ワットの発明や工夫 (経験のみに基づく) 科学技術史 第11回 産業革命の進展 (1) 複動機関.蒸気をピストンの上方と下方から 交互に導入.全サイクルを通じて動力を出し つづけることができる. (2) 太陽・惑星歯車装置.クランクの特許を迂回. (3) 平行運動連結器.複動機関の押しや引きの 力をビームの一端に伝える. (4) ガヴァナー(遠心調速器).発明ではない. 2008年6月19日 講師: 詫間 直樹 http://www.takumas.com/ [email protected] 1 3 複動機関 5 2 太陽・遊星歯車装置 4 ワットの三棒運動 1 8 ガヴァナー(遠心調速器) 蒸気機関の他の産業への影響 製鉄業における生産方式の変化 蒸気機関等の機械を鉄で造るようになり, 鉄の需要を喚起し,製鉄業の発達を促が した. イギリス中の木が刈られ木炭が採れなくな る ⇒石炭の使用. コークス高炉の出現(1713年,ダービー父子) 石炭は,硫黄やリンを含むため,それから作ら れるコークスも不純物が多かった. 蜂巣炉による脱硫コークス炉.蒸気動力によ る送風機(1776). ヘンリー・コートによるパドル精錬炉(1783~ 1784). 1790年頃には木炭高炉を上回る. 9 鋼: 炭素が重量比0.3-2.0% ダービー親子のコークス高炉の遺跡(ピラミッド状) 出典: 石田正治(愛知県立豊橋工業高等学校教諭) 10 12 http://www.tcp-ip.or.jp/~ishida96/museum/industry_museum_in_EU.htm 2 機械による機械の製作 精密工作機械 1763年以前,シリンダの製法は孔ぐりではなく,鋳造で あった. 1775年,ウィルキンソンによる中ぐり旋盤, 1779年,モーズレーによる全金属製送り台付ねじ切り 旋盤, ねじやピストン等あらゆる種類の機械部品の加工 様々な工作機が造られ, マニュファクチュア的限界を打ち破り, 機械性大工業への技術的基盤を形成した. 14 3 モーズレー 化学革命について 18世紀:地場産業において化学の経験的知識. 燃焼,蒸留,昇華による分析 ⇒ 溶解,溶液中の反応,塩の析出を用いた分析. 硫酸,ソーダ,漂白剤( 織物産業の漂白過程). シュタール:フロギストンによる燃焼の説明. プリーストリ:脱フロギストン空気.(後の「酸素」). 18世紀末,ラボアジェ 燃焼を物質と「酸素」の結合として説明した. 1789年,『化学原論』を出版.33元素の表. 原子論・分子論が完成されるのは,19世紀後半. 21 繊維工業における生産量増大 がもたらしたもの 仕上げ:漂白作業. 従来は,灰汁と天火干し:6週間から半年. 漂白工程を天候に対する依存から解放させたのは, 硫酸と塩素による化学さらしである. フランス王室染色マニュファクチュア検察官ベルトレが 1785年に塩素ガスの漂白作用を発見. ワットを経由して,グラスゴーの漂白事業者テナントが 「さらし粉」を発明した (消石灰に塩素を吸収させる.次亜塩素酸カルシウム, 水酸化カルシウム,塩化カルシウム等の混合物). 漂白過程が1週間程度になった. 22 硫酸の製造 ローバックの鉛室法 バーミンガムの医師ローバックは,貴金属精錬 用の硝酸を供給する目的で,硫酸を鉛室法で製 造していた. エジンバラ大学の土壌科学研究者ホームが 硫酸漂白法を発見. ローバックは,鉛室を30基建設(1746年). 原理:硫黄 SO2を硝石 KNO3から三酸化硫黄 SO3 をつくり,これを水に溶かした. 23 4 ソーダの生産 従来の漂白剤であり,石鹸・ガラス製造用の原料でも ある木灰(植物アルカリ)は,品不足を来たし,価格が 高騰. 1775年,フランスアカデミーが木灰にかわるソーダの 製造法の発明に懸賞金をかけた. オルレアン公の侍医を勤めたルブランが,炭酸ソーダ を製造するルブラン法を発明.1791年,工業的にソー ダを製造し始めた. イギリスに伝わり,テナントが実現に成功. 26 繊維工業の染色工程の影響 染色用の無機化学薬品への需要を強め, 酸・アルカリ大工業が1820年代のイギリス で成立した. 28 生産形態の変革の連鎖 繊維工業という一生産部門から始まった生産形態 の変革が, 次々と関連部門における生産形態の変革を促がし, やがては一国の産業全体を変貌させるに至った. 蒸気機関 ⇒ 鉄の需要 ⇒製鉄業 繊維工業 ⇒ 繊維の漂白・染色 ⇒ 酸アルカリ大工業 運輸・通信といった社会インフラ部門も発達した⇒ 蒸気機関車の発明,鉄道の建設.電信機. 29 5
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