自己力を伴う質点の運動: - IPMU

自己力を伴う質点の運動:
ハミルトン形式を用いた定式化
京都大学
理学研究科
磯山 総一郎
ブラックホール時空の直接検証
ブラック
ホール?
・銀河中心の巨大ブラック
ホールの決定的な証拠を
つかみたい。
✔質量やスピンは?
天体の
軌道
✔回転ブラックホール?
✔一般相対論は正しいか?
時空のさざなみである重力波を用いて
一般相対論的な曲がった時空を、直接探索する
質量比の大きいコンパクト連星
J. Gair M. Vallisneri, S.Larson and J. Baker 1212.5575
・1銀河あたりのイベント数
・コンパクト天体:
・ブラックホール:
✔ 宇宙での低周波重力波観測(eLISA:
2034年打ち上げ予定) における有望な
重力波源の一つ
✔合体前の1年間に巨大ブラック
ホールの地平面周りを亜光速で
数十万回転する。
正確な軌道運動の必要性
・精度よい重力波形のテンプレートには、重力波源
であるコンパクト連星系の正確な運動の理解が必要。
必要な精度: 1年間で誤差は数回転以内
・質量比の大きさを利用して、連星系の軌道運動を
回転ブラックホール上の質点の運動で近似する。
ただし重力波輻射に伴い、質点の軌道は
回転ブラックホールの測地線から徐々にずれる。
自己力を伴う質点の運動
・重力波輻射の影響を、質点の自己重力場が質点自身に
与える自己力として摂動として取り入れる。
Y. Mino, M. Sasaki and T. Tanaka 9610053, T. Quinn and R. Wald 9606018
・自己重力場は質点上で発散するため、正則化を行う。
S. Detweiler and B. Whiting 0202086
発散なし。
クーロンポテンシャル型で発散
自己力計算の現状
・球対称ブラックホール時空: 技術的困難はほぼ解決
L. Barack, Y. Mino, H. Nakano, A. Ori,and M. Sasaki 011001
✔ 時空の球対称性を最大限に活用
✔ 自己力を伴った質点の軌道発展も
具体的に計算できる
N. Warburton, S.Ackay, L. Barack,
J. Gair and N. Sago 1101.6908
・回転ブラックホール時空: 現状では実行不可能。
現状の解決すべき課題
回転ブラックホール時空において、自己力を伴う
質点の軌道発展を具体的に計算する方法の確立
ハミルトン形式を用いて、問題を見直す。
Work with
Ryuichi Fujita, Hiroyuki Nakano, Norichika Sago and Takahiro Tanaka
有効時空上の測地線運動
S. Detweiler and B. Whiting 0202086
・自己力を伴う質点の軌道は、有効時空上の測地線と同値
回転ブラックホール時空
質点のつくる自己重力場
・測地線運動する相対論的粒子のハミルトニアン:
✔有効ハミルトニアン
回転ブラックホール時空上の
測地線のハミルトニアン
相互作用ハミルトニアン
作用-角変数への正準変換
・ハミルトン方程式を、回転ブラックホールの対称性を
最大限に活用できる正準座標でとく。
B. Carter 1968
✔回転ブラックホール時空の測地線がもつ4つの運動の定数
✔“運動の定数”へうつる正準変換の母関数
・もう一度正準変換して、作用-角変数にうつる
作用変数
作用角変数
正準変換後のハミルトン方程式
・回転ブラックホール時空でも(条件付で)具体計算できる
相互作用ハミルトニアンのみで書ける。
✔運動の定数の時間変化: 計算技術は(ほぼ)確立ずみ
Gal’tsov 1982Y. Mino 0302075 SI+1302.4035
✔運動の軌道周波数シフト: 赤道面準円軌道ならば評価可能
まとめ
・巨大ブラックホールの曲がった時空は、質量比の
大きいコンパクト連星系からの重力波で直接探索できる
・高精度な重力波テンプレートを用意するには、
自己力をふくめた質点の正確な運動の理解が必要。
・自己力を伴う質点の軌道進化は、原理的には
回転ブラックホール時空でも計算できる時期にある。
今後の課題
・より一般の軌道について、自己力の運動への影響を
具体計算できるスキームの開発。
✔ 現状では相互作用ハミルトニアンの完全な計算は
赤道面上の準円軌道のみ実行可能。
・最終的な波形テンプレート作成に必要となる
自己力を考慮した、質点の長時間の軌道発展の計算
✔現状では、運動の定数の時間変化が、
個別に計算されているのみ
糸冬
(Fin.)