレムが固定沸きするし上に一方向からしか
来ない単純作業だから考えるのに丁度いい。
さらに言えば、MMOにおける強さは基本的に狩り時間に比例する。
レア装備や、課金アイテムを使った場合などの例外はあるが、それ
はあくまでも例外である。
そしてゲームによって違う経験値テーブルが問題となるわけだ。
ゲームによって適正レベルで狩らないと取得経験値が減少したりア
イテムがドロップしなかったりするが、このゲームでは確率によっ
てばらつきがあるがある程度一定の経験値やドロップが取得できる。
雑魚を狩っても経験値が入るから楽だと思う人がいるかもしれない
が、その分経験値テーブルはきつめ・・・いや、かなりきつい。
低レベルのうちは全く気にならないが、高レベルになると1レベル
上げるのに24時間は最低でも掛かる。
0次に区分される無職でそれだけ時間が掛かるのだから転職すれば
さらに時間が掛かる事だろう。
166
早い人は既に3次職まで行っているようで、その中でも有志が倒し
たモンスター数によって必要経験値が何倍になったのかを検証して
いる。
その結果は1次で0次の2倍、2次で1次の2倍、3次で2次の1.
5倍、転職回数かける2倍とという経験値テーブルだろうという推
測がもっとも有力な仮説となっている。
つまり0次で24時間掛かるなら、1次では48時間、2次では7
2時間掛かる。
日に30時間の鍛錬という矛盾という耐えステロイドを超える事が
出来るならば良いのだが、そんな人間は一握りしかいないだろう。
となれば、狩りながら出来る事は極力狩りを行いながらする事で狩
りの時間を取るしかない。
上位のランカーはパーティーを組んで強いモンスターを狩る事で効
率を出しているのとは対照的である。
まぁ、ぼっちプレイヤーなんてそんなものさ・・・
幸いにも、どの職に転職するかを悩む時間がある訳だ。
錬金術師+農民か鉱夫が結構良い組み合わせなんじゃないかと思っ
ているのだが、2つのジョブを持つ事で何らかのデメリットがある
のでは・・・そう考え、色々調べて見ると、経験値テーブルがきつ
いのと補正が殆ど無いという情報を見つけてしまった。
しかし、農作業でも経験値が入るというメリットもあるようで・・・
167
鉱夫も内容は似たようなものであった。
経験値を余分に稼がないといけないデメリットを負ってでもサブ職
業を取得すべきなのかどうか・・・とても悩ましい所だ。
そして、佐渡で延々と狩り続けた結果
無職Lv100
などというとち狂った状態となった。
まさにエリートニート・・・
それはさておき、レベルが100になると転職時にボーナスが得ら
れる。
無職の場合のボーナスは、転職後レベルアップに必要な経験値が1
%減少する。
高々1%と侮るなかれ。
このゲームは高レベル帯の必要経験値は洒落にならない量なのだ。
1%であっても、狩りの時間を2∼3日短縮出来る程度には・・・
現在のトップランカーは無職をすっ飛ばしているようだが、廃人と
呼ばれるような人々はじっくりと無職でレベル上げをしているよう
だ。
その為かどうかはわからないが、大手ギルドの役付にもちらほらと
168
無職の人がいる。
そういった人物がいるギルドは今後要注意だな。
さて、とりあえず転職であるが、結局錬金術師に転職することにし
た。
サブで鉱夫も付けるか悩んだが、経験値テーブルがきつくなるのは
ちょっと・・・という訳でサブは付けなかった。
wikiで調べた所によると、転職クエストはポーションの材料を
持っていって規定時間以内にその場で錬金するだけのようだ。
場所は東京の東、地図でいうと丁度浦安の某夢の王国の場所らしい
ので東京までテレポートで移動し、東京からは歩いて行く事のにし
た。
東京までテレポートで移動して・・・折角だから光の店にでも顔を
出していくか。
光の店の前まで行くと、なにやら人が集まってガヤガヤとしている。
近づいていくと・・・交渉がこじれたのか?
なにやら言い争いをしている。
とりあえず、その辺の奴に何があったのかを聞いてみるか・・・
面倒だし、目の前の野次馬にでも聞けばいいか。
169
﹁すみません、これはそうしてこうなってるんですか?﹂
﹁ん?あぁ、なんか小麦を売るとか売らないとかでもめてるみたい
だね。なんか、男が小麦を引き渡せとか騒いでるみたいだけど・・・
﹂
小麦か・・・しかたないちょっと確認してみるか。
﹃光さん、光さん聞こえますかどーぞ﹄
﹃何?今ちょっと忙しいんだけど﹄
﹃小麦・・・要ります?納品出来ますけど﹄
﹃どのくらい?﹄
﹃どのくらい必要ですかね?即渡しで多分1000キロくらいなら
行けると思いますが・・・﹄
﹃じゃあ、全部﹄
﹃了解﹄
さて、2000キロばかり送りつけておこう。
わざわざ争ってる中に入っていくのも面倒だしね。
とりあえず、浦安へ行ってさっさと転職してこよう。
流石に、転職して戻ってくる頃にはこの騒ぎも落ち着いてるだろう
170
しね。
東京を出て浦安へとやってきた。
現実世界では某夢の国があるが、ゲーム内では普通の漁村だ。
家が立ち並び、海には桟橋があり、船が並んでいる。
村というには少々立ち並ぶ家が多い気がするが、東京に近いことを
考えると少し多すぎるくらいの規模になるのは仕方ないのかもしれ
ない。
wikiによると、転職クエストの始まりは桟橋に居る人に話しか
けることかららしい。
とりあえず、その情報を元に海沿いを探してみよう。
そして、探してみた結果それらしき人が全く見つからない。
桟橋に居ると書いてあるが・・・誰も居ないのである。
仕方ない、その辺に居る人に聞いてみるか。
辺りを見回すと・・・お、居た第一村人発見。
﹁あの、すみませんちょっとお尋ねしたいのですが﹂
﹁どうしました?﹂
﹁この辺で、錬金術師になれると聞いてきたんですが、どちらで転
171
職できるかご存じないですか?﹂
﹁んー・・・錬金術師ねぇ・・・そういえば村はずれに居る奴が錬
金術師だったような気がするが・・・﹂
﹁村はずれですか、それはどちらに・・・﹂
﹁東のはずれに一軒だけ家が建ってるから行ってみな。多分そこに
住んでるはずだから﹂
﹁ありがとうございます﹂
よし、行ってみよう。
言われた通り東へ向かうと高台になっており、家が一軒建っていた。
その家の見た目は至って普通の家であるが、その家の前においてあ
ったものに目が引かれた。
置いてあったのはひっくり返された大きな壷のようなもの、ご丁寧
にも洗浄した事を示すようにブラシや桶が置いてある。
これは・・・もしかして、桟橋に釣りをしている人が居たのかもし
れない。
とても存在感の薄いひとが・・・いやまぁ、それは置いておこう。
再度家に目を移すと扉と窓が開け放たれ、これでもかというくらい
清掃中の空気醸し出している。
172
とりあえず、声を掛けてみよう。
﹁すみませーん、どなたかいらっしゃいませんかー﹂
﹁はーい、いまいきまーす・・・ちょっと待っててくださーい﹂
言われた通り待つこと数分、家の中から青っぽい服を着た少女が出
てきた。
﹁お待たせしました。えーっと、どういったご用件でしょうか?﹂
﹁錬金術師になりたいと思ってお尋ねしたのですが・・・こちらで
よろしいですか?﹂
﹁あ、はいここで出来ますよ。一応、錬金術師になるにあたって技
術確認としてポーションの作成をしてもらう事になってますが、材
料のほうはお持ちですか?﹂
﹁はい、持ってきてます﹂
﹁では、少々お待ちください﹂
そういって少女は家の中へと入っていた。
173
第12話
待つこと数分・・・少女が出てきた。
﹁すみません、部屋の片付けをしてて散らかってるので外でやりま
しょう﹂
外と言っても、単純に家の外というだけであり、どこかに移動して
というほどでは無い。
移動距離は精々10歩・・・5∼6メートルといったところだ。
﹁それではポーションの作成をしてください。﹂
﹁何本作れば良いですか?﹂
﹁そうですね・・・5本程で作ってもらえますか?﹂
﹁わかりました﹂
ポーション5本ね・・・
錬金、材料指定は薬草、作成物はポーション、品質・効能を重視し
てっと
2回設定をチェックする。
まぁ、この程度の錬金であればそこまで神経質になる事も無いが、
転職試験でもある訳だし念には念を入れて確認する。
174
よし、作成
錬金を発動すると光のエフェクトに包まれる。
しかも今回は品質・効果重視にした為に通常の錬金よりは消費MP
も多く、また作成開始から完成まで通常の2倍近く時間が掛かる。
と、言ってもポーション作成自体、それほど時間が掛かるものでは
ない為30秒位で終了した。
﹁それでは確認させて貰っても良いですか?﹂
今作ったばかりのポーションを渡す。
少女は渡されたポーションを光に透かしてみたり、なめてみたり・・
・おそらく品質を確認しているのだろう。
﹁うん、これなら文句なしの合格ですね。それではこれが合格証に
なります﹂
そして、合格証を渡される。
合格証の見た目は普通の賞状だ。
﹁これを持って、ギルドに行けば転職出来ますよ﹂
ん、ギルドに?
ギルドって、プレイヤーが結成したあのギルドの事だよな?
175
所属しないと転職出来ないという事なのか?
﹁ギルドに入ってないんですが、その場合ってどこで転職すればい
いんでしょうか?﹂
﹁え・・・あぁ、このギルドは冒険者ギルドの事ですよ﹂
ギルドについての説明を聞いたが、長いので割愛したいと思う。
簡潔にまとめると、冒険者ギルドがあり、冒険者ギルドに所属する
形で下部団体としてプレイヤーの作ったギルドがあるという事だ。
説明を聞いた限りだと、プレイヤーギルドというのは冒険者ギルド
を本社とすると、営業所のようなものであるらしい。
簡単にギルドについての話を聞いた後、丁重にお礼を述べその場を
後にした。
冒険者ギルドは東京にあるということなので東京へ向かう。
そういえば、光の所でごたごたしてたのは落ち着いたのだろうか?
冒険者ギルドで転職した後にでも寄ってみよう。
浦安を後にし、東京へと向かう。
立地的にも近い為、東京へはすぐに着いた。
東京に着いたのは良いものの、あまり東京に居なかった事もあり東
176
京では施設がどこに有るのかが全くわからない。
どうしたものかと悩んでいるときにふと閃いた。
あ、そういえばチュートリアルでやったマップの使い方に施設への
案内を表示するものがあったな、と
この間5分、ずっと門の外で立ち尽くしていた訳だから、第三者か
ら見たら奇妙な人物が居たと思ったことだろう。
マップを開き、冒険者ギルドへの案内を設定する。
使い慣れていない事もあり、少々時間が掛かったが何とか設定し、
東京の中へと足を進めた。
﹃さぁ、行くぞ﹄と意気込んでみたものの、歩き始めて1分もする
と大通りに面した大きな建物が見えてきた。
いや、いつは門の外からも見えていた建物ではあるが、マップに表
示されている案内によればその建物が冒険者ギルドらしい。
なんというか・・・ね?
悩んでる時間に探していれば確実に見つかったであろう位置にある
と・・・ちょっとやるせなさが・・・
まぁ、過去は気にせず気を取り直して転職しに行こう。
冒険者ギルドの建物は石造りで立派な物だった。
177
中に入ると・・・なんと表現すればいいだろうか?
窓口は銀行か役所のようなイメージで、ロビーは大規模な駅のよう
なイメージと表現すれば伝わるだろうか?
各冒険者ギルド間では転送サービスが行われている為か、人通りが
多く乗り換え駅を連想させるような状態になっている。
そして、奥に手続きをする為の窓口がある。
今日用事があるのは窓口の方だ。
窓口も込み合っており、対応中の窓口が多かった。
空いている窓口は・・・あった。
すばやく空いている窓口へと移動し、用件を伝える事にする。
﹁すみません、転職の手続きをお願いしたいんですが﹂
﹁はい、ではお座り下さい﹂
椅子に座るように促されたので、椅子に座る。
﹁登録カードはお持ちですか?﹂
﹁いえ、持ってないです﹂
﹁では、まず登録からですね。こちらの書類に目を通していただい
て、確認されましたら記名をお願いします﹂
178
出された書類には登録手続依頼書と書いてあった。
書いてある事を読むと、冒険中に受けた被害は自己責任とするとか
お約束の事が書いてあった。
読んだ後に署名し、書類を渡す。
﹁転職の証明書はお持ちですか?﹂
﹁あ、はい﹂
少女から受け取った証明書を渡す。
﹁では、発行手続きと転職手続きを行いますので少々お待ち下さい﹂
そう言って女性はバックヤードへと入って行った。
・・・どのくらい待てば良いんだろうか?
待つ事数分、奥へ行っていた女性が戻ってきた。
﹁こちらがカードになります。記載内容に間違いが無いかご確認下
さい﹂
カードを渡されたので記載されている内容を見る。
職業は錬金術師で・・・他の情報も間違ってないな。
情報と言っても、名前と所属しているギルド︵プレイヤーギルド︶
179
の記載がある。
裏を見ると、依頼達成回数やら、ランクやらが色々書いてあるが全
て0である。
﹁すみません、この裏のは・・・﹂
﹁そちらに関しては今から説明いたします。記載内容に間違いはご
ざいませんか?﹂
﹁はい、間違いは無いので説明の方をお願いします。﹂
﹁それでは説明させていただきます﹂
ここから聞いたことは面倒さから要約してしまおう。
ランクは0から始まり、クエストをこなしたり討伐を行う事で貢献
度が上がり、一定の貢献度に達するとランクが1つ上がる。
ランクが上がると、NPC店舗で優先的に物を買えたり、転送費用
が割り引かれたりという特典がある。
また、高ランクだと指定クエストや、緊急時の召集などもあるとの
事だ。
指定クエストは受ける個人を指定したクエストで、これに関しては
説明の必要は無いだろう。
緊急時の召集に関してだが、これには色々なタイプがあるらしい。
180
例を挙げれば、モンスターが街へ攻めてきた場合の防衛がある。
その場合は大体街にいる冒険者全てに招集が掛かるが、高ランクだ
と遠隔地に居ても召集を掛けられる場合があるらしい。
まぁ、ある意味都合の良い戦力扱いだな。
他にはクエストの受け方とかの説明もあったが・・・まぁ、その辺
は割りとどうでも良い。
そもそもクエストなんて受ける気も無いしな。
説明から開放され、冒険者ギルドの建物から出る。
しかし、転職したからと言って特に変化は無いなぁ・・・
とりあえず、予定通り光の店に向かうか。
同じ都市内と言えどもやはり多少は時間が掛かるもので、たどり着
くまでに10分ほど掛かった。
見た感じではあるが、既に騒ぎは収まっているようだ。
見ていても仕方が無いので店の中に入る。
光は・・・この間と同じ場所で何やら作業をしていた。
あそこが定位置なのだろうか?
﹁よっ﹂
181
﹁やぁ﹂
右手を上げ挨拶をすると、左手をあげ挨拶が返ってくる。
﹁さっきの騒ぎって何があったん?﹂
﹁あぁ、あれはね・・・﹂
﹁あれは簡単に言えば2重発注なんだよね﹂
﹁2重発注?何をやったらそんなことになるの?﹂
﹁いやー・・・露天に並べてる小売と市場に流す卸売りがあるんだ
けどね。今回は同時に店頭と市場で最大量を買われて在庫量を割り
込んじゃってね﹂
﹁普通は確保してから売りに出すものじゃないの?﹂
﹁うん、普通は他の店から借りて融通出来るように協定を結んでる
から良いんだけどね。どうやら今回は他の店も同時に狙われたらし
くて・・・﹂
﹁その店はどうしたんです?﹂
﹁どうやら、高値で買い戻すという事で話を付けたらしいよ﹂
流通量以上に買い占めて、強制的に買い戻させるか・・・
昔、株でそんな話を聞いたことがあったなぁ。
182
しかし、これって確実に仕込んでる連中が居るな。
﹁まぁ、良くある手ですよね。ところで、これを仕掛けた連中に心
辺りはありませんか?﹂
﹁今回買い占められた量を考えると、トップギルドなのは間違いな
いだろうね。そして、既に食料の流通量自体は買占め前と同じ位に
戻ってるから・・・販売するつてがある所なのは間違いないね。で
も、この情報だけじゃまだ”どこ”とは言えないかな﹂
つまり、出来るところは結構あるんだな。
しかし、今回成功したという事はきっとまたやるだろう。
買占め・・・つまり、在庫を無制限に売るチャンスでもある訳だ。
﹁光さん・・・今度買占めがあったら、うちの在庫を売れるだけ売
って貰えませんか?﹂
﹁え?それ自体は構わないけど、今後対策もするから今回みたいな
問題は起きないと思うけど・・・﹂
﹁いえ、単純に在庫を売りさばきたいだけですよ。確かに延々と売
り続ければ面白い事にはなると思いますがね﹂
そう言ってニヤリと笑う。
光もニヤリと笑い・・・つまり、これの意味がわかったという事だ
ろうか?
183
延々と食料を売り続けるだけなのであまり意味が無いように見える
かもしれないが、これが実は結構な意味を持っている。
買い占める側は延々と買い続けて値上がりした所で売却する事を目
的とする例が多い。
大体の場合買い占める側は十分な資金を用意している為に目的を達
成出来る場合が多い。
しかし、相手が延々と売り続けた場合全く値上がりせず、逆に値下
がりしてしまった場合は大きな損をする。
延々と売り続けるというのは簡単な事のように思えるが、これが意
外と難しい。
なぜなら、売る側には売る物が無いといけないからだ。
逆に買う側は﹁1ヶ月後に代金を払う﹂という手形でも良い。
なのでこの勝負は買い占める側が有利なのだ。
しかし、売る側が十分な量を確保出来れば仕掛けた側に大打撃を与
える事が出来る・・・
会話を終え光の店を出る。
計画を実行するためには膨大な量の食料が必要となる。
現在の在庫でも問題は無いと思うが、足りないと困る・・・といっ
184
たレベルではないので在庫の積み増しの為に水戸へ行って生産量の
調整をすべきだろう。
季節的にはもうすぐ冬がやってくる時期なので、しばらくは向こう
も仕掛けてくる事は無いだろう。
仕掛けてくるとすれば、冬に入って温室以外で食料生産が出来なく
なってから、それも比較的各所に余裕がある前半では無く、耐えれ
ば逃げ切る事が出来る後半でも無い・・・
つまり中盤に仕掛けてくる事が予想出来る。
冬に入るまではひたすら土地を買って生産量を増やし、それと平行
して温室化を進める。
冬に入ったら温室化のみを行うという形にするのがおそらく最も効
率がいい方法だろう。
ついでに支出の削減も行って開拓費に回して置くことにしよう。
そうと決まれば、とっとと水戸に行って生産についての設定をして、
錬金でガラスの量産をしよう。
いつものごとくテレポートで水戸へ移動する。
﹁これはこれは領主様、本日はどういったご用件で?﹂
﹁とりあえず、今回はちょっと方針転換と確認にな。城壁の建築の
優先度を下げて農地の開拓を優先してくれ﹂
185
﹁わかりました、ちなみに開拓よりは、土地を買い取ったほうが早
くて安上がりなのですが、どういたしますか?﹂
﹁なら、あるだけの資金で土地の買収も頼む﹂
﹁わかりました、土地の用途はいかがいたしましょうか?﹂
﹁農地で食料生産に回してくれ。そして、材料の入手次第、温室に
してくれ﹂
﹁温室を建設するには大量のガラスが必要となりますが・・・﹂
﹁わかっている、ガラスを作って倉庫に入れておくから、入ってる
分で作れるだけ作ってくれ﹂
﹁わかりました、生産した食料はどういたしましょう?﹂
﹁全て倉庫に仕舞ってくれ。倉庫の容量が足りなければ倉庫も建築
するように、後はそうだな・・・今掛かってる生産コストを5%削
減するように、まぁこれは無理ならやらなくても良いから﹂
﹁わかりました、ではそのように致します﹂
﹁あと、何か報告はあるか?﹂
﹁いえ、特にございません﹂
﹁では頼んだぞ﹂
そして、とりあえずガラスを量産しなければ・・・
186
そう思い狩場に行こうとした時に思った。
ガラスを作る為の砂も集める為に海岸へ行ったほうが良いんじゃな
いだろうか?
その後は延々と砂を採取しつつ、ガラスの錬金を行った。
そして朝が来て仕事へ行き夜家へ帰る。
ログインして砂を採取、ガラスの錬金・・・
数日間それを繰り返した。
そしてログインすると、季節は冬に入った。
ついに冬、予定日まで現実時間で3日、ゲーム時間で3ヶ月、そろ
そろ追い込みに入る時期だろう。
ここ数日繰り返していたガラスの生産をしようとした時、メールで
運営から大規模な修正を行ったので公式サイトを確認するようにと
いう案内が届いているのに気づいた。
とりあえず公式サイトを確認する事にしてページを開いた。
書いてあったのは、一部スキルのバランスが悪いから内部パラメー
ターの再設定を行ったと言う事。
付属の掲示板を見ると、どうやら攻撃速度が遅くなっているらしい・
・・攻撃速度?
187
攻撃速度が遅くなるというのは嫌な予感しかしなかった。
間違いなく指弾の攻撃速度も落ちているだろう。
いや、むしろ今回のは指弾を狙い撃ちにした調整なのか?
もしかすると、何も変わっていないかもしれない、そんな淡い希望
を胸に狩りへと向かう。
砂浜までの道のりが異様に長く感じられる。
やっとの事で砂浜へとたどり着き狩りを始めようとするが、こんな
時に限って敵が居ない。
悪い事は続くもので、さらに砂浜を探すが敵が全く居ない。
やっと見つけて、指弾で攻撃してみると・・・
明らかに攻撃速度が5分の1くらいまで落ちている。
速度系の付与を掛けて攻撃して毎秒20回くらい、無理に速度を引
き上げても25回には満たないだろう。
海のしずくのMP回復量は補正を含め1回当たり8だから、毎秒1
60の回復となる。
ゴーレム狩りで貫通を活用した多段ヒットを使って回数を稼いでも
毎秒800の回復だからこれはずいぶんと・・・いや、かなり劣化
したと言うべきだろう。
188
まぁ、それでもまだ他よりは回復量は多いんだろうが・・・
今まで攻撃時には速度増加を付与していたが、速度増加を切って攻
撃してみる。
結果として毎秒15回くらいの攻撃回数・・・攻撃回数はプラスマ
イナス1くらいのばらつきがあるが、これは特に気にすることも無
いだろう。
付与を切って攻撃した場合のMPの回復量は毎秒120程度、この
回復量なら付与で消費するMPを考えると付与をしない方が効率が
良さそうだ。
性能の大幅な劣化で大きなショックを受けた。
だが、これもネトゲの宿命だろう。
上位職の実装や新スキル実装のバランス調整で、今まで使えた職が
使えない職になることはたまにある事だ。
だが、それでやる気が削がれないと言ったら嘘になるだろう。
現実に、大規模アップデート後と言うのは復帰してくるプレイヤー
も多いが、それ以上に引退や休止するプレイヤーもいるのである。
何を隠そう私も今回のアップデートでやる気を削がれた中の一人だ。
まぁ、資産はあるから辞めるところまでは行かないが、少なくても
狩りに行く気は起きないな。
189
という訳で、採取と錬金・製造をメインにプレイする事にした。
今の状態で本格的に狩りに行ったら色々絶望するだろう。
本当は、職業も錬金術師だから本当は戦闘も行うのが間違っていた
んだけどね・・・
錬金術師はどういうプレイが一番効率良いのかをまずwikiで調
べて・・・あれ、錬金術師に関してはほとんど載ってないぞ?
書いてあるのは、﹃本を読んで勉強する﹄と﹃ひたすら錬金する﹄
の点だけだ。
これは、情報が無いのと変わらんな。
とりあえず、採取しながらMPが回復したらちまちま錬金していこ
う。
採取するのはそうだなぁ・・・比較的品薄な薬草系にしようか。
薬草ならそのまま売っても良いし、加工するにしても色々なものに
加工出来るからね。
そして、気になっていたスキルの組み合わせがあるから、ちょっと
試して見たいというのも採取に行く理由のひとつだ。
単体を対象にしたスキルで複数対象を攻撃出来る﹃マルチアタック﹄
というスキルがあるんだが、このスキルが採取スキルで使えるかど
うかだ。
190
まぁ、効果があったとしても薬草とか採取場所がランダムになるも
のでは一々指定しないといけないのでほとんど意味が無い・・・い
や、むしろ逆効果である。
しかし、砂浜での砂の採取のように全域が採取場所になっているも
のや、鉱石の鉱脈のように場所が固定のものに対しては指定すれば
指定しただけ採取効率が上がるだろう。
まぁ、1回毎にMPを消費するようならばMPを消費してまで採取
すべきかどうかは悩ましい所だな。
それで、現在採取の為に森に来たのであるが・・・
﹁人が多すぎだろこれ・・・﹂
そう、採取している人が多かった。
具体的には、ローラー作戦で山狩りでもやるのかと言いたくなるく
らいの密度である。
191
第12話
︵後書き︶
活動報告にも記載しましたが、この話をもって一旦連載を休止いた
します。
連載の再開等の情報に関しましては活動報告をご覧下さい。
192
if
もしも異世界へトリップしたら
仕方ない、ここに居ても何も起きないようだしさっさとここを離れ
るか。
そう決め、東京へ戻ろうと振りかえり歩きだした・・・はずだった。
そこに有ったのは圧倒的な闇である。
そこに何かがあるなど考えておらず完全に虚を突かれた。
無理矢理踏みとどまり耐えようとするが、勢いを付けてしまって居
たのが祟り、闇の中へと投げ出されてしまった。
顔に光が当たっている。
目を開けると目の前には緑が広がっていた。
ここはどこだろう?
ぼんやりとした頭で考える。
確か、寝たのは・・・あれ?そもそも寝たのか?
頭が段々と覚醒してくる。
それと同時に何が起きたのかを思い出す。
193
そうあれは確か闇の中へと投げ出されて・・・
そこまで考えが至った。
慌てて立ち上がり辺りを見回す。
辺りを見回して危険が無い事を確認してため息を付く。
危険なんてあるはずが無い。
なにせついさっきまで寝ていたんだ。
モンスターが居れば既に死に戻っていただろう。
とりあえず現在地を確認しよう。
﹁ウィンドウオープン﹂
あれ?マップが開かない・・・
﹁メニューオープン﹂
仕方なくメニュー一覧からマップを開くためにメニューを表示しよ
うとするが、これも開かない。
どういうことだ?
その後一通り試して見るが、ウインドウというウィンドウが全て使
えなくなっていた。
194
出来る事を確認していく。
まずはアイテムの出し入れは出来た。
ただし、アイテムリストが見れないから入っている物を忘れたら取
り出せなくなるだろう。
次にスキルは一通り使えた。
ただし、こちらもリストが使えないから自分が知っているもののみ
に限定されるが。
思いつく限り確認したが、出来たのは2つのみであった。
大体、メニューが開けない事からメニューの下位に位置する機能は
全滅である。
特に、GMへの通報機能が使えないのは痛かった。
とりあえず、現在位置はわからないがここに居ても仕方ないし移動
すべきだろう。
目的地はどこかの都市・・・最悪村でも良い。
幸い太陽が出ている為に大まかな方角だけは判別出来る。
よし、まずは南へ向かってみよう。
道か川に当たれば良いし、海であっても海沿いには村くらいはある
195
だろう。
空を見上げ、太陽の位置を確認する。
よし、南はあっちか。
そして、私は南へ向かって歩き出した。
196
第13話
この密度ではあまり効率は良くないだろう。
だが、折角来たのだし少しは採取して行こうか。
奥へと向かって移動しつつ下を見て探すが・・・採取出来そうなも
のが無い。
あっても品質が悪かったりどこでも採取出来るものだったり・・・
採取の必要性が無いものばかりだ。
その後1時間程採取を続けたが、手に入ったのは数本の薬草と数個
の鉱石、これだったら雑魚モンスターを狩った方がまだ効率が良い
だろうというレベルであった。
はてさて、どうしたものだろうか?
どの道、この森で採取を続けるという選択肢はあり得ないので水戸
へと向かう。
だがしかし、水戸に行ったからと言って特にやる事がある訳でもな
い。
MMORPGをやった事がある人ならわかると思うが、自由度が高
いがゆえに特にやる事も無いのだ。
そうすると必然的に時間を持て余すわけで・・・
197
何をしよう?
有り余る時間を利用して生産活動を行うつもりだったが、MPの回
復も心もとないし・・・
折角だから、ギルドでも作ってみようかな?
ギルドを作るのには結構な資金が必要となる。
だが、俺はおそらくこのゲームでも5本の指に入る資産家になって
いるだろう。
保有している土地は日々産物を生み出し、産物を売って得た利益で
更に土地を買う。
また、NPCを雇って土地の開拓を行い保有する土地を増やしつつ、
NPCへと払った報酬は直営の商会で物を売ることで結果として戻
ってくる。
水戸を中心都市として白川・郡山・新潟を隷属都市としていたのが、
今ではそこに会津といわきが加わっている。
土地面積としては最低でも5万単位くらいはあるだろう。
うち農地の割合が7割なので生産される食料と薬草の量は・・・う
ん、初めから採取に行く必要性なんて無かったね。
まぁ、これだけの資産があれば、ギルドの設立はおろかトップギル
ドの一角へ食い込むのも無理ではない・・・というより確実に食い
198
込めるだろう。
安定のwikiで調べると、どうやら冒険者ギルドで登録するだけ
という簡単な方法で設立出来るらしい。
ただし、設立費用に200万ほど必要となるそうな。
よくありがちな定期的な上納金などは無いようだが、一定期間活動
実績が無い場合には強制的に解散されるシステムのようだ。
つまりは、たまにクエストをやれっていう事だな。
まぁ、この程度の負担ならギルドを設立するのも良いかもしれない
な。
199
第14話
早速、登録費用を用意してギルドの設立へ行ってみた。
テレポートで東京へと向かう。
テレポートで到着したのは門の前なので、門をくぐりギルド本部へ
向かって歩いてゆく。
初期地点だから人口が多いが、やはり前よりは人が減った気がする。
水戸では逆に人口が増えていたようだから移住したのかな?
そんな事を考えているが、実際は移住するNPCも多いが、食料不
足で流民に成った為というのがある。
流民というのは・・・簡単に言えば難民かホームレスのようなもの
で、増えると盗賊化したり治安に対して悪影響を及ぼす。
まぁ、それは置いておくとしよう。
目的地であるギルド本部だが、やはりギルド本部は相変わらず大き
く、そして活気があった。
さて、まずギルド設立の受付はどこだろう?
とりあえず、その辺の空いている受付で聞いてみるか。
空いている受付が無いかを探すと・・・あった
200
﹁すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが﹂
﹁はい、なんでしょうか?﹂
﹁ギルドの設立をしたいんですが、受付はどちらでしょうか?﹂
﹁設立ですか?少々お待ち下さい﹂
そう言って、受付のお姉さんは何処かへと連絡している。
﹁係りの者が着ますので少々お待ち下さい﹂
﹁あ、はい﹂
そして、待つこと数分
﹁お待たせしました、ギルドの設立希望の方でよろしいでしょうか
?﹂
﹁はい、そうです﹂
﹁では、こちらへどうぞ﹂
やって来たのは若い女性だった。
まぁ、わざわざむさいおっさんが来るというのも考えにくいからそ
れが普通なんだろうけど・・・
それはともかく、案内されるままに付いて行くと何やら応接室のよ
201
うな場所へと案内された。
﹁どうぞ、お座り下さい。登録費用の方はお持ちですか?﹂
﹁はい、こちらです。ご確認下さい﹂
登録費用の200万をテーブルの上へと置く。
﹁それでは手続きの方を進めますのでこちらの規約の方をご覧にな
ってお待ち下さい﹂
そして、女性は部屋を出て行く。
言われた通りに目を規約の方に目を通すが、書いてあるのはお約束
の問題があっても本部は責任を負わないとか、受けなければいけな
いクエストの回数とか・・・
ただ、収穫が無かった訳では無い。
規約の中には、設立したらクエストを受けなければいけないという
内容もあったが、そのクエストは他のギルドに依頼として丸投げし
ても良いらしい。
ただし、その分の費用は自己負担という事だろうが・・・
まぁ、何にせよ金銭で問題を解決出来る事がわかっただけでも大き
な収穫と言っても良いだろう。
202
第15話
﹁お待たせいたしました﹂
女性係員が何やら書類の束を持ってやってくる。
﹁設立許可が出ましたので、現時点より仮設ギルドとなります﹂
おっと、一応規約と一緒に渡された設立の流れに関して書いてあっ
た紙の内容を説明しておこう。
200万の費用を払うと設立の第一段階として仮設ギルドになる。
この状態は、ギルドの名称と本拠地を登録するまでの借りのもので、
ゲーム内時間で1ヶ月で失効する状態だ。
﹁名称と本拠地はどうなさいますか?保留にされて後日登録も可能
ですが﹂
﹁いえ、今登録していきます﹂
﹁わかりました。では此方に記載をお願いします﹂
そして渡される書類。
名称は﹃シリウス﹄本拠地は﹃水戸﹄っと・・・
﹁これでお願いします﹂
203
﹁名称がシリウスで本拠地が水戸ですね。それではこれで登録しま
すので少々お待ちください﹂
そういって、また部屋から出て行ってしまう。
うーん、やっぱり役所での手続きって暇だよね。
どうしても待ち時間が長くなりがちだし、その間他に出来る事も無
いし・・・
あ、瞑想と錬金をしていれば良いじゃないか。
そして残りのMPが1割くらいになるように錬金を行い瞑想を行っ
て回復するのを繰り返した。
次に係員が戻ってきたのは10サイクル錬金と瞑想を繰り返してか
らだった。
﹁お待たせいたしました。此方が設立証明書になります。それとサ
ービスやその他諸々に関する手引書です。一応説明いたしますか?﹂
﹁手引書に目を通した後で不明点だけを聞くのは可能ですか?﹂
﹁あ、はい出来ますよ。設立されたギルドに対しての相談窓口もあ
りますし、規模によってはギルド本部から連絡員を派遣する事も可
能ですので、そちらに聞くという手もあります﹂
なら、面倒だしとっとと帰るか。
﹁わかりました、それなら説明は結構です﹂
204
﹁は、それではお疲れ様でした。これで手続きの一切が終了となり
ます﹂
その後は係員に案内されて外へ出る。
とりあえず・・・光の店にでも上がりこんで手引書でも読むか。
﹁という訳でやってきた﹂
﹁・・・まぁ、本当なら殴ってるところだが今回は見逃してやるよ。
この後食料相場に関しての会議があるからそれに顔を出してくれ﹂
あーそういえばそんな話もあったような気もしなくもない。
﹁わかったわかった、じゃあそれまでは適当に寛がせて貰うよ﹂
﹁あぁ、茶くらいなら出してやるとも﹂
そして、奥に置いてある高そうな椅子へと座り手引書を読み始めた。
205
第16話
とりあえず、貰った手引書を読み進める。
最初に書いてあったのは何をしなければいけないかという部分だ。
簡単に表現すると、一定割合の世間への貢献である。
内容は様々で、街の商店の雑用からモンスターの討伐まである。
そして、驚いた事に各町にあるギルドの支部は全てプレイヤーが運
営しているようだ。
行った先々でギルドを見かけないとは思ったがそういう理由だった
のか・・・
ギルドの一定割合の貢献というのは、人︵ゲームだからNPCかと
思えばプレイヤーでも依頼出来るらしい︶から出てきた依頼をどれ
だけこなすかというものである。
貢献=人の役に立つという事だが、そうなれば当然人が多い方が解
決すべき問題が多い事になる。
そうなると、自然と大きな街を拠点とするギルドが増え、小さな村
にはギルドが無い状態となるのだ。
結構、上手く出来ているものだな。
そして、読み進めていくと設置する事が出来る設備に関して書いて
206
ある部分があった。
受付やカウンター・依頼掲示板などの定番のものから、噴水・シャ
ンデリア等の装飾類、貸し工房や商店・倉庫まであった。
実用性から趣味に走ったものまで数多くあるので、それぞれのギル
ドが特色を出せるという事だろう。
ただし、機能や必要性から確実に設置される物はパターン化されて
いる。
最低限1つは受付としてカウンターを置くのと依頼掲示板は必須と
言えるだろう。
実際は依頼掲示板は無くても良いらしいが、その場合依頼の処理は
全て受付で処理する・・・つまり、どんな依頼が出ているかを確認
する為にもカウンターへ行かなければいけないという事になる。
その為、依頼掲示板を置かない場合は受付を多く設置しなければな
らず、結果として維持費が多く掛かるという事になる。
その為、依頼掲示板はどのギルドにも確実に設置されている。
他に良く設置されているのが都市間の転送ポートだ。
実は、都市間を移動するのに私のように歩いたり自力で転移の魔法
を使う人はあまり居ないらしい。
理由は複数あるのが、良く言われるのは転移の魔法が個人向けであ
るという事である。
207
つまりはパーティーを組んでいると転移の魔法で移動する事が出来
ない為に転送ポートを使うのだ。
また、転移の魔法のMP消費が大きいという理由もあるだろう。
そういった理由から各ギルドには大体転送ポートが設置されている。
そして、この転送ポートというのは魔方陣という特殊オブジェクト
を使用したものなのだが、1つの魔方陣には1つの街しか設定でき
ないという代物である。
また、設置にはそれなりの費用が掛かる為に各ギルドに1つか2つ
設置されている。
おおまかに設置されている傾向としては、周辺都市のギルドには大
都市向けの転送ポートが、大都市のギルドには各都市に向けての転
送ポートが設置される形となっている。
この辺は鉄道をイメージしてもらうとわかり易いだろう。
208
第17話
﹁そろそろ会議だから来てくれないかな?﹂
一通り読み終わった所で声を掛けられた。
どうやら待っていたくれたらしい。
﹁わかった・・・所でどこで会議をやるんだ?﹂
﹁あれ、教えてなかったっけ?ギルドの貸し会議室でやるんだよ﹂
﹁なるほどね、とりあえず今日は参加するだけで良いんだろ?﹂
﹁うん、基本的に全てうちが窓口をやる形で話は纏まってるから、
参加しておおまかなながれ掴んでくれれば良いよ。じゃあ行こうか﹂
﹁そうだね、とっとと行こうか﹂
読んでいた手引書をアイテムボックスに仕舞い立ち上がる。
とりあえず、光の後ろをついて行けば良いんだよな?
と言ってもギルドまでは遠い訳では無いのですぐに到着する。
ギルドに入り光は迷う事無く2階へと上がっていく。
付かず離れずその後ろを付いていく。
209
そして会議室へと到着、人の入りは6割くらいだろうか?
光の隣に席が用意されているようで、プレートが置いてあったので
そこに座る。
﹁ところで・・・どのくらいの小麦が用意出来るの?﹂
座ると光が小声で話しかけてきたのでこちらも小声で返答する。
﹁えーっと、消費量換算だと3ヶ月分って所かな﹂
そう、用意出来るのは既知マップの全人口の消費量3ヶ月分という
所だろう。
そして、日頃からの備蓄を削れば更に6ヶ月分くらいはひねり出せ
るだろう。
ついでに、傘下都市への食料供給を止めれば3ヶ月分くらいは上積
み出来るだろう。
だが食料供給を止めると確実に悪影響が出るので他の食料で補填出
来る限度・・・1ヶ月分が限界だろう。
つまり、限界まで無理して12ヶ月、無理しなければ10ヶ月分の
食料が用意出来る事になる。
しかし、備蓄の開放を行うという事は非常事態に対応出来ないとい
う事に繋がる。
その為に実際に提供出来るのは4∼5ヶ月分だろう。
210
だが、それも順調に小麦が生産されればという条件が付く。
温室化を進めているからまず無いと思うが、不作だった場合前提条
件の3ヶ月が満たせなくなる為に最低ラインとして備蓄を切り崩し
て提供出来る量を伝えたのだ。
﹁3ヶ月分かぁ・・・もう少しなんとかならない?﹂
﹁うーん・・・生産が順調に行けば更に2ヶ月分は上積み出来るけ
ど・・・﹂
﹁そっか、わかった3ヶ月から最大で5ヶ月分くらいね。その量で
話を進めてみるよ﹂
﹁うん、よろしく﹂
211
第18話
そんなこんなで光と話しているうちに参加者はだいぶ揃っていた。
﹁お、もう揃ってるのか、ならちょっと早いが始めるか﹂
最後に入ってきた人がどうやら今回の取りまとめ役だったらしくそ
んな事を言っている。
﹁今回は良く集まってくれた。今回は買占め対策という事で、まず
はそれぞれの店でどのくらいの在庫があるのかを確認したい﹂
その後、各店やギルドの代表が答えていく。
在庫の量はそれほど多くなく、多い所でも消費量換算で2ヶ月、少
ない所だと2∼3週間分といった所だ。
後で光に確認してみた所、ここに集まっているのは生産者ではなく
中間の小売や卸売りの代表だったらしい。
それと今回の買占め対策は買い占めている連中に対する攻撃という
意味もあるが、どちらかといえば食料不足でNPCの数が減るのを
防ぐのが主目的だという事だ。
そして、ここで発覚した勘違いが、どうやら消費量換算というのは
東京での消費量限定だったという事。
既知マップ全域の消費量を基準に3ヶ月分と答えたが、東京の人口
は既知マップ全体の1割前後である。
212
つまり、消費量換算で30ヶ月から50か月分という事になる。
しかし、この事に気付いたのは騒動が終わってからであった。
そして、現在の在庫量の集計が終わったらしく、ホワイトボードへ
と数字が書き込まれていく。
﹁12ヶ月分か・・・﹂
ここには、提供する3ヶ月分も含まれる為、各店の在庫は9ヶ月分
しかなかったという事になる。
冬は残り4ヶ月で、春になれば食料が生産され始めるから問題無い
ように思われる。
しかし、街で消費される食料が4ヶ月分で余裕は8ヶ月分しかない。
そして、この余裕の2∼3ヶ月分はプレイヤーが消費したり、備蓄
が足りない都市や村へとプレイヤーが転売するだろう。
ここで問題なのが、プレイヤーが購入する事を防げない事だ。
いや、実際は出来ない事も無いのだが、領主となり都市内へのプレ
イヤーの入場を禁止するという大規模な事をしなければならない。
まず、領主となる要件が厳しい上に、そもそもプレイヤーの入場を
禁止すると都市の経済が破綻する為に実質行う事が出来ないのだ。
その為、実は実質的に対策する事がこの会議自体に全く意味は無い
213
のだが・・・
まぁ、知らない方が幸せだよな。
214
第19話
結局その後は会議は進展は無く終わった。
元々市場を飽和させるくらいしか対策が無いのにも関わらず、市場
を飽和させる事が出来ないというのだから無理も無い。
﹁さて、とりあえずどうするつもりなんだ?﹂
光へ問いかけると、顎に手を当てて少し考えてから口を開いた。
﹁そうだなぁ・・・とりあえずは値上げでもしておこうか。それと
買えるだけの買占めかな﹂
﹁それで、どれだけ買い込めるんだ?﹂
﹁今の相場からいうと1週間分が限度かな。流石に運転資金は全部
使う訳にはいかないないし・・・﹂
そして少し考え込む。
ここで相場が上がると採算ラインに乗るからと投資する連中が増え
て、自分の優位性が消えるのではないだろうか?
だとするならば、出来る限りの在庫を放出した方が良いのではない
だろうか。
﹁わかった、うちの方から追加で出荷するようにしよう・・・それ
で良いか?﹂
215
﹁え?うちは構わないけど・・・大丈夫なの?﹂
﹁あぁ、多分大丈夫だ。だが、一応確認するから量に関しては少し
待ってくれないか?﹂
﹁うん、じゃあ後でメールでも頂戴﹂
﹁わかった。おつかれ﹂
そう言って光と別れる。
とりあえず、水戸に行って在庫と備蓄の確認をしないといけないな。
そして、テレポートで水戸へと飛び、代官の家へと行く。
前は村で一番でかい家というレベルだったのが、それなりに立派な
屋敷になっていた。
やはり、街が大きくなると家も立派になるものなのだろうか?
立派な扉に付いているドアノッカーでドアと叩く。
−ドンドン
意外と大きい音が響き渡った。
216
﹁どなたですかな・・・おお、これはこれは領主様。今日はどうい
ったご用件ですかな?﹂
出てきたのは代官・・・なのだろうか?なにやら立派な紳士風の男
が出てきた。
しかし、セリフからすると代官なんだよな?
﹁どうされましたかな?・・・あぁ、立ち話もあれですから中でお
茶でもいかがですかな?﹂
﹁え・・・あぁそうだな﹂
﹁では、こちらへどうぞ﹂
そう言って中へと促される。
言われるがままに中へと入り案内されたのはどうやら執務室だった
ようだ。
書類が山積みになった机と邪魔にならない位置に応接セットが置い
てある。
﹁応接室に案内しようかとも思ったのですが、今日来られたのも恐
らく私の仕事関係だと思いましてな。失礼かとは思いましたが執務
室の方にさせて頂きました﹂
﹁ん・・・あぁ、そうだな早速で悪いが、ちょっと穀物の在庫の確
認がしたくてな﹂
217
﹁穀物の在庫・・・ですか?それは備蓄を含めてでしょうか?﹂
﹁あぁ、現在の備蓄量と自由に動かせる量、それと今後の生産量に
ついて知りたいんだが・・・﹂
﹁わかりました、少々お待ちを﹂
そう言うと棚にある書類の束を持ち出し、パラパラと中を確認して
いるようだ。
あれ、そういえばお茶が出てきてないぞ?
218
第20話
待つこと約1時間、どうやらまとめ方が終わったらしい。
﹁お待たせいたしました、ご依頼の資料になります﹂
そういって、どっさりと紙の束が目の前のテーブルに置かれる。
﹁現時点で自由に動かせる量は消費量ベースで12ヶ月分になりま
す﹂
﹁あれ、当初の計画ではもっと少なくなかったか?﹂
書類に目を通しながら問い返す。
見た感じ、全体的に備蓄量が増えている感じである。
﹁はい、どうやら他の都市より人口が流入してるようでして・・・
その影響で開拓が初期の計画の数倍の速度で進んでおります﹂
﹁具体的な量は?﹂
﹁そうですな・・・1日で1週間分の消費量と同等といった所でし
ょうか﹂
1日で1週間分・・・?
それだけの生産量があるならそれをそのまま市場に出荷すれば良い
だけなんじゃないだろうか?
219
﹁とりあえず。そうだな・・・値崩れしても構わないから毎日5日
分程出荷してくれないか﹂
これを聞いて代官は眉をひそめている。
﹁あぁ、しばらくして値崩れを起こしたら生産調整で別なものを生
産するようにすれば良いさ﹂
﹁まあ・・・そうですな。開拓は現物支給で行っておりますし、そ
れほど大きな問題は起きんでしょう﹂
﹁それでも、だぶつくようなら加工して売れば良いさ・・・﹂
さて、これで問題は解決した訳だ。
それなりに難しい問題かと思ってみれば意外と簡単に解決しそうだ
な。
﹁さて、では後の事は任せる﹂
﹁はっ、お任せください﹂
そして、代官の家を後にする。
結局お茶は出なかったなぁ。
とりあえず、光にはこの件を伝えておかないといけないな。
代官の家の塀に寄りかかり、光にコールを掛ける。
220
﹃はろはろ∼、商売の方はどうかね?﹄
﹃んー、まぁぼちぼちかな。しかし、どうしたんだい?君から掛け
てくるなんて珍しい﹄
﹃いや、どうやら小麦の供給の目処が立ちそうなんでね・・・一応
伝えておこうかと思って﹄
﹃なるほど、それでどのくらいの量なんだい?﹄
﹃一応、1日辺り5日分を市場に供給する事にした﹄
﹃それは・・・つまり、今のうちに売れるだけ売っておけと?﹄
﹃うん、まぁその辺の判断はお任せするよ﹄
﹃・・・まぁ、わかったよ、とりあえずうちでも何かしら対応をし
ておく﹄
﹃じゃあ、よろしくね﹄
221
第21話︵前書き︶
驚きの短さ!
222
第21話
さて、まずは市場というものについてどのくらい理解しているだろ
うか?
買えば値段が上がり、売れば値段が下がる。
これは基本的な事だから大半の人は理解しているだろう。
さて、では市場での値段を下げたい場合はどうすれば良いだろうか?
市場で大量に売れば当然値段は下がる。
だが、値が上がって欲しいという者が更に購入し、値段が下がらな
いという事が考えられる。
いや、考えられるというよりは確実にそうなるだろう。
今回の例で見れば、穀物はNPCが確実に一定量を消費するという
事が確定している。
その為にNPCは確実に一定量を購入するが、NPCの持つ資金に
は限界があり、穀物が買えなくなるというのが今回発生している問
題の本質だ。
基本的に穀物が生産出来ない冬が終わり新たに食料が生産される春
に入れば確実に価格は下がるが、問題は穀物の価格が上がった場合
にNPCの資金が尽きてしまう事にある。
223
ここでの対策は幾つかある。
まずは、全体の穀物の価格を低く抑える事。
これは、所有する資金の範囲内に収まるようにしようという事で膨
大な量の穀物が必要となる。
まぁ、その量の穀物を捻出する事が出来るのであればこれが手っ取
り早い。
次が、NPCの資金を増やす事。
これはNPCを雇用するという事だが、現実問題として結構きつい
ものがある。
冬の間だけとはいえ、それなりの人数がいるNPCを支えるとなれ
ばそれなりの額になるだろう。
そして、最後にNPC自体の数を減らす事。
NPC自体の数が減ればそもそも穀物の消費量が減る為に相場は下
がりやすくなる。
パターンで分けると、供給を増やす、高値に耐える、需要を減らす
の3択という事になる。
会議では主に供給を増やすという方針で行動する事で話が進んでい
た。
恐らくはNPCを減らさず都市機能を維持するという目的なのだろ
224
う。
とりあえずは穀物を売って儲けつつ、NPCの引き抜きを行おう。
水戸を中心として各都市では建築や生産で人員が足りずいくらいて
も足りないくらいだ。
鉱山での採掘や街道整備、防壁の建設など人口が増えればどんどん
と発展してゆくだろう。
225
第22話︵前書き︶
安定の短さ!
226
第22話
冬も残す所あと2ヶ月そんな時にいよいよ光から連絡が来た。
どうやら相場が異常に高騰しているらしい。
現時点で消費量の5倍の量を供給している訳だから、値上がりして
いるという事は投機目的の買占めが起きているという事である。
とりあえず、光に確認してみると返事をし、市場を見に行く事にし
た。
﹁買いだ買い﹂﹁よし、売るぞ﹂
市場に行くと異常な活気だった。
なにやら、特設の市場が出来ておりそこで売り買いが行われていた。
まるで、一昔前の証券市場を髣髴とさせる状態である。
注文が入れば札を張り出し、成立すれば札を下げる。
しかも、同時に複数の注文があるのか、めぐるましく札が入れ替わ
っていく。
恐らく、買占めを行っている連中が買い集める手間を省く為に設置
したのだろう。
確かに、個別で交渉して売り買いするよりも、一箇所で大きく取引
227
出来る方が楽で、価格も把握し易い尾から楽ではあるだろう。
物の流動性を高めるというのは現代の主流的な考え方だが、これは
確かに正解の1つではある。
流動性が高ければ、1箇所で上がっても他の価格の安い場所から流
れ込む事で全ての場所で値段があがる。
確かに他の店の値段を気にせず1箇所で全てが完結するのだから管
理は楽だろう。
しかしながら、圧倒的に投入する物量に差があれば、あっという間
に値崩れを起こすという弱点がある。
恐らく、今回は会議室に着た中に内通者がおり、在庫を把握して仕
掛けたのだろう。
まぁ、例えそれで被害が拡大したとしても自業自得というしかない
だろう。
228
第23話
とりあえず、市場の視察を終えて光の店へと向かう。
市場に対する供給量と価格の推移に関してを確認する為だ。
基本的にこの手の情報はその地元にあるか、大規模な商会が持って
いる場合が多い。
その点、大規模かつ地元にある光の店は条件に当てはまる。
店の規模自体はたいした事無い、いやむしろ小さいと言っても良い
だろう。
しかし、独占契約を結んでいたというのが非常に大きく、取り扱い
額は上位に食い込む。
初期のガラスの取り扱いに始まり、大量のポーションの販売などな
どその時々で最も利益があがるものを取り扱えたのが大きいのだろ
う。
他の大規模な商会は複数の都市に店舗を置いているにも関わらず、
1店舗だけでそれらの商会と渡り合っているのだ。
そのうち、水戸をはじめとした都市に出店して貰う事も検討してお
こう・・・
光の店に到着し中に入る。
229
人の入りは・・・ぼちぼちといった所だろうか。
足音を立てずこっそりと定位置になりつつある椅子へと向かう。
気づかれては・・・いないようだ。
すーっと受付の中へと入り、さりげなく椅子を引き、その椅子へと
座る。
よしっ完璧だ、これは周りにも気づかれなかっただろう、っと心の
中でガッツポーズをしていると・・・
コトリ
目の前のデスクにコーヒーが置かれる。
﹁いらっしゃい、待ってたよ﹂
顔は笑みを浮かべているのに、目が笑っていない光がいた。
230
第24話
﹁で、最近動きが見えないけどどうなってるんだい?﹂
﹁動きが見えない?とりあえずNPC向けの供給は直接NPCに供
給しているから市場価格は気にしなくて大丈夫だ。それで幾つかの
問題は解決するだろ?﹂
NPC人口の変動を問題とするのであれば直接供給は問題の問題の
大半を解決するだろう。
この直接供給というのは一部の街で供給過多︵又は逆に需要過多︶
が発生すると価格が低い方から高い方へとその資源が移動する事を
利用した一種の裏技である。
恐らく行商人のNPCが輸送しているのだろうと推測されてはいる
が未だに仮説の段階の話である。
現在は、水戸が供給過剰気味で、東京が供給不足であるから確実に
アイテムの供給自体は伸びている。
ただし、この方法は住民が移住する確立を上昇させる。
複数の都市があるのなら人は当然豊かな都市を選ぶだろう。
豊かな都市へと人が集中すると小さな村落は無くなって行く事にな
る・・・がこの話はとりあえず置いておこう。
﹁確かにそうなんだけど・・・今回のはどちらかと言えばこの街で
231
の主導権争いという面が強くてね。なんというんだろう・・・市場
にすべてを任せれば良いと考えている自由主義派と管理すべきだと
いう保守派の対立がね。﹂
﹁なるほど、で光はどっちの陣営なんだ?﹂
﹁私は、一応中立派かな。ただ、自由主義派は大手ギルドと繋がっ
てて他の派閥を追い出しに掛かってて・・・﹂
﹁つまり、どっかの大手ギルドが東京を牛耳ろうとしている訳か﹂
確かに、今のプレイヤー人口からすれば魅力的だろう。
他の都市へ行くためのハブとなる都市を抑えることが出来れば色々
なことが可能となる。
特に都市の商業面を独占できるとなるのは大きいだろう。
232
第24話︵後書き︶
安定の短さ!
とりあえず、早急に更新できるように頑張るます。
233
第25話
﹁なぁ、商売を続けるのってここじゃないと駄目なのか?﹂
とりあえず疑問に思った事を聞いてみた。
﹁うーん・・・一応ここって一等地じゃない。固定客もそこそこ居
るしやっぱりここで商売を続けたいかなぁ﹂
﹁なら他の街に支店を出す気は無いか?﹂
﹁支店は出したいけど、そんなお金無いし・・・﹂
﹁なら、建物を貸すといったらどうだ?﹂
﹁・・・何を考えてるの?﹂
この時頭をよぎったのは店舗の一部を借りてワープポータルを設置
すれば良いのではないかという事である。
通常、ワープポータルを設置しているようなギルドは設置に掛かる
費用から大体が大手ギルドである。
しかし、大手ギルドといえども多くても3拠点しか保有していない。
なぜなら、大都市では建物を保有するのに掛かるコストが非常に高
く、コストに対して得られるメリットが少ないからだ。
逆に小さな村では設置しても得られるメリットが無い。
234
そのために、大体のギルドは前線−拠点−大都市と拠点を設置し、
結んでいる場合が多い。
ポータル自体はギルドメンバー以外にも使用料を取って開放されて
はいる。
しかしながら、ポータルが結んでいるのは一部の都市でしかない。
当然狩場の近くの町へと繋がるポータルがそうそう都合良くあるは
ずもなく、またあったとしても使用料が高く設定されていたりする。
そこに比較的低い使用料でポータルを設置すれば確実に人が通るだ
ろう。
そして、そこに店舗があれば売り上げが見込める。
しかし、店舗の経営は仕入れやら面倒なことが数多くあるため、押
し付けてしまってついでにギルドの事務等もやって貰えば楽が出来
るという寸法である。
ひとまず、これをオブラートに包んで光に伝える。
﹁ちょっと、考えさせて貰ってもいいかな・・・﹂
﹁そうだな、とりあえず小麦騒動が終わるまでは保留で良いよ。解
決したらまた聞くわ﹂
﹁ありがとう、そうして貰えると助かる﹂
235
その後はうわさ話などの情報を聞いていく。
するとその中に、多数のレア装備が質に出ているという話があった。
とりあえず後でチェックしてみるとしよう。
光と話終わった後、話に出ていた質屋へ向かう。
このゲームの質屋というのは現実のとはちょっと違って、オークシ
ョンのようになっている。
そのアイテムを担保に貸しても良い金額と利率を設定して入札し、
最も良い条件の者が債権者となる。
そして、債務者には債権者が入札した条件で資金が貸し出される。
債務者が返済をした場合は債権者に入札した金額+利息が返済され、
仮に返済されなければアイテムが債権者のものとなるシステムだ。
担保としたアイテムが消耗品であれば担保とした段階で使えなくな
り、装備であれば修理額相当の保証金を支払う事で装備が使える。
また、PKをされても担保にしている装備は奪われず、破損しそう
になると強制的に外れるようなシステムになっており、そこそこレ
アな装備を手に入れた者が破損しない為の保険として自分自身を貸
し手兼借り手として使っている場合もあるようだ。
236
会場は広場になっており、中央に受付があり広場を囲むように担保
とされたアイテムが展示されている。
そしてその一角にあったのが、大量の小麦である。
恐らくは大量に購入して吊り上げている連中が出したのであろう小
麦が山のように積み重なっていた。
そして、出品されている小麦の量はリアルタイムでじりじりと増え
ていた。
237
閑話 エイプリルフール用第26話
突然目が覚めた。
見えるのは、いつもの天井・・・何が起きたのだろう。
恐らく・・・というよりは確実に強制的にログアウトされたのだろ
う。それは間違いない。
しかし、強制的にログアウトされる理由はそう多く無い。
1つは大本であるサーバーが落ちた場合
ネットゲームであるから当然運営会社が用意したサーバーがデータ
の管理を行っている。
そのサーバーが何らかの原因でデータを処理できなくなった場合に
は強制的にログアウトの処理がされる。
2つめは、サーバーと通信を行う回線が切断された場合。
サーバと通信を行っている関係上サーバと通信が出来なくなればこ
れまた強制的にログアウトされる。
時折発生する瞬断︵極短時間の接続切れ︶では待機して再接続が行
われる事から、長時間・・・たとえば通信会社の回線工事等・・・
が行われていた場合がこれに当たる。
しかし、特に工事を行うという通知も来ていなかったから恐らくこ
238
れは無いだろう。
3つめはPCが何らかの原因で停止した場合である。
年に1回か2回は必ずOSの更新で自動的にPCが終了することが
ある。
しかしながら、パソコンのファンの音が聞こえるからこれは無いだ
ろう。
・・・・とりあえず公式サイトを見てみよう。
マウスを操作し、SEOの公式サイトを開くがやたらと重い。
恐らく、鯖に支障があり一斉に強制ログアウトさせられた事で公式
サイトを見るユーザーが多かったのだろう。
開くのにやたらと時間が掛かった。
そして、公式サイトを開くとトップページにはこう書いてあった。
﹃セカンドアースオンライン運営チームです。現在、サーバーの増
設・増強作業を行うと見せかけてキムチパティーしてますが、満腹
のためねちねちごろごろするための時間を取らせて頂きたいと思い
ます。その為、予定しておりましたサーバーオープン時間をキムチ
パーティーが終って一服した後に延期させていただきます。プレイ
ヤーの皆様におかれましては長時間にわたりご不便をおかけている
が1つ言いたいことがある﹁少しくらい待て、このSEO中毒が!﹂
。バイト生一同で普及作業を行っておりますので、ご理解・ご協力
239
の程よろしくお願いいたします。﹄
もう寝よう。
後日、公式サイトを見ると事件の顛末が書いてあった。
グダグダと書いてあったが一言で言うと清掃員が掃除の為にサーバ
のコンセントを抜いたらしい。
運営ェ
240
︵´・ω・`︶
閑話 エイプリルフール用第26話︵後書き︶
やあ
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、﹁また﹂なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この話が更新されたのを見たとき、君は、きっと言葉では言
い表せない
﹁ときめき﹂みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この話を書いたんだ。
じゃあ、注文を聞こうか。
※エイプリルフールネタです。後日正規の話と差し替え、この話は
閑話とするか削除するかどちらかの予定です。
元ネタ
http://wiki.livedoor.jp/niten︳
plus/d/%A5%D0%A1%BC%A5%DC%A5%F
3%A5%CF%A5%A6%A5%B9
より
キムチパーティー
http://ng−gross.wikiwiki.jp/?%
A4%AD#u05399c1
241
より
バーボンハウス
242
第26話
さて、ここで整理してみよう。
現在、小麦を買い占めているギルドが存在する。
そのギルドは小麦を担保にして金を借りている。
そして、金を返せない︵返さない︶場合は小麦を失うだけで済む。
さて、ここで考えたいのが小麦の購入値段よりも担保にして借り入
れた額の方が高いのかどうかだ。
恐らく・・・いや、確実に購入価格よりは高いだろう。
なにせ、買占めは価格の安い頃から始まるものだからだ。
通常、1,買占めは安い時に買う、2,買って行く事で価格を吊り
上る、3,高値で売り抜ける事、この3点が目的となる。
そして、現状に当てはめると2の価格を吊り上げる事は達成してい
る。
また、1の安い時に買うというのは仕掛けるとするならば前提条件
になる為達成しているだろう。
そして、擬似的にながらも質に入れるという形で手放すための布石
は打ってある。
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つまり、向こう側は既にある程度の目的を達成している訳だ。
ということは、ここに交渉の余地がある訳だ。
しかし、交渉しようにもそもそも相手側と話せるだけの伝手が無い
ときたものだ。
さて、どうしたものか・・・・
prrrrr
ん?光からのメールか・・・
書いてある内容は、﹃伝え忘れていたが、前に鑑定に出していた指
輪が戻ってくるが、鑑定師が伝えたい事があるから出来れば会いた
い。﹄という事らしい。
うーん・・・とりあえずはあれだ、光にコールして詳細を聞いてみ
よう。
早速光へ掛けてみる。
prr・・・﹃はいはい、待ってたよ﹄
待ってたかのように1コールで光が出た。
恐らく行動を読まれてるんだろうなぁ・・・そんな事を考えていると
﹃今、暇だよね?ちょうど鑑定師の人がうちに来ててね、出来れば
すぐ来てくれないかな?﹄
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﹁まぁ、良いが・・・お前完全に忘れてただろ?﹂
﹃ソンナコトナイデスヨ。じゃあ鑑定師の人には待ってて貰うから
早く来てね。﹄
﹁はいはい、了解了解﹂
さて、待たせるのも悪いしとりあえず光の店に行こうか。
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第27話
特に用事が無いのでとっとと光の店に向かう。
途中に露天を見ながらだが、露天を見るのは意外と楽しいものがあ
る。
モンスターのドロップ品やレアドロップ、プレイヤー製作のアイテ
ムや製作に必要なアイテム等々見ているだけでも面白いものだ。
ガラス瓶やガラス瓶に薬を詰めたポーションも売っているが、数も
少なくまた値段も高めである。
一応、ガラスは値段の高さから初期から生産が試みられ、またある
程度量産する手法が確立してきている。
しかしながら、建築資材やガラスの器具、調合した薬や作ったジュ
ースを入れる瓶など用途が多く行き渡らない状態らしい。
また、一部の生産者が生産方法を秘匿して独占的に生産を行ってい
るというのも価格が高い原因にはあるようだ。
そのためか、ポーションも量り売りをしている露天がちらほらと見
受けられる。
水筒等の容器に入れると、緊急時に叩く・ぶつけるなどの簡単な動
作で使用出来なくはなるが、戦いがひとだんらくしてから回復する
にはそれで十分なのだろう。
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そんなことを考えながら歩いているうちに光の店の前へと付いた。
とりあえず、中へ入ろう。
扉を開け中へと入る。
中ではいつものNPC店員と光、それと魔法使いのようなローブを
着た人物がいた。
扉を開けて店へと入ったことで向こうもこちらへ気づいたのだろう。
﹁あ、ちょうど来たようだね、奥へ行こうか﹂
光がそういって手招きをし、奥へと歩いてゆく。
ローブの人物も歩いて行く・・・とりあえず、付いていこう。
通されたのは応接室だった。
﹁あ、とりあえず座って、飲み物はコーヒーで良いよね?﹂
ソファーを勧められたので座る。
﹁あぁ、とりあえずコーヒーは砂糖多目で﹂
ローブの人物が答える、どうやら甘党らしい。
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﹁とりあえずブラックで﹂
まぁ、コーヒーなんて口を湿らせるだけのものだからな。
コーヒーが出てきてまずは紹介から始まる。
まぁ、私と光の紹介は今更だから飛ばそう。
﹁こちらは猫さん、今回鑑定をお願いしてた・・・何屋だっけ?ま
ぁ、多分なんでも屋みたいなもの﹂
﹁誰が猫だ!俺はシュレーディンガー。まぁ、猫のあれが元ネタで
はあるが、猫さんとは呼ぶなよ、シュレさんとでも呼んでくれ﹂
﹁猫さんは今話題の買占めしてるあのギルドのマスターでもあるん
だよ﹂
マスター・・・だって?
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n6674bd/
Second Earth Online
2013年6月26日20時38分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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