五島中央紀要1 4:7 9−8 1,2 0 1 2 4階北病棟の医療事故に関する事故報告書の背景分析 長崎県五島中央病院 ○吉本 直子 浦 宮脇 尚子 釜我 4階北病棟 碧 中尾奈留美 田端 静子 立野友美子 千代田富美子 !.はじめに 保枝 #.研究方法 平成1 1年 A 病院の患者取り違え事故では、看護師 調査対象 だけでなく医師など多数の人が関わって事故が生じて おり、組織的な対応としてリスクマネジメントが求め 平成2 0年度4北から提出された医療事故報告書 1 7件中発生・発見時間不明、詳細不明を除く1 3件 られるきっかけとなった。当院でも、平成1 9年6月 に医療安全対策室を設置、医療安全対策委員会が発足 調査方法 し、各病棟単位での活動を実施している。 医療安全推進委員会の事故報告書、病棟日誌、当院 4階北病棟(以下、4北)の医療事故報告件数は、 経営状況 入院診療患者実績から、4北の事故項目、 平成1 9年度1 5件、平成2 0年 度1 7件、平 成2 1年 度1 8件 発生・発見日、発生・発見時間、発生・発見場所、科、 とここ数年増加傾向にある。 科別患者数、未熟児・新生児、分娩数・時間、結核・ 4北は産婦人科(2 0床) 、未熟室を含む小児科(2 0 床)からなる4 0床の混合病棟であった。しかし、少 精神科を除く他病棟の病床利用率の項目を抽出し検討 した。 子化や産婦人科・小児科の治療ガイドライン変更に伴 い、入院期間短縮・患者数減少が見られ、平成1 5年 倫理的配慮: 頃から徐々に多くの科が混在するようになった。加え 当院医療安全委員会が編集した個人を特定されない て、診療報酬の制度が変わり、病院がベッドを効率よ 医療事故報告書を使用。今回用いるデータは本研究で く回転させなければならなくなったこともあり、現在 のみ使用するものとする。 では、産婦人科・小児科・未熟児室に加え、精神科を 除く全ての科を含む混合病棟(亜急性病床4床を含 $.結 果 当院病棟別病床利用率の変動率は4北が最も大きく、 む)となっている。 看護スタッフが多様な看護業務を担当する混合病棟 4北は内科が最多で4割を占めている。患者実数減少 では、一般病棟に比べ、医療事故の頻度が高いという 傾向時の事故が5割強。医療事故の科別内訳は内科が 報告がなされており、4北での医療事故も混合病棟特 最多で8割。医療事故を勤務帯でみると日勤帯が6割。 有の多様な業務が関連しているのではないかと考え、 また、分娩・入院・退院も日勤が最多。医療事故発生 4北の現状に関心を持つ様になった。 有無に関らず、平均入院科数は5科数であった。 そこで、4北の医療事故の要因として、!患者数増 加時 "科の混在 #分娩、入退院集中時 $夜勤帯 %.考 察 が関連しているのではないかという仮説を立てた。本 古庄氏が「時間的、人的にゆとりのあるときに、事 研究の結果、仮説とは異なる結果となったため、考察 故が起こることも経験している」と述べていることが、 を加えここに報告する。 患者実数減少時に医療事故が発生した要因となってい るのではないか。他病棟より患者総数の変動が大きい ".用語の定義 ということも追加要因となっている。 4北入院科の4割を占める内科が医療事故の8割を 患者総数:入院患者数 患者実数:患者総数に新生児を含めた患者数 占めている。考えられる要因として、知識・マニュア 入院科数:未熟児、新生児も1つの科とする ル整備・物品などの不足が挙げられる。そのため、他 科の受け入れ基準の設置・業務のマニュアル化が必要 である。 ―7 9― 日勤では、ほぼ毎日新生児にスタッフ1名が必要で あり、分娩・帝王切開術時、未熟児入院中は、さらに 1名ずつスタッフの確保が必要となる。4北では他 チームからの応援体制がとられており、状況に応じ他 スタッフへの業務量の変動が大きくなっている。その ことが業務ストレスを高め、日勤に医療事故が集中し た要因となっている。 ―8 0― ―8 1―
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