加工条件による加工品質への影響 2

加工条件による加工品質への影響 2
加工物(ワーク)に適したブレード選定を行うだけでなく、ブレード本来の性能を十分に発揮した状態で使用して
いただくためには、加工条件を最適化することが重要です。
複数回にわたって、ブレードの基礎情報をお届けしておりますが、今号は、
「送り速度による影響」についてご紹介
いたします。
加工メカニズム *a
砥粒
ブレードの要素
加工条件
ボンド
*d
サイズ
*e
スピンドル回転数
*f
砥粒径
*b
集中度
*c
■今回のテーマ
■前号以前に掲載
*a:
*b:
*c:
*d:
*e:
*f :
送り速度
Fig. 1: ブレード基礎別要因
01 : 送り速度
No.17 に掲載
No.18 に掲載
No.19 に掲載
No.20 に掲載
No.21 に掲載
No.22 に掲載
02 : 加工品質への影響
ダイシングソーなどの精密切断装置では、高速回転している
一般的に送り速度を速くすればスループットは向上しますが、
砥石に対し、ワークを載せたテーブルが 1mm/sec ~ 300mm/
その反面、
加工点では砥粒ひと粒あたりの仕事量
(ワーク除去量)
sec の範囲の送り速度で加工を行うことが一般的です。
が増加するため、送り速度が遅い場合と比較すると加工負荷が
送り速度が速ければ速いほどスループットは向上しますが、
大きくなります。したがって、送り速度が速いほどワークに対す
極端に速すぎるとブレードに異常な負荷がかかるため、加工結
る衝撃が大きくなり、チッピングは大きく、消耗量も増加する
果に大きな影響を与えます。
傾向にあります。
送り速度は、研削加工の条件選定において重要な要素の 1 つ
です。
同一条件下で送り速度のみを速くした場合(※)
、
砥粒ひと粒あたりの仕事量(加工負荷)は大きくなる。
加工前
※送り速度以外の加工条件やブレード、ワークなどは全て同じ場合。
ブレード
ブレード
回転方向
ワーク
ケース 1: 送り速度が 50mm/sec の場合
ワークの進行方向
送り速度 10mm/sec
ブレード
回転方向
加工距離
ブレード
砥粒 a
ワーク除去量 A
ブレード 1 回転あたりの
砥粒 a の仕事量
ブレード
ブレード
回転方向
ワークの進行方向
ワーク
ワーク
ワークの進行方向
送り速度 50mm/sec
ケース 2: 送り速度が 100mm/sec
(ケース 1 の 2 倍)の場合
ブレード
回転方向
加工距離
ブレード
ブレード
回転方向
砥粒 b
ワーク除去量 B
ブレード 1 回転あたりの
砥粒 b の仕事量
ブレード
ワーク
ワークの進行方向
Fig. 2: 送り速度の違いによる加工距離のイメージ図
ワークの進行方向
ワーク
kiru
migaku
Diamond Marketing Team
Sales Engineering Department PS Company
kezuru
23
2008/No.
Technical Newsletter
砥粒 a の 2 倍
Fig. 3: 送り速度の違いによる加工量の違い(イメージ図)
2008 / THE CUTTING EDGE No. 23
120.0
0.6
100.0
0.5
消耗量 (µm/m)
裏面チッピング xbar+3S(µm)
加工条件による加工品質への影響 2
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
20
40
60
80
100
120
140
0.4
0.3
0.2
0.1
0
160
60mm/sec
110mm/sec
送り速度 (mm/sec)
Fig. 4: 送り速度の違いによる裏面チッピング
ワーク :
モード:
送り速度 :
スピンドル回転数:
切り込み深さ :
ブレード :
Fig. 6: 送り速度の違いによる消耗量
ワーク :
モード:
送り速度 :
スピンドル回転数:
切り込み深さ :
ブレード :
Si Wafer ø6" x 0.4mmt
A
10~160mm/sec
30,000min-1
0.4 + テープに 0.03mm
205O 27HEDD
送り速度 送り速度
Si Wafer ø6" x 0.4mmt
B
60mm/sec,110mm/sec
30,000min-1
0.4 + テープに 0.03mm
205O 27HEDD
送り速度 送り速度
高 速 低 速
高 速 低 速
Fig. 5: 送り速度の違いによる裏面チッピングの関係
Fig. 7: 送り速度の違いによる消耗量の関係
大きい← 裏面チッピング →小さい
大きい← 消耗量 →小さい
03 : ブレード破損への影響
送り速度を極端に速くした場合、粒径やブレードサイズなど
送り速度を極端に遅くした場合、加工時の負荷が小さくなる
も関係しますが、ブレードの蛇行や破損が発生しやすくなりま
ため、ブレードの自生発刃が抑制され、目つぶれなどが発生し
す。
(The Cutting Edge No.15 ブレードの破損にて掲載)
チッピングが大きくなります。
目つぶれ:
砥粒の脱落や、破砕が起こらず切れ刃
がなくなってしまう状態
根元部分からの破損
刃先部分の破損
Photo 2: 目つぶれ
砥粒
Photo 1: 送り速度を速くした場合の症状
チップポケット :
押しつぶされた様な状態になっている
送り速度 送り速度
高 速 低 速
目つぶれ :
劣化した砥粒が脱落せずに
ボンドに保持されている。
発生しやすい← 破損 →発生しにくい
Fig. 8: 送り速度による破損の関係
Fig. 9: 送り速度による破損の関係
まとめ: 送り速度と加工品質のトレードオフ
送り速度と加工品質についてまとめると Fig. 10 のような関係になります。
送り速度は、スループット・表裏面チッピングに大きく影響を与えるため、ワーク・ブレード・求める加工品質によって選択
する必要があります。
改善
↑
スループット
ブレードライフ
表裏面チッピング
遅い ← 送り速度 → 早い
注:
左記は使用範囲内のトレードオフです
Fig. 10: 送り速度と加工品質のトレードオフ
お問い合わせ
株式会社ディスコ PS カンパニー 営業技術部 ダイヤマーケティングチーム
www.disco.co.jp
2008 / THE CUTTING EDGE No. 23