自閉症児の理解と教育 (txt) 117KB - 和歌山大学

授業資料
I.発達と教育(4)
広汎性発達障害
和歌山大学教育学部
教授
江田 裕介
自閉症児の理解と教育
1.自閉症の理解
自閉症
①
②
③
④
⑤
(Autism)
1943 年
カナー(Kanner, L.)が最初に報告
人間関係の樹立の困難
同一性保持の異常な欲求
言語を目的利用することの障害
特徴的な物的興味(光るもの、回転するもの)
良好な潜在知能
・・・・この特徴は現代の自閉症観とは異なる
カナー自身は、自閉症児の特徴を小児統合失調症(分裂病)とは区別して独自に特徴を記
述した。しかし、"Autism"は当時の統合失調症の概念であり、当時は精神病の一種という
観点で捉えられた。その結果、小児統合失調症の一種と予測され、この名称が普及した。
自閉性(Autism)・・・・ 1911 年 ブロイラー(Bleuler, E.) 『分裂病論』のことば
「内的生活の(比較的あるいは絶対的)優位を伴う現実離脱」
→ 神経症や性格障害にも拡大して使われる
ミンコフスキー(Minkowski, E.) 「現実との生きた接触の喪失」
外界が現実味を失い、自分の空想世界に生きて、外部に対しては寡黙で
人を寄せ付けない冷たさを示す。
カナーも、当時はこの語を転用して自閉症児の行動特性を表そうとした
→ 「自閉症」という名称にともなう現在までの誤解の原因の一つ
※ カナーが挙げた自閉症の特徴は、⑤を除けば、現在の知見にも通用するものである。
しかし、現在では、自閉症は精神病や心理的障害ではなく、脳機能の不全によるものと
考えられている(後述)。また、知能に関しては、正常以上の知能を示す自閉症者も存
在するが、80 %以上の自閉症者には知的障害が合併している。
<原因の誤解>
当時考えられていた誤った原因論
親の養育態度 親が病的なため子どもが情緒的に自分の殻に引きこもってしまう
◇ 愛情に欠けた子育て - 「愛着」形成の失敗。
◇
当時考えられた典型的な自閉症児の親
教育レベルが高く、几帳面な生活をしているが、子どもに冷たい。
◇ また、統合失調症と同様に、子どもにも精神病の資質があり、養育環境との相互作
用で発病するという考えもあった。精神病というイメージが強く残っていた。
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※ 現在では、母親の養育態度を原因とする考え方は科学的に否定されている。
<現在の自閉症の定義> プリント参照
DSM-IV アメリカ精神医学会
ICD-10 WHO(世界保健機構)
<現在考えられている原因>
◇
脳・中枢神経系における何らかの病因(未発見)それによる認知や表象機能が障害
され、社会性や言語および行動に特徴的な発達の偏りを生じると考えられている。
<過去の愛着原因説が否定されてきた経過>
① 親の養育態度との因果関係が不明
(グループ間に差が認められない、類型外の親子では原因を説明できない)
② 他の脳疾患、神経疾患における類似症状の発現
③ てんかん発作の保有率
(自閉症者の 1/4 ~ 1/3 がてんかんを有する)
④ 脳損傷児との比較
⑤ 双子の研究
(一卵性双生児での一致率 80 %以上、二卵性双生児 2 ~ 10 %、一般 0.2 %)
◇
愛着形成の失敗は、自閉症の原因ではなくて、結果といえる。
愛着が形成されないために自閉症になるのではなく、自閉症であるため愛着の
形成に困難をともなう。
◇
脳の特定部位の損傷や、神経物質等の異常については、まだ確定的なものは見つか
っていない。非常に多くの原因論があるが、すべて仮説の域である。
◇
最近では、「広汎性発達障害」の単位障害として考えるようになった。
DSM - IV と ICD-10 の広汎性発達障害単位障害の対応
・
・
・
DSM - IV
ICD-10
自閉性障害
アスペルガー症候群
レット障害
小児崩壊性障害
特定不能の広汎性発達障害
(非定型自閉症を含む)
小児自閉症
アスペルガー症候群
レット症候群
その他の小児崩壊性障害
非定型自閉症
精神遅滞と情動運動を伴う過動性障害
その他の広汎性発達障害
特定不能の広汎性発達障害
高機能自閉症: 自閉症者の中で知能の遅れがないグループ。
アスペルガー症候群: 言語発達が良好で知能も高いが、社会性、想像力、行動面な
どにおいて、広汎性発達障害に特徴的な問題が見られる。
レット症候群:女児に出現、独特の手揉み行動があり、手の目的利用を失う。
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