脳神経外科病棟における脳の障害部位別による転倒転落の現状 や や 。

脳神経外科病棟における脳の障害部位別による転倒転落の現状
キーワード:脳神経外科 ・転倒転落 ・右脳 ・左脳
1病棟 9階西
田副伸伏谷善恵山本茂雄佐藤春介
三隅 純 小 原 将 徳 溝 部 淳 美 山 下 順 子
1.
はじめに
A 病院脳神経外科病棟(以下 B 病棟)では、院内の転倒転落防止チェックリストに沿っ
、 看 護 師 間でカンファレンスを行
て転倒転落を予測し、防止策を講じている 。 また週 1回
い、防止策の評価とその修正を行なっている 。しかし A病棟における全インシデントの内、
転倒転落インシデント(以下インシデント事例)
図その他
は、過去 3年間で 2番目に多いのが現状である
(
図 1)
。
力竹らは、「右脳障害が左脳障害に比べ転倒が
多かった J 1) と述べており、高嶺は 1
2回以 上
1
0
0
60
転倒する患者は右麻庫に 比べ て 、 左 麻 庫 の 患 者
4
0
に有意差があった J 2) と報告している 。これら
2
0
より、左脳と右脳の障害の違いが転倒転落に影
0
響 す る こ と が わ か れ ば 、 今 後 の 防止策にし、かせ
るのではないかと考えた 。 よって、過去一年間
ロ内服 ・外用
80
回転倒 ・転 落
改 吹 飲
や ,,や
。
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:
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,
,
¥
:
)
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'
V
"
y
'
V
"
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図チューブ ・
ドレーン ・
回路 ・輸 液
ノレート抜去
のインシデント事例を分析し考察を行なったの
で報告する 。
図 1 3年間 の イ ン シ デ ン ト 事 例 の 内 容 と 割 合
l
l
. 目的
1
. 左脳と右脳の障害の違いが転倒転落に関して有意差があるか検証する。
2
. 脳 の障害部位を解剖学別に分けることで転倒転落への影響を部位別に調査する 。
I
I
I
. 研 究方法
"
'
"
'1
1月
1.期間:平成 24年 4月 '
2.対 象 :
1
) 平成 2
3年 4月 1日 平成 24年 3月 31日 B病 棟 入 院 患 者 57
8例
2
) 平成 2
3年 4月 1日
平成 24年 3月 3
1 日までのインシデント事例 2
9例
①障害部位が両側 である②明らかな脳実質病変がない③てんかん、パーキンソン病の
患者は除外した 。
3
. 方法:
1) 平成 23年 度 A 病棟入院患者を疾患名、障害部位、年齢、性別 、解剖学別に 10
項 目 (表 1)に分類しこれらを転倒群、非転倒群に分けた 。
2
) 平成 23年 4月 1日
平成 24年 3月 31までのインシデン ト事例を、疾患名、障害
部 位 、 麻 庫 、 年 齢 、 性 別 、 意 識 レ ベ ル 、 転 倒 回 数 、 時 間 帯 、時期 についての情報を看
戸
hd
L
円
護記録、カルテ、画像所見より抽出し、さらに解剖学的に 10項 目 に 分 類 し そ れ ら を 集
計した 。
3
) 1
)、 2
) を フ ィ ッ シ ャ ー の 直 接 確 立 計 算 法 を 用 い て 分 析 し 、 有 意 水 準 を 5%未満と
した 。
表 1 解 剖 学 別 に 分 類 し た 10項目
前頭葉
側頭葉
灰白質(広義)
辺縁系
│
頭頂葉
小脳
│
後頭葉
複合病変
間脳
実質障害無し
4
. 倫理的配慮:本研究において使用したデータは無記名とし、個人が特定されないよ
うにした上で、電子媒体に保存した 。 デ ー タ は 病 院 内 で 保 管 し た 。
町.結果
平 成 23 年 度 の B 病 棟 に お け る 入 院 患 者 の 左 右 の 脳 障 害 の 割 合 は 、 左 脳 病 変 の 患 者 は
30%と な り 、 右 脳 病 変 の あ る 患 者 は 27%、 両 側 病 変 も し く は 明 ら か な 病 変 が 無 い 患 者 が
43%という結果となった(図 2
)。 そ の 中 で イ ン シ デ ン ト 事 例 は 、 左 脳 病 変 は 27%、右脳
)。 イ ン シ デ ン ト 事 例 で は 右 脳 病 変 が 多 い 結 果
病 変 は 52%、その他が 21%であった(図 3
となったが、統計の結果ではインシデント事例で左脳と右脳の障害での有意差は認めなか
った 。
図 2 平成 2
3年 度 総 入 院 患 者 の 左 右 病 変 の 割 合
図 3 インシデント 事 例 で の 左 右 病 変 の 割 合
次 に 平 成 23年 度 の 総 入 院 患 者 (n=578) の 障 害 部 位 を 解 剖 学 別 に 分 類 し た 1
0項目の
p=0.018) と右脳の複合病変
内、有意に転倒転落が起こった障害部位は右脳の前頭葉病変 (
(p=0.007) であった 。インシデント事例をみると 29例中、 6例 が 対 象 外 で あ っ た 。対 象
の 23例の内 5例が右脳の前頭葉障害、 8例が右脳の複合病変(うち 7例は前頭葉障害含む)
0例 に は 有 意 差 は 見 ら れ な か っ た ( 表 2
)。
であった 。 その他の 1
5
3
表 2 病変別インシデント事例
n =23
右 (1
5
) 左 (8)
項目
前頭葉
5
2
側頭葉
1
1
。
。
。
。
。
。
頭頂葉
後頭葉
複合病変
8
灰白質(広義)
辺縁系
小脳
間脳
1
実質障害無し
。
。
。
。
。
。
。
5
また、脳障害患者で転倒転落に関連する因子として特徴的な意識レベルと麻庫に着目し
イ ン シ デ ン ト 事 例 全 体 と 有 意 差 が あ っ た 右 脳 の 前 頭 葉 と 右 脳 の 複 合 病 変 2項 目 に お い て 比
較分析を行った。
意 識 レ ベ ル で は 、 イ ン シ デ ン ト 事 例 全 体 の 平 均 と 、 有 意 差 が あ っ た 2項 目 の 各 々 の 平 均
を出し比較を行った 。 意 識 レ ベ ル
(
JCS) 程度を 0・3で 数 値 化 し て み る と ( 表 3
) 全体の
.
7で 軽 い 結 果 が み ら れ た ( 図 4
)。
意識レベルの平均値 1
.47に 比 べ 、 右 脳 の 前 頭 葉 病 変 0
表 3 意識レベルの数値化
JCS
。 。
-1
JCS 0
0.5
JCS 1
意3
識
レ2
f丈
2
JCS 1
1
.5
集1
JCS 2
2
イ
直 n
JCS 2-3
2.5
JCS 3
3
七
イ
・右脳の前頭葉病変四右脳の複合病変回全体平均
図 4 意識レベルの比較
同じく麻庫 (MMT) をみるために 1・1
1の 数 値 化 を 行 い ( 表 4
) 同様に比較したところ
インシデント事例全体の平均と右脳の前頭葉病変は全体平均に比べ麻庫の程度が軽く、右
脳の複合病変は重い結果となった(図 5
)。
戸
A
せ
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表 4 麻 庫 (MM
T) 数 値 化
│
麻捧数値化
ムロ
病
回目
6
5
4
複均
の平
脳体
右変︿玉
9
8
7
.右脳の前頭葉
病変
nUQURUAuzqAnu
1
1
1
0
--
Mr
.
t
T5
/
5
M
l
r
r4
5
/
5
M
.
r
r
r4
/
5
M~rr 3
4
/
5
M~rr 3
/
5
M
l
r
r2
3
/
5
~ßrr 2
/
5
~mrr 1
2
/
5
~mrr 1
/
5
~mrr 0
1
/
5
M
l
r
r0
/
5
上肢1VIMT 下肢E
凪I
T
2
図 5 麻 庫 (MMT) の 比 較
右脳の前頭葉病変は意識レベノレ、麻庫共にインシデント事例の平均に比べ症状が軽い結
果となり、右複合病変は、意識レベル、麻痘共にインシデント事例の平均に比べると症状
が重い結果となった。
V. 考 察
今回、脳の障害を左右で分類してみると、転倒転落において有意差 は認められなかった 。
しかし、解剖学別に分類し、細かい分析を行うと右脳の前頭葉病変を有する患者と右脳の
複合病変を有する患者は転倒転落を起こしやすいことが示唆された。 そのなかでは麻庫の
状態、意識レベル
(
J
C
S
) 共に軽い患者が多かった。 右の前頭葉が含まれる障害を呈する
と全般的な注意障害により生じる重度な認知障害(見当識障害、記憶障害、疾病無関心、
書字障害、換語困難、構成障害)を呈することがあると言われており、インシデント事例
においても注意障害や認知障害、集中力の低下、病識の欠如が起こり、転倒転落に至った
のではないかと推測される 。 田中らも「転倒リスクには,運動・感覚機能以上に注意機能
が 大 き な 影 響 を 及 ぼ す こ と が 示 唆 さ れ た J 3) と述べている 。こ れ ま で の イ ン シ デ ン ト 事 例
の患者に対してはカンファレンスで振り返りを行い、麻庫や意識レベルの状態を考慮し、
環境整備、ベッド位置の調整、センサーなどの防止策を行なっていたが、転倒転落を起こ
している経緯があった 。 右 脳 の 前 頭 葉 障 害 を 持 つ 患 者 の 中 に は 、 明 ら か な 麻 庫 や 、 意 識 レ
ベルの変化がない場合でも、高次脳機能障害を有することがあるため、転倒転落を起こし
やすく注意が必要であると考えられる 。
したがって今後は障害部位から考えられる高次脳機能評価を行うための指標を新たに
活用することで、脳の障害部位からみた深いアセスメントができ、転倒転落の危険性を予
測し、防止策にし、かすことが課題である 。
V. 結 論
1. 左 右 の 脳 の 障 害 で は 有 意 差 は み ら れ な か っ た 。
2. 右 前 頭 葉 に 障 害 を 有 す る 患 者 は 転 倒 転 落 す る 可 能 性 が 高 い こ と が 示 唆 さ れ た 。
戸
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引用文献
1) 力 竹 祐 子 , 高 井 清 美 , 渡 島 真 由 美 , 山 口 華 奈 子 , 遠 江 美 佳 , 徳 永 尚 子 , 淵 上 直 子 : 脳
血 管 疾 患 患 者 の 転 倒 転 落 防 止 へ の 取 り 組 み , 好 生 No.47, 31-33, 2010.
2) 高 嶺 一 雄 : 脳 血 管 障 害 患 者 に お け る 転 倒 ・ 転 落 の 危 険 因 子 : 特 に 高 次 脳 機 能 障 害 と の
.
関連性について, The KITAKANTO medical journal 55 (1), 1-4, 2005-02-01
3) 田 中 貴 士 , 山 田 実 : 脳 血 管 障 害 者 に お け る 注 意 障 害 ・ 身 体 機 能 が 転 倒 に 及 ぼ す 影 響 ,
理学療法科学
) :199-202,2010.
2
25 (
参考文献
・ 原 寛 美 : 高 次 脳 機 能 障 害 ポ ケ ッ ト マ ニ ュ ア ル 第 2版.東京,医師薬出版株式会社, 26,
2012.
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