ロシア情勢 (2012 年 8 月モスクワ事務所) - JOGMEC 石油・天然ガス

更新日:2012/09/24
JOGMEC モスクワ事務所
大木 雅文/荒井 智裕
公開可
ロシア情勢 (2012 年 8 月モスクワ事務所)
1.ロシア動向:
(1)ロシア情勢(全般)
①原油価格見通し、下方修正
・ 経済発展省のクレパチ次官は 22 日、同省が 2012 年のウラル原油平均価格の見通しを
115USD/BBL から、109USD/BBL に引き下げたことを明らかにした。年初からの平均価格
は 110USD/BBL であるが、年平均の見通しについて今のところ 109USD/BBL と想定。
<出典:
The Central Bank of the Russian Federation>
②ロシアとシリア、エネルギー協力
・ シリア政府代表団がロシアを訪問。3 日には両国がエネルギー協力について合意したこと
が発表された。ロシアに原油を供給する見返りとして、シリアはロシアからガソリンなどの石
油製品の供給を受けることとなる。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデ
ータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等
に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
③ロシア、WTO 加盟
・ 21 日、ロシアは正式に 156 番目の WTO 加盟国となった。ソ連崩壊後間もない 1993 年に
WTO の前身である関税貿易一般協定に加盟申請を行ってから加盟まで、約 19 年を費や
したこととなる。
・ 今回の正式加盟に伴い、ロシアへの輸入関税率の上限(譲許税率)は現行の 10%から
7.8%に、段階的に引き下げられることとなる。
(2)ロシア情勢(石油ガス産業)
①9 月 1 日からの原油・石油製品輸出税を引き挙げ
・ 4 月以降引き下げられていた原油輸出税は、9 月は約 53.9USD/BBL と 15%強引き上げ
られた。東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田に適用される特典輸出税についても、約
26.2USD/BBL に引き上げられた。
・ 9 月の石油製品輸出税は 259.9USD/t、内、ガソリンについては 354.4USD/t に設定さ
れた。
<参考:原油及び石油製品輸出税の推移>
輸出税
原油(USD/t)
原油(USD/BBL)
減税特典原油(USD/t)
2009 年
平均
2010 年
平均
2011 年
平均
上半期平均
2012 年
8月
2012 年
9月
179.6
273.7
408.9
400.8
336.6
393.8
約 24.6
約 37.5
約 55.3
約 57.8
約 46.1
約 53.9
87.68
186.1
212.4
148.4
191.3
約 11.9
約 25.2
約 29.1
約 20.3
約 26.2
278.4
222.1
259.9
379.7
302.9
354.4
非課税
減税特典原油(USD/BBL)
軽質石油製品(USD/t)
133.1
149.1
274.1
重質石油製品(USD/t)
71.7
80.3
208.2
2011 年 5 月~
388.6
内、ガソリン(USD/t)
2012 年
②原油生産・輸出統計(エネルギー省発表データ)
・ 8 月、ロシアの原油、ガス・コンデンセート生産量は 4389 万 t(約 32.51 億 BBL)で前年同
時期比、1%増。
・ 8 月、ロシアの原油輸出量は 2038.6 万 t(約 1.17 億 BBL)で前年同時期比、0.9%増。
③天然ガス生産・輸出統計(エネルギー省発表データ)
・ 8 月、ロシアの天然ガス生産量は 449.6 億㎥(約 1.62.TCF)で、前年同時期比 1%減。内、
Gazprom による生産は 320.3 億㎥(約 1.15TCF)、2.4%減。
・ 8 月、ロシアの天然ガス輸出量は 120.6 億㎥(約 0.43TCF)で、前年同時期比 9.3%増。
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④ロシア、大陸棚石油ガス生産、大幅増産を計画
・ メドヴェージェフ首相は 2 日の閣僚会議で、2030 年に向けて大陸棚での原油生産を現在
の 1300 万 t から約 5 倍の 6620 万 t へ、ガス生産を 570 億㎥から約 4 倍の 2300 億㎥へ
増産させる計画であると述べた。政府内で検討中のロシア連邦長期大陸棚探鉱および鉱
物資源開発プログラムに、このような数字がリファーされている。同首相は、同プログラムの
実現による経済効果は 8 兆 RUB に達すると指摘した。
・ また同首相は、北極海開発にはインフラと、必要な資金が不足しており、連邦予算だけで
解決できるものではないとして、PPP(Public Private Partnership)のメカニズムを利用する
ことが不可欠であると述べた。
⑤ハンティマンシイスク自治管区、環境調査、原油流出事故件数 Rosneft がトップ
・ 4 月に天然資源環境省のトルトネフ前大臣がハンティマンシイスク自治管区を訪問して行っ
た環境調査の結果を報じる新聞報道によれば、2009 年から 2011 年の 3 年間で原油流出
事故件数は 4800 件から 3600 件と、4 分の 1 ほど縮小された。改善幅がよかったのは
Lukoil で、117 件から 46 件に縮小、一方 Rosneft は事故件数減少率は約 20%、事故件
数では最悪となっている。
・ 2011 年の同自治管区における Rosneft の事故件数は 2727 件と、全事故件数の約 4 分
の 3 を占め、17 件しか事故を起こしていない Surgutneftegaz の 160 倍。事故件数第 2 位
は、800 件の TNK-BP、第 3 位は 46 件の Lukoil。
・ 2011 年の環境保護対策への投資は、TNK-BP が第 1 位の 261 億 RUB、その後に 211
億 RUB の Lukoil、204 億 RUB の Surgutneftegaz が続く。ただし以前から環境保護対策
に重点を置いてきたのは Surgutneftegaz で、同社は毎年 200~210 億 RUB を投じてきた。
他社は 2010 年ごろからこの分野への投資を増やし始めたとのこと。PL の老朽化が進む中、
原油流出に伴う罰金は少額である一方、事故防止への投資に対する経済的刺激が乏しい
ことが問題とされている。
⑥燃料エネルギー分野の民営化に関するセーチン構想、ドヴォルコヴィッチが批判
・ セ ー チ ン 現 Rosneft 社 長 が 副 首 相 時 代 に 提 唱 し て い た
Rosneftegaz を関与させての電力会社の民営化計画に関して、大
統領直属の燃料エネルギー産業委員会の委員長職を引き継いだド
ヴォルコヴィッチ副首相が 10 日、政府はそれを不適切とみなす旨の
内容の書簡をプーチン大統領にあてて提出した、との報道があっ
た。その理由として、セーチン計画は事実上の民営化であり現行法
に違反する他、連邦送電会社と地域間配電会社を合併するために
少数株主からの株買い取りや債務の返済のため、現在
Rosneftegaz にはない 4000 億 RUB の資金が必要となることを挙げ
<写真出典:RosneftHP 及びロシア政府 HP:
ている。
http://www.rosneft.com, http://government.ru >
・ ドヴォルコヴィッチ副首相は代替として、地域間配電会社を連邦送
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電会社に統合して統一株に移行させる、あるいは地域間配電会社
の国家保有株を連邦送電会社の資本金に入れるとの案を提示。
⑦プーチン大統領、地下資源法改正法案を下院に提出
・ プーチン大統領は 22 日、地下資源法その他法令の改正法案を国会下院に提出した。連
邦的意義を有する地下資源鉱区利用権の供与をオークション形式のみで行われるように
するもので、地下資源法、また関連してロシア連邦大陸棚法、ロシア連邦ガス供給法への
改正を含んでいる。10 月に審議の見通し。
⑧グリーンピース、北極圏石油開発反対の抗議活動
・ グリーンピースの活動家 6 名が 24 日、ペチョラ海にある
Gazprom のプリラズロムノエ油田で海上掘削プラットフォーム
によじ登り、北極圏における石油開発に抗議した。同油田で
は、年内の生産開始を目指して掘削中。グリーンピース側
は、北極圏の自然破壊の恐れがあるとして、中止を求めてい
<上写真出典:GreenPeaceHP:
http://www.greenpeace.org >
る。リグでは上から消火用の水を放水して応戦、約 15 時間後
に活動家たちは自主的に退去した。
・ グリーンピースは、27 日にも抗議活動の一環として、労働者の交代要員を搬送する船のリ
グへの接岸を阻止しようと、船を取り囲む行動も行った。10 カ国から 14 名の活動家が参加
したとのこと。
⑨Rosneftegaz 会長人事に関して、大統領府と政府が対立か
・ Rosneft 株 75.2%と Gazprom 株 10.7%を保有する Rosneftegaz の 2012 年第 2 四半期
報告書によれば、同社取締役会会長にセーチン Rosneft 社長が返り咲いた。6 月 30 日付
で取締役会メ ンバー が変更されたとのこと。セーチン氏は 、2006 年~2011 年まで
Rosneftegaz 取締役会会長を務めていたが、当時メドヴェージェフ大統領の、閣僚が自分
の管轄分野の国営企業の役員を務めることを禁じたのに伴い、退任していた。
・ この件が報道された後、首相報道官がこの任命に関する政府指示書は署名されていない、
と発言して物議をかもしている。プーチン大統領が、大統領就任前の 5 月 6 日に、この任命
への合意について当時首相として命令書を所英したとも報道されている。いずれにせよ、
大統領府と政府との間で、意見が統一されていないことが露呈したといえる。
(3)東シベリア~太平洋原油 PL(ESPO)関連
①鉄道タンク車の渋滞で、ESPO 原油輸送に遅れ
・ Transneft のトカレフ社長は 1 日、ロシア鉄道ヤクーニン社長に宛てて、コジミノ港に向けた
最後の積み替え拠点であるグルゾヴァヤ駅でロシア鉄道が設定した積み替え量の制限が
原因で、輸送スケジュールに遅れが出ているとのクレームの書簡を送付した。Transneft が
輸出義務を遂行するためには 1 日 12 本の貨物列車からの積み出しが不可欠なところ、ロ
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
シア鉄道が 1 日 7~8 本に制限を設定したために、ESPO 原油を積んだタンク車が渋滞して
いるとしている。他方、ロシア鉄道側は、積み荷の処理準備が遅れていることに加え、空荷
のタンク車が適正数よりも 1 千両も多いことが渋滞の原因として、Transneft に対して、不要
なタンク車を該当区間から撤去するよう求め、Transneft も 8 月に 600 両、9 月に 400 両を
撤去する計画を立てた。現在、ESPO 原油輸送に大きな支障は出ていない。
・ Transneft は、この状況を踏まえ、今年 12 月末に予定されている ESPO 第二段階の操業
開始を早める可能性を検討する、としている。また 3 日には、ロシア鉄道を相手取って、輸
送遅れの損害賠償を求める訴えをザバイカルスク地方調停裁判所に起こした。2 件の訴訟
の要求額合計は、5380 万 RUB。審理は 9 月下旬に行われる見込み。
・ Transneft は 29 日、ESPO 原油 PL 第 2 段階の操業開始後も、タンク車 1000 両を保有す
る子会社の売却を計画していない、と発表した。東向けに鉄道輸送を残し、当初段階では
コジミノにむけて、PL で約 1800 万 t、鉄道で 300 万 t を輸送する計画であるとしている。
②Gazprom、コヴィクタから中国への LNG 供給を検討
・ Gazprom は、中国への天然ガス供給計画に加え、コヴィクタで生産されるガスを使った小
規模な LNG 供給のオプションを検討中で、このプロジェクトの JoI (Justification of
Investment) 準備をサラトフの研究所に発注した。
③Itera、ブラーツク・ガスコンデンセート鉱床を売却か休止へ
・ ブラーツク・ガスコンデンセート鉱床のライセンスを保有する Bratskekogaz の株 78.9%を保
有する Itera は、同株売却について、Gazprom との交渉を急ぐ意向。交渉がまとまらない場
合には、同鉱床の井戸を休止させることも検討している、とのこと。
・ 同鉱床の確認埋蔵量は、ガス 108 億㎥、ガスコンデンセート 82 万 t。天然ガスの計画生産
能力は、4.3 億㎥と設定されている。
・ 同鉱床からのガス供給は 2007 年に開始された。定期的なガス供給が開始された 2009 年
には Gazprom は公式に、Bratskekogas 買収の妥当性を検討するとして、参加の研究所
に分析を指示したが、結局売却交渉はまとまらなかった。2011 年には、同鉱床からブラー
ツク市までのガス PL 第 2 ラインが建設される計画だったが、着工されておらず、ガス供給先
が少ないために、Bratskekogas は生産を制限している。Itera はこのプロジェクトに 20 億
RUB 以上を投資済みであるが、売却交渉がまとまらない場合には、それを特別損失として
計上し、さらに 1000~1500 万 USD を投じて井戸の休止を行う可能性がある。
④ESPO-2、アムール州区間の注油を完了
・ Dalnefteprovod は 13 日、アムール州内を通過する ESPO 原油 PL 第二段階の 812km
の区間への注油を完了したと発表した。PL の敷設および稼働を困難とする高低差が大き
い地形で複数の河川を横切るルートであるが、作業は計画通り問題なく進められたとのこ
と。
・ 次の 2 区間(413km)の注油は 8 月末に開始される予定。
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(4)極東・サハリン
①ExxonMobil、サハリンから北海道へのガスPL検討
・ ExxonMobil がサハリンから北海道までのガス PL 建設の可能性に関心を示しているとの報
道があった。ExxonMobil がオペレータである、サハリン-1 プロジェクトの第 2 フェーズで生
産されるガスの輸送案として日本側と協議したとのこと。先の報道では、日本側のイニシア
チブで同様の交渉が Gazprom との間で行われたが、同社マルケロフ副社長は、この案を
詳細に検討するのは、極東での LNG プロジェクトのプライオリティが決定してからだ、とし
た。
(5)ロシア石油ガス会社
Gazprom
・ Gazprom は 3 日、サハリン-3 枠内でキリンスキー・ガスコンデンセート交渉での生産井掘削
に着手したと発表した。探鉱井の一つを生産井に移行させる他、年内に、もうひとつの生産
井建設を開始する計画。同鉱床の埋蔵量は C1+C2 で、ガス 1360 億㎥と見込まれている。
・ Statoil が 7 月末に、Shtokman Development AG の自己シェア (24%) を主要株主であ
る Gazprom に返納したことが明らかになった。2012 年 3 月に期限を迎えた株主間の枠組
み協定で、その有効期間中にシュトクマンプロジェクトに関して最終投資決定が採択されな
い場合には、Gazprom は、Shtokman Development AG における外国株主のシェアを要
求する権利を持つと定められていた。期限を 7 月 1 日まで延長したものの、決定まで至らな
かった。投資分に関しては、株主間協定で返還されないとの規定があったと報道されており、
Statoil は約 3.4 億 USD の損失を計上した。もう 1 社の外国株主 Total は今のところ株を返
却していないが、情報筋によれば、Gazprom 側もそれを強く要求しておらず、Total が株を
返却する見込みも特にないとのこと。
・ Gazprom の役員チェレパノフ氏(ガス・ガスコンデンセート・石油生産部長)は 29 日、外国
パートナーの選択は 1 カ月間に行う、シュトクマンの最終投資決定は 2014 年以前には行
われないだろうとの見込みを示した。
Rosneft
・ Rosneft は、イラクの西クルナ 1 プロジェクトのシェア取得について、Exxon Mobil と交渉中。
情報筋によれば、交渉はかなり進んだ段階にあるとのこと。
・ Rosneft と Exxon Mobil は、北極海での掘削リグプラットフォームの建設について、テンダ
ー を 実 施す る 。 戦 略パ ート ナ ー とし ての 北極 海 大陸 棚 共同 開発の 一 環で 、 両 社 は
2016~2017 年にカラ海の大陸棚開発に関して、最終投資決定を行う。
・ Rosneft と Exxon Mobil はまた、カラ海の東プリノヴォゼメリスキー-1 および 2 鉱区で、ライ
センスで規定された予定より 1 年早く地質探鉱作業に着手した。両社は戦略パートナーとし
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
て、東プリノヴォゼメリスキー-1、2、3 鉱区を共同開発する。今回の作業は 2012 年 10 月ま
で行われるもので、1 鉱区では 3 千 km2 の 3D 震探、2 鉱区で 5300km にわたる 2D 震探
を行う。
・ Rosneft は、Itera におけるシェアを 6%から 51%に増加させ、Itera をベースとしたガスの合
弁会設立のプロセスが終了。更に、Kynsko-Chaselskoe Neftegas の株 100%と、1 億
7340 万 USD を拠出し、合弁会社におけるシェア 51%を取得した。以前の報道では、
Rosneft がさらにハランプルスコエ・ガスコンデンセート田も拠出するとされていたが、事実
は今のところ不明。また Itera がトルクメニスタンに持つ大陸棚鉱区や、ラトビア及びエストニ
アのガス資産が新弁会社に含まれるのかどうかも明らかではない。新合弁会社の国際基準
による埋蔵量は、ガス 3724 億㎥、液体炭化水素が 1570 万 t とされている。
・ ONGC は Rosneft に対し、Rosneft が外国企業と行う北極海の石油ガスプロジェクトへの
参入に対する関心を通知した。同社は 5 月にも同様の書簡を送っている。Rosneft は北極
海において、3 つの外国企業と合意している。ExxonMobil とはカラ海の 3 ライセンス鉱区、
Eni とはバレンツ海の 2 鉱床、また Statoil とはバレンツ海およびオホーツク海の鉱床を対象
としている。
NOVATEK
・ NOVATEK 子会社 Novatek Gas &Power は独 EnBW と、年間約 20 億㎥、10 年間のガ
ス供給契約を締結した。ガス供給は、2012 年第 4 子半期に開始される予定。1 カ月前
EnBW は、プレスリリースで、取引先社名を明かさずに、年間 19 億㎥、約 6 億 EUR のガス
購入契約締結を発表していた。NOVATEK のジェトウェイ財務部長は 14 日、今回の契約は
Gazprom との輸出エージェント契約を想定しない、トレーディング契約であると述べたが、
ドイツ側に供給するガスをどこから調達するかについては言及していない。
・ ロシアでは 2006 年以降、Gazprom および同社の 100%子会社にガスの独占的輸出権が
与えられている。以前 NOVATEK 子会社 Yamal LNG は Gazprom Export と、ヤマルで精
算される液化ガスの輸出に関して、エージェント契約を締結した。この契約では NOVATEK
の潜在購入者のオファーより悪くない価格の範囲で、Gazprom Export が輸出量の半分ま
でを買い取る権利を持つとされている。同社はこれまで何度も、独立系のガス会社にガスの
輸出権を与えるべきとの主張を行ってきており、今回の契約は、将来的なガスの直接輸出
を見越して、西側市場での顧客確保、取引経験の蓄積や市場理解を深めることを目的とし
た準備であろうとの見方もある。
・ NOVATEK は 23 日、E.ON Russia が所有する 4 発電所と Fortum の発電所に対する
2013 年から 2027 年までの長期ガス供給契約を締結した。契約総額 8480 億 RUB と評価
される。合計 5 件の発電所への供給量は合計 1800 億㎥を超える。
LUKOIL
・ Lukoil が発表した国際会計基準による報告書によれば、同社は Nariyanmarneftegaz に
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おける ConocoPhillips のシェア 30%を約 6 億 USD で買収し、100%子会社化した。また
Lukoil グループは、ConocoPhillips との間で、2012 年 6 月 30 日時点で 14.6 億 USD、
2038 年までに返済のクレジット契約を有している。この金額には、ConocoPhillips が
Nariyanmarneftegaz に投資した 13.1 億 USD が含まれており、契約により返済利子は 6.8
~8%に固定されている、とのこと。Nariyanmarneftegaz はネネツ自治管区に 7 つの生産
ライセンスを持っており、生産原油をバレンツ海岸にある自前のワランデイ海洋ターミナルま
で PL で 輸 送 、 そ こ か ら 輸 出 し て い る 。 Nariyanmarneftegaz の シ ェ ア 売 却 に よ り 、
ConocoPhillips がロシアに持つ資産は Polar Light(Rosneft との合弁)の 50%シェアのみ
となった。
Gazpromneft
・ GazpromNeft のヤコブレフ第一副社長は 13 日、TNK-BP と対等ベースで共有する
Slavneft の運営に関して 2013 年から新しいスキームに移行すると述べた。2 社が、プロジ
ェクトごとのオペレーターの役割を分配し、支配権を持つ子会社の経営についてビジネス
プランの形成、遂行、社長や経営陣を任命する権利を持つことになる。第 2 の株主の参加
も、積極的な取締役会の活動を通じて、保証されるとのこと。GazpromNeft は、メッソヤフス
キー・プロジェクトや、ヤロスラヴリ製油所を、TNK-BP はクユンビンスキー・プロジェクトや
Megionneftegaz を担当する。同副社長は、これは Slavneft 売却への準備ではないことを
強調した。
(6)旧ソ連諸国関連
ウクライナ
・ 国会大陸棚のスキフスキー石油ガス鉱区のPS契約に関する入札で、ウクライナの環境天
然資源大臣は15日、Exxon Mobilが率いるコンソーシアムが落札したと発表した。同コンソ
ーシアムには、Exxon Moeil Exploration &Production Ukraine B.V.(40%)の他、Shell
(35%)、OMVのルーマニア登記子会社Petrom(15%)とウクライナ国営Nadra Ukraina
(10%)が参加している。PS契約締結時にコンソーシアムは3億2500万USDを支払い、地
質探鉱作業に4億USDを投資する。スキフスキー鉱区の天然ガス予想生産量は30~40億
㎥。
・ Kogas は 29 日、ウクライナの投資・ナショナルプロジェクト運営庁と、LNG 海洋ターミナル
建設プロジェクトにおける協力覚書に調印した。ウクライナ政府は 8 日に、年間 100 億㎥の
処理能力を持つ LNG ターミナル建設の F/S を承認していた。プロジェクト費用は、7 億
3500 万 EUR。さらに 1 億 2100 万 EUR をタンカーのための海底チャンネル建設に、また
1 億 1300 万 EUR をウクライナのガス輸送システムへのガス供給のための PL 建設に投じ
る計画。
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
・ ウクライナ政府は 23 日、国営 Naftogaz Ukraine に対し、中国開発銀行の総額 36 億 5600
万 USD のクレジットライン開設を承認した。この資金は、天然ガスをウクライナの石炭と置き
換えるプロジェクトの実現にあてられる見込み。ウクライナのエネルギー・石炭産業省と中国
国家開発銀行は今年 7 月に、協力に関するプロトコルに調印していた。
・ ウクライナのアザロフ首相は 21 日、9 月の CIS 自由貿易地域条約発効後、ロシアの PL シ
ステムを利用した中央アジアからのガス輸送に関して合意を得られるものとの期待を表明し
た。ロシアからのガス輸入に頼るウクライナは、2009 年のガス購入契約を、価格が高すぎる
として修正を求めているが、Gazprom はガス料金の引き下げと交換に、ウクライナのガス輸
送システムへのコントロールを得たい考えであるため、ウクライナ側は他のガス供給者を必
要としている。ヤヌコヴィッチ大統領も 24 日、黒海大陸棚に大規模な埋蔵量やシェールガ
スを持つウクライナは、外国ガス供給者への依存を脱却するとの確信を示した。
カザフスタン
・ カザフ中部のアタスと中国新疆ウイグル自治区阿拉山口(アラシャンコウ)を結ぶ原油幹線
PL を操業する Kazakhstan-China Pipeline は 17 日、1t・1 千 km あたりの輸送タリフが 9
月 1 日から、カザフ産石油に対しては、3818KZT(約 25.7USD)、 ロシア産石油に対して
は 1673.89KZT(約 11.2USD)に設定されたと発表した。またカザフスタン石油省は、中国
向け PL のロシア企業の割当量を本年末まで 25 万 t/月に設定したとのこと。情報筋によれ
ば、今のところトランジット契約は締結されていないが、ロシア側から意向表明の書簡がある、
との由。2009 年までは Gazprom Neft と TNK-BP が同 PL を利用していたが、同年中国側
が契約を破棄したため、2010 年以降、ロシア産の石油輸送は行われていない。今夏行わ
れた露中エネルギー対話の中で、同 PL による TNK-BP と GazpromNeft の原油輸送再開
の可能性について討議された。Transneft は、ロシアからカザフスタンへの石油輸送は、輸
送量の取りきめが行われた政府間協定に基づいて行われていることを指摘した。
アルメニア
・ ロシアのプーチン大統領とアルメニアのサルグシャン大統領は 8 日モスクワで会談し、ガス
料金に関する合意に達した。会談後の記者会見でサルグシャン大統領は、あらゆる相互協
力の可能性について討議する中で、ロシア産ガスの価格についても現実的な価格に基づ
いて相互許容可能なアプローチを見出した、と述べた。同大統領は、ロシア産のガスはア
ルメニアにとってなくてはならないものと強調した。
ベラルーシ
・ 7月初めにミンスク付近で、スウェーデンの会社がチャーターした軽飛行機から言論の自由
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデ
ータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等
に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
を求めるビラを付けたクマの縫いぐるみをばらまいたことから悪化していた両国関係は、スウ
ェーデンの駐ベラルーシ大使の追放、在スウェーデンのベラルーシ大使館員全員の本国
引き揚げ、ベラルーシ側からミンスク駐在のスウェーデン外交官全員の退去通告と、悪化の
一途をたどっている。
(7)欧州関係
①South Stream ガス PL
・ Gazprom は、South Stream ガス PL プロジェクトに関して 150 億 EUR の建設作業を、
Argus Pipeline に発注したが、同社は近く、Stroytransgaz と合併するとみられる。現在、プ
ーチン大統領に近いビジネスマン・チムチェンコ氏が Stroytransgaz の 80%シェアを保有、
Stroytransgaz は Argus Pipeline の 30%シェアを取得する見込み)。
・ Gazprom と Bulgarian Energy Holding EAD は 28 日、ブルガリア国内での South Stream
ガス PL プロジェクトの実現に関するプロトコルに調印した。この文書では、South Stream
からブルガリアのガス輸送システムへの接続点を定め、今後のプロジェクト発展の手順を定
義している。また両社は、11 月 15 日までに South Stream に関する最終投資協定に調印
することで合意した。
②Trans Adriatic Pipeline(TAP)
・ TAP 建設プロジェクトの参加社(EGL、Statoil、E.ON Ruhrgas)とシャーデニズコンソーシ
アム(BP、Statoil、SOCAR、Lukoil、NICO、Total、TPAO)は、2013 年中に予定される、ア
ゼルバイジャンから欧州へのガス輸送ルート選択の最終決定までの間、TAP プロジェクトの
業務を進める資金の手当てに関して合意した。同時に今回の合意では、TAP プロジェクト
の最大 50%までのシェアをシャーデニズコンソーシアム株主が取得するオプションが与え
られた。
(8)日露関係
石油・天然ガス日露協力ワーキンググループ会議
・ ロシアエネルギー省は、22 日に東京で行われた石油ガス分野協力日露ワーキンググルー
プ第 2 回会議の結果報告の中で、Rosneft と三井・丸紅が、沿海州ナホトカでの石油化学
コンビナート建設への参加について交渉中である、と発表した。石油分野における 2 国間
協力に関する討議において、双方は、ナホトカの石油化学コンプレクスの第一フェーズ建
設プロジェクトにおける、Rosneft によるパートナー選択の過程で、三井及び丸紅の参加を
歓迎した、としている。第一フェーズでのパートナーは第二フェーズで優先権を持つことに
なるという。また双方は、イルクーツク州のライセンス鉱区の共同開発に関して Rosneft と
Inpex・三井間で行われている交渉を迅速に進めることの重要性を指摘したとのこと。
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に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2. その他
①ロンドン五輪柔道で、ロシア大健闘
・ ロンドンオリンピックの柔道で、ロシア男子が初の金メダルを
獲得後、大躍進。最終的に、金メダル 3・銀メダル 1・銅メダル
1 という好結果を残した。男子 100 キロ級の決勝は、黒帯を持
つプーチン大統領も観戦。ロシア、ダゲスタン共和国出身の
ハイブラエフ選手が一本勝ちすると思わず立ち上がって万
歳。畳から下りてきた選手に駆け寄って抱き合い祝福した。
・ 1980 年にモスクワで行われたオリンピックの金メダリストであ
<写真出典:クレムリン HP:
るイタリア人のガンバ監督への賛辞が広がっている。
http://kremlin.ru >
②政権批判の女性バンドに、懲役 2 年の判決
・ ロシア大統領選挙を前にした今年 2 月、モスクワにあるロシア正教会の救世主大聖堂内で、
「マリア様、プーチンを追いだして」などとうたい、フーリガン行為で逮捕・起訴された女性パ
ンクバンドの 3 人について 17 日、懲役 2 年の実刑判決が言い渡された(求刑 3 年)。判決
文では、3 人が神を冒涜し、信者の宗教的感情を傷つけ、社会的秩序を乱したとしている。
・ 事件前には無名だったバンド Pussy Riot は、政治的圧力を受けたとして、ロシア国内の反
体制勢力の応援を受け、マドンナやポール・マッカートニーなど、世界的なアーティスト達
からも連帯の意思表示を受ける有名人となった。国内では、有名になりたいための行為、
反体制派のやらせなどとの冷めた見方や、西側から表現の自由を阻害するものとして政権
批判が盛り上がるのは必至であるにもかかわらず、このような事態を許す政権側の意図は
何なのか、という疑問も取りざたされている。
・ 一方、逮捕・起訴の根拠が宗教的冒涜とされている中、ロシア正教会側は、厳しい刑は神
も望むところではないが、民主主義国家たるロシアでは政治と宗教は独立しており、我々が
指示をするべきことではない、という立場を取っている。
③ユーコス事件の重要人物レベジェフ氏の刑期を減刑
・ ベリスク市の地区裁判所は8日、ホドルコフスキー元Yukos社長と並ぶユーコス事件の重要
人物である、メナテップ銀行のレベジェフ元会長の刑期を3年4カ月短縮するとの決定を行
った。確定すれば元会長は来年2月にも刑期を満了することとなり、ホドルコフスキー元社
長の刑期にも影響を与える可能性が出てくる。昨年12月に刑法が改正され、マネーロンダ
リングの刑期が最大10年から7年に引き下げられたことを考慮したもの。二人は2003年に
逮捕され、2005年に懲役9年の実刑判決を受け、さらに昨年、追起訴の上、懲役13年が確
定していた。
以
上
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