助成年度:平成 18 年度 [所属] [役職] [氏名] 岐阜県生物工学研究所 主任研究員 神山恵理奈 [課題] マイクロ・ナノバブルによる微生物および植物の水浄化能力の向上と 貯水池の水質改善に関する研究 [内容] 市街地近郊の貯水池では水質の悪化が進んでおり、その対策が求められている。近年、マイクロ・ナノバ ブルを利用して海水などの水質を改善する試みが行われているが、いまだ開発途上の技術であり、科学的裏 付けも少ない。そこで本研究では、マイクロ・ナノバブルの導入により微生物や植物の持つ浄化能力を高め て水質を改善することを目標として、ナノ多孔質フィルムを利用したバブル発生装置を貯水池に導入し、植 物生育、微生物群集および水質が受ける影響を調べた。まず、ギニアグラスを水耕栽培して植物生育への影 響を調べたところ、バブル発生装置に近い位置では生育阻害が見られたが、やや距離を置くことで生育促進 が確認された。そこで、模擬貯水池に、バブル発生装置と植生フロートを併設し、48 日間水質を調査した。 バブルの導入により大腸菌群数は対照池の 1/10 程度に減少し、さらに植生により EC は約 40%に低下した。 また、NH4-N 及び T-P 値の改善も認められた。実証試験池にバブル発生装置を設置し、180 日間(バブル発生 装置の運転は 90 日間)の水質調査を実施した。バブルの導入は、透視度、PO4-P,NO 2-N,NO3-N,EC 及び大腸菌 群数の各値を低下させた。一方、COD,SS 及び Chl a は、バブル導入開始後 30 日を経過した頃からむしろ悪 化した測定値を示した。同時期に貯水池の表層に植物プランクトンの浮遊が観察されたことから、バブルの 導入が植物プランクトンの増殖を促進し、これが原因で COD,SS 及び Chl a の増加が起こったと考えられる。 これらの結果から、マイクロバブルの導入は植物および植物プランクトンの成長を促進し、水質指標の数項 目を改善させる効果があることが明らかになった。増殖した植物プランクトンは水中の窒素やリンを吸収し ているため、スカム回収装置などを併設し、浮上した植物プランクトンを除去することで水質浄化につなが ると考えられる。
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