ピアノ指導法講座

ピアノ指導法講座
「 み ん な で ブ ル ク ミ ュ ラ ー を 勉 強 し ま し ょ う」
∼ 私 の ピ アノ 教 育 経 験 を 交 え て ∼
有賀 和子
有
賀
和
子
ピ
ア
ノ
指
導
法
講
座
注:文中の□内の数字は小節番号
フリードリヒ・ブルクミュラー(F.Burgmüller)は、1806年ドイツに生まれ、1874年フランスで亡く
なりました。ツェルニー(1791∼1857)やシューベルト(1797∼1828)より少し後に、またメンデルス
ゾーン(1809∼1847)
、ショパン(1810∼1849)
、シューマン(1810∼1856)
、リスト(1811∼1886)より
少し前に誕生した、ロマン派における大作曲家たちと同年代の作曲家です。
ブルクミュラーの練習曲集には、25の練習曲(Op.100)
、12の練習曲(Op.105)
、18の練習曲(Op.109)
があり、曲の表題はフランス語で記されています。本日は、最も親しみ深く子供たちにも弾きやすい25
の練習曲と、より高度なテクニックを用いた興味深い18の練習曲をとりあげたいと思います。
それでは、皆さんに演奏していただきましょう。
ブルクミュラー:25の練習曲 Op.100
2.アラベスク L'arabesque
アラベスクとは、
「アラビア風の」という意味で、イスラム教の教会等にある唐草模様のことですね。
シューマン(Op.18)やドビュッシー(2つのアラベスク)にも同名の曲があります。
へんさん
い と
ブルクミュラーの練習曲には数多く編纂された版がありますが、まずは原典版を調べて作曲者の意図
を理解しましょう。その後いろいろな版を比較して参考になさるとよいでしょう。
26
〈特集〉第26回全国研究大会
∼ にかけて、右手のスラーを比較してみましょう。
原典版
他のある版
スラーのかけ方だけでも細かいニュアンスが変わってきますね。このようなことがしばしば原典版と
ほかの版でみられます。まず始めに原典版を読んでから勉強されることを私はおすすめします。
6.前進 Progrès
∼ にかけて、ここにも版による違いが表れています。 では、左手のド、ラ、ソ、ミを旋律的に、
響かせて弾いてみましょう。
原典版
他のある版
ここでは大きな違いがあります。原典版はアクセントではありません。
原典版
他のある版
27
7.清い流れ Le courant limpid
題名にあるクーラントcourantは、バッハ等の古典組曲の基本舞曲「クーラント」と同じ語です。
「走
り回る」に由来し、
「流れ」を指しています。
mormorendoと書いてあるようにささやくように弾いてください。
右手は1の指を少し立てながらメロディを出して腕の力を抜いてlegatoで次の1の指へ持っていくよ
うにします。
また、この25の練習曲にはペダル表記がありませんが、ペダルの使えるお子様は自由に使ってくださ
い。はじめはuna corda(弱音ペダル)もともに使用してよいでしょう。
原典版では 右手の1拍目以外4分音符になっていません。注意しましょう。
原典版
12.さようなら L'adieu
ベートーヴェンのソナタOp.81aと同じ題です。
この曲でも、原典版との違いを比較してみましょう。
からの右手のスラーと強調記号の違い。
原典版
28
他のある版
〈特集〉第26回全国研究大会
右手のスラーの違い。原典版では、より細やかな表現になっています。
原典版
他のある版
左手のスラーの違い。
原典版
他のある版
17.おしゃべり La babillarde
Laはフランス語で女性に使いますから「おしゃべりの女のひと」という意味です。
ここにも版によってアーティキュレーションの違いがみられます。
原典版
他のある版
29
19.アヴェ・マリア Ave Maria
ささ
冒頭に「religioso 宗教的に」と記されています。
「アヴェ・マリア」は聖母マリア様に捧げるお祈りの
意味なので讃美歌やコラールと思って弾いてください。
∼左手の旋律をもっと響かせて演奏してみましょう。
は、やはり原典版ではアクセントにはなっていません。
原典版
他のある版
∼右手と左手をハーモニーさせて弾きましょう。
ブルクミュラー18の練習曲 Op.109
Op.109の練習曲は、原典版が出版されていません。
18.つむぎ歌 Fileuse
ここから右手に隠れないよう、もう少し左手のメロディをよく響かせてください。
B
(変ロ音)を意識して短調への暗い感じを表しましょう。
30
〈特集〉第26回全国研究大会
この18の練習曲にはペダル表記がありますが、ペダルが濁ると感じた場合は踏みかえましょう。
P
P
P
P
P
P
P
P
※当日は、このほか25の練習曲より3,4,9、14,16,20,24,25と、18の練習曲より2,4,9,
17がとりあげられましたが、誌面の都合上 割愛させていただきます。
次に、私の教育経験からひとこと申し上げます。子供のころに数々のコンクールで優勝されながら、
高校以降受験に失敗するなど、なかなか伸び悩んでいらっしゃる生徒さんとお会いする機会がよくあり
ます。
そのような場合、小学生の頃ひとつのコンクールが終わると、また次のコンクールの課題をさらうと
いうような、コンクールのためだけの勉強をしている方が多いのです。それでは成長が望めません。じ
っくりと練習曲、バロック、古典、ロマン派等の曲を幅広く勉強し、その力を試す場がコンクールなの
だと私は思います。
また、よい演奏家になるためには、生徒さんと先生の信頼関係がとても重要になります。生徒さんは
先生を信じてしっかりと勉強し、先生は生徒さん1人1人の手や指の構造、長所、短所などの性格、持
っている素質などを把握して、その生徒さんが進歩するためにあらゆる角度から努力して指導する必要
があります。
このあと、伊藤 恵先生の熱意あふれる素晴らしい演奏で講座が終了しました。
演奏曲目:ブルクミュラー:25の練習曲 Op.100より
2.アラベスク 15.バラード 25.貴婦人の乗馬
シューマン:ユーゲントアルバム Op.68より
9.小さな民謡 13.愛らしい五月よ―お前はもうすぐやってくる 35.ミニヨン
(編 広報部 吉田優子)
31